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第十一章
462 少々特殊です
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翌日、野営地としてはかなり快適になったエルフの里では、着々と迷宮討伐の準備が整っていた。
コウヤは、夜遅くまでタリス達と打ち合わせをしていたが、特に変わらない様子で皆の前に立った。
「おはようございます!」
「「「「「おはよー!!」」」」」
冒険者達も、昨日の疲れは残していないらしい。もちろん、そのためにコウヤ特製の回復薬は皆に配っていたので問題はなくて当然だろう。
「良いお天気ですが、皆さんに今日向かってもらうことになるフィールドは、少々特殊です」
「ん?」
「天気が関係あんの?」
「なんだろ」
調整してもらった武器の状態を確認してニヤニヤしながらも、冒険者達はきちんとコウヤの言葉に耳を傾けていた。
「残り四つのフィールドは、夜のように暗くなっています」
「「「「「え!?」」」」」
「外だよな?」
「あ~、でも、俺らが行ったフィールドで、雨降ってるとこあったわ」
「フィールド出たら晴れてたもんな」
「それ考えたらおかしくはないのか……いや、おかしいか」
そのフィールドに足を踏み入れた途端に、天気がガラリと変わる。暑さや寒さといった、気候が変わる迷宮はある。だが、それは閉ざされた空間だから、まだ納得できる。
しかし、迷宮化しているのは外なのだ。それを考えるとこの迷宮化というのが異常なのがよく分かる。
「そこで、皆さんに暗視の魔法をかけます。スキルを持っている方は、特に良く見えるようになると思います」
「あっ、俺持ってる!」
「俺も~」
「ここに居るのは、ほとんど持ってるんじゃない?」
「いや、気配察知のスキルが上がり過ぎてると、暗視のスキルが取りにくいって聞いたことある」
「それ本当だって。俺の親父はAランクでも持ってなかった」
気配察知の方が冒険者にとっては重要だ。察知したと同時に動く方が、目視した時点で動くよりも早い。それだけで生存確率も違ってくる。
よって、感覚の鋭さを武器にして生きてきた者たちは、暗視スキルが取れていなかったりするのだ。
「もちろん、普段のように気配を頼りに動いてもらえば問題はありません。ただ、現れる魔獣や魔物は、暗さなど関係なく素早く飛びかかってくるので注意してください」
相手になる魔獣や魔物は、それこそ、その暗闇など枷にならないものばかり。
「中には、気配を断つのが上手い魔物が居るようです。乱戦になる可能性は高いので、お互いの距離感には気を付けてください」
ギルドカードと専用の御守りには、味方同士の攻撃を防ぐ防御魔法が仕込まれている。飛び入り参加も予想し、御守りはかなり多く用意していたので、参加することになったドワーフ達や、ドラム組、ユキなどの数名のエルフ達にもそれらを渡すことができた。
「防御魔法はありますが、お互いに向けて攻撃をしてしまうと、隙は出来てしまいますので、防御はないものとして意識してください。魔法は弾きますので、意図しない跳弾には特に注意してくださいね!」
「もちろんだ!」
「跳弾魔法? は楽しいけどな」
「いや、あれマスターしてんのトルヴァランの宮廷魔法師だけじゃん」
「俺もやれるようになりたい!」
技名として『跳弾魔法』となったらしく、宮廷魔法師達が中心となって、今回の迷宮討伐では、風のように駆け抜けていく彼らは、かなり有名だった。
「……けど、あいつらめちゃくちゃ笑ってるんだよな……」
「怖いよな……笑い声が……」
「通った場所、キレイに魔獣を狩られるもんな……」
「「「「宮廷魔法師怖い……」」」」
ちょっと恐れられているようだ。跳弾魔法を駆使して、駆け抜けた場所にいた魔獣や魔物を狩り取っていくのだから。
「なあ、魔法師って、動かないもんじゃないの?」
「だよなっ。普通動かないよな!?」
「移動しても歩いてとか、体力ないのが普通……」
「いつから魔法師って、走るようになったんだ?」
「いや、あれは多分……」
「「「「「トルヴァランのがおかしい」」」」」
コウヤを師匠とした影響か、すっかり体育会系になった魔法師達だ。
「残り四つのフィールドは、とにかく広くなっています。全員で一つのフィールドを攻略してもらいますが、予定より戦力が増えたとはいえ、夕方近くまでかかるでしょう。体力の配分には気を付けて、無理はしないようにお願いします」
タリス達と相談した結果、一つずつフィールドを攻略していくことにしたのだ。確実に、負担なく闘うためだ。
今回は全員で、別の方面から八つに分かれて入っていくことになる。
「それぞれの安全地帯に着くお昼頃には、回復薬とお弁当をお届けします!」
「「「「「おうっ!」」」」」
「お弁当楽しみ~っ」
「あっ、だから先導役がいるのか」
「安全地帯あるなら安心だな。一日中走り回るんかと思った」
それぞれのグループには、神官達がついており、先導していくことになっている。あくまでも先導役なので、戦うのは冒険者達に任せる。暗い中、方向と位置を正確に取ってもらうのだ。
因みに、コウヤがこうして最初から最後まで説明しているのは、タリスやシーレスが討伐隊に入ってしまっているからだ。二人もここから本気らしい。
コウヤは後方支援に回る。
「それでは、最奥四フィールド迷宮討伐、第一日目、出発します!」
「「「「「おう!!」」」」」
四日かかる予定の最後の討伐が始まった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
コウヤは、夜遅くまでタリス達と打ち合わせをしていたが、特に変わらない様子で皆の前に立った。
「おはようございます!」
「「「「「おはよー!!」」」」」
冒険者達も、昨日の疲れは残していないらしい。もちろん、そのためにコウヤ特製の回復薬は皆に配っていたので問題はなくて当然だろう。
「良いお天気ですが、皆さんに今日向かってもらうことになるフィールドは、少々特殊です」
「ん?」
「天気が関係あんの?」
「なんだろ」
調整してもらった武器の状態を確認してニヤニヤしながらも、冒険者達はきちんとコウヤの言葉に耳を傾けていた。
「残り四つのフィールドは、夜のように暗くなっています」
「「「「「え!?」」」」」
「外だよな?」
「あ~、でも、俺らが行ったフィールドで、雨降ってるとこあったわ」
「フィールド出たら晴れてたもんな」
「それ考えたらおかしくはないのか……いや、おかしいか」
そのフィールドに足を踏み入れた途端に、天気がガラリと変わる。暑さや寒さといった、気候が変わる迷宮はある。だが、それは閉ざされた空間だから、まだ納得できる。
しかし、迷宮化しているのは外なのだ。それを考えるとこの迷宮化というのが異常なのがよく分かる。
「そこで、皆さんに暗視の魔法をかけます。スキルを持っている方は、特に良く見えるようになると思います」
「あっ、俺持ってる!」
「俺も~」
「ここに居るのは、ほとんど持ってるんじゃない?」
「いや、気配察知のスキルが上がり過ぎてると、暗視のスキルが取りにくいって聞いたことある」
「それ本当だって。俺の親父はAランクでも持ってなかった」
気配察知の方が冒険者にとっては重要だ。察知したと同時に動く方が、目視した時点で動くよりも早い。それだけで生存確率も違ってくる。
よって、感覚の鋭さを武器にして生きてきた者たちは、暗視スキルが取れていなかったりするのだ。
「もちろん、普段のように気配を頼りに動いてもらえば問題はありません。ただ、現れる魔獣や魔物は、暗さなど関係なく素早く飛びかかってくるので注意してください」
相手になる魔獣や魔物は、それこそ、その暗闇など枷にならないものばかり。
「中には、気配を断つのが上手い魔物が居るようです。乱戦になる可能性は高いので、お互いの距離感には気を付けてください」
ギルドカードと専用の御守りには、味方同士の攻撃を防ぐ防御魔法が仕込まれている。飛び入り参加も予想し、御守りはかなり多く用意していたので、参加することになったドワーフ達や、ドラム組、ユキなどの数名のエルフ達にもそれらを渡すことができた。
「防御魔法はありますが、お互いに向けて攻撃をしてしまうと、隙は出来てしまいますので、防御はないものとして意識してください。魔法は弾きますので、意図しない跳弾には特に注意してくださいね!」
「もちろんだ!」
「跳弾魔法? は楽しいけどな」
「いや、あれマスターしてんのトルヴァランの宮廷魔法師だけじゃん」
「俺もやれるようになりたい!」
技名として『跳弾魔法』となったらしく、宮廷魔法師達が中心となって、今回の迷宮討伐では、風のように駆け抜けていく彼らは、かなり有名だった。
「……けど、あいつらめちゃくちゃ笑ってるんだよな……」
「怖いよな……笑い声が……」
「通った場所、キレイに魔獣を狩られるもんな……」
「「「「宮廷魔法師怖い……」」」」
ちょっと恐れられているようだ。跳弾魔法を駆使して、駆け抜けた場所にいた魔獣や魔物を狩り取っていくのだから。
「なあ、魔法師って、動かないもんじゃないの?」
「だよなっ。普通動かないよな!?」
「移動しても歩いてとか、体力ないのが普通……」
「いつから魔法師って、走るようになったんだ?」
「いや、あれは多分……」
「「「「「トルヴァランのがおかしい」」」」」
コウヤを師匠とした影響か、すっかり体育会系になった魔法師達だ。
「残り四つのフィールドは、とにかく広くなっています。全員で一つのフィールドを攻略してもらいますが、予定より戦力が増えたとはいえ、夕方近くまでかかるでしょう。体力の配分には気を付けて、無理はしないようにお願いします」
タリス達と相談した結果、一つずつフィールドを攻略していくことにしたのだ。確実に、負担なく闘うためだ。
今回は全員で、別の方面から八つに分かれて入っていくことになる。
「それぞれの安全地帯に着くお昼頃には、回復薬とお弁当をお届けします!」
「「「「「おうっ!」」」」」
「お弁当楽しみ~っ」
「あっ、だから先導役がいるのか」
「安全地帯あるなら安心だな。一日中走り回るんかと思った」
それぞれのグループには、神官達がついており、先導していくことになっている。あくまでも先導役なので、戦うのは冒険者達に任せる。暗い中、方向と位置を正確に取ってもらうのだ。
因みに、コウヤがこうして最初から最後まで説明しているのは、タリスやシーレスが討伐隊に入ってしまっているからだ。二人もここから本気らしい。
コウヤは後方支援に回る。
「それでは、最奥四フィールド迷宮討伐、第一日目、出発します!」
「「「「「おう!!」」」」」
四日かかる予定の最後の討伐が始まった。
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読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
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