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第十一章
456 家だっ……
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迷宮討伐の三日目の朝が来た。
エルフの里側の五十あったフィールドも、残すところ四つだ。
朝食も済む頃、今日も映像が上空に出される。
映し出されたのはコウヤだ。もう誰も『こいつ誰だ』とは思わない。
『みなさん、おはようございます!』
「「「「「おはよー!!」」」」」
「「今日も可愛いっ!」」
「「「昨日のすごかったぞー!」」」
「せえのっ」
「「「「「コウヤちゃ~ん!!」」」」」
エルフの里側の冒険者達だけでなく、獣人族の里に近い野営地でも、同じような反応が返ってくる。
各国の町でも同じように映像が見えているので、住民達も、もうコウヤを知っていた。
「あっ、始まった!」
「あんなに昨日も働いたのに……よかった。元気そうだな」
「なんだか、息子みたいに見ちゃうわよね~」
「心配もあるがまあ、あんな息子が居たら、誇らしいよなっ」
どの場所でも、概ね好意的に受け入れられていた。
『本日までの討伐状況をご報告します。先ず【入らずの森】と呼ばれていました西側です』
コウヤは指示棒を取り出し、後ろに用意していた地図の、エルフの里の側の森を丸で囲むようにして示す。
エルフ達の術によって、足を踏み入れれば迷うということで、近隣の住民達は【入らずの森】と呼んでいたらしい。
大々的にエルフの里の場所を教えるのは控えていた。
『本来の森の位置までの土地の安全を確認しました。迷宮化により、擬似的な森が広がっていましたが、それが無くなった形です』
精霊達によって迷宮化した土地は、森としてその面積を増やしていたのだ。それが解けたことで、森が後退したように見える。だが、実際は本来の森の位置まで戻っただけだ。
『これにより、三十年より前で記録が無くなっていました【エクト村】【ソルタ村】【カイナ村】【ウル村】【セトルー村】が発見できました。こちらの村に所縁のある方は、お近くの冒険者ギルドへお知らせください』
そこで、映像が大きくなり、六分割され、コウヤとそれぞれ五つの村の上空からの映像が映された。
人が居なくなって三十年以上経っていた場所だ。廃墟になっているはずが、まるで時を止めていたように建物はそのまま。草木も伸び過ぎるでもなく、まるでつい最近まで人が住んでいたような状態だった。
それを見た人々は、呆然とする。
しかし、その村の元住民達や親から話で聞いていた者たちは違う。彼らは涙を浮かべ、それに見入る。そして、年老いた親を慌てて家に呼びに行く。
「嘘だろ……そのまんまじゃねえか……っ」
「おっ、俺の家っ……っ、母ちゃんっ、母ちゃんっ、見てくれ!」
「父ちゃんアレ! 家だっ……っ」
「っ、本当だ……っ、家だっ、そのままだっ。俺らの家だっ……っ」
訳もわからず、ある日突然森に呑まれた家。彼らは魔獣達に追い立てられるように、その家を捨てて逃げるしかなかったのだ。
近くの町に逃げ込んでも、領主にはほとんど掛け合ってもらえることもなく、泣く泣く移り住むしかなかった。
だが今、あの頃の姿のまま、村が戻って来たのだ。
「っ、帰れるのか……っ、俺はまたあの家に……っ」
「ああ、畑だ……俺の畑だ……っ」
「ちゃんとあるわ……っ、お墓もっ、ようやく、お父さんをお母さんの隣で眠らせてあげられるっ」
いつの間にか、帰ることも諦めてしまっていた。そんな故郷に、帰ることができる。それを実感し、泣き崩れる人々は多かった。
『家も残っているようですので、数日中に安全確認を改めていたします。後日、護衛と馬車を用意しますので、そこで希望される方には一度里帰りを。各村の所属する領地の領主にも、冒険者ギルドから協力を要請し、希望する方々が移住できるように支援させていただきます。詳しくは、お近くの冒険者ギルドにお問合せください』
昨日の内に各地の冒険者ギルドには連絡が行っており、そこから領主と国へ報告もされていた。混乱はないはずだ。
『続きまして、東側の【険しの森】の方の報告に移ります』
獣人族の里の方の迷宮化の討伐には、ルディエをはじめとする特に戦闘能力の高い神官が詰めているため、問題なく進んでいた。
『こちらでも三つの村と一つの町が確認できております』
こうして、多くの人々が故郷を取り戻した。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
エルフの里側の五十あったフィールドも、残すところ四つだ。
朝食も済む頃、今日も映像が上空に出される。
映し出されたのはコウヤだ。もう誰も『こいつ誰だ』とは思わない。
『みなさん、おはようございます!』
「「「「「おはよー!!」」」」」
「「今日も可愛いっ!」」
「「「昨日のすごかったぞー!」」」
「せえのっ」
「「「「「コウヤちゃ~ん!!」」」」」
エルフの里側の冒険者達だけでなく、獣人族の里に近い野営地でも、同じような反応が返ってくる。
各国の町でも同じように映像が見えているので、住民達も、もうコウヤを知っていた。
「あっ、始まった!」
「あんなに昨日も働いたのに……よかった。元気そうだな」
「なんだか、息子みたいに見ちゃうわよね~」
「心配もあるがまあ、あんな息子が居たら、誇らしいよなっ」
どの場所でも、概ね好意的に受け入れられていた。
『本日までの討伐状況をご報告します。先ず【入らずの森】と呼ばれていました西側です』
コウヤは指示棒を取り出し、後ろに用意していた地図の、エルフの里の側の森を丸で囲むようにして示す。
エルフ達の術によって、足を踏み入れれば迷うということで、近隣の住民達は【入らずの森】と呼んでいたらしい。
大々的にエルフの里の場所を教えるのは控えていた。
『本来の森の位置までの土地の安全を確認しました。迷宮化により、擬似的な森が広がっていましたが、それが無くなった形です』
精霊達によって迷宮化した土地は、森としてその面積を増やしていたのだ。それが解けたことで、森が後退したように見える。だが、実際は本来の森の位置まで戻っただけだ。
『これにより、三十年より前で記録が無くなっていました【エクト村】【ソルタ村】【カイナ村】【ウル村】【セトルー村】が発見できました。こちらの村に所縁のある方は、お近くの冒険者ギルドへお知らせください』
そこで、映像が大きくなり、六分割され、コウヤとそれぞれ五つの村の上空からの映像が映された。
人が居なくなって三十年以上経っていた場所だ。廃墟になっているはずが、まるで時を止めていたように建物はそのまま。草木も伸び過ぎるでもなく、まるでつい最近まで人が住んでいたような状態だった。
それを見た人々は、呆然とする。
しかし、その村の元住民達や親から話で聞いていた者たちは違う。彼らは涙を浮かべ、それに見入る。そして、年老いた親を慌てて家に呼びに行く。
「嘘だろ……そのまんまじゃねえか……っ」
「おっ、俺の家っ……っ、母ちゃんっ、母ちゃんっ、見てくれ!」
「父ちゃんアレ! 家だっ……っ」
「っ、本当だ……っ、家だっ、そのままだっ。俺らの家だっ……っ」
訳もわからず、ある日突然森に呑まれた家。彼らは魔獣達に追い立てられるように、その家を捨てて逃げるしかなかったのだ。
近くの町に逃げ込んでも、領主にはほとんど掛け合ってもらえることもなく、泣く泣く移り住むしかなかった。
だが今、あの頃の姿のまま、村が戻って来たのだ。
「っ、帰れるのか……っ、俺はまたあの家に……っ」
「ああ、畑だ……俺の畑だ……っ」
「ちゃんとあるわ……っ、お墓もっ、ようやく、お父さんをお母さんの隣で眠らせてあげられるっ」
いつの間にか、帰ることも諦めてしまっていた。そんな故郷に、帰ることができる。それを実感し、泣き崩れる人々は多かった。
『家も残っているようですので、数日中に安全確認を改めていたします。後日、護衛と馬車を用意しますので、そこで希望される方には一度里帰りを。各村の所属する領地の領主にも、冒険者ギルドから協力を要請し、希望する方々が移住できるように支援させていただきます。詳しくは、お近くの冒険者ギルドにお問合せください』
昨日の内に各地の冒険者ギルドには連絡が行っており、そこから領主と国へ報告もされていた。混乱はないはずだ。
『続きまして、東側の【険しの森】の方の報告に移ります』
獣人族の里の方の迷宮化の討伐には、ルディエをはじめとする特に戦闘能力の高い神官が詰めているため、問題なく進んでいた。
『こちらでも三つの村と一つの町が確認できております』
こうして、多くの人々が故郷を取り戻した。
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