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第十一章
448 釣ってきて
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ニール達は、ワイバーンとの戦い方を急速に理解し、慣れていく。それを確認したコウヤは、残りのワイバーンの数を調べる。
「ん~、うんっ、後二十三匹! けど……隠れてるのが多いな……」
目視で確認できる、渓谷の上を飛ぶのは十数匹。半分ほどだ。
他は、崖に作られる巣に居るのだろう。
「う~ん……」
こうして悩む間にも、渓谷に近付いて行くことで、コウヤ達の存在に気付いて飛んでくるワイバーンを討伐していた。
本来ならば、その遺骸が残るので、少し足を止める必要があったりするが、迷宮の魔獣はその必要がない。
首を刈ったと同時に、残りの体と刈り取られた頭が、ガラスが砕けるようにパリンと崩れ割れ、氷が一気に蒸発するように、跡形もなく消える。
次の瞬間にコロンと転がるのが、ドロップ品。
『香石』のようだ。『香しの石』とも呼ばれる。名の通り、香りを楽しむための石だ。小さく砕いて火を付けると匂いが発生するのだ。それを特別な容器に閉じ込めて使う。
種類によってその香りは特殊な効果を持ち、ただ、リラックスするものから、催淫効果のあるものまで様々だ。
拾いながら、コウヤはついついそれを鑑定して効果の確認をしてしまう。
「うわ~、これ精力強化の効果があるやつだ」
それを聞きつけたニール達が動きを止めた。
「こ、コウヤ様……これは……ただの石か木の実では……」
「ど、どうゆう……」
「……せいりょく……」
立ち止まったことで、ワイバーン達の強襲も止まる。こういう所は機械的にさえ感じるなと、コウヤは呑気に考える。
「ん? 迷宮だもん。ドロップ品がただの石ってことはないよ。まあ、俺も最初は石かなと思ったんだけどね。こんなに毎回出るようなものじゃないし」
ドロップ品としても、一匹討伐につき一つ出るようなものではなかった。
「これは香りの『香しの石』みたい。すっごく高値で売れるよ!」
「「「……」」」
ニール達は、鉱石が出てきたと思っていたようだ。専門家でなければ、どんな鉱物なのか分かるものでもないだろう。このままでは匂いも特にしないので仕方がない。見た目はツルリとした石だ。
「天然の香しの石はねえ、木のコブみたいな所から出てきたり、海で拾えたり……あとはワイバーンやドラゴンの中から出てきたりするんだ」
「……なぜワイバーンの中から……」
「結石だからね」
「……けっせき……」
「そっか、結石が分からないよね。まあ、終わったら説明するよ」
医学的な知識は一般には広がらない。よって、結石というのも、一部の薬師が知っているだけのものだ。
香石の正体も、知られてはいない。だから、冒険者達も当然知らず、香石はたまたま解体に持ち込まれた時に手に入るからどうかということになり、とても希少なものという扱いになっているのだ。
全部の個体が持っているものでもないから余計だろう。
ワイバーンの肉は不味いので、革や牙など、表に出ている部分で取る素材しか使わない。よって、解体しようとする者自体が少ないのだ。
「それよりもほら、かなり数も減ったからさあ、全部こっちに呼んでもいいかな」
調べてみれば、数は十六に減っていた。これくらいならば、慣れてきたニール達とで一気に片付けられそうだ。
ニール達もそう判断した。
「残りを全て一気にということですか?」
「慣れてきましたし、遺体も残りませんから、問題ないかと」
「大丈夫です」
自信もありそうだ。ならばと、コウヤは腰のポーチを開けた。
「【なないろ】出てきて」
《ひよっ》
七つの羽ペンゴーレムが飛び出す。そして、コウヤの上空で円を描いて並び、ひよひよと鳴きながら回転する。
「あの渓谷からワイバーンを釣ってきて」
《ひよっ!》
ひよひよと鳴きながら、【なないろ】は一直線に並んで渓谷へと向かって飛んで行った。
すぐに、渓谷の所で様々な魔法が吹き荒れた。
「「「……」」」
「あっ。何匹か倒しちゃったかも」
「「「……」」」
あの小ささでも、攻撃力は高かったと、コウヤは今更ながらに思い出した。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
「ん~、うんっ、後二十三匹! けど……隠れてるのが多いな……」
目視で確認できる、渓谷の上を飛ぶのは十数匹。半分ほどだ。
他は、崖に作られる巣に居るのだろう。
「う~ん……」
こうして悩む間にも、渓谷に近付いて行くことで、コウヤ達の存在に気付いて飛んでくるワイバーンを討伐していた。
本来ならば、その遺骸が残るので、少し足を止める必要があったりするが、迷宮の魔獣はその必要がない。
首を刈ったと同時に、残りの体と刈り取られた頭が、ガラスが砕けるようにパリンと崩れ割れ、氷が一気に蒸発するように、跡形もなく消える。
次の瞬間にコロンと転がるのが、ドロップ品。
『香石』のようだ。『香しの石』とも呼ばれる。名の通り、香りを楽しむための石だ。小さく砕いて火を付けると匂いが発生するのだ。それを特別な容器に閉じ込めて使う。
種類によってその香りは特殊な効果を持ち、ただ、リラックスするものから、催淫効果のあるものまで様々だ。
拾いながら、コウヤはついついそれを鑑定して効果の確認をしてしまう。
「うわ~、これ精力強化の効果があるやつだ」
それを聞きつけたニール達が動きを止めた。
「こ、コウヤ様……これは……ただの石か木の実では……」
「ど、どうゆう……」
「……せいりょく……」
立ち止まったことで、ワイバーン達の強襲も止まる。こういう所は機械的にさえ感じるなと、コウヤは呑気に考える。
「ん? 迷宮だもん。ドロップ品がただの石ってことはないよ。まあ、俺も最初は石かなと思ったんだけどね。こんなに毎回出るようなものじゃないし」
ドロップ品としても、一匹討伐につき一つ出るようなものではなかった。
「これは香りの『香しの石』みたい。すっごく高値で売れるよ!」
「「「……」」」
ニール達は、鉱石が出てきたと思っていたようだ。専門家でなければ、どんな鉱物なのか分かるものでもないだろう。このままでは匂いも特にしないので仕方がない。見た目はツルリとした石だ。
「天然の香しの石はねえ、木のコブみたいな所から出てきたり、海で拾えたり……あとはワイバーンやドラゴンの中から出てきたりするんだ」
「……なぜワイバーンの中から……」
「結石だからね」
「……けっせき……」
「そっか、結石が分からないよね。まあ、終わったら説明するよ」
医学的な知識は一般には広がらない。よって、結石というのも、一部の薬師が知っているだけのものだ。
香石の正体も、知られてはいない。だから、冒険者達も当然知らず、香石はたまたま解体に持ち込まれた時に手に入るからどうかということになり、とても希少なものという扱いになっているのだ。
全部の個体が持っているものでもないから余計だろう。
ワイバーンの肉は不味いので、革や牙など、表に出ている部分で取る素材しか使わない。よって、解体しようとする者自体が少ないのだ。
「それよりもほら、かなり数も減ったからさあ、全部こっちに呼んでもいいかな」
調べてみれば、数は十六に減っていた。これくらいならば、慣れてきたニール達とで一気に片付けられそうだ。
ニール達もそう判断した。
「残りを全て一気にということですか?」
「慣れてきましたし、遺体も残りませんから、問題ないかと」
「大丈夫です」
自信もありそうだ。ならばと、コウヤは腰のポーチを開けた。
「【なないろ】出てきて」
《ひよっ》
七つの羽ペンゴーレムが飛び出す。そして、コウヤの上空で円を描いて並び、ひよひよと鳴きながら回転する。
「あの渓谷からワイバーンを釣ってきて」
《ひよっ!》
ひよひよと鳴きながら、【なないろ】は一直線に並んで渓谷へと向かって飛んで行った。
すぐに、渓谷の所で様々な魔法が吹き荒れた。
「「「……」」」
「あっ。何匹か倒しちゃったかも」
「「「……」」」
あの小ささでも、攻撃力は高かったと、コウヤは今更ながらに思い出した。
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読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
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