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第十一章
447 すごいことするな〜
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ワイバーンは、軽く目視しただけでも二十体ほど飛んでいる。
それを確認しながら、コウヤ達は走る。
「迷宮でよかったよね。野生のだったら、小さい魔獣とかもこうやって走ってる間にも出てくるはずだよ」
「そういえば……他の魔獣がいませんね……」
ニールが注意深く見回して、口にする。
「さすがに、そこまで用意できないんだろうね。いくら精霊達が本物に忠実に作るって言っても、迷宮内の魔獣や魔物で戦ったりしないから、餌は必要ないんだ」
迷宮の魔獣や魔物は、作り物だから、当然食事をしない。しているように見せているが、それは見せかけだけ。草を食む姿は見せても、本当に食べているわけではない。
「だから本来、あれだけワイバーンやドラゴンがいるなら存在するはずの餌になる魔獣や獣もここには存在しない。そこが、迷宮の魔獣と野生との一番の違いかな」
作り物である証拠だ。
「ワイバーンの住む渓谷とか、あの景色を切り取っただけ。排泄もしないから、近付いても臭くないしね」
「……臭いんですか? ほんとうは……」
ビジェの問いかけに、コウヤは笑いながら答える。
「うん。息も臭いし、すごい臭いするよ。ドラゴンのは薬にも使えるんだけど、ワイバーンはね……肥料にも使えないんだ。ああした渓谷に住んでるのは正解だよ」
ワイバーンも、巣を汚すのは嫌らしく、渓谷の下に食べたものの残りなどを捨てる。
「何年かに一度、ガスが発生して燃えるから、溜まりっぱなしにはならないんだけどね。あ……そうだ。それで、可燃素材として使えないかって研究をしてた人たちがいたな……」
人は逞しいと、誇らしく思ったものだ。
「というわけで、臭いが気にならない分、戦いやすいよっ」
「「「なるほど……」」」
三人は、虚な目をしながらも頷いた。コウヤの話し振りからは、軽く倒せるものという印象を受ける。
そして、同じように実際にワイバーンが巣を作る渓谷が世界のどこかになるのだなと理解し、出会いたくないものだと切に願った。
「あっ、このくらいからが射程だよ。向こうが気付くから気を付けて」
そうコウヤが忠告してすぐ、ワイバーンの数体がこちらを向いた。
「来た。横に広がってっ。間隔を空けて一体ずつ相手するよ」
「っ、コウヤ様はっ……承知しました」
「うん。先ずは動きをよく観察してね」
「「「はっ!」」」
コウヤを守らなければと考えていた三人だが、それは必要ないのだと無理やり納得し、ワイバーンに向き合った。
ニールもブランナも、降下してくるタイミングを見て斬りかかる。激昂して噛みつこうとしてくる所を見逃さず、下がってきた首を切り取った。
二人もすごいが、ビジェは素早かった。
ビジェは小太刀のような武器を使った。二刀流というやつだ。これが一番合うらしい。身軽に降下してきたワイバーンの足に取り付くと、そのままスルスルっと体を登り、空中で上から首を刈り取っていた。
ビジェは、冒険者としての訓練も受けたことで、身体強化など、しっかり習得していたのだ。お陰でできるようになった動きだった。
もちろん、ビジェの素質もあるだろうが、見事なものだった。更には、首を刈り取ったワイバーンを足場にして、次に近付いてきたワイバーンに飛び乗っていく。とても身軽だった。
「すごいことするな~」
コウヤは感心しながらも、向かって来たワイバーンの羽を風の魔法で切り取り、落としてから確実に首を刈っていた。
「問題なさそうだね。なら……」
渓谷が近付くと足場も悪い。よって、全てのワイバーンをこちらへ呼び込む必要がありそうだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
それを確認しながら、コウヤ達は走る。
「迷宮でよかったよね。野生のだったら、小さい魔獣とかもこうやって走ってる間にも出てくるはずだよ」
「そういえば……他の魔獣がいませんね……」
ニールが注意深く見回して、口にする。
「さすがに、そこまで用意できないんだろうね。いくら精霊達が本物に忠実に作るって言っても、迷宮内の魔獣や魔物で戦ったりしないから、餌は必要ないんだ」
迷宮の魔獣や魔物は、作り物だから、当然食事をしない。しているように見せているが、それは見せかけだけ。草を食む姿は見せても、本当に食べているわけではない。
「だから本来、あれだけワイバーンやドラゴンがいるなら存在するはずの餌になる魔獣や獣もここには存在しない。そこが、迷宮の魔獣と野生との一番の違いかな」
作り物である証拠だ。
「ワイバーンの住む渓谷とか、あの景色を切り取っただけ。排泄もしないから、近付いても臭くないしね」
「……臭いんですか? ほんとうは……」
ビジェの問いかけに、コウヤは笑いながら答える。
「うん。息も臭いし、すごい臭いするよ。ドラゴンのは薬にも使えるんだけど、ワイバーンはね……肥料にも使えないんだ。ああした渓谷に住んでるのは正解だよ」
ワイバーンも、巣を汚すのは嫌らしく、渓谷の下に食べたものの残りなどを捨てる。
「何年かに一度、ガスが発生して燃えるから、溜まりっぱなしにはならないんだけどね。あ……そうだ。それで、可燃素材として使えないかって研究をしてた人たちがいたな……」
人は逞しいと、誇らしく思ったものだ。
「というわけで、臭いが気にならない分、戦いやすいよっ」
「「「なるほど……」」」
三人は、虚な目をしながらも頷いた。コウヤの話し振りからは、軽く倒せるものという印象を受ける。
そして、同じように実際にワイバーンが巣を作る渓谷が世界のどこかになるのだなと理解し、出会いたくないものだと切に願った。
「あっ、このくらいからが射程だよ。向こうが気付くから気を付けて」
そうコウヤが忠告してすぐ、ワイバーンの数体がこちらを向いた。
「来た。横に広がってっ。間隔を空けて一体ずつ相手するよ」
「っ、コウヤ様はっ……承知しました」
「うん。先ずは動きをよく観察してね」
「「「はっ!」」」
コウヤを守らなければと考えていた三人だが、それは必要ないのだと無理やり納得し、ワイバーンに向き合った。
ニールもブランナも、降下してくるタイミングを見て斬りかかる。激昂して噛みつこうとしてくる所を見逃さず、下がってきた首を切り取った。
二人もすごいが、ビジェは素早かった。
ビジェは小太刀のような武器を使った。二刀流というやつだ。これが一番合うらしい。身軽に降下してきたワイバーンの足に取り付くと、そのままスルスルっと体を登り、空中で上から首を刈り取っていた。
ビジェは、冒険者としての訓練も受けたことで、身体強化など、しっかり習得していたのだ。お陰でできるようになった動きだった。
もちろん、ビジェの素質もあるだろうが、見事なものだった。更には、首を刈り取ったワイバーンを足場にして、次に近付いてきたワイバーンに飛び乗っていく。とても身軽だった。
「すごいことするな~」
コウヤは感心しながらも、向かって来たワイバーンの羽を風の魔法で切り取り、落としてから確実に首を刈っていた。
「問題なさそうだね。なら……」
渓谷が近付くと足場も悪い。よって、全てのワイバーンをこちらへ呼び込む必要がありそうだ。
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