342 / 471
第十一章
447 すごいことするな〜
しおりを挟む
ワイバーンは、軽く目視しただけでも二十体ほど飛んでいる。
それを確認しながら、コウヤ達は走る。
「迷宮でよかったよね。野生のだったら、小さい魔獣とかもこうやって走ってる間にも出てくるはずだよ」
「そういえば……他の魔獣がいませんね……」
ニールが注意深く見回して、口にする。
「さすがに、そこまで用意できないんだろうね。いくら精霊達が本物に忠実に作るって言っても、迷宮内の魔獣や魔物で戦ったりしないから、餌は必要ないんだ」
迷宮の魔獣や魔物は、作り物だから、当然食事をしない。しているように見せているが、それは見せかけだけ。草を食む姿は見せても、本当に食べているわけではない。
「だから本来、あれだけワイバーンやドラゴンがいるなら存在するはずの餌になる魔獣や獣もここには存在しない。そこが、迷宮の魔獣と野生との一番の違いかな」
作り物である証拠だ。
「ワイバーンの住む渓谷とか、あの景色を切り取っただけ。排泄もしないから、近付いても臭くないしね」
「……臭いんですか? ほんとうは……」
ビジェの問いかけに、コウヤは笑いながら答える。
「うん。息も臭いし、すごい臭いするよ。ドラゴンのは薬にも使えるんだけど、ワイバーンはね……肥料にも使えないんだ。ああした渓谷に住んでるのは正解だよ」
ワイバーンも、巣を汚すのは嫌らしく、渓谷の下に食べたものの残りなどを捨てる。
「何年かに一度、ガスが発生して燃えるから、溜まりっぱなしにはならないんだけどね。あ……そうだ。それで、可燃素材として使えないかって研究をしてた人たちがいたな……」
人は逞しいと、誇らしく思ったものだ。
「というわけで、臭いが気にならない分、戦いやすいよっ」
「「「なるほど……」」」
三人は、虚な目をしながらも頷いた。コウヤの話し振りからは、軽く倒せるものという印象を受ける。
そして、同じように実際にワイバーンが巣を作る渓谷が世界のどこかになるのだなと理解し、出会いたくないものだと切に願った。
「あっ、このくらいからが射程だよ。向こうが気付くから気を付けて」
そうコウヤが忠告してすぐ、ワイバーンの数体がこちらを向いた。
「来た。横に広がってっ。間隔を空けて一体ずつ相手するよ」
「っ、コウヤ様はっ……承知しました」
「うん。先ずは動きをよく観察してね」
「「「はっ!」」」
コウヤを守らなければと考えていた三人だが、それは必要ないのだと無理やり納得し、ワイバーンに向き合った。
ニールもブランナも、降下してくるタイミングを見て斬りかかる。激昂して噛みつこうとしてくる所を見逃さず、下がってきた首を切り取った。
二人もすごいが、ビジェは素早かった。
ビジェは小太刀のような武器を使った。二刀流というやつだ。これが一番合うらしい。身軽に降下してきたワイバーンの足に取り付くと、そのままスルスルっと体を登り、空中で上から首を刈り取っていた。
ビジェは、冒険者としての訓練も受けたことで、身体強化など、しっかり習得していたのだ。お陰でできるようになった動きだった。
もちろん、ビジェの素質もあるだろうが、見事なものだった。更には、首を刈り取ったワイバーンを足場にして、次に近付いてきたワイバーンに飛び乗っていく。とても身軽だった。
「すごいことするな~」
コウヤは感心しながらも、向かって来たワイバーンの羽を風の魔法で切り取り、落としてから確実に首を刈っていた。
「問題なさそうだね。なら……」
渓谷が近付くと足場も悪い。よって、全てのワイバーンをこちらへ呼び込む必要がありそうだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
それを確認しながら、コウヤ達は走る。
「迷宮でよかったよね。野生のだったら、小さい魔獣とかもこうやって走ってる間にも出てくるはずだよ」
「そういえば……他の魔獣がいませんね……」
ニールが注意深く見回して、口にする。
「さすがに、そこまで用意できないんだろうね。いくら精霊達が本物に忠実に作るって言っても、迷宮内の魔獣や魔物で戦ったりしないから、餌は必要ないんだ」
迷宮の魔獣や魔物は、作り物だから、当然食事をしない。しているように見せているが、それは見せかけだけ。草を食む姿は見せても、本当に食べているわけではない。
「だから本来、あれだけワイバーンやドラゴンがいるなら存在するはずの餌になる魔獣や獣もここには存在しない。そこが、迷宮の魔獣と野生との一番の違いかな」
作り物である証拠だ。
「ワイバーンの住む渓谷とか、あの景色を切り取っただけ。排泄もしないから、近付いても臭くないしね」
「……臭いんですか? ほんとうは……」
ビジェの問いかけに、コウヤは笑いながら答える。
「うん。息も臭いし、すごい臭いするよ。ドラゴンのは薬にも使えるんだけど、ワイバーンはね……肥料にも使えないんだ。ああした渓谷に住んでるのは正解だよ」
ワイバーンも、巣を汚すのは嫌らしく、渓谷の下に食べたものの残りなどを捨てる。
「何年かに一度、ガスが発生して燃えるから、溜まりっぱなしにはならないんだけどね。あ……そうだ。それで、可燃素材として使えないかって研究をしてた人たちがいたな……」
人は逞しいと、誇らしく思ったものだ。
「というわけで、臭いが気にならない分、戦いやすいよっ」
「「「なるほど……」」」
三人は、虚な目をしながらも頷いた。コウヤの話し振りからは、軽く倒せるものという印象を受ける。
そして、同じように実際にワイバーンが巣を作る渓谷が世界のどこかになるのだなと理解し、出会いたくないものだと切に願った。
「あっ、このくらいからが射程だよ。向こうが気付くから気を付けて」
そうコウヤが忠告してすぐ、ワイバーンの数体がこちらを向いた。
「来た。横に広がってっ。間隔を空けて一体ずつ相手するよ」
「っ、コウヤ様はっ……承知しました」
「うん。先ずは動きをよく観察してね」
「「「はっ!」」」
コウヤを守らなければと考えていた三人だが、それは必要ないのだと無理やり納得し、ワイバーンに向き合った。
ニールもブランナも、降下してくるタイミングを見て斬りかかる。激昂して噛みつこうとしてくる所を見逃さず、下がってきた首を切り取った。
二人もすごいが、ビジェは素早かった。
ビジェは小太刀のような武器を使った。二刀流というやつだ。これが一番合うらしい。身軽に降下してきたワイバーンの足に取り付くと、そのままスルスルっと体を登り、空中で上から首を刈り取っていた。
ビジェは、冒険者としての訓練も受けたことで、身体強化など、しっかり習得していたのだ。お陰でできるようになった動きだった。
もちろん、ビジェの素質もあるだろうが、見事なものだった。更には、首を刈り取ったワイバーンを足場にして、次に近付いてきたワイバーンに飛び乗っていく。とても身軽だった。
「すごいことするな~」
コウヤは感心しながらも、向かって来たワイバーンの羽を風の魔法で切り取り、落としてから確実に首を刈っていた。
「問題なさそうだね。なら……」
渓谷が近付くと足場も悪い。よって、全てのワイバーンをこちらへ呼び込む必要がありそうだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
198
お気に入りに追加
11,093
あなたにおすすめの小説
シルバーヒーローズ!〜異世界でも現世でもまだまだ現役で大暴れします!〜
紫南
ファンタジー
◇◇◇異世界冒険、ギルド職員から人生相談までなんでもござれ!◇◇◇
『ふぁんたじーってやつか?』
定年し、仕事を退職してから十年と少し。
宗徳(むねのり)は妻、寿子(ひさこ)の提案でシルバー派遣の仕事をすると決めた。
しかし、その内容は怪しいものだった。
『かつての経験を生かし、異世界を救う仕事です!』
そんな胡散臭いチラシを見せられ、半信半疑で面接に向かう。
ファンタジーも知らない熟年夫婦が異世界で活躍!?
ーー勇者じゃないけど、もしかして最強!?
シルバー舐めんなよ!!
元気な老夫婦の異世界お仕事ファンタジー開幕!!
公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。
夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、
自分の姿をガラスに写しながら静かに
父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。
リリアーヌ・プルメリア。
雪のように白くきめ細かい肌に
紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、
ペリドットのような美しい瞳を持つ
公爵家の長女である。
この物語は
望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と
長女による生死をかけた大逆転劇である。
━━━━━━━━━━━━━━━
⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。
⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。