341 / 475
第十一章
446 どっちから行く?
しおりを挟む
土地の回復を確認したコウヤは、ニール達に提案していた通り、昼食を終えてから一つのフィールドに向かった。
「ピクニックにも良い景色だね~。うん。絶景!」
コウヤは満足げにその景色を見回した。
「……滝がありますね……」
「……渓谷ですか……」
「モリ……どこ……?」
フィールドに入った途端、目の前にあった鬱蒼とした森が消えたのだ。
コウヤ達は丘の上で滝と大きな渓谷を見下ろしていた。広大なフィールドであることが分かる。
「コウヤ様……私の目がおかしいのでしょうか……あの飛んでいるのはまさか……」
ニールが唖然としながら、目を逸らせずにいるもの。遠くに見える滝の上や渓谷の上に、鳥のようなものが沢山飛んでいる。
「……ワイバーン……」
「……ドラゴン……?」
ブランナとビジェが瞬きを忘れて呟く。これに、コウヤはニコニコと笑いながら答える。
「両方だね。どっちから行く?」
「「「……」」」
滝の上で飛んでいるのがドラゴン。渓谷の上に飛んでいるのがワイバーンだった。
「小さい方からが良いかな?」
「……コウヤ様……ここは、どの程度の迷宮なのでしょうか……ワイバーンはともかく、ドラゴンがあんなに……聞いたことがないのですが……」
ドラゴンが迷宮に居たとしても、最下層のボスとして一体が普通だ。二体以上出現したことはなかった。
ニールは、迷宮化の話を聞いてから、あらゆる迷宮の情報を一度は目を通していた。それが、コウヤを補佐する者として知っているべきことだと考えたからだ。
しかし、そんな中でもドラゴンの存在はほとんど例がなかった。野生のドラゴンはいると信じられているが、それを実際に見たという情報もここ数百年聞かない。
「あ~、うん。最高レベルかな。でも、アレ、あの大きさだとまだ小型なんだよ。まだこの奥のフィールドには、大型が出てくる所もあってね。まあ、数はこっちの方が断然多いんだけどっ」
大型のボス並みのドラゴンが五体ほどいるフィールドもこの先にはある。十分に冒険者達が今の勢いで戦闘経験を積んでいけば、何とかなるだろうとコウヤやタリス達は予想していた。
「……我々が来なければ、ここをテンキ様達と……攻略されるつもりだったのですか……」
そうコウヤが言っていたなとブランナは思い出し、どうするつもりだったのかと問いかける。
「うん。テンキはドラゴンになれるし、パックンはアレで、昔もドラゴン丸呑み……丸々収納して倒したりしてたから。落とせれば、ダンゴも埋めて倒したりできるからね」
「……なるほど……」
「「……」」
テンキだけが強いと思われがちだが、パックンもダンゴも意外と戦えるのだ。
パックンは魔法の球を使って飛び上がり、空中で向かって来るドラゴンをそのままパックンしていた。素材に傷も付かず、最良の捕獲方法だと誇っていたのは昔の話だ。
一方、ダンゴは土地や植物に干渉して戦うことが出来た。降りて来たドラゴンは足を埋めて周囲の木や草のツルを首に巻き付けて地面に這いつくばらせる。そして、落ちて来たドラゴンも同様に頭だけ土に埋めて生き埋めにしていた。
「大丈夫だよ。ドラゴンもワイバーンも、落としちゃえば、首を落とすだけだから」
「そ、そうなのですね……わかりました」
納得するしかない。そこまでの過程が大変そうだが、やるしかないのだ。
「ワイバーンもドラゴンも同じ倒し方でいけるから、先ずワイバーンの方にしようか。短距離での加速度と小回りはワイバーンの方が上だから、そこは気を付けてね」
急に方向転換をするなど、ワイバーンは素早く動くので、中々攻撃を当てるのが難しい。
「物理的にも魔法でも、意外とワイバーンは弱いんだ。変則的に飛ぶけど、逃げる方向とか癖とか見極められれば簡単だよ。あっちは魔法攻撃してこないから」
「魔獣なのにですか?」
魔法攻撃をして来ない魔獣はそれなりにいる。身体強化などに使っているのだ。
「うん。飛ぶことに全部力を使ってるから、向こうからの攻撃は、噛みつきと……足でこっちを捕らえようとしてくるくらいかな。ねっ、なんとかなりそうでしょ?」
「それなら……」
「ええ。問題なさそうです」
「いけます」
三人ともが頷いた。
「なら、先ずはワイバーン退治ね!」
「「「はい!」」」
因みに、バルーンは飛んでいない。岩の間にあった。まるで、大きなタマゴがそこにハマっているように見える。確認しづらいが、見えなくはなかった。
「じゃあ、行くよっ」
「「「はっ!」」」
駆け出したコウヤについて、三人も走る。フィールド攻略が始まった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
「ピクニックにも良い景色だね~。うん。絶景!」
コウヤは満足げにその景色を見回した。
「……滝がありますね……」
「……渓谷ですか……」
「モリ……どこ……?」
フィールドに入った途端、目の前にあった鬱蒼とした森が消えたのだ。
コウヤ達は丘の上で滝と大きな渓谷を見下ろしていた。広大なフィールドであることが分かる。
「コウヤ様……私の目がおかしいのでしょうか……あの飛んでいるのはまさか……」
ニールが唖然としながら、目を逸らせずにいるもの。遠くに見える滝の上や渓谷の上に、鳥のようなものが沢山飛んでいる。
「……ワイバーン……」
「……ドラゴン……?」
ブランナとビジェが瞬きを忘れて呟く。これに、コウヤはニコニコと笑いながら答える。
「両方だね。どっちから行く?」
「「「……」」」
滝の上で飛んでいるのがドラゴン。渓谷の上に飛んでいるのがワイバーンだった。
「小さい方からが良いかな?」
「……コウヤ様……ここは、どの程度の迷宮なのでしょうか……ワイバーンはともかく、ドラゴンがあんなに……聞いたことがないのですが……」
ドラゴンが迷宮に居たとしても、最下層のボスとして一体が普通だ。二体以上出現したことはなかった。
ニールは、迷宮化の話を聞いてから、あらゆる迷宮の情報を一度は目を通していた。それが、コウヤを補佐する者として知っているべきことだと考えたからだ。
しかし、そんな中でもドラゴンの存在はほとんど例がなかった。野生のドラゴンはいると信じられているが、それを実際に見たという情報もここ数百年聞かない。
「あ~、うん。最高レベルかな。でも、アレ、あの大きさだとまだ小型なんだよ。まだこの奥のフィールドには、大型が出てくる所もあってね。まあ、数はこっちの方が断然多いんだけどっ」
大型のボス並みのドラゴンが五体ほどいるフィールドもこの先にはある。十分に冒険者達が今の勢いで戦闘経験を積んでいけば、何とかなるだろうとコウヤやタリス達は予想していた。
「……我々が来なければ、ここをテンキ様達と……攻略されるつもりだったのですか……」
そうコウヤが言っていたなとブランナは思い出し、どうするつもりだったのかと問いかける。
「うん。テンキはドラゴンになれるし、パックンはアレで、昔もドラゴン丸呑み……丸々収納して倒したりしてたから。落とせれば、ダンゴも埋めて倒したりできるからね」
「……なるほど……」
「「……」」
テンキだけが強いと思われがちだが、パックンもダンゴも意外と戦えるのだ。
パックンは魔法の球を使って飛び上がり、空中で向かって来るドラゴンをそのままパックンしていた。素材に傷も付かず、最良の捕獲方法だと誇っていたのは昔の話だ。
一方、ダンゴは土地や植物に干渉して戦うことが出来た。降りて来たドラゴンは足を埋めて周囲の木や草のツルを首に巻き付けて地面に這いつくばらせる。そして、落ちて来たドラゴンも同様に頭だけ土に埋めて生き埋めにしていた。
「大丈夫だよ。ドラゴンもワイバーンも、落としちゃえば、首を落とすだけだから」
「そ、そうなのですね……わかりました」
納得するしかない。そこまでの過程が大変そうだが、やるしかないのだ。
「ワイバーンもドラゴンも同じ倒し方でいけるから、先ずワイバーンの方にしようか。短距離での加速度と小回りはワイバーンの方が上だから、そこは気を付けてね」
急に方向転換をするなど、ワイバーンは素早く動くので、中々攻撃を当てるのが難しい。
「物理的にも魔法でも、意外とワイバーンは弱いんだ。変則的に飛ぶけど、逃げる方向とか癖とか見極められれば簡単だよ。あっちは魔法攻撃してこないから」
「魔獣なのにですか?」
魔法攻撃をして来ない魔獣はそれなりにいる。身体強化などに使っているのだ。
「うん。飛ぶことに全部力を使ってるから、向こうからの攻撃は、噛みつきと……足でこっちを捕らえようとしてくるくらいかな。ねっ、なんとかなりそうでしょ?」
「それなら……」
「ええ。問題なさそうです」
「いけます」
三人ともが頷いた。
「なら、先ずはワイバーン退治ね!」
「「「はい!」」」
因みに、バルーンは飛んでいない。岩の間にあった。まるで、大きなタマゴがそこにハマっているように見える。確認しづらいが、見えなくはなかった。
「じゃあ、行くよっ」
「「「はっ!」」」
駆け出したコウヤについて、三人も走る。フィールド攻略が始まった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
225
お気に入りに追加
11,119
あなたにおすすめの小説


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。