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第十一章
441 プライド高いわね
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レベルが初期化された五人のエルフ達にとって、この場に出てくる魔獣や魔物は明らかにレベル差があり過ぎる。
それでも、何とか倒せているのは、優秀な師匠達のお陰だ。
「ほれっ、もっと体全体を使えと言っておるだろう!」
「固い! それでは剣が傷むだけだ!」
「腰が入っとらんぞ~」
「次はコイツじゃ。狙うのはココだで? ええか? ええよな? これっ、そこじゃねえてっ」
「……足を動かせ、半歩足りん」
コウヤ達からすれば、的確な指示に聞こえる。だが、当然彼らはお陰なんて思ってはいない。
「っ、くっ、くそっ」
「ひっ、手、手がっ」
「ううっ」
「っ、こ、ここっ、ここ!?」
「は、半歩っ、半歩なんて分からなっ……っ」
泣き言しか聞こえなかった。
「アレ大丈夫?」
「まあ、あんなでも倒せとるでなあ」
それぞれの師匠達が付きっきりで、危なくなったら上手く手を貸しているようだ。
ミラルファも苦笑しながら頬に手を添えて困った顔をする。
「最初のうちは、歩き方も変で、ちょっと手伝ってあげようと思ったんだけど……」
彼ら魔力量の多いエルフ族は、子どもの頃から本能的に魔力が過剰にならないよう、身体強化をして魔力を少しずつ日常的に消費し生きてきた。そうすることで、また魔力も伸びていく。
よって、大人になったエルフほど、息をするように身体強化を常にしていたのだ。それがリセットされたことで、出来なくなった。最初は歩くのも苦労したはずだ。今も、唐突にガクッと足の力が抜けたりしている所を見ると、体全体に身体強化を上手くかけられていないのだろう。
「見てて危なっかしいものだから、手伝ってあげたんだけど、そうすると、あの子たち睨むのよ~。だから、他の冒険者の子達も手伝わなくなったわ」
「あ~……」
ミラルファ達は、彼らの事情を知らなかった。だから、最初から涙目で、師匠達に突かれながら進む彼らに同情し、手伝おうとしたらしい。あくまで、後方支援としてだが、それをやった後、物凄く睨まれたのだと言う。
「あの目はアレよ~。貴族の無駄にプライド高いやつが、嫉妬と逆恨み? する感じの目だったわ。久し振りに見たから、ちょっと新鮮な気持ちになったけど」
「ミラお祖母様にそんな目を向ける人、居ませんもんね」
「そうなのよっ。結婚する前までは、そういう気概のある令嬢もいたんだけどね~」
王妃であるミラルファには、そんな目は向けられなくなったのだろう。
「けど、だから分かるわ。あの子たち、とってもプライド高いわね」
「何を誇っておるかも本人も分かっとらんだろうになあ」
「あっ、それ分かりますわ。家柄? 血筋? ってかあんた何も個人で誇れることないんじゃない? って子ほど、ああした目をするんですよ~」
自分の功績でもないのに、家の地位や名誉を無駄に誇って天狗になるのは、貴族の子息子女に多いものだ。
「エルフってことに誇りを持ってるみたいでしたから」
「種族としての優位性を誇っとったんだろうねえ。なのに、今は人族の……それも成人以下の身体能力しかないのではないかい? それも自覚というか、認めてなさそうだけどねえ」
自覚していたら、もう少し謙虚になるだろうか。故意に認めようとしない、目を背けている感じがする。
「うん。そろそろ認識を改めないと危ないよね?」
《主様がわざわざ説明されたというのに、認められないとは……愚かにもほどがあります……》
きちんとコウヤは彼らに反省してもらうためにも説明したはずだ。それを認識したなら、もっと真面目に、師匠達に従うだろう。
「あと何日かしたら変わるかな?」
《無理では?》
「無理やね」
「無理だと思うわよ?」
「……」
今の態度からは、全く改善される兆しは見えなかった。
アレはもう処置なしと、ベニが話題を変える。
「そういえば、テンキのその姿は、えらくカッコいいでないの。大きさも少し大きいなあ」
《ありがとうございます。これが最終形態の九尾です。雷撃と重力操作が得意です》
「ほお。せっかくだから見せてくれるかい?」
《よろしいですか、主様》
「うん。あっちから虫系の魔物が団体で来そうだしね」
《承知しました》
ガガンボのような大人の手のひらサイズの虫の魔物だ。ただ、トンボに似た羽根が赤や黄色、黄緑といった葉っぱに擬態しやすい色をしている。
「本来なら羽根が素材になるから、結構倒すの大変だけど、迷宮の魔物だから問題ないね」
加減しなくていいのは助かる。
《それならば全て仕留めます》
テンキが九本の尻尾を広げると、青い稲妻が走った。
バチバチバチッ!!
これで一気に全滅し、パラパラと羽根がドロップする。本来ならば慎重に破れないように集めなくてはならないそれも、テンキが重力を使って浮き上がらせ、こちらに引き寄せる。
《ついでに、回収しきれていないドロップ品も回収いたしましょうか》
「そうだね」
コウヤがドロップ品回収用に支給されている袋を広げて地面に置くと、そこに次々にドロップ品が吸い込まれていく。
この袋はマジックバッグなので、中に入れたもの同士が触れ合うことなく保管されるので、壊れる心配もない。
「いやはや……これはまた……コウヤが無茶しやすくなるねえ」
「便利って言ったらいけないんでしょうけど……これはとっても……ステキな能力ね……」
電撃の威力にも驚いたようだが、何よりも重力操作の方にベニとミラルファは利用価値を見出した。中々ない能力なので余計だ。重力と聞いても理解出来なかったが、今ので理解したようだ。
そして、先程の音を聞いていたエルフたちが振り向く。他の戦闘の音は気にしていなかったのに、これに反応するというのは、心に刻まれた恐怖心からだろうか。
「あっ、こっちに気付いた」
《音に反応するとは……あの仕置きも無駄ではなかったようですね》
「痛そうだったからね~」
コウヤとテンキの存在に気付いたエルフたちは、ガクガクと震えていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
それでも、何とか倒せているのは、優秀な師匠達のお陰だ。
「ほれっ、もっと体全体を使えと言っておるだろう!」
「固い! それでは剣が傷むだけだ!」
「腰が入っとらんぞ~」
「次はコイツじゃ。狙うのはココだで? ええか? ええよな? これっ、そこじゃねえてっ」
「……足を動かせ、半歩足りん」
コウヤ達からすれば、的確な指示に聞こえる。だが、当然彼らはお陰なんて思ってはいない。
「っ、くっ、くそっ」
「ひっ、手、手がっ」
「ううっ」
「っ、こ、ここっ、ここ!?」
「は、半歩っ、半歩なんて分からなっ……っ」
泣き言しか聞こえなかった。
「アレ大丈夫?」
「まあ、あんなでも倒せとるでなあ」
それぞれの師匠達が付きっきりで、危なくなったら上手く手を貸しているようだ。
ミラルファも苦笑しながら頬に手を添えて困った顔をする。
「最初のうちは、歩き方も変で、ちょっと手伝ってあげようと思ったんだけど……」
彼ら魔力量の多いエルフ族は、子どもの頃から本能的に魔力が過剰にならないよう、身体強化をして魔力を少しずつ日常的に消費し生きてきた。そうすることで、また魔力も伸びていく。
よって、大人になったエルフほど、息をするように身体強化を常にしていたのだ。それがリセットされたことで、出来なくなった。最初は歩くのも苦労したはずだ。今も、唐突にガクッと足の力が抜けたりしている所を見ると、体全体に身体強化を上手くかけられていないのだろう。
「見てて危なっかしいものだから、手伝ってあげたんだけど、そうすると、あの子たち睨むのよ~。だから、他の冒険者の子達も手伝わなくなったわ」
「あ~……」
ミラルファ達は、彼らの事情を知らなかった。だから、最初から涙目で、師匠達に突かれながら進む彼らに同情し、手伝おうとしたらしい。あくまで、後方支援としてだが、それをやった後、物凄く睨まれたのだと言う。
「あの目はアレよ~。貴族の無駄にプライド高いやつが、嫉妬と逆恨み? する感じの目だったわ。久し振りに見たから、ちょっと新鮮な気持ちになったけど」
「ミラお祖母様にそんな目を向ける人、居ませんもんね」
「そうなのよっ。結婚する前までは、そういう気概のある令嬢もいたんだけどね~」
王妃であるミラルファには、そんな目は向けられなくなったのだろう。
「けど、だから分かるわ。あの子たち、とってもプライド高いわね」
「何を誇っておるかも本人も分かっとらんだろうになあ」
「あっ、それ分かりますわ。家柄? 血筋? ってかあんた何も個人で誇れることないんじゃない? って子ほど、ああした目をするんですよ~」
自分の功績でもないのに、家の地位や名誉を無駄に誇って天狗になるのは、貴族の子息子女に多いものだ。
「エルフってことに誇りを持ってるみたいでしたから」
「種族としての優位性を誇っとったんだろうねえ。なのに、今は人族の……それも成人以下の身体能力しかないのではないかい? それも自覚というか、認めてなさそうだけどねえ」
自覚していたら、もう少し謙虚になるだろうか。故意に認めようとしない、目を背けている感じがする。
「うん。そろそろ認識を改めないと危ないよね?」
《主様がわざわざ説明されたというのに、認められないとは……愚かにもほどがあります……》
きちんとコウヤは彼らに反省してもらうためにも説明したはずだ。それを認識したなら、もっと真面目に、師匠達に従うだろう。
「あと何日かしたら変わるかな?」
《無理では?》
「無理やね」
「無理だと思うわよ?」
「……」
今の態度からは、全く改善される兆しは見えなかった。
アレはもう処置なしと、ベニが話題を変える。
「そういえば、テンキのその姿は、えらくカッコいいでないの。大きさも少し大きいなあ」
《ありがとうございます。これが最終形態の九尾です。雷撃と重力操作が得意です》
「ほお。せっかくだから見せてくれるかい?」
《よろしいですか、主様》
「うん。あっちから虫系の魔物が団体で来そうだしね」
《承知しました》
ガガンボのような大人の手のひらサイズの虫の魔物だ。ただ、トンボに似た羽根が赤や黄色、黄緑といった葉っぱに擬態しやすい色をしている。
「本来なら羽根が素材になるから、結構倒すの大変だけど、迷宮の魔物だから問題ないね」
加減しなくていいのは助かる。
《それならば全て仕留めます》
テンキが九本の尻尾を広げると、青い稲妻が走った。
バチバチバチッ!!
これで一気に全滅し、パラパラと羽根がドロップする。本来ならば慎重に破れないように集めなくてはならないそれも、テンキが重力を使って浮き上がらせ、こちらに引き寄せる。
《ついでに、回収しきれていないドロップ品も回収いたしましょうか》
「そうだね」
コウヤがドロップ品回収用に支給されている袋を広げて地面に置くと、そこに次々にドロップ品が吸い込まれていく。
この袋はマジックバッグなので、中に入れたもの同士が触れ合うことなく保管されるので、壊れる心配もない。
「いやはや……これはまた……コウヤが無茶しやすくなるねえ」
「便利って言ったらいけないんでしょうけど……これはとっても……ステキな能力ね……」
電撃の威力にも驚いたようだが、何よりも重力操作の方にベニとミラルファは利用価値を見出した。中々ない能力なので余計だ。重力と聞いても理解出来なかったが、今ので理解したようだ。
そして、先程の音を聞いていたエルフたちが振り向く。他の戦闘の音は気にしていなかったのに、これに反応するというのは、心に刻まれた恐怖心からだろうか。
「あっ、こっちに気付いた」
《音に反応するとは……あの仕置きも無駄ではなかったようですね》
「痛そうだったからね~」
コウヤとテンキの存在に気付いたエルフたちは、ガクガクと震えていた。
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