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第十一章
429 ……素敵だね?
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エリスリリアと顔を合わせてから、コウヤはまず、ナチに聞いた外れ者たちが住むという手前のエルフの里の前に降り立った。
ここへ行くと聞いたテンキが、コウヤの護衛としてついて来ている。
因みに、パックンはタリスと一緒にフィールドで楽しそうに戦利品を回収しながら戦っており、ダンゴは後方支援としてギルド職員と共に野営地に居る。ダンゴは精霊だ。迷宮化した土地に入れば、おかしな影響が出ないとも限らない。よって、フィールドに近付かないようにしてもらっているのだ。
「テンキ、久しぶりに大暴れしたみたいだね」
テンキは、コウヤと合流する前、アルキスと一緒にかなり暴れてきたようだ。テンキだけで割り振られたフィールドの四分の二、半分の魔獣を消してきたらしい。
《アルと討伐数を勝負しておりまして》
「あ、じゃあ……」
《大丈夫です。勝負はもうつきました。なので、次の勝負は明日です!》
「そっか」
日に一つか二つのフィールドをグループごとで潰していく。アルキスの所のグループは、午後にもう一つフィールドを潰す予定だが、それにはテンキは参加しないと伝えてきたようだ。
「テンキは、アルキス様と仲良いよね~」
《っ、べ、別にそこまで仲が良いとはっ……っ》
「すごく楽しそうだったよ?」
《っ、楽しくはっ……あります……っ》
テンキにとって、アルキスは初めてできた人族の友人みたいなものになっていた。かつては、コウルリーヤに楯突くからと、人族を心底嫌っていたというのに、今はユースールの者たちや、王都の者たちにも、楽しそうに稽古を付けている。
コウヤはこの変化がとても嬉しかった。
「……やっぱり、変化するのも悪くない……」
《どうしましたか? 主さま》
「ううん。ちょっと独り言~」
《はあ……?》
不思議そうにコウヤの足下から見上げてくるテンキに笑って誤魔化す。肩に乗っていたら聞こえただろうが、今回はすぐに臨戦体制に入れるようにと、下を歩いていて助かった。
時を経て変わるものも、悪い事ばかりではないのだと、改めて思えてコウヤは獣人達のことで沈みそうになっていた心が軽くなったのを感じた。
「ふふっ。明日も楽しんだらいいよ」
《はい……っ、明日は人化して勝負します!》
「それは……アルキス様も一層やる気が出そうだね」
全てのフィールドを潰すまで何日もかかることになるため、勝負の機会はまだある。
人化する場合は、テンキも剣で戦う。だが、やはり人化できるようになって何年も経っているわけでもないので、まだまだ不慣れな所もある。アルキスに、ハンデだとでも言ってからかうつもりだろう。
そんなこともアルキスとなら楽しめてしまう、親しい仲になれたのだということだ。
《行きましょう、主さま。見張りが気付いたようです》
「うん。テンキは……」
《門を通りましたら、姿を変えます》
今は普段の省エネモードで、小狐サイズになっている。門は狭いので、ようやく解放できた『九尾』モードでは通過できないのだ。
見た目人族の子どもと小狐では、エルフ達もまともに相手をしようとは思えないだろう。油断も誘えるはずだ。
「わかった。よろしくね」
《はい》
まずは門を通過しなくてはならない。警戒している門番達の様子を見て、少し離れた場所で立ち止まる。
門番は二人。その内の一人の男が誰何する。
「何者だ! 人族が何の用だ!」
「冒険者ギルド所属のコウヤです。迷宮化についての話は、見て分かってもらえていると思うのですが?」
コウヤは里の上空を指差す。そこには、冒険者達が戦う現在の映像が映し出されている。
「お、俺たちには関係なっ……ッ……」
「ん?」
《おや》
喋っていた門番が、背後から殴り倒された。そして、すぐにその隣で突っ立っていたもう一人の門番の男もガツンと太い棒で殴られて転がった。
カーンッ
カーンッ
良い音が響き、その犯人は、笑顔で出迎えてくれる。
「申し訳ありません、コウヤ様。コレは外で魔獣の餌にでもさせてもらいます」
「ナチさん……その金属バットはどこで?」
そこにいたのは、ユースールの薬屋にいるはずのナチだ。そして、持っていたのは、金属バットだった。
「コレですか? コレは、リクトルス様にいただきましたっ」
「……そっか。うん……素敵だね?」
「っ、ありがとうございます!!」
「……うん……」
まだ空飛ぶ城を造っていた時に、コウヤとゼストラークで、息抜きに作ったものだ。こういうのがあったんだよと地球のことを話しながらの、雑談ついでに二人で作った金属バット。
武器としても使えるなとアレコレ話してもいた。
それを、リクトルスが素振りの練習に理想的な重さと長さだとして、持って行ったのだ。とっても気に入ったらしい。初心者の、特に女性が持つ武器にも良いと言っていた。
だから、ナチに預けたのだろう。
「これでハリーくんにも勝てたんですよっ。こんな武器初めてです!」
「……そっか……うん……すごいねっ」
「ありがとうございます!」
ジャイアントハリーが打たれて転がるのが見えるようだった。転がる門番達が少し気の毒になったのは仕方がないことだろう。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
ここへ行くと聞いたテンキが、コウヤの護衛としてついて来ている。
因みに、パックンはタリスと一緒にフィールドで楽しそうに戦利品を回収しながら戦っており、ダンゴは後方支援としてギルド職員と共に野営地に居る。ダンゴは精霊だ。迷宮化した土地に入れば、おかしな影響が出ないとも限らない。よって、フィールドに近付かないようにしてもらっているのだ。
「テンキ、久しぶりに大暴れしたみたいだね」
テンキは、コウヤと合流する前、アルキスと一緒にかなり暴れてきたようだ。テンキだけで割り振られたフィールドの四分の二、半分の魔獣を消してきたらしい。
《アルと討伐数を勝負しておりまして》
「あ、じゃあ……」
《大丈夫です。勝負はもうつきました。なので、次の勝負は明日です!》
「そっか」
日に一つか二つのフィールドをグループごとで潰していく。アルキスの所のグループは、午後にもう一つフィールドを潰す予定だが、それにはテンキは参加しないと伝えてきたようだ。
「テンキは、アルキス様と仲良いよね~」
《っ、べ、別にそこまで仲が良いとはっ……っ》
「すごく楽しそうだったよ?」
《っ、楽しくはっ……あります……っ》
テンキにとって、アルキスは初めてできた人族の友人みたいなものになっていた。かつては、コウルリーヤに楯突くからと、人族を心底嫌っていたというのに、今はユースールの者たちや、王都の者たちにも、楽しそうに稽古を付けている。
コウヤはこの変化がとても嬉しかった。
「……やっぱり、変化するのも悪くない……」
《どうしましたか? 主さま》
「ううん。ちょっと独り言~」
《はあ……?》
不思議そうにコウヤの足下から見上げてくるテンキに笑って誤魔化す。肩に乗っていたら聞こえただろうが、今回はすぐに臨戦体制に入れるようにと、下を歩いていて助かった。
時を経て変わるものも、悪い事ばかりではないのだと、改めて思えてコウヤは獣人達のことで沈みそうになっていた心が軽くなったのを感じた。
「ふふっ。明日も楽しんだらいいよ」
《はい……っ、明日は人化して勝負します!》
「それは……アルキス様も一層やる気が出そうだね」
全てのフィールドを潰すまで何日もかかることになるため、勝負の機会はまだある。
人化する場合は、テンキも剣で戦う。だが、やはり人化できるようになって何年も経っているわけでもないので、まだまだ不慣れな所もある。アルキスに、ハンデだとでも言ってからかうつもりだろう。
そんなこともアルキスとなら楽しめてしまう、親しい仲になれたのだということだ。
《行きましょう、主さま。見張りが気付いたようです》
「うん。テンキは……」
《門を通りましたら、姿を変えます》
今は普段の省エネモードで、小狐サイズになっている。門は狭いので、ようやく解放できた『九尾』モードでは通過できないのだ。
見た目人族の子どもと小狐では、エルフ達もまともに相手をしようとは思えないだろう。油断も誘えるはずだ。
「わかった。よろしくね」
《はい》
まずは門を通過しなくてはならない。警戒している門番達の様子を見て、少し離れた場所で立ち止まる。
門番は二人。その内の一人の男が誰何する。
「何者だ! 人族が何の用だ!」
「冒険者ギルド所属のコウヤです。迷宮化についての話は、見て分かってもらえていると思うのですが?」
コウヤは里の上空を指差す。そこには、冒険者達が戦う現在の映像が映し出されている。
「お、俺たちには関係なっ……ッ……」
「ん?」
《おや》
喋っていた門番が、背後から殴り倒された。そして、すぐにその隣で突っ立っていたもう一人の門番の男もガツンと太い棒で殴られて転がった。
カーンッ
カーンッ
良い音が響き、その犯人は、笑顔で出迎えてくれる。
「申し訳ありません、コウヤ様。コレは外で魔獣の餌にでもさせてもらいます」
「ナチさん……その金属バットはどこで?」
そこにいたのは、ユースールの薬屋にいるはずのナチだ。そして、持っていたのは、金属バットだった。
「コレですか? コレは、リクトルス様にいただきましたっ」
「……そっか。うん……素敵だね?」
「っ、ありがとうございます!!」
「……うん……」
まだ空飛ぶ城を造っていた時に、コウヤとゼストラークで、息抜きに作ったものだ。こういうのがあったんだよと地球のことを話しながらの、雑談ついでに二人で作った金属バット。
武器としても使えるなとアレコレ話してもいた。
それを、リクトルスが素振りの練習に理想的な重さと長さだとして、持って行ったのだ。とっても気に入ったらしい。初心者の、特に女性が持つ武器にも良いと言っていた。
だから、ナチに預けたのだろう。
「これでハリーくんにも勝てたんですよっ。こんな武器初めてです!」
「……そっか……うん……すごいねっ」
「ありがとうございます!」
ジャイアントハリーが打たれて転がるのが見えるようだった。転がる門番達が少し気の毒になったのは仕方がないことだろう。
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