303 / 475
第十章
408 可愛いですねっ
しおりを挟む
ユストに、とりあえず椅子にどうぞと席を勧められて、コウヤはそれに腰掛けた。集中する視線がすごい。それに戸惑いながらコウヤは苦笑する。
「ごめんね? 突然来ちゃって」
「い、いえっ! そんなっ。お姿を見られて嬉しく思います! そ、それで……どうなさったのです?」
これは、コウルリーヤの姿になっているのがどうしたのかという意味も含んでいる。だが、そちらは気付かなかった振りで続けた。
「とりあえず、現地を確認したくてね。それで、見てみたんだけど、どうもフィールドごとにいるボスが精霊と同化してるみたいだね」
「え……」
そんな事までは普通はわからないだろう。ダンゴも今、なんとか精霊とコンタクトを取ろうと必死だ。よって、そこの説明までは聞いていなかったようだ。
「集団経営の迷宮だったんだと思う」
「しゅ、集団けいえい?」
「あ、ダンゴから聞いてない? 迷宮によって違うんだよ。大きな迷宮になると、制御が難しくなるから、何階層か毎で担当を決めて制御するんだ。場所の特徴だけじゃなく、個性とかも出て面白い迷宮になるんだよね~」
「「「……」」」
聞いていた冒険者達が唖然としていたが、それには気付かない。
「でも、中にはワンマンな子も出てくるから、たまに攻略難度にバラつきが出るようになって、下の階層まで中々到達できなくなったりする問題が起きるんだよ」
「なるほど……上の階の担当が張り切り過ぎて、下に来られない難度になってしまうと……それは、揉めそうですね」
ユストは素早く迷宮の精霊の身になって考えるように切り替えた。
「でしょう? で、そうなると、その子も不満だし、他の子も不満になるから、旅に出るんだ。ほら、冒険者はやるでしょう? 自分探しの旅。というか、職場探しの旅?」
「……自分探し……」
「「「旅……」」」
旅かと、冒険者達は頷き合う。周りと上手く行かなくなったら、場所を変えるという生き方。それは冒険者にとってはわかりやすい。
「そういう不満を持った精霊達もここにやってきて、元々居た子達と満場一致で解放! って感じみたい」
「「「……なるほど……」」」
「……理解しました。その精霊達の数だけフィールドがあるということですね」
「そう! それもボスになってね! 困った子達だけど、考え方は嫌いじゃないな~」
寧ろ潔さも感じる。
「でも、周りが見えてないかな。この場所に元々居た魔獣や魔物達が戸惑ってる。平気な顔してるけど、かなり不安がってるみたい」
「それはいけませんね……」
魔獣、魔物の研究をするユストだ。それを聞いては、居ても立っても居られなくなる。コウヤもそれがわかっているから、あの猪の魔獣と話したのだ。
「それで、先にその野生の魔獣や魔物を避難させようと思って」
「……できますでしょうか」
「元の主の一体に話を付けてきたよ。従魔達に避難誘導お願いしてもいい? 避難場所は……ここでどうかな」
迷宮化している森から少し離れる。これから冒険者達が入るので、あまり騒がしくしない場所がいいだろう。
「大分参ってる子たちもいると思うから、ケアが必要だと思うんだけど、それも任せてもいい?」
「もちろんです!」
「あ、でももう一つの迷宮化の方もあるよね……」
このエルフの里の傍から発生したものと、獣人族の里の傍から発生しているものがある。そこも、ここと同じような状況だろうと予想できた。
「大丈夫です。そっちはテーラに任せます」
「なるほど。そういえば、改めて婚約おめでとうございます。もう秒読みですよね。結婚祝い、楽しみにしててくださいね♪」
「っ、えっ、あ、け、結婚祝いっ……っ」
「はい。ふふふっ」
真っ赤になったユストを微笑ましげに見てコウヤは笑った。その顔がまた魅力的で、周りの冒険者たちはドキドキしっぱなしだ。
「さてと。じゃあ、獣人族の里の方も見てきますね。あと、皆さん休める時にはきちんと休んでください。みんなも帰って来ましたしね♪」
「「「「「ん? あっ!!」」」」」
その瞬間、テントに飛び込んで来たのは、彼らの従魔達だ。
キャンキャン、キュンキュンそれぞれの相棒に飛び掛かっていく。突然繋がりが切れたから心配だったのだろう。
「可愛いですねっ」
和んでいれば、そこにダンゴとパックンが本来の姿で飛び込んできた。
《主様ぁぁ》
《主~ (^○^) 》
「わわっ。ふふっ。ダンゴ、パックン、これから獣人族の里の方に行くけど、一緒に行く?」
《行くでしゅ!》
《行く行く~!》
そうして、ダンゴとパックンを連れて、コウヤはテントを出ると、すぐに転移した。
それらを見送った冒険者たちは呆然と呟く。
「やっぱ、コウヤじゃん……」
「隠す気ないよな……」
「俺らどうすればいいの? 黙っとく?」
「……とりあえず……」
「「「「黙っとこ……」」」」
満場一致で、秘匿されることになった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「ごめんね? 突然来ちゃって」
「い、いえっ! そんなっ。お姿を見られて嬉しく思います! そ、それで……どうなさったのです?」
これは、コウルリーヤの姿になっているのがどうしたのかという意味も含んでいる。だが、そちらは気付かなかった振りで続けた。
「とりあえず、現地を確認したくてね。それで、見てみたんだけど、どうもフィールドごとにいるボスが精霊と同化してるみたいだね」
「え……」
そんな事までは普通はわからないだろう。ダンゴも今、なんとか精霊とコンタクトを取ろうと必死だ。よって、そこの説明までは聞いていなかったようだ。
「集団経営の迷宮だったんだと思う」
「しゅ、集団けいえい?」
「あ、ダンゴから聞いてない? 迷宮によって違うんだよ。大きな迷宮になると、制御が難しくなるから、何階層か毎で担当を決めて制御するんだ。場所の特徴だけじゃなく、個性とかも出て面白い迷宮になるんだよね~」
「「「……」」」
聞いていた冒険者達が唖然としていたが、それには気付かない。
「でも、中にはワンマンな子も出てくるから、たまに攻略難度にバラつきが出るようになって、下の階層まで中々到達できなくなったりする問題が起きるんだよ」
「なるほど……上の階の担当が張り切り過ぎて、下に来られない難度になってしまうと……それは、揉めそうですね」
ユストは素早く迷宮の精霊の身になって考えるように切り替えた。
「でしょう? で、そうなると、その子も不満だし、他の子も不満になるから、旅に出るんだ。ほら、冒険者はやるでしょう? 自分探しの旅。というか、職場探しの旅?」
「……自分探し……」
「「「旅……」」」
旅かと、冒険者達は頷き合う。周りと上手く行かなくなったら、場所を変えるという生き方。それは冒険者にとってはわかりやすい。
「そういう不満を持った精霊達もここにやってきて、元々居た子達と満場一致で解放! って感じみたい」
「「「……なるほど……」」」
「……理解しました。その精霊達の数だけフィールドがあるということですね」
「そう! それもボスになってね! 困った子達だけど、考え方は嫌いじゃないな~」
寧ろ潔さも感じる。
「でも、周りが見えてないかな。この場所に元々居た魔獣や魔物達が戸惑ってる。平気な顔してるけど、かなり不安がってるみたい」
「それはいけませんね……」
魔獣、魔物の研究をするユストだ。それを聞いては、居ても立っても居られなくなる。コウヤもそれがわかっているから、あの猪の魔獣と話したのだ。
「それで、先にその野生の魔獣や魔物を避難させようと思って」
「……できますでしょうか」
「元の主の一体に話を付けてきたよ。従魔達に避難誘導お願いしてもいい? 避難場所は……ここでどうかな」
迷宮化している森から少し離れる。これから冒険者達が入るので、あまり騒がしくしない場所がいいだろう。
「大分参ってる子たちもいると思うから、ケアが必要だと思うんだけど、それも任せてもいい?」
「もちろんです!」
「あ、でももう一つの迷宮化の方もあるよね……」
このエルフの里の傍から発生したものと、獣人族の里の傍から発生しているものがある。そこも、ここと同じような状況だろうと予想できた。
「大丈夫です。そっちはテーラに任せます」
「なるほど。そういえば、改めて婚約おめでとうございます。もう秒読みですよね。結婚祝い、楽しみにしててくださいね♪」
「っ、えっ、あ、け、結婚祝いっ……っ」
「はい。ふふふっ」
真っ赤になったユストを微笑ましげに見てコウヤは笑った。その顔がまた魅力的で、周りの冒険者たちはドキドキしっぱなしだ。
「さてと。じゃあ、獣人族の里の方も見てきますね。あと、皆さん休める時にはきちんと休んでください。みんなも帰って来ましたしね♪」
「「「「「ん? あっ!!」」」」」
その瞬間、テントに飛び込んで来たのは、彼らの従魔達だ。
キャンキャン、キュンキュンそれぞれの相棒に飛び掛かっていく。突然繋がりが切れたから心配だったのだろう。
「可愛いですねっ」
和んでいれば、そこにダンゴとパックンが本来の姿で飛び込んできた。
《主様ぁぁ》
《主~ (^○^) 》
「わわっ。ふふっ。ダンゴ、パックン、これから獣人族の里の方に行くけど、一緒に行く?」
《行くでしゅ!》
《行く行く~!》
そうして、ダンゴとパックンを連れて、コウヤはテントを出ると、すぐに転移した。
それらを見送った冒険者たちは呆然と呟く。
「やっぱ、コウヤじゃん……」
「隠す気ないよな……」
「俺らどうすればいいの? 黙っとく?」
「……とりあえず……」
「「「「黙っとこ……」」」」
満場一致で、秘匿されることになった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
253
お気に入りに追加
11,119
あなたにおすすめの小説


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。