元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十章

408 可愛いですねっ

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ユストに、とりあえず椅子にどうぞと席を勧められて、コウヤはそれに腰掛けた。集中する視線がすごい。それに戸惑いながらコウヤは苦笑する。

「ごめんね? 突然来ちゃって」
「い、いえっ! そんなっ。お姿を見られて嬉しく思います! そ、それで……どうなさったのです?」

これは、コウルリーヤの姿になっているのがどうしたのかという意味も含んでいる。だが、そちらは気付かなかった振りで続けた。

「とりあえず、現地を確認したくてね。それで、見てみたんだけど、どうもフィールドごとにいるボスが精霊と同化してるみたいだね」
「え……」

そんな事までは普通はわからないだろう。ダンゴも今、なんとか精霊とコンタクトを取ろうと必死だ。よって、そこの説明までは聞いていなかったようだ。

「集団経営の迷宮だったんだと思う」
「しゅ、集団けいえい?」
「あ、ダンゴから聞いてない?  迷宮によって違うんだよ。大きな迷宮になると、制御が難しくなるから、何階層か毎で担当を決めて制御するんだ。場所の特徴だけじゃなく、個性とかも出て面白い迷宮になるんだよね~」
「「「……」」」

聞いていた冒険者達が唖然としていたが、それには気付かない。

「でも、中にはワンマンな子も出てくるから、たまに攻略難度にバラつきが出るようになって、下の階層まで中々到達できなくなったりする問題が起きるんだよ」
「なるほど……上の階の担当が張り切り過ぎて、下に来られない難度になってしまうと……それは、揉めそうですね」

ユストは素早く迷宮の精霊の身になって考えるように切り替えた。

「でしょう? で、そうなると、その子も不満だし、他の子も不満になるから、旅に出るんだ。ほら、冒険者はやるでしょう? 自分探しの旅。というか、職場探しの旅?」
「……自分探し……」
「「「旅……」」」

旅かと、冒険者達は頷き合う。周りと上手く行かなくなったら、場所を変えるという生き方。それは冒険者にとってはわかりやすい。

「そういう不満を持った精霊達もここにやってきて、元々居た子達と満場一致で解放! って感じみたい」
「「「……なるほど……」」」
「……理解しました。その精霊達の数だけフィールドがあるということですね」
「そう! それもボスになってね! 困った子達だけど、考え方は嫌いじゃないな~」

寧ろ潔さも感じる。

「でも、周りが見えてないかな。この場所に元々居た魔獣や魔物達が戸惑ってる。平気な顔してるけど、かなり不安がってるみたい」
「それはいけませんね……」

魔獣、魔物の研究をするユストだ。それを聞いては、居ても立っても居られなくなる。コウヤもそれがわかっているから、あの猪の魔獣と話したのだ。

「それで、先にその野生の魔獣や魔物を避難させようと思って」
「……できますでしょうか」
「元の主の一体に話を付けてきたよ。従魔達に避難誘導お願いしてもいい? 避難場所は……ここでどうかな」

迷宮化している森から少し離れる。これから冒険者達が入るので、あまり騒がしくしない場所がいいだろう。

「大分参ってる子たちもいると思うから、ケアが必要だと思うんだけど、それも任せてもいい?」
「もちろんです!」
「あ、でももう一つの迷宮化の方もあるよね……」

このエルフの里の傍から発生したものと、獣人族の里の傍から発生しているものがある。そこも、ここと同じような状況だろうと予想できた。

「大丈夫です。そっちはテーラに任せます」
「なるほど。そういえば、改めて婚約おめでとうございます。もう秒読みですよね。結婚祝い、楽しみにしててくださいね♪」
「っ、えっ、あ、け、結婚祝いっ……っ」
「はい。ふふふっ」

真っ赤になったユストを微笑ましげに見てコウヤは笑った。その顔がまた魅力的で、周りの冒険者たちはドキドキしっぱなしだ。

「さてと。じゃあ、獣人族の里の方も見てきますね。あと、皆さん休める時にはきちんと休んでください。みんなも帰って来ましたしね♪」
「「「「「ん? あっ!!」」」」」

その瞬間、テントに飛び込んで来たのは、彼らの従魔達だ。

キャンキャン、キュンキュンそれぞれの相棒に飛び掛かっていく。突然繋がりが切れたから心配だったのだろう。

「可愛いですねっ」

和んでいれば、そこにダンゴとパックンが本来の姿で飛び込んできた。

《主様ぁぁ》
《主~  (^○^) 》
「わわっ。ふふっ。ダンゴ、パックン、これから獣人族の里の方に行くけど、一緒に行く?」
《行くでしゅ!》
《行く行く~!》

そうして、ダンゴとパックンを連れて、コウヤはテントを出ると、すぐに転移した。

それらを見送った冒険者たちは呆然と呟く。

「やっぱ、コウヤじゃん……」
「隠す気ないよな……」
「俺らどうすればいいの? 黙っとく?」
「……とりあえず……」
「「「「黙っとこ……」」」」

満場一致で、秘匿されることになった。

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読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
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