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第十章
402 伝承通りの
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それを絞り出すように告げた彼としては、これ以上他の者たちが下手なことを口走らないようにと考えてのものだったようだ。
「こっ、コウル……リーヤさま……っ?」
「そんな……っ、だって……邪神は……」
《お前たち……っ》
「邪神って言うんじゃねえよ!」
「「「っ……」」」
呆然とコウヤを見て呟いた彼らに、テンキが再び怒気を向け、ジンクが不機嫌に叫んだ。これに、なんだかコウヤは楽しくなって、思わず笑う。
「ふふっ」
「ちょっ、コウヤくん? 怒ってたんじゃないの?」
いいのかとジンクが尋ねてくるが、テンキの呪いもあるし、現状を見ると逆に笑えてくる。
「だって、こんなぐちゃぐちゃになった顔見たら、なんか怒るのもねえ」
寄ってたかってというのも、大人げないかなと思ってしまったのだ。だが、譲れない件もある。
「ただ、それは口にしたことに対してだけどね?」
「え……」
コウヤは静かに神気を高めた。そして、姿を変える。ふわりと広がった肩口までの少し長めの艶やかな髪は、煌めく星空の色。背も伸び、姿は青年のものになった。
「「っ!!」」
「っ……藍色の髪……っ」
「伝承通りの……っ……コウルリーヤ様……っ」
風にはためくのは、紺色のローブ。銀のサークレットに水晶のイヤリング。手首にいくつものはまる護りの腕輪。
ゆっくりと瞼が上がり、現れた瞳は左右で色の違うオッドアイ。右がコウヤの持つ紫。左が濃い紫紺の色だ。
「君たちには、子どもの姿だとダメそうだからね」
「「「「「っ……!」」」」」
目を細めると、エルフ達は息を呑む。その目には、確かに怒りの感情があったからだ。
「う~ん……見上げるのは首が疲れるかな。テンキ、地面に下ろしてくれる?」
《っ、気が利かず申し訳ございません。主さまに見上げさせるなど……っ、地面にめり込ませておきます》
「いや、それだと姿を変えた意味ないし、正座でいいよ」
それを聞き、テンキはゆっくりと凹みのない地面の上空に移動させると、そのまま落下させた。
《承知しました》
「「「「「うぐっ」」」」」
どうやら、傷に響いたらしい。うずくまる彼らだが、テンキは容赦しなかった。
《無様な格好は許さん》
「「「ぐっ」」」
「「ぐぅっ」」
テンキは、細かい重力制御も出来るのか、上体だけ上に引っ張り上げた。そうなると、正座しないと引っ張られ過ぎて辛い。自然に彼らは正座していた。ピンと背筋を伸ばした状態に無理やりさせられてだ。
「すげえ……こんな無理やりな正座のさせ方あるんだ……」
ジンクは変なところで感心していた。
プルプルと震える彼ら。上体が引っ張られて苦しいのと、内臓が少し傷付いていて痛いのがあるのだろう。足も怪我をしているのに正座だ。それは痛いだろう。
そんな彼らをしばらく冷静に見ていたコウヤは、テンキへ告げる。
「テンキ。今だけ、痛みを感じないようにしてくれる? これだと話が耳に入らないから」
《承知しました》
テンキの呪いにより、死なないため、死の危険を知らせる痛みも、今の彼らには必要ないと判断したのだ。
楽になったとはいえ、怪我が治っていないことは確かだ。だから、彼らは無理に動こうとしなかった。痛みを感じないというのは、逆に怖いのだろう。
大人しく話を聞く姿勢になったとコウヤは満足げに頷く。
「うん。良さそうだね。で、あなた達は、なぜ俺が怒っているか分かっているかな?」
「っ……なぜ……」
「わっ、私達は、あの国の過ちをっ……」
静かに見つめるコウヤに、彼らはぐるぐると正しい答えを探して思考する。しかし、すぐに思い至らない彼らに、コウヤには失望の色を浮かべる。
「あなた達にとっては、大義の前の小事なのでしょうね……」
「っ……あ……師……匠……?」
一人がようやく気付いた。
「まだ、師匠と呼べたのですか」
「っ……」
目を泳がせるのが、その彼を含めて二人。五人いるエルフの内の二人だけ。それが、彼らと人族の感覚の違いなのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「こっ、コウル……リーヤさま……っ?」
「そんな……っ、だって……邪神は……」
《お前たち……っ》
「邪神って言うんじゃねえよ!」
「「「っ……」」」
呆然とコウヤを見て呟いた彼らに、テンキが再び怒気を向け、ジンクが不機嫌に叫んだ。これに、なんだかコウヤは楽しくなって、思わず笑う。
「ふふっ」
「ちょっ、コウヤくん? 怒ってたんじゃないの?」
いいのかとジンクが尋ねてくるが、テンキの呪いもあるし、現状を見ると逆に笑えてくる。
「だって、こんなぐちゃぐちゃになった顔見たら、なんか怒るのもねえ」
寄ってたかってというのも、大人げないかなと思ってしまったのだ。だが、譲れない件もある。
「ただ、それは口にしたことに対してだけどね?」
「え……」
コウヤは静かに神気を高めた。そして、姿を変える。ふわりと広がった肩口までの少し長めの艶やかな髪は、煌めく星空の色。背も伸び、姿は青年のものになった。
「「っ!!」」
「っ……藍色の髪……っ」
「伝承通りの……っ……コウルリーヤ様……っ」
風にはためくのは、紺色のローブ。銀のサークレットに水晶のイヤリング。手首にいくつものはまる護りの腕輪。
ゆっくりと瞼が上がり、現れた瞳は左右で色の違うオッドアイ。右がコウヤの持つ紫。左が濃い紫紺の色だ。
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《っ、気が利かず申し訳ございません。主さまに見上げさせるなど……っ、地面にめり込ませておきます》
「いや、それだと姿を変えた意味ないし、正座でいいよ」
それを聞き、テンキはゆっくりと凹みのない地面の上空に移動させると、そのまま落下させた。
《承知しました》
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どうやら、傷に響いたらしい。うずくまる彼らだが、テンキは容赦しなかった。
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「「「ぐっ」」」
「「ぐぅっ」」
テンキは、細かい重力制御も出来るのか、上体だけ上に引っ張り上げた。そうなると、正座しないと引っ張られ過ぎて辛い。自然に彼らは正座していた。ピンと背筋を伸ばした状態に無理やりさせられてだ。
「すげえ……こんな無理やりな正座のさせ方あるんだ……」
ジンクは変なところで感心していた。
プルプルと震える彼ら。上体が引っ張られて苦しいのと、内臓が少し傷付いていて痛いのがあるのだろう。足も怪我をしているのに正座だ。それは痛いだろう。
そんな彼らをしばらく冷静に見ていたコウヤは、テンキへ告げる。
「テンキ。今だけ、痛みを感じないようにしてくれる? これだと話が耳に入らないから」
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楽になったとはいえ、怪我が治っていないことは確かだ。だから、彼らは無理に動こうとしなかった。痛みを感じないというのは、逆に怖いのだろう。
大人しく話を聞く姿勢になったとコウヤは満足げに頷く。
「うん。良さそうだね。で、あなた達は、なぜ俺が怒っているか分かっているかな?」
「っ……なぜ……」
「わっ、私達は、あの国の過ちをっ……」
静かに見つめるコウヤに、彼らはぐるぐると正しい答えを探して思考する。しかし、すぐに思い至らない彼らに、コウヤには失望の色を浮かべる。
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「っ……あ……師……匠……?」
一人がようやく気付いた。
「まだ、師匠と呼べたのですか」
「っ……」
目を泳がせるのが、その彼を含めて二人。五人いるエルフの内の二人だけ。それが、彼らと人族の感覚の違いなのだ。
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