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第十章
400 怒ってたじゃん
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400話……400話です(笑)
よろしくお願いします!
**********
コウヤから、驚くほど低い声が響いた。
ジンクとテンキは、予想していなかった事態に、ビクリと身を固くする。
威圧され、エルフ達も体を震わせるが、怯えるなんてことは彼らの矜持が許さなかったのだろう。見た目は成人もしていない子ども。それも人族だ。
何倍も長く生きている自分達が、そんな子どもに怯えるなんてことはあり得てはならないと思ったのだ。
だから、その威圧の中にある神気にも気付かない。彼らにあったのは、負けてなるものかという意地だ。
コウヤに恐怖していることを、何とかして誤魔化そうと、彼らはそれを口にした。
「っ、なんだよ。あの女に本当のことを言っただけだ!」
「そうだ! 全部っ。全部、バカな人族が悪くて、何よりも、そんな人族に討たれるような、邪神が悪いんだ!!」
「っ、な!?」
声を詰まらせながらも、椅子を蹴倒して立ち上がったのは、ジンクだった。
「それっ……それをベニちゃんに言ったのか……っ」
「ああ。言ったさ! 間違ったことは言ってねえ! 俺らは、邪神コウルリーヤのために建てられた神殿もっ。それを討っていい気になってたあの国も、全部無くすんだ!」
「そうすれば、他の神だって俺らを見る! 神の加護が再び俺たちに戻れば、俺たちの里は生き返る!」
コウヤは、ただ静かにこれを聞いていた。表情は抜け落ちていた。ただ、コウヤが口を開くより先に傍らから唐突に魔力が膨れ上がった。
《グルルルルル……っ》
「っ……テンキ?」
毛が逆立ち、その姿が大きくなっていく。そして、尻尾が増えた。
「……尻尾が……九本……」
茶金色の体毛が、眩しく金に光出す。その体が大きく膨らむ。そして、テントを吹き飛ばした。
コウヤの背どころか、大人の背も悠に越えていく大きさ。金の体毛と尻尾。その尻尾の先は白過ぎる白銀色で美しい。尻尾は九本。それがゆらりと揺れると、唐突にエルフ達が地面に張り付いた。
「ぐっゥっ」
「ガッ……っ」
「ッ、うぅっ……っ」
メキメキ、ペキペキと音が彼らの体と、彼らが張り付く地面から鳴る。
めり込んでいく彼らの体を見て、ジンクとコウヤは驚いていた。咄嗟のことに驚き過ぎて声も出ない。そんな様子は、テンキには見えていないのだろう。
見据えるのは、愚かなことを口走ったエルフ達のみ。
《愚か者が……我が主を愚弄するとは……お前たちが神の御前に出るなど……その目に映るなど……っ》
「テンキ……っ、ジンクおじさんっ、離れますよ!」
「え、お、おう!?」
コウヤはジンクの腕を掴み、慌てて転移する。
《っ……許されるものではないわ!!》
その怒号が響いたと同時に、野営地から離れた場所にコウヤとジンクは避難していた。
「あ~……野営地、作り直しかな?」
「いやいや、コウヤくん、怒ってないのっ? あいつら、めちゃくちゃ失礼なこと言ったよ!? ベニちゃんが怒るのも無理ないよ!」
「う~ん……ほら、別の人が怒ると、なんか冷めるよね」
「……分かるっ……分かるけどっ……怒ろうよ! 怒ってたじゃん!」
その間に、テンキの周辺にバチバチと放電が起こり出していた。
「うわ~、バチってなるやつだ」
「いや……バチっで終わらないよ……なんか、色おかしいよね!? なんか青いよ!?」
「強そうですよね」
「そういう問題でもない!」
なんだか面白くなってきたコウヤだ。
「とりあえず、炭にならないといいな~」
「先に言っとくべきじゃない? あれ、死んじゃうよ!?」
「あ、いえ、他のテントが」
「一応、心配してあげて!!」
そう言われても、テンキの機嫌の方が大事だ。間違いなくコウヤに重要なのはそちらだった。失礼なことを言ったエルフ達は自業自得としておくべきだ。
同じことをゼストラーク達に聞かれても、ただでは済まないのだから。
「だって、ゼストパパがさっきの聞いたら……多分、存在ごと消されちゃうよ? 処置なしって」
「……なるほど……」
「だから、どのみちもう話出来そうにないかなって。万が一生き残ってたら……今度こそは、きちんとこっちの話聞くようになるかな?」
テンキが落ち着くまで待とうと、コウヤは近くの岩に腰掛けたのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
よろしくお願いします!
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コウヤから、驚くほど低い声が響いた。
ジンクとテンキは、予想していなかった事態に、ビクリと身を固くする。
威圧され、エルフ達も体を震わせるが、怯えるなんてことは彼らの矜持が許さなかったのだろう。見た目は成人もしていない子ども。それも人族だ。
何倍も長く生きている自分達が、そんな子どもに怯えるなんてことはあり得てはならないと思ったのだ。
だから、その威圧の中にある神気にも気付かない。彼らにあったのは、負けてなるものかという意地だ。
コウヤに恐怖していることを、何とかして誤魔化そうと、彼らはそれを口にした。
「っ、なんだよ。あの女に本当のことを言っただけだ!」
「そうだ! 全部っ。全部、バカな人族が悪くて、何よりも、そんな人族に討たれるような、邪神が悪いんだ!!」
「っ、な!?」
声を詰まらせながらも、椅子を蹴倒して立ち上がったのは、ジンクだった。
「それっ……それをベニちゃんに言ったのか……っ」
「ああ。言ったさ! 間違ったことは言ってねえ! 俺らは、邪神コウルリーヤのために建てられた神殿もっ。それを討っていい気になってたあの国も、全部無くすんだ!」
「そうすれば、他の神だって俺らを見る! 神の加護が再び俺たちに戻れば、俺たちの里は生き返る!」
コウヤは、ただ静かにこれを聞いていた。表情は抜け落ちていた。ただ、コウヤが口を開くより先に傍らから唐突に魔力が膨れ上がった。
《グルルルルル……っ》
「っ……テンキ?」
毛が逆立ち、その姿が大きくなっていく。そして、尻尾が増えた。
「……尻尾が……九本……」
茶金色の体毛が、眩しく金に光出す。その体が大きく膨らむ。そして、テントを吹き飛ばした。
コウヤの背どころか、大人の背も悠に越えていく大きさ。金の体毛と尻尾。その尻尾の先は白過ぎる白銀色で美しい。尻尾は九本。それがゆらりと揺れると、唐突にエルフ達が地面に張り付いた。
「ぐっゥっ」
「ガッ……っ」
「ッ、うぅっ……っ」
メキメキ、ペキペキと音が彼らの体と、彼らが張り付く地面から鳴る。
めり込んでいく彼らの体を見て、ジンクとコウヤは驚いていた。咄嗟のことに驚き過ぎて声も出ない。そんな様子は、テンキには見えていないのだろう。
見据えるのは、愚かなことを口走ったエルフ達のみ。
《愚か者が……我が主を愚弄するとは……お前たちが神の御前に出るなど……その目に映るなど……っ》
「テンキ……っ、ジンクおじさんっ、離れますよ!」
「え、お、おう!?」
コウヤはジンクの腕を掴み、慌てて転移する。
《っ……許されるものではないわ!!》
その怒号が響いたと同時に、野営地から離れた場所にコウヤとジンクは避難していた。
「あ~……野営地、作り直しかな?」
「いやいや、コウヤくん、怒ってないのっ? あいつら、めちゃくちゃ失礼なこと言ったよ!? ベニちゃんが怒るのも無理ないよ!」
「う~ん……ほら、別の人が怒ると、なんか冷めるよね」
「……分かるっ……分かるけどっ……怒ろうよ! 怒ってたじゃん!」
その間に、テンキの周辺にバチバチと放電が起こり出していた。
「うわ~、バチってなるやつだ」
「いや……バチっで終わらないよ……なんか、色おかしいよね!? なんか青いよ!?」
「強そうですよね」
「そういう問題でもない!」
なんだか面白くなってきたコウヤだ。
「とりあえず、炭にならないといいな~」
「先に言っとくべきじゃない? あれ、死んじゃうよ!?」
「あ、いえ、他のテントが」
「一応、心配してあげて!!」
そう言われても、テンキの機嫌の方が大事だ。間違いなくコウヤに重要なのはそちらだった。失礼なことを言ったエルフ達は自業自得としておくべきだ。
同じことをゼストラーク達に聞かれても、ただでは済まないのだから。
「だって、ゼストパパがさっきの聞いたら……多分、存在ごと消されちゃうよ? 処置なしって」
「……なるほど……」
「だから、どのみちもう話出来そうにないかなって。万が一生き残ってたら……今度こそは、きちんとこっちの話聞くようになるかな?」
テンキが落ち着くまで待とうと、コウヤは近くの岩に腰掛けたのだった。
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