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第十章
390 ドワーフの里って
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子ども達とジェットイーグルの働きにより、エルフの隠れ里の場所が明らかになったのは、それから二日後だった。
さすがは、速度にも秀でたジェットイーグルというのもあり、予め怪しい場所をピックアップしていたことも功を奏したようだ。
それも、シュンが契約した個体であるブラッドは特に頭がよく、物覚えが良い。長年一匹で世界を飛び回ってきており、きちんと何か違和感を感じた場所も覚えていたため、ついでに獣人族の里とドワーフの里も見つけ出していた。
今日は、先日ジェットイーグルを見送った大人達で大会議室に集まり、いよいよ方針を話そうという所だ。まだここには、準備のために早く来たコウヤと、暇を持て余して早めに来たタリスしか居ない。
タリスが暇なのは、仕事をサボったためではなく、近々遠出することになるということで、少し仕事を前倒しして終わらせているからだ。
マンタに乗って、コウヤが完成させた世界地図。それを大きな中央のテーブルに広げる。特定されたそれぞれの里の位置を書き込む必要があるのだ。それを覗き込んだタリスが感嘆の声を上げた。
「うわあ……ドワーフの里って、こんな所にあったんだ……うん、祖父の言ってた事は本当だったんだなあ」
「これは……里から出たくても出られませんし、簡単には帰りたくても帰れませんね……」
ドワーフ族は、特に純血に拘ってはいないため、里から出て行った者を追わない。混血だろうと、里に戻って来たなら歓迎するらしい。
だが、里の場所は問題だった。
「険しい渓谷を越えて、多くの山を越え、最後に火山を越える……って、冗談だと思ってたよ……あの山の向こうどころか、渓谷を越えようとも思えないんだけど……」
ドワーフは、鍛治や物作りをする者が多い。そこで、鉱山など、資源を求めて山々を越えて行ったらしい。そのついでに温泉も求めたというのが、ドワーフ族には伝わっているという。
種族的に何かを突き詰めることが好きな性質を持つため、何かに夢中になって、穴蔵から出てこないなんてことも普通だという。
この場所に決めたのは、神教国が手を出しにくい場所を選んだからだとも言われている。とはいえ、誰でもあっても手を出す気が失せる場所だ。
「あれですね。ドワーフの方たちは、あえてこの場所で引きこもってる感じですね」
「うん。誰も邪魔しないよね。それで、ものづくりとか興味ないのは、未知のものを探して外に出たがるんだってさ。この道を抜けようとしたら、相当鍛えられるし、一石二鳥だって。うちはそっち。冒険大好きで、探検しまくって、満足して生涯を終えるって感じかな」
タリスは母親が人族の冒険者。父が混血のドワーフ。里を出てきた祖父もその妻も全員、生涯冒険者として遊び歩き、亡くなったらしい。タリスは大人しい方だと言う。
「遠回りのルートも可能ですけど……馬は無理ですし、何日野営することになるんでしょうね」
「もうね。祖父の執念が怖いよ……よく出て行ったよ……」
「間違いなく身体能力が高くないと無理ですね」
「あ、それは分かるかも……普通にドラゴンと一対一なら素手で倒せるとか言ってたんだよ……ホラかと思ったけど、この道のりを見ると、ホントかも……」
里から出るだけで、相当鍛えられそうだ。冗談ではなかったんだとタリスは納得した。
「そういえば、何人か里からの道を進んでる人が居たみたいですよ?」
「え……あ~……ほら、神教会を壊すってやつだよ。悲願だからね」
「ああ。マスターもそろそろ行かれるんですか? 神官さんに送ってもらうんですよね? まだ大丈夫ですか?」
タリスもドワーフの血を引く者として、種族の悲願のため、神教会を壊しに行くために、出向くことになっている。ただ、冒険者ギルドへの通達がまだ完全でないとのことで、足留めされていた。元グランドマスターで、現役のギルドマスターが先頭に立つとなれば、冒険者ギルドの総意と取られてしまう。その事情説明が難航中らしい。
だが、このユースールには、移動手段が色々とあるため、返答がギリギリになっても問題ない計算だ。
「うん。でもほら、やっぱり現場は物騒な感じじゃない? それで、本部の子達が、僕を出したがらないみたいね。粘ってる感じがする」
「ふふっ。危ないことして欲しくないってことですね」
「もうっ。こんな時ばっかり老人扱いするんだよ。けど、僕が多分、人里に居るドワーフの血を引く者の中でも一番上になりそうだからね。代表として出ないと、マズイでしょ」
「そうでしょうけど……俺も、マスターには危ない所に行って欲しくないですね。特に、神教会は怪しいみたいですから」
「そうねえ……」
タリスも、コウヤから聞いた。神教会にはよくないものがあるのだと。それは、神の手にも余るものだと。
「だから、コウヤちゃんは、土地の迷宮化を明確にして、神教国に詰め寄ってるエルフ族と獣人族達を解散させたいんだよね」
「はい」
土地の迷宮化という、それぞれの里の危機を知らせて、その対応に戻ってもらおうと思っているのだ。
どの道、放置したとしても、神教国は瓦解する寸前だった。恐らく、神教国が隠しているモノによって、潰れるだろう。それが、コウヤやゼストラーク達には感じられていたのだ。
「因みに、解散させた後は、あの教会は、ジンクおじさん達神子が、封じの結界を張ることになっています」
大きな問題が現在二つ。神教国は、一般人の避難が終わっており、問題となるのは大神殿に閉じこもっている。ならば、まずはそれを隔離しようということになった。臭いものには蓋をする。それでとりあえず、問題を先送りにできる。
その間に、エルフと獣人達の里の迷宮化の対処をする。これは、広がっていくので、いずれ他国にも影響が出る問題だ。まだ地上の調査が出来ていないので、状態は分からないが、既に影響の出ている国がありそうだった。
間違いなく、こちらの問題の解決の方が先だ。
「なので、わざわざ出てきてくださったドワーフの方々には悪いですが……」
「わかってるよ。説得する。何より、ゼスト様がこっちに顕現されているって聞けば、ドワーフ族なら一も二もなく飛びつくよ。任せて。ただ、ゼスト様が出入りしてる王都とか、こことかに、一時的にドワーフが押しかけそうだけど」
「それは仕方ないですね」
ちょっと賑やかになるのは問題ない。
この後、集まった者達と細かい方針の話し合いを終え、即日、従魔術師達を使った土地の調査が開始された。
これが終われば、次は他国との国際会議が待っている。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
たまには宣伝◎
●『秘伝賜ります』
次回より新章です。
陰陽師系か……それはあまり……
と言う方にも入りやすいお話ですよー
●『エセ関西人(笑)ってなんやねん!?』
こちらも覗いてみてください♪
きっと楽しい気持ちになれるはず!
はちゃめちゃする女の子にツッコミ募集中◎
●ちょっとテンション落ち着き目のをという方は
『シルバーヒーローズ!』
元気な老夫婦が異世界と現代で活躍するお話です。
こんな夫婦居たらほのぼの出来そうです。
お暇つぶしにどうぞ♪
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マンタに乗って、コウヤが完成させた世界地図。それを大きな中央のテーブルに広げる。特定されたそれぞれの里の位置を書き込む必要があるのだ。それを覗き込んだタリスが感嘆の声を上げた。
「うわあ……ドワーフの里って、こんな所にあったんだ……うん、祖父の言ってた事は本当だったんだなあ」
「これは……里から出たくても出られませんし、簡単には帰りたくても帰れませんね……」
ドワーフ族は、特に純血に拘ってはいないため、里から出て行った者を追わない。混血だろうと、里に戻って来たなら歓迎するらしい。
だが、里の場所は問題だった。
「険しい渓谷を越えて、多くの山を越え、最後に火山を越える……って、冗談だと思ってたよ……あの山の向こうどころか、渓谷を越えようとも思えないんだけど……」
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