元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十章

389 飛翔!

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ナナイロは武器だ。自立型のゴーレムとしての能力は付いているが、基本はコウヤを中心として動く。それほど広範囲に移動することも出来ない。指示を明確にする必要もあるので、国を跨いで活動させるなんてことは無理だ。

だが、シュン達のジェットイーグルは違う。従魔は従魔術師の目にもなる。従魔術のスキル熟練度が上がれば、念話での繋がりもできる。そうすれば、離れていても常に指示が通る。

「それで、コウヤちゃん。今日はエルフの里の偵察をするって聞いたけど、なんでここに町の元気っ子で有名な子ども達が居るの?」
「もしかして、子ども達を連れて行く気じゃ……」

その日、冒険者ギルドの屋上に、コウヤはタリスとテーラ主任を呼び出した。そこに、ある意味この町で有名な子ども達が揃っているのだ。不思議にも思うだろう。それも、ここはマンタの特別発着場でもあるのだから。

「兄さん……この子ども達を集めたってことは……まさか」
「ルディエ様。そのまさかです。試験は済んでおりますよ♪」

今回、ルディエとユストもおり、二人には子ども達がまとわりついていた。

「ルディ兄~。わたしたち、ちゃんとできるから見ててね!」
「オレらのスゴさを見たら、きっとおどろくぜ!」

フィトとヨクトがルディエに満面の笑みを向けて胸を張る。見た目は同じ年頃だが、ルディエはこのユースールでは特別。決して誰も下に見ない。神子という肩書きを理解していない幼い子どもでも、神官達が従うところを見ていなくても、神子としての独特の雰囲気から、特別視してしまうようだ。

「ししょ~。課題も無事クリアしたよ」
「わたしも~」
「今日の試験、問題ありません」

マナルトとサフィラ、そしてシュンは、得意げにユストへ報告していた。

「確か、大通りの店の子ども達だったか……あと、あの子は……孤児院の……」
「はい。道具屋のフィトさん、花屋のヨクト君、細工師のマナルト君とサフィラちゃん、それと、孤児院のリーダーの一人、シュン君です」
「うむ……」

ついでにこの場には、たまたま視察に来ていたレンスフィートが同席している。補足したのはエルテだ。

最近はユースールの冒険者が地方に教会から転移で出張し、各地の冒険者ギルドの活動の様子を報告するという依頼を、冒険者ギルド本部から出されているため、冒険者達の出入りが激しくなっている。

これにより、この町の依頼が滞っていないかどうか、一応の確認にきたのだ。というのは建前で、タリスへのご機嫌伺いみたいなものだった。ちょっとお茶をして話すくらい。そこに時々エリスリリアが乱入したり、リクトルスが相談役のようになる。

このギルドでは、運が良ければ二神に会えるのだ。その機会は多い方良い。

そして、そんな二神もやってきた。

「あら~。いよいよ、情報解禁かしら?」
「これは、楽しみですねえ」
「あっ! エリス様! リクト様!」
「「「「「おはようございます!!」」」」」

子ども達がキラキラとした笑顔で、登場したエリスリリアとリクトルスへ挨拶する。子ども達は、神への畏れを少し感じながらも、エリスリリア達へは、敬愛する存在という感覚が強いようだ。もちろん、ゼストラークに町中で会っても、こうして挨拶をする。

因みに、ゼストラークは棟梁と時折、町中を材木などを運んでいたりするのだ。未だに神だと知っているユースールの住民達は、そんな姿を二度見する。そんなゼストラークへも、子ども達はわざわざ見つけては駆け寄って挨拶するのが、このユースールでの普通だった。

「ふふふ。今日も元気ねえ。可愛いわ~」
「そろそろ、本格的に護身術を教えても良さそうですね」
「色んな可能性を持ってるみたいだものねえ。さすが、コウヤちゃんの弟子達だわ」
「「「「「っ、がんばります!!」」」」」

このユースールで、最も期待できる存在だと、エリスリリアもリクトルスも感じているのだ。

そんな神にも期待される子ども達。そうなると、タリス達大人は、少しばかり不安を感じる。

「え、大丈夫なの? コウヤちゃんの弟子? それって、どんな弟子? なんの弟子?」
「コウヤの弟子……嫌な予感しか……」

タリスとレンスフィートは、特に不安そうだった。何度コウヤに常識を覆されたか分からないのだ。非常識の塊が増えたと、青くなる。

それに構わず、コウヤはシュンへ声をかけた。

「じゃあ、そろそろ始めようか」
「はい。では」

五人の子ども達は頷き合うと、服の下に隠していた首飾りを引っ張り出す。そこに付いているのは、笛だった。

子ども達は順に吹き鳴らす。


ピーッ
ピーー!
ピーっ
ピーーーっ
ピーーーー!


その音が空に響き渡ると、西の空に黒い点が見え始める。それは鳥だった。それも魔鳥。それに気付いた大人達の顔色は悪い。タリスとレンスフィートは驚愕する。

「っ、ちょっ、魔鳥!?」
「魔鳥が町の上に来るなんてっ……」

町には魔鳥の類いが降り立つ事はない。それは、人の生活臭を感じて本能的に避けているからだ。ドラゴンなどの大きな個体は、それを逆に獲物のいる臭いと感じて向かって来たりするが、小さな個体は、その数を本能的に感じて避けるのだ。よって、魔鳥は町の上空さえ通らない。

最も驚いたのは、これが従魔であると気付いたテーラだろう。その従魔の正体にも気付いて、目と口を大きく開ける。

「っ、ジェットイーグル……っ、まさか、子ども達はっ……」

そして、音の余韻が消える頃、その鳥はそれぞれの子ども達の前に優雅に降り立った。

それはあり得ない光景。ジェットイーグルが今目の前に居るという、信じられない光景だった。距離を取って然るべき魔鳥。大きさもあり、恐怖を抱かせるには充分だ。赤子なら、咥えて行かれてもおかしくないサイズなのだから。

「心配しないでください。このジェットイーグル達は、子ども達の従魔です」
「ジェットイーグルと契約を……っ、たしかに繋がりを感じるが……信じられない……ユストは知っていたのか」

テーラが一番信じられない光景だと思っている。魔鳥を、従魔を知るからこそだ。

「ふふっ。うん。子ども達と内緒にする約束だったからね。どうだい? すごいだろう?」
「すごい……」

素直にそれしか出てこなかったようだ。

「コウヤちゃん……偵察ってもしかして……」

タリスは察した。

「そうです。従魔の目を借りることもできますからね。ちょっと上から見てきてもらおうかと。マンタとかだと、大きくて、小回りが効かないんですよ」

ただでさえ、森の中の隠れ里だ。木々や天然の地形を上手く使って隠れているようで、上からでも探すのが困難だった。

「その点、ジェットイーグルなら気配を感じられたとしても、魔鳥ですからね。近くまで行けると思います。攻撃の回避能力は一級品ですし、どうかなと」
「ま、まあ、そうだね……ジェットイーグルに攻撃を当てるのは、至難の技だし……」

タリスは、昔遭遇したジェットイーグルを思い出しているらしい。納得したようだ。

「里の位置を正確に把握できないことには、従魔術師の人たちに任せる計画も始められません。なので、彼らにお願いしました」

迷宮化した森も、従魔達なら問題なく動けるはずだ。その探索のため、従魔術師達を今鍛えている。そろそろ、準備する時だ。

「それじゃあ、頼むよ」

コウヤがそう口にすると、リーダーであるシュンが頷いた。

「うん。行くよ、ブラッド。『疾風部隊』! 飛翔!」
《キュビー!!》
《《》》

シュンの号令で、ジェットイーグル達は空へ羽ばたく。空高くに舞い上がったのを確認して、シュンは他の子ども達に指示を出す。

「予定通り『フォーメーションB』で、南西方面から開始する」
「「「「はい!」」」」

子ども達は、その指示を念話でそれぞれの相棒に伝える。上空で一箇所に集まっていたジェットイーグル達が、南西方面へ向けて移動し始めると、綺麗なくの字を描いて飛んでいった。

それを大人達は大口を開けて、ポカンと見送ることしか出来なかった。

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読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
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