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第十章
385 尾行する遊びしてたの!
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その従魔と出会ったのは、半年ほど前だろうか。王都でもペット担当を用意することが決まった頃だ。
その日、コウヤが町の外に薬草を採りに行くという時に、門の側で遊んでいた五人の子どもたちに声をかけられた。
彼らは下は八歳から上は十歳のユースールの中でも注目される集団だ。孤児院の子もおり、他の子ども達の憧れを集める子ども達だった。
「コウヤお兄ちゃん! もしかして、薬草をとりに行くの?」
真っ先に声をかけてきたのは、今年十歳になる少女だ。彼女はいつでも輝く笑顔で、どんなカタブツな大人の男にでも突撃して話ができるほど社交性が高かった。
彼女は道具屋の一人娘で、幼い頃から様々な物を目にしていたため、鑑定スキルが知らず高くなっていた。好奇心旺盛だった彼女は、周りの大人達の話などを聞き、それが鑑定スキルというものだと知ると、コウヤへ相談しにきた。
コウヤは子どもに分類される。だから、話しかけやすかったのだろう。最初の言葉がこれだった。
『コウヤお兄ちゃん! わたし、かんていできるの! だから、はたらきかたをおしえてください!』
さすがのコウヤも驚いた。だが、この時はまだ前ギルドマスター達に酷使されている時だ。中々時間が取れない。それでも時間を見つけては、まず文字を教え、計算を教え、鑑定スキルについて教えていった。
その間に、彼女の幼馴染の四人が加わり、大人達が知らない内に、彼らは読み書き計算が出来るようになった。
読み書きが出来るようになれば、課題を出して放置することもできる。ますます忙しくなるコウヤも、なんとか彼らの教育を続けることができていたのだ。
ある意味、彼らはコウヤの初めての弟子だった。
コウヤが薬草を採りに町を出る時も、たまに彼女たちを連れて行った。大人達はまだ、生活することで精一杯なところもあり、コウヤは住民達にも信用されていたので、連れ出しても文句は出なかった。
これにより、薬草についても彼らは勉強し、彼女をはじめとした五人の子ども達は、ゲンにも臆することなく突撃していたのだが、それはコウヤも最近まで知らなかった。
『こいつら……マジで根性あるよな……俺にも薬草売り付けに来やがったからよ……』
お小遣い稼ぎに使っていたらしい。それも、知り合いの若い冒険者や、休暇の兵士を捕まえて、門の外に護衛として付き合わせていたというから驚いた。
『だって、コウヤお兄ちゃん、しんぱいするでしょ?』
しっかりした子達だった。
そして、今日も目ざとくコウヤを見つけたというわけだ。
「そうだよ。フィトちゃんは、今日は何してるの?」
「わたしは、さっきまで、兵のお兄ちゃんたちを尾行する遊びしてたの! ねー」
「ビコウ……尾行?」
他に『ビコウ』という遊びはあっただろうかとコウヤが考えていると、年長の男児が答える。
「おうっ。そうだぜ! 新しく入った兄ちゃんたちなら、よゆうで、つけられるくらいにはなったよなっ」
彼は花屋の息子だ。出会った頃は、自分は兵士になると息巻いていたのだが、最近は考え方が変わったらしい。今は家を継ぐ気のようだ。彼は身体強化が上手く、スキルの熟練度も今現在、十歳でありながら【大】だ。騎士も目指せる実力だった。
それでも家業の花屋を継ぐことを選んだ。これには、コウヤが関わっている。
『どんな職業でも、やり甲斐を見つけて極められることがあると思うんだ。それを見つけて、人生を通してやれたら……どこまで極められるんだろうね』
戦える人は沢山いる。冒険者でも、兵士でも、騎士でもそうだ。それでは面白くないと思ったらしい。
『オレは、花屋ってものを一生できわめる! 見ててよコウヤ兄! 王都や、ほかの国からも求められる大人気花屋にしてみせるぜ!』
力持ちで、周りにはガキ大将にか見えないが、彼は芸術的なセンスが良かった。『男が花なんて……』といかにも言いそうに見えるが、押し花の入った便箋を生み出したり、絵画ではなく、押し花で一つの作品を作るなど、既に商業ギルドが目をギラつかせるほどの才能があったのだ。
コウヤが気付いて、ゼットに見てもらうようにお願いしたので大事に至らなかったが、彼はこのユースールの爆弾の一つになっている。
ついこの間は、コウヤがうっかりブリザーブドフラワーや花籠などをぽろりと溢してしまったことで、更に彼に火がついたようだ。先日会ったゼットが『やっぱ、俺が担当することになった』と言っていたのだ。ゼットなら安心だろう。
「これもルディ兄のおかげだよ~。コツが分かったもん」
続けたのは九歳になった細工師の息子。
「あっ、やっぱりお兄ちゃん。ルディエお兄ちゃんになにか、きいたんだ! 今日のかんじ、べつじんだったから、へんだとおもった!」
そして、その彼に怒ってみせるのが、一番年下の七歳の彼の実妹だ。この二人は、計算が得意で、それを知っている大人達が時折、帳簿付けを手伝わせているらしい。そう、彼らの家のではなく、他の商店の大人達もだ。
これに、最初の頃は商業ギルドが問題視していたのだが、コウヤ仕込みの二人は、商業ギルドでも即戦力になる実力だと知られてからは、商業ギルドの方が、手伝いのお願いに来るようになっていた。
「まあね。けど、やっぱ今日のはシュンの指示がよかったんじゃない?」
「あ、それはある! さすがシュン兄!」
「そうそう! シュンはやっぱ、オレらの頭だよな」
「だねっ。コウヤお兄ちゃん。シュンったらね。隊長さんたちにほめられてたんだよ!」
「っ、おい……っ、そんな大したことじゃ……」
四人の仲間たちに次々に褒められ、照れるのが孤児院から来ているシュンという十歳の男の子だ。孤児院の中でもリーダー的な存在で、彼より年上の子ども達も頼りにしていた。
「へえ。そういえば、ルー君を目標にするって言ってたっけ」
「そっ、それはっ……う、うん……ルディエ兄みたいに……なりたいけど……っ」
「ふふっ。目標が見つかって良かったね」
「っ、うん」
明確に目指す先が決まったことで、最近は特に彼もしっかりしてきていた。コウヤや周りの大人達としては、少し寂しくもある。
孤児院の子どもは自立心が高い。シュンは特に早くこれに目覚めた。本当ならば、もっと大人達に可愛がられ、頼ることを知っていく頃。それが出来なかった彼だが、それも今の自分があるために必要な環境だったと納得できるほど、察しがよく、賢かった。
そんなシュンは褒められることに慣れていない。こんな時、照れながらも嬉しそうにするシュンを見て、少しコウヤもほっとする。
だが、彼はすぐに頭を切り替えて、コウヤに改めて問いかけた。
「それで……コウヤ兄は薬草採りに行くの?」
「そうだよ」
「一緒に行くのはダメ? その……コウヤ兄に相談があって……」
「相談?」
ベニやルディエ達も増えたユースールで、コウヤ個人に相談ということは、最近は減ってきていた。だから、これはとても珍しい。
「何?」
「うん……その……ちょっと前に、森でジェットイーグルが怪我してるのを見つけて……手当てはしたんだけど、それから何度も、その場所でそいつを見るんだ。それで……この前から……多分、話が出来るようになった」
「話……え?」
これに、それまでコウヤの背中側で大人しくしていたパックンとダンゴが反応する。因みにテンキは、ギルドで冒険者達の訓練のために留守番している。
《相性いいのかも(*^o^*)》
《ジェットイーグルとって……中々ないでしゅよ……》
《従魔術の才能あるんじゃない?》
《ありそうでしゅ……》
「え……ちょっ、ちょっとシュンくん、確認してごらん」
「ステータス?」
「うん。従魔術のスキルない?」
確認させると、目を瞬かせた。
「……あった……いつからだろう……もう【大】なんだけど……」
「えっ、いきなり? そうなると……」
《特殊個体 d(^_^o)》
《特殊個体でしゅね》
「うわ~……うん。ちょっと確認しよう。シュンくん、案内してくれる?」
「分かった」
そうして、一緒に行くという子ども達五人を連れて、森へ向かったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
その日、コウヤが町の外に薬草を採りに行くという時に、門の側で遊んでいた五人の子どもたちに声をかけられた。
彼らは下は八歳から上は十歳のユースールの中でも注目される集団だ。孤児院の子もおり、他の子ども達の憧れを集める子ども達だった。
「コウヤお兄ちゃん! もしかして、薬草をとりに行くの?」
真っ先に声をかけてきたのは、今年十歳になる少女だ。彼女はいつでも輝く笑顔で、どんなカタブツな大人の男にでも突撃して話ができるほど社交性が高かった。
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コウヤは子どもに分類される。だから、話しかけやすかったのだろう。最初の言葉がこれだった。
『コウヤお兄ちゃん! わたし、かんていできるの! だから、はたらきかたをおしえてください!』
さすがのコウヤも驚いた。だが、この時はまだ前ギルドマスター達に酷使されている時だ。中々時間が取れない。それでも時間を見つけては、まず文字を教え、計算を教え、鑑定スキルについて教えていった。
その間に、彼女の幼馴染の四人が加わり、大人達が知らない内に、彼らは読み書き計算が出来るようになった。
読み書きが出来るようになれば、課題を出して放置することもできる。ますます忙しくなるコウヤも、なんとか彼らの教育を続けることができていたのだ。
ある意味、彼らはコウヤの初めての弟子だった。
コウヤが薬草を採りに町を出る時も、たまに彼女たちを連れて行った。大人達はまだ、生活することで精一杯なところもあり、コウヤは住民達にも信用されていたので、連れ出しても文句は出なかった。
これにより、薬草についても彼らは勉強し、彼女をはじめとした五人の子ども達は、ゲンにも臆することなく突撃していたのだが、それはコウヤも最近まで知らなかった。
『こいつら……マジで根性あるよな……俺にも薬草売り付けに来やがったからよ……』
お小遣い稼ぎに使っていたらしい。それも、知り合いの若い冒険者や、休暇の兵士を捕まえて、門の外に護衛として付き合わせていたというから驚いた。
『だって、コウヤお兄ちゃん、しんぱいするでしょ?』
しっかりした子達だった。
そして、今日も目ざとくコウヤを見つけたというわけだ。
「そうだよ。フィトちゃんは、今日は何してるの?」
「わたしは、さっきまで、兵のお兄ちゃんたちを尾行する遊びしてたの! ねー」
「ビコウ……尾行?」
他に『ビコウ』という遊びはあっただろうかとコウヤが考えていると、年長の男児が答える。
「おうっ。そうだぜ! 新しく入った兄ちゃんたちなら、よゆうで、つけられるくらいにはなったよなっ」
彼は花屋の息子だ。出会った頃は、自分は兵士になると息巻いていたのだが、最近は考え方が変わったらしい。今は家を継ぐ気のようだ。彼は身体強化が上手く、スキルの熟練度も今現在、十歳でありながら【大】だ。騎士も目指せる実力だった。
それでも家業の花屋を継ぐことを選んだ。これには、コウヤが関わっている。
『どんな職業でも、やり甲斐を見つけて極められることがあると思うんだ。それを見つけて、人生を通してやれたら……どこまで極められるんだろうね』
戦える人は沢山いる。冒険者でも、兵士でも、騎士でもそうだ。それでは面白くないと思ったらしい。
『オレは、花屋ってものを一生できわめる! 見ててよコウヤ兄! 王都や、ほかの国からも求められる大人気花屋にしてみせるぜ!』
力持ちで、周りにはガキ大将にか見えないが、彼は芸術的なセンスが良かった。『男が花なんて……』といかにも言いそうに見えるが、押し花の入った便箋を生み出したり、絵画ではなく、押し花で一つの作品を作るなど、既に商業ギルドが目をギラつかせるほどの才能があったのだ。
コウヤが気付いて、ゼットに見てもらうようにお願いしたので大事に至らなかったが、彼はこのユースールの爆弾の一つになっている。
ついこの間は、コウヤがうっかりブリザーブドフラワーや花籠などをぽろりと溢してしまったことで、更に彼に火がついたようだ。先日会ったゼットが『やっぱ、俺が担当することになった』と言っていたのだ。ゼットなら安心だろう。
「これもルディ兄のおかげだよ~。コツが分かったもん」
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「あっ、やっぱりお兄ちゃん。ルディエお兄ちゃんになにか、きいたんだ! 今日のかんじ、べつじんだったから、へんだとおもった!」
そして、その彼に怒ってみせるのが、一番年下の七歳の彼の実妹だ。この二人は、計算が得意で、それを知っている大人達が時折、帳簿付けを手伝わせているらしい。そう、彼らの家のではなく、他の商店の大人達もだ。
これに、最初の頃は商業ギルドが問題視していたのだが、コウヤ仕込みの二人は、商業ギルドでも即戦力になる実力だと知られてからは、商業ギルドの方が、手伝いのお願いに来るようになっていた。
「まあね。けど、やっぱ今日のはシュンの指示がよかったんじゃない?」
「あ、それはある! さすがシュン兄!」
「そうそう! シュンはやっぱ、オレらの頭だよな」
「だねっ。コウヤお兄ちゃん。シュンったらね。隊長さんたちにほめられてたんだよ!」
「っ、おい……っ、そんな大したことじゃ……」
四人の仲間たちに次々に褒められ、照れるのが孤児院から来ているシュンという十歳の男の子だ。孤児院の中でもリーダー的な存在で、彼より年上の子ども達も頼りにしていた。
「へえ。そういえば、ルー君を目標にするって言ってたっけ」
「そっ、それはっ……う、うん……ルディエ兄みたいに……なりたいけど……っ」
「ふふっ。目標が見つかって良かったね」
「っ、うん」
明確に目指す先が決まったことで、最近は特に彼もしっかりしてきていた。コウヤや周りの大人達としては、少し寂しくもある。
孤児院の子どもは自立心が高い。シュンは特に早くこれに目覚めた。本当ならば、もっと大人達に可愛がられ、頼ることを知っていく頃。それが出来なかった彼だが、それも今の自分があるために必要な環境だったと納得できるほど、察しがよく、賢かった。
そんなシュンは褒められることに慣れていない。こんな時、照れながらも嬉しそうにするシュンを見て、少しコウヤもほっとする。
だが、彼はすぐに頭を切り替えて、コウヤに改めて問いかけた。
「それで……コウヤ兄は薬草採りに行くの?」
「そうだよ」
「一緒に行くのはダメ? その……コウヤ兄に相談があって……」
「相談?」
ベニやルディエ達も増えたユースールで、コウヤ個人に相談ということは、最近は減ってきていた。だから、これはとても珍しい。
「何?」
「うん……その……ちょっと前に、森でジェットイーグルが怪我してるのを見つけて……手当てはしたんだけど、それから何度も、その場所でそいつを見るんだ。それで……この前から……多分、話が出来るようになった」
「話……え?」
これに、それまでコウヤの背中側で大人しくしていたパックンとダンゴが反応する。因みにテンキは、ギルドで冒険者達の訓練のために留守番している。
《相性いいのかも(*^o^*)》
《ジェットイーグルとって……中々ないでしゅよ……》
《従魔術の才能あるんじゃない?》
《ありそうでしゅ……》
「え……ちょっ、ちょっとシュンくん、確認してごらん」
「ステータス?」
「うん。従魔術のスキルない?」
確認させると、目を瞬かせた。
「……あった……いつからだろう……もう【大】なんだけど……」
「えっ、いきなり? そうなると……」
《特殊個体 d(^_^o)》
《特殊個体でしゅね》
「うわ~……うん。ちょっと確認しよう。シュンくん、案内してくれる?」
「分かった」
そうして、一緒に行くという子ども達五人を連れて、森へ向かったのだ。
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