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第九章
358 コウヤには向いてない
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最後にご報告あります!
**********
アビリス王は、笑みを徐々に消していく。そして、一度目を閉じてから、真剣な顔で再び口を開いた。
「本来ならばきっと、神の手を煩わせるものではないのだろうな……不甲斐ないものだ……」
「いいえ。他の世界では、人々に神が不干渉を通す所もあります。滅びようが、発展しようが、全て人々に任せる……ですが、この世界では……俺たちは干渉することを選びました」
手を差し伸べ、決して滅びないように、重要な転換期には、立ち会って、より良い方向へと向かうように。誰もが人としての尊厳を持って生きられる世界を、共に目指したかった。
「どちらが正しいなんて言えません。干渉し過ぎるのも良くないし、不干渉に過ぎるのも良くはないでしょう。だから、俺たちもまた、考えている途中です。どちらかではなく、どちらも選択できるようにしたい。幸い、今の俺は半々です。これって、良いとこ取りができそうじゃないですか?」
新しい世界の形があってもいい。その形を今、手探りで探している。これにコウヤはとても良い位置に居ると思うのだ。
「心配なのは、俺が道を外すことです。神として間違ったら、リクト兄達が叱ってくれます。なので、この国の王子として間違ったら、お祖父様やジル父さんに、叱ってもらわないといけません」
「コウヤを叱る……か」
「間違うことなんて……」
ちょっと想像できないと、二人は顔を見合わせる。コウヤは宙に視線を投げて、考え、例を上げる。
「ほら、王子っていうことで、無理にアレが欲しいとか、コレが欲しいとか、こうしろとか高慢になったり」
「コウヤが? ないと思うが?」
「ないよ」
即答された。ならばと再び考える。
「冒険者ギルドを優先しろとか、教会にもっと支援をなんて言ったり」
「寧ろ遠慮しているだろう? この前の予算、値切ったのは誰だったか」
「コウヤのためにって、頑張って調整して、多く出すって言ってるのに、値切られた大臣が泣きそうだったよ?」
どうやらこれも、あり得ないと認識されているらしい。
「あとは……そうだ! 突然、どこかの王女と結婚したいとか言い出したり……っ」
「「コウヤにはまだ早い! 他国の王女になどもったいない!!」」
「……えっと……うん。俺も、これはさすがに冗談だけど……」
わがまま王子になるのも大変そうだ。
「う~ん。今度、シン様に聞いてみます。『王子としてのわがまま』には、どんなものがあるか」
「……それ以前に、コウヤがわがままを言うのを聞いたことがないんだが……」
ジルファスは不満そうに顔をしかめた。一方、アビリス王は少し思案した後、困ったような顔をコウヤに向けた。
「コウヤはあれだ。『他人に迷惑をかけない』ように普段から考えているだろう。そんな子はわがままには振る舞えないさ。周りに配慮しないのが、わがままだ。コウヤには無理だな」
「えー。お祖父様、俺だってやればできますよ。見ててください。きっといつか、傍若無人な、一級品のわがままをご覧に入れますからね!」
「コウヤ……わがままは努力して体現するものではないよ……」
コウヤは、出来ないということが嫌いだ。なんでも努力し、昨日まで出来なかったことを今日は出来るようにしようと考える。
どのみち、こんな真っ直ぐなコウヤには、性格的にわがままを言うなど無理だろう。純粋に気性の問題だ。言ったとしても、周りも叶えてあげたいと、叱るどころか協力しそうだ。
神として理想を押し付けたとしても、誰もコウヤのわがままだとは認識しないだろう。それを、アビリス王やジルファスはもう分かっている。
「残念だが、コウヤにも出来ないことはある」
「そう。認めようね。コウヤ、向いてないよ」
「そんなっ。いつかはきっとできるはずです! 俺は努力します!」
「だからね? わがままは努力とは寧ろ正反対の位置だから、コウヤには向いてないんだよ」
ムリムリと首を横に振られては、コウヤも面白くない。しかし、そこでそういえばと思い至る。
「う~ん……あっ! ほら、俺が冒険者ギルドの仕事を続けたいって事とか、これってわがままじゃないですか?」
言葉にはしないが、ジルファスやアビリス王だけでなく、この城で働く者たちは、全員がコウヤにはずっとここに居てほしいと願っている。
それを知っていながら、コウヤはここへは週に一度来られるかどうか。ギルド職員としての生活を優先していた。これは、立派なわがままではないか。そう思ったのだ。
「どうです? 俺、わがまましてましたよ!」
いっそ、胸を張って自慢げにするコウヤ。それを見て、ジルファスとアビリス王は顔を見合わせた後、吹き出した。
「っ、ふははっ。そうだなっ。それはわがままになるかもしれんっ」
「っ、ふふっ。うんうん。私たちはコウヤをここに留めたいと思っているからねっ。確かにわがままと言えなくもないよっ」
「ふふふっ」
コウヤも思わず笑った。アビリス王は笑いを治め、歩み寄ると、優しく微笑んでコウヤの頭を撫でる。その顔を確認すると、先程よりも困った子だなと言っているような表情に見えた。
それは気のせいではないようだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
◆お知らせします◆
第1巻発売から約二ヶ月。
第2巻が今月(8月)中旬に
発売決定しました◎
分量の調整で大幅に加筆!
ボリュームアップ!
一冊分の限界を突破してます(笑)
詳しくはこの後12:05頃
活動報告にて♪
次回、二日空きます。
よろしくお願いします◎
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新しい世界の形があってもいい。その形を今、手探りで探している。これにコウヤはとても良い位置に居ると思うのだ。
「心配なのは、俺が道を外すことです。神として間違ったら、リクト兄達が叱ってくれます。なので、この国の王子として間違ったら、お祖父様やジル父さんに、叱ってもらわないといけません」
「コウヤを叱る……か」
「間違うことなんて……」
ちょっと想像できないと、二人は顔を見合わせる。コウヤは宙に視線を投げて、考え、例を上げる。
「ほら、王子っていうことで、無理にアレが欲しいとか、コレが欲しいとか、こうしろとか高慢になったり」
「コウヤが? ないと思うが?」
「ないよ」
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コウヤは、出来ないということが嫌いだ。なんでも努力し、昨日まで出来なかったことを今日は出来るようにしようと考える。
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「残念だが、コウヤにも出来ないことはある」
「そう。認めようね。コウヤ、向いてないよ」
「そんなっ。いつかはきっとできるはずです! 俺は努力します!」
「だからね? わがままは努力とは寧ろ正反対の位置だから、コウヤには向いてないんだよ」
ムリムリと首を横に振られては、コウヤも面白くない。しかし、そこでそういえばと思い至る。
「う~ん……あっ! ほら、俺が冒険者ギルドの仕事を続けたいって事とか、これってわがままじゃないですか?」
言葉にはしないが、ジルファスやアビリス王だけでなく、この城で働く者たちは、全員がコウヤにはずっとここに居てほしいと願っている。
それを知っていながら、コウヤはここへは週に一度来られるかどうか。ギルド職員としての生活を優先していた。これは、立派なわがままではないか。そう思ったのだ。
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