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第九章
355 憧れだったんですよ
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空と指差すコウヤに、ジルファスがそういえばと思い当たったものを口にする。
「それは、あの乗り物で?」
ジルファス達は、マンタやエイを知っている。だから、それだと思ったのだろう。これに、コウヤは首を横に振った。
「いいえ。あれはあくまでも移動と輸送用ですから。国の代表の会談の場ですし、別のを考えてます。大丈夫ですよ。少し前から出来てるものがあります。話したら、ゼストパパ達もノリノリだったので」
「……それは……大丈夫なもの?」
「はい!」
元気いっぱいのコウヤだが、それが大人たちには少し不安になるようだ。ゼストラーク達まで関わって作ろうとする物だ。とんでもないものになる予感がする。
「それ、何のために作るつもりだったんだ?」
アルキスの問いかけに、コウヤは体を揺らして楽しげな笑顔を向ける。
「エリィ姉やばばさま達と遊べる遊園地を作りたくて」
「ゆ、ゆうえん? なんだ?」
「特別な遊ぶための娯楽施設です。家族で行くの、憧れだったんですよ~」
いつか、元気になったら行こうねと、前世の父母達とガイドブックまで見て楽しみにしていた。実際には行けなかったが、それならば是非ここでと思っていたのだ。
「地上だと場所の選抜が難しくて。昔と違って、ドラゴンとかも山奥でひっそり暮らしてますしね。それなら空を使おうということになりました!」
「……そ、そう……」
遊園地はやはり広い場所がいる。山奥もありだと思ったのだが、そこには、ドラゴンなど大型の魔獣や、ハーピーなども住処としているようなので、それならばと決めたのが空だった。
そして、それは既に、密かに着工されていた。人知れず始めたが、ルディエは少し前から気になっていたらしい。
「兄さん、それ……西の森の家の近くで作ってるやつ?」
「あ、気付いてた? 家からは少し離れた崖の下で造ってるんだけど」
「……うん。なんか、縦長の……白いやつだよね」
「そう。やっぱり、雲に見えた方がいいからね。曲線を出して、真っ白にしたんだ」
地上からある程度離れれば、入道雲に見えるようにと考えている。理想の形は『法螺貝』。縦長なので、地上に下ろしても場所を取らない。
「かなり大きいよね……あの崖というか、渓谷が深いみたいだし」
「縦に積むとはいえ、町一つ入れる感じで考えてるからね。あれだけの深さの渓谷が近場にあって良かったよ。メンテナンスできる場所は地上に必要だもの」
「……」
それを利用しようなんて考えるのはコウヤくらいだろう。崖自体も手を加えており、階段も出来ているのだが、そこまではルディエも確認出来ていなかった。
「ゼストパパが夢中になっちゃっててね。昼間はここの学園建設に参加したりするでしょう? けど、夜は必ずそこで作業してるんだ。中々戻って来ないって、リクト兄がちょっと困るぐらい」
「ゼスト様……」
かつて、こんなに夢中になれるものがあっただろうかと、リクトルスやエリスリリアが驚くほど、ゼストラークは楽しそうに作業しているのだ。
「でも、リクト兄やエリィ姉も、文句言えないくらい、施設のリクエストしてるから、楽しみにはしてるみたい」
リクトルスからは、スポーツジムや、各種訓練場。エリスリリアからは、結婚式場やスパ施設がリクエストとして来ていた。もちろん入れるよう、設計図には既に書き込まれている。
「で、ゼストパパが本気出しちゃってるから、もう八割方出来てるんです。あとは、上の方に、ゼストパパ希望の、城を建てたら完成です。そこで会談してもいいかなって」
「ゼスト様の造る城か……」
ジルファスは、どんな城になるのかと、少し楽しみになったようだ。だが、今回ゼストラークが挑戦するのは、この世界一般的な城ではない。
「重さも気にするので、ここみたいな石じゃなくて、木を使うんですけどね。俺の家をもっと立派にしたような感じになると思います」
「コウヤの家……ああ、けど、アレを城に?」
「はい!」
中身は少し変えるかもしれないが、装飾なども全部日本の城を参考にする。襖も豪華に、軽量化と風雨に強くなるように保護もかけるので、屋根も瓦でいく。
「ということで、完成にはあと一週間もあれば問題ありませんから、代表決めまでやると、それほど時間はありませんよ?」
「なら、こっちでせっつくしかないね」
「そうやねえ。ゼスト様もお披露目は早くしたいやろうし。これは急がんとね」
ルディエとベニがやる気になったようだ。密偵達は、二人に目を向けられて、蛇に睨まれた蛙のように、微動だに出来ないでいた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「それは、あの乗り物で?」
ジルファス達は、マンタやエイを知っている。だから、それだと思ったのだろう。これに、コウヤは首を横に振った。
「いいえ。あれはあくまでも移動と輸送用ですから。国の代表の会談の場ですし、別のを考えてます。大丈夫ですよ。少し前から出来てるものがあります。話したら、ゼストパパ達もノリノリだったので」
「……それは……大丈夫なもの?」
「はい!」
元気いっぱいのコウヤだが、それが大人たちには少し不安になるようだ。ゼストラーク達まで関わって作ろうとする物だ。とんでもないものになる予感がする。
「それ、何のために作るつもりだったんだ?」
アルキスの問いかけに、コウヤは体を揺らして楽しげな笑顔を向ける。
「エリィ姉やばばさま達と遊べる遊園地を作りたくて」
「ゆ、ゆうえん? なんだ?」
「特別な遊ぶための娯楽施設です。家族で行くの、憧れだったんですよ~」
いつか、元気になったら行こうねと、前世の父母達とガイドブックまで見て楽しみにしていた。実際には行けなかったが、それならば是非ここでと思っていたのだ。
「地上だと場所の選抜が難しくて。昔と違って、ドラゴンとかも山奥でひっそり暮らしてますしね。それなら空を使おうということになりました!」
「……そ、そう……」
遊園地はやはり広い場所がいる。山奥もありだと思ったのだが、そこには、ドラゴンなど大型の魔獣や、ハーピーなども住処としているようなので、それならばと決めたのが空だった。
そして、それは既に、密かに着工されていた。人知れず始めたが、ルディエは少し前から気になっていたらしい。
「兄さん、それ……西の森の家の近くで作ってるやつ?」
「あ、気付いてた? 家からは少し離れた崖の下で造ってるんだけど」
「……うん。なんか、縦長の……白いやつだよね」
「そう。やっぱり、雲に見えた方がいいからね。曲線を出して、真っ白にしたんだ」
地上からある程度離れれば、入道雲に見えるようにと考えている。理想の形は『法螺貝』。縦長なので、地上に下ろしても場所を取らない。
「かなり大きいよね……あの崖というか、渓谷が深いみたいだし」
「縦に積むとはいえ、町一つ入れる感じで考えてるからね。あれだけの深さの渓谷が近場にあって良かったよ。メンテナンスできる場所は地上に必要だもの」
「……」
それを利用しようなんて考えるのはコウヤくらいだろう。崖自体も手を加えており、階段も出来ているのだが、そこまではルディエも確認出来ていなかった。
「ゼストパパが夢中になっちゃっててね。昼間はここの学園建設に参加したりするでしょう? けど、夜は必ずそこで作業してるんだ。中々戻って来ないって、リクト兄がちょっと困るぐらい」
「ゼスト様……」
かつて、こんなに夢中になれるものがあっただろうかと、リクトルスやエリスリリアが驚くほど、ゼストラークは楽しそうに作業しているのだ。
「でも、リクト兄やエリィ姉も、文句言えないくらい、施設のリクエストしてるから、楽しみにはしてるみたい」
リクトルスからは、スポーツジムや、各種訓練場。エリスリリアからは、結婚式場やスパ施設がリクエストとして来ていた。もちろん入れるよう、設計図には既に書き込まれている。
「で、ゼストパパが本気出しちゃってるから、もう八割方出来てるんです。あとは、上の方に、ゼストパパ希望の、城を建てたら完成です。そこで会談してもいいかなって」
「ゼスト様の造る城か……」
ジルファスは、どんな城になるのかと、少し楽しみになったようだ。だが、今回ゼストラークが挑戦するのは、この世界一般的な城ではない。
「重さも気にするので、ここみたいな石じゃなくて、木を使うんですけどね。俺の家をもっと立派にしたような感じになると思います」
「コウヤの家……ああ、けど、アレを城に?」
「はい!」
中身は少し変えるかもしれないが、装飾なども全部日本の城を参考にする。襖も豪華に、軽量化と風雨に強くなるように保護もかけるので、屋根も瓦でいく。
「ということで、完成にはあと一週間もあれば問題ありませんから、代表決めまでやると、それほど時間はありませんよ?」
「なら、こっちでせっつくしかないね」
「そうやねえ。ゼスト様もお披露目は早くしたいやろうし。これは急がんとね」
ルディエとベニがやる気になったようだ。密偵達は、二人に目を向けられて、蛇に睨まれた蛙のように、微動だに出来ないでいた。
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