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第一章 ギルド改革編
第1巻連動SS①
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書籍第1巻で あの時あの人たちは?
の裏話二本用意しました。
お暇潰しにどうぞ。
**********
帰りを待ち望んでいます
【コウヤとタリスが迷宮に行っていた間のギルドでのお話】
先日王都から異動してきたマイルズは悩んでいた。
自慢ではないが、昔から要領が良かったと自負している。人当たりが良く、誰とでも上手くやれるというのは、それだけで多くの問題が避けられた。
もっと若い頃は、憎めないキャラだと笑って許されることも多かったのだ。だから、こんなにも上手くいかないことは初めてで、酷く戸惑った。
「あ、それもらいます」
「ひっ、あ、う、うん……お願いします……」
机に置かれていた紙の束を取る時、その机の主は、極力距離を取ろうとしていた。
「こっち終わったのっ……いッ……いいかな……」
また一人は、振り向いた時、そこに居たのがマイルズだと知ると、はっきりと顔を引きつらせる。紙の束を差し出した職員は少しでも距離を取ろうと、腕を目一杯伸ばしていた。
「……まだ慣れないか」
ここの職員達は、ほとんどが何らかの問題があって異動してきた者達ばかりだと聞く。だが、見た限り、間違いなくマイルズの知る王都の職員達よりも仕事はできる。
朝から夜まで、ほとんどひっきりなしに出入りする冒険者達を迎え入れ、送り出すことになるこの職場は、王都のギルドの三倍は忙しい。
それでも回っているのだ。冒険者達は待たせれば怒るし、声が小さくても怒る。依頼書を代読しても怒る生き物だ。そんな冒険者相手に、彼らは的確に対応していた。
もちろん、このユースールの冒険者達はそんな理不尽なことですぐ怒るような者たちではないというのは大きいだろう。だが、余分に待たせることなく、必要なことはきちんと押さえる仕事振りは間違いなく高く評価されるべきものだった。
だがしかし、なぜ冒険者達は良くて職員である同僚にはダメなのか不明すぎる。
ここまで話しも満足にできないというのは初めてで、マイルズも戸惑うしかない。
それでも仕事は仕事だ。マイルズは受付の後ろで、受け付けた依頼を棚に整理し、依頼完了したものを抜き取っていく。その後にも細々とした作業があるが、それは別の者がやっていた。
本来ならば、受付した者が後でまとめて一括でやる仕事だが、ドラム組の影響は大きく、そうしていつもよりも分担しないと回らないというのには驚くしかない。更には、こうして分担するパターンも当然のように受け入れているのだから、もはや脱帽だ。
感心しながらも手を動かすマイルズ。そこに、同じ異動組のフランが書類の束を抱えて駆け込んできた。
「あ、そこ終わった山だから、混ぜないように気を付けてフラン」
「うわぁ。ごめんなさい。助かりました」
「いやいや。大丈夫ですか? ちょっと息が切れてますよ?」
「うぅ、なんか、今日は昨日より疲れるっていうか……忙しいっていうか……」
フランは、動き回るのが得意だと申告したため、本格的に仕事をするようになった昨日から、完了届を持って配達部署と鑑定部署の間を行き来している。
昨日も通常の数倍忙しいとはいえ、余裕はあった。しかし、今日の昼過ぎくらいからどうも作業の回りが悪い。その関係でマイルズも少しやり辛さを感じていた。
「それ、あの子が居ないからだろうね」
「「へ?」」
査察官の一人が、手伝いながら告げる。すると、近くにいた査察官も頷いていた。彼らは、現在の作業量に見兼ねて手伝ってくれているのだ。さすがは本部の精鋭。すぐに馴染んでいた。
「あのコウヤって子。居るだけで、ここの職員の人達は安心してたっていうのかな。警戒心が少し解けてたんだよね」
「その上、受付の処理速度、尋常じゃないしね」
昼頃、コウヤとタリスが出て行ったなと思い出して気付く。
「あ、確かに、コウヤさんが居なくなった辺りからやりにくくなったような?」
「そうかもっ。僕も、昨日はもっとまとめて持って行けてたはずだなって」
コウヤは受付処理したものも、きれいに分類して渡してくれる。だから、マイルズも整理がしやすかった。そして、それが早ければ、配達部署へ持って行く書類も早くまとまった。一度に持って行ける分が多いため、フランも行き来する回数が少し減る。
「コウヤさん……早く帰ってこないかな……」
切実に口にすると、査察官達も笑う。
「それ、さっきあの辺の受付の人達も休憩の時に言ってたよ」
査察官達は気配を断てるため、警戒する職員達の話も、近くで聞き取ることができるのだ。
「コウヤさん、どんだけ頼りになるんですかっ」
フラン言葉に、聞こえていた冒険者達までもが頷いていた。
次の日の朝、コウヤは少し遅れて戻って来たが、その後確信する。
「間違いなくコウヤさんのお陰でこのギルドは回ってる!」
その日の日誌の最後には『コウヤさんは偉大です』と書き記した。
**********
マイルズさん達ギルド職員達のお留守番組のお話でした◎
もう一本あります。
の裏話二本用意しました。
お暇潰しにどうぞ。
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帰りを待ち望んでいます
【コウヤとタリスが迷宮に行っていた間のギルドでのお話】
先日王都から異動してきたマイルズは悩んでいた。
自慢ではないが、昔から要領が良かったと自負している。人当たりが良く、誰とでも上手くやれるというのは、それだけで多くの問題が避けられた。
もっと若い頃は、憎めないキャラだと笑って許されることも多かったのだ。だから、こんなにも上手くいかないことは初めてで、酷く戸惑った。
「あ、それもらいます」
「ひっ、あ、う、うん……お願いします……」
机に置かれていた紙の束を取る時、その机の主は、極力距離を取ろうとしていた。
「こっち終わったのっ……いッ……いいかな……」
また一人は、振り向いた時、そこに居たのがマイルズだと知ると、はっきりと顔を引きつらせる。紙の束を差し出した職員は少しでも距離を取ろうと、腕を目一杯伸ばしていた。
「……まだ慣れないか」
ここの職員達は、ほとんどが何らかの問題があって異動してきた者達ばかりだと聞く。だが、見た限り、間違いなくマイルズの知る王都の職員達よりも仕事はできる。
朝から夜まで、ほとんどひっきりなしに出入りする冒険者達を迎え入れ、送り出すことになるこの職場は、王都のギルドの三倍は忙しい。
それでも回っているのだ。冒険者達は待たせれば怒るし、声が小さくても怒る。依頼書を代読しても怒る生き物だ。そんな冒険者相手に、彼らは的確に対応していた。
もちろん、このユースールの冒険者達はそんな理不尽なことですぐ怒るような者たちではないというのは大きいだろう。だが、余分に待たせることなく、必要なことはきちんと押さえる仕事振りは間違いなく高く評価されるべきものだった。
だがしかし、なぜ冒険者達は良くて職員である同僚にはダメなのか不明すぎる。
ここまで話しも満足にできないというのは初めてで、マイルズも戸惑うしかない。
それでも仕事は仕事だ。マイルズは受付の後ろで、受け付けた依頼を棚に整理し、依頼完了したものを抜き取っていく。その後にも細々とした作業があるが、それは別の者がやっていた。
本来ならば、受付した者が後でまとめて一括でやる仕事だが、ドラム組の影響は大きく、そうしていつもよりも分担しないと回らないというのには驚くしかない。更には、こうして分担するパターンも当然のように受け入れているのだから、もはや脱帽だ。
感心しながらも手を動かすマイルズ。そこに、同じ異動組のフランが書類の束を抱えて駆け込んできた。
「あ、そこ終わった山だから、混ぜないように気を付けてフラン」
「うわぁ。ごめんなさい。助かりました」
「いやいや。大丈夫ですか? ちょっと息が切れてますよ?」
「うぅ、なんか、今日は昨日より疲れるっていうか……忙しいっていうか……」
フランは、動き回るのが得意だと申告したため、本格的に仕事をするようになった昨日から、完了届を持って配達部署と鑑定部署の間を行き来している。
昨日も通常の数倍忙しいとはいえ、余裕はあった。しかし、今日の昼過ぎくらいからどうも作業の回りが悪い。その関係でマイルズも少しやり辛さを感じていた。
「それ、あの子が居ないからだろうね」
「「へ?」」
査察官の一人が、手伝いながら告げる。すると、近くにいた査察官も頷いていた。彼らは、現在の作業量に見兼ねて手伝ってくれているのだ。さすがは本部の精鋭。すぐに馴染んでいた。
「あのコウヤって子。居るだけで、ここの職員の人達は安心してたっていうのかな。警戒心が少し解けてたんだよね」
「その上、受付の処理速度、尋常じゃないしね」
昼頃、コウヤとタリスが出て行ったなと思い出して気付く。
「あ、確かに、コウヤさんが居なくなった辺りからやりにくくなったような?」
「そうかもっ。僕も、昨日はもっとまとめて持って行けてたはずだなって」
コウヤは受付処理したものも、きれいに分類して渡してくれる。だから、マイルズも整理がしやすかった。そして、それが早ければ、配達部署へ持って行く書類も早くまとまった。一度に持って行ける分が多いため、フランも行き来する回数が少し減る。
「コウヤさん……早く帰ってこないかな……」
切実に口にすると、査察官達も笑う。
「それ、さっきあの辺の受付の人達も休憩の時に言ってたよ」
査察官達は気配を断てるため、警戒する職員達の話も、近くで聞き取ることができるのだ。
「コウヤさん、どんだけ頼りになるんですかっ」
フラン言葉に、聞こえていた冒険者達までもが頷いていた。
次の日の朝、コウヤは少し遅れて戻って来たが、その後確信する。
「間違いなくコウヤさんのお陰でこのギルドは回ってる!」
その日の日誌の最後には『コウヤさんは偉大です』と書き記した。
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マイルズさん達ギルド職員達のお留守番組のお話でした◎
もう一本あります。
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