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1巻
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しおりを挟む特筆事項① 査察が入りました。
「あぁぁぁ~……終わったぁぁぁっ‼」
見渡す限り、そこは緑の草原。足首までも到達しない、短く柔らかい葉をつけた草が、地面を覆っていた。そこに大の字になって転がれば、そよそよと吹き抜けていく風が心地よく体を撫でていく。
少年はしばらく目を閉じ、それを感じていたが、風に混じって届く臭いに顔をしかめた。
「……鉄くさ……」
錆びた鉄の臭い。それも仕方がない。寝転がる場所から百メートル先には、ライオンの体に蛇の尻尾、大きな猛禽類の翼を持った異様な生き物が、腹や喉を引き裂かれて死んでいるのだから。
「フッ、とっ」
勢い良く腹筋を使って体を起こし、そのまま立ち上がると、臭うそれらを遠目で確認する。
それから、腰の小さなポーチに手を入れ、スマートフォンに似た形と薄さのカードを取り出した。
指紋認証のように、端にある丸い印を摘まみ、魔力をほんの少量流せば、名前や年齢、種族、職業、レベルなどの情報が表示される。
名前……コウヤ
年齢……12
種族……人族?
レベル……30?
職業……ギルド職員?
魔力属性……火?、風?、水?、聖?、???
スキル・称号……エリスリリア神の加護、???、???、隠蔽
ハテナ表記がとにかく多い。それは気にせず、少年――コウヤは、今度は丸の印から少し外れた箇所に少量の魔力を流す。すると『討伐記録』が表示されるのだ。一番上にあるのが、たった今倒したものの記録。
「【Aランク上位種。キメラ】……間違いないね」
ほっとしながらも、次いで溜め息が漏れる。本来ならば、ギルド職員であるコウヤが倒すべきものではない。
「はあ……やっちゃった……」
こんなものは戦闘職バリバリの冒険者が出張る案件だ。間違っても、今年十二歳になった少年が相手にするものではない。
「戦うの好きじゃないし、みんなが心配するからギルド職員になったのに……」
コウヤは、こんな凶暴な魔獣を糧にして生きていくような、不安定で、命の保証のない冒険者の生き方は向かないからと、あえて冒険者ギルドの職員になったのだ。それなのに、何故こんな所で一人で戦うことになっているのかと思い出す。
「えっと、確かこのキメラの討伐依頼を受けた人達が何度も失敗して、毎日、毎日、治癒魔法使いってことで駆り出されて……あ、そうだ。俺がキレたんだ。もういい加減にしろって思ったもんね。うん。あれはしょうがない」
朝も夜も関係なく受付から引っ張り出され、叩き起こされ、食事の時間も削られた。
それなのに、ギルド職員だからと特にお礼も報酬もなし。マスターもできるならやるのがギルド職員だと言ってふんぞり返っているだけ。納得できない。お手当てくらい出して然るべきだと流石に頭に来たのが今朝。
怪我や体の不調を治療できる治癒魔法使いは大変貴重だ。
高い魔力と、繊細な魔力コントロールができないと実現しない。それ以前に、特別な神の加護がなければ発現しない魔法だった。
治癒魔法使いの多くは、教会で働いている。そして、お布施としてかなり高額のお礼をもらって患者を治療するのだ。ただし、そんな治癒魔法使いも、どうやら年々発現率が下がっているらしく、お陰で更に治療費は高額化しているという。
「エリィ姉、金額を見て治療する人達が嫌いだって言って怒ってたし、別にお金が欲しいわけじゃないんだけど……ってことだから誤解しないでね?」
《分かってるわよ。バカね》
目を閉じて話しかけるようにすれば、頭の中に返事があった。それに笑みを浮かべて目を開けると、景色が変わる。肌に感じていた風も消えた。そこは広い洋館の一室だった。
「あ、久しぶり」
「久しぶりね。っていうか、教会に来ればいつでも会えるって言ったのに、コウヤちゃん全然来ないんだものっ」
目の前で腰に手を当ててプリプリと怒るのは、小柄で可愛らしい女神。愛と再生を司る神、エリスリリア。コウヤが『エリィ姉』と呼んだ相手だ。
金色の腰まで伸びた髪をゆるく三つ編みにして、淡いピンクのドレスを着ている。表情によっては十五、六歳くらいにも見えるお人形さんのような女神様。時々口煩くはなるが、優しいお姉さんだ。
そんな彼女に勧められて部屋の中央にあるテーブルにつく。そこには、上品なティーセットが用意されていた。
「だって、今教会に行ったら捕まるでしょ?」
「はっ、そうね」
治癒魔法が使えることは、既に町中に知られている。そんなコウヤが行けば、教会に所属しろだのなんだのと神官達が迫ってくるだろう。
「そうなったらどうなると思う?」
下手をすれば監禁だ。最近の教会はキナ臭い。治癒魔法の使い手が少なくなっているということは、それだけ神の加護が少なくなっているということ。彼らにとっては由々しき事態だ。
「消えちゃうわね」
「うん。消しちゃうね、教会。俺、今キレやすいみたいだし」
「それ、職場のストレスだと思うの」
「やっぱり?」
ちょっとそうかなと思っていたコウヤだ。
「あれをブラック企業って言うんじゃないかなって、自分でも最近気付いた。生活の安全と安定のために目を瞑ってきたけど、そろそろ限界かも」
いくらなんでもあれはない。
「最近、休みがないんだよ。最初の頃は週に二回のお休みあったし、契約でもそうあったんだけど、職員足りないからって休み消えたよ? どこ行ったの、週休二日制。しかも勤務時間の半分が時間外労働じゃない? クビになるのイヤだから黙ってるけどね!」
今気付いた。健康にも気を使っている身としては、大変不安だ。けど、せっかく就いた職は失いたくない。すごい葛藤。だから、仮に法律がしっかりしていたとしても過労死はなくならないのだ。
「休みがないと余裕がない。そうするとどうしてもイライラしちゃうんだよねっ。でも、働けるって素晴らしいって思っちゃった自分がいる!」
「うん。コウヤちゃんはこっちに戻って来てもポジティブだったもんね。まぁ、人生の半分以上もベッドの上での生活だったんだから、そう思うのも仕方ないんだけどね」
「そう。自分で稼げるって素晴らしい!」
コウヤは生まれる前の生の記憶を持っている。
この世界に来る前、前世ではずっと病院のベッドの上で過ごしていた。思うように動かない体は細くて、看護師さん達を見て働くということに憧れたものだ。
「でもね。いくら動けるようになったからって、今回のあれはないと思うの」
「今回? 何かあったっけ?」
首を捻って思い返してみる。
今日は早朝、まだ日が昇らない時分に叩き起こされた。前日の深夜過ぎまで書類整理に没頭していたので、眠ったのはほんの二時間ほどだろう。大体、書類に間違いが多過ぎる。細かな表記もそうだが、今月に入ってまだ一週間なのに経費と予算の採算が既に合わないし、どこから持ってきたのか分からないお金の記録とか、逆にどっかに消えるお金とか、謎だらけだった。半分も終わらなくて、ふて寝したのが昨晩だ。
そして、起こされてから、今回のキメラを相手に怪我をしたという冒険者達の治療。瀕死の人も多かったが、中には『絶対これは酒に酔って喧嘩で出来た怪我だろう』というのが交ざっていたし、眠かったのと面倒になったので、広範囲の治癒魔法【エリアハイヒール】をお見舞いした。古傷や慢性疾患までは治らないので、大騒ぎにはならないはずだ。
「町全部を覆うエリアハイヒールはやり過ぎたかも?」
「うん。あれもそうだね」
あれもということは、違うらしい。ならばその後、キレたやつだろうかと目を瞬かせる。
「あれができるならもっと早くやれって言われてキレたやつ? 冒険者全員転がしたの、ダメだったよね。ギルド職員として」
「うん。それもちょっとダメだね。けどそれじゃないんだよ?」
これでもないならなんなのか。あとはあのキメラを倒したことしかない。
「俺にはやっぱりあれの相手は難しかったよね。倒せたのが奇跡!」
これには、コウヤの答えを聞きながら部屋に入って来た者が答える。
「うん、そうだね~。奇跡だよね~」
知的なメガネ男子。彼は戦いと死の神、リクトルスだ。物騒なものを司っているけれど、全くそんな感じはない。見た目以上に理性的で穏やかな神様だ。第一印象は優しい保育士さん。いつも頭を撫でてくれる彼を、コウヤは兄として慕っている。
「あ、リクト兄、こんにちは?」
「はい、こんにちは~……じゃないからね⁉」
何やら怒っていらっしゃる。でも、きっと理不尽なやつではない。また心配をかけたのかもしれない。このお兄さんはちょっと過保護なところがある。そして、その答えがこれだった。
「だって武器がペーパーナイフってなに⁉ あれじゃ普通切れないよ⁉ 何を切るものか分かってるよね⁉」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解! なのになんでキメラ切ってるの⁉」
よしよしと頭を撫でられた後に、ガシッと頭を片手で鷲掴みにされたコウヤ。反省しなくてはならないらしい。
「あ、だから切りにくかったんだ。魔力で覆って一生懸命切れるようにしたもん。それに妙に短かったし、細くって困った」
「もっと早く気付こう? 怪我したらどうするのかな?」
「ごめんなさい」
兄の目が怖くなってきたので、しっかり、はっきり謝っておいた。
そこへ、今度は威厳のあるお父様、創造と技巧の神、ゼストラークが登場する。
「まったく……あれほど剣の打ち方もしっかり教えただろうに……」
「だって、ゼストパパの直弟子ってスキルすごいんだよ? 下で打ったら一発で、魔剣も聖剣も、神刀も妖刀もおまけに降魔剣まで作れちゃったもん」
しっかり気合いを入れて炉から自作したのがいけなかったのかもしれない。そういえば、その時に作った炉は、壊すのがもったいないからと結界を張って、人気のない森の中に放置してあるなと思い出すコウヤだ。
「……その剣は、どこにやった……」
それを使えば良かったのではないかとゼストラークが尋ねる。しかし、コウヤは当然のように、そんな選択肢は頭になかったと首を傾げてみせる。
「怖くなって亜空間に放り込んだ。どっかいい感じのダンジョンとかの最下層に封印しようかと思って。変なとこに棄てたらダメなやつでしょ?」
「産業廃棄物みたいに言わないように……」
作ったのは良いけれど、棄てる場所に困るってあるよねと何度も頷く。そこで、リクトルスが肩を掴んで迫ってきた。
「待って、そんな剣が作れたってことは、炉も作ったんだよね? 【神匠炉】はどうしたんだい?」
やっぱり気付くかと、コウヤは嬉しそうに笑顔で答えた。
「それね。今、俺思い出そうとしてるからちょっと待って」
「覚えてない⁉」
流石はキレ者でしっかり者のリクトルスだ。誤魔化しは通用しない。実は、コウヤは先ほどから正確な場所を思い出そうとしていたものの、まとまらない思考に困っていた。けれど最悪なことにはなっていない、と勝手に安心している。
「大丈夫! ちゃんと結界張って不可視の魔法もかけてあるよ!」
「それは大丈夫じゃない! エリス、捜索!」
「任せて!」
なんだか慌ただしい。一緒になってバタバタしては邪魔になるからと、コウヤは呑気にお茶を啜った。
「あ、これ美味しい」
「……コウヤ、反省は?」
ゼストラークが呆れながら対面の席に座って、そう促す。
コウヤは目を瞬かせてから口にした。
「えっと……炉の場所忘れちゃってごめんなさい。それと、ちゃんと剣で戦わなかったのも反省します」
「ああ……」
真っ直ぐにゼストラークを見て告げれば、彼は小さく頷いた。ただ、まだ少し納得していない様子。眉間の皺は既に刻まれたものだが、普段より二本多い。ならば、今後このようなことがないようにしますと、もっとしっかり示さなくてはと気合いを入れた。
「今度からは、炉ごと亜空間に片付けるね」
「……ん?」
ゼストラークの表情が固まった。しかし、それは気にせずにコウヤは思考に沈む。炉はただの物ではないので、どう片付けるか考える必要が少しあるが、できなくはないだろう。将来的には家丸ごと持っていけるかもしれない。これは一考の価値ありだ。
うんうんと頷いて続けた。
「あと、しまってた剣を使えば良かった。使わないのもったいないもん。あれならどれでも一太刀だったよね。試し斬りくらいしないと、作った剣に申し訳ないし?」
「ん? うん? 待ちなさい。今回の反省は、一人でキメラに挑んだことだ。それと、その剣や刀はあまり使わないように。幾分か力を抜いて打ったのを使いなさい」
「はい!」
「本当は良くないがコウヤなら……なまくらを打つ感覚でいい加減に打つんだぞ」
「片手間ってやつだね。やってみる!」
刀匠や鍛冶師達に失礼だが、そうでなくては伝説級の代物がポンポン出来上がってしまう。これは量産してはならないものだ。
そこで、神匠炉の検索をかけていたエリスリリアが声を上げる。
「見つけたっ! 場所と……地図これね。とりあえず、不干渉の結界も張っておいたわ。なるべく早く処理してちょうだいね」
「分かった。あれ、結構近かったね」
エリスリリアから渡された地図を確認すると、コウヤが現在住んでいる町から徒歩で二十分圏内だ。とはいえ、それはコウヤの徒歩でという注釈が付くため、一般的には歩いて一時間と少しかかる。
コウヤの張った不可視の結界があったとしても、そこに何かあることは分かるので、いくら人気がなくとも、そのまま放置しておけば、異変ありと領から調査隊が派遣されてしまうところだった。
「戻ったらキメラを回収して、道すがらどうするか考える。今回のことで、やっぱり使える剣の一本くらい打っておくべきだって思ったし、三日ぐらいでどうにかするね」
ひょいっと椅子から飛び降り、コウヤは三人に顔を向ける。
「それじゃぁ、エリィ姉、リクト兄、ゼストパパ、またね」
ここは神界、長居はできない。
「ええ。寂しくなったら、いつでも会いに来なさいよ?」
「一人でなんでもやろうと思わないように」
「あまり無茶をしてはだめだぞ」
「は~い」
その返事を合図にするように、コウヤは次の瞬間、キメラが転がる草原に戻っていた。
「さてと、まずは何しようかな?」
意識だけ神界に連れて行かれていたため、姿勢はそのままだ。何気なく持っていたギルドカードには、またコウヤのステータスが表示されていた。
ハテナ表記は、カードが正確に読み取れていないものだ。提示義務が生じるのは町の出入りの時と、ギルド内。だが、ステータスは最低限、名前と年齢、種族、職業が確認できればいい。非表示設定ができるので、ハテナも消すことが可能だ。
ギルド職員になったことで、怪しいと思われる情報を非表示にできる仕掛けを知った。故意に偽ることはできないが、見せないようにすることはできる。お陰で色々助かっていた。コウヤは自分のことを、なるべくしてギルド職員になったのだと思っている。
しばらくするとその表示は消えた。光沢のあるカードは、鏡のように自分の顔も映し出す。幼く見えるその顔は、前世のものと同じではあるが、転生する数年前の幼い姿。
そして、肩口まで伸びた髪は少し紫がかった銀。瞳の色も薄いアメジスト色に変わっており、それが病弱であった頃の名残のようにひ弱に見せていた。
「【ステータス】」
そう口にすれば、目の前に立体映像のようなパネルが出現する。これは、当人にしか見ることができない。表示されているのは、カードの情報より詳しく、世界が保有している正しい個人情報。
名前……コウヤ
年齢……12
種族……神族(未)
レベル……370
職業……聖魔神(半邪神)、ギルド職員(仮)
魔力属性……火10、風10、水10、土10、光10、闇10、聖10、邪10、空10、無10
スキル・称号……ゼストラーク神の加護、エリスリリア神の加護、リクトルス神の加護、技巧士、治癒士、武闘士、魔工士、神匠の直弟子、自己再生、武器絶対相性、隠蔽(極)、世界管理者権限(中)、神々の愛し子、可愛い末っ子、聖魔を合わせ持つ者、邪神の生まれ変わり、無限の可能性を秘めし者
「あ、レベル上がった。キリがいいね」
色々とあり得ない内容には目を向けない。一つ手を振ってそれを消すと何事もなかったように、地面に落ちていた汚れたペーパーナイフを拾い上げる。そして、取り出した布で汚れを拭き取った。
「これはもう使えないかな?」
脂や血が染み込んでしまったペーパーナイフは、もう紙も切れないかもしれないなどと、どうでもいいことを考えながら、改めてキメラの遺骸に向き合った。
コウヤは、前世では病弱な日本人の男の子として生きていた。ただし病弱だった原因は、その更に前の生による問題だ。
こちらの世界で神として生まれたコウヤは、魔法と聖魔を司っていた。聖魔とは、分かりやすくいえば、善悪のことだ。世界の倫理観や秩序とも言えるかもしれない。
それを定め、人々に理解させていくのがコウヤの仕事だった。まだ新たに派生したばかりの世界であったため、これは重要なことだった。これらのバランスを整えなくては生と死の価値さえ分からなくなる。
コウヤは度々人界に降り、世界に秩序をもたらしていった。だが、はみ出してしまう者はいる。その辺りの境界の設定は難しいものだ。
そして、未だ調整が必要な段階で、増え過ぎた人族達は、与えられた秩序の枠を窮屈だと感じ始めた。やがて、徒党を組み、コウヤを悪しき神だと認識していったのだ。
多くの人々の悪意がコウヤを苦しめ、狂気に落としてしまった。その結果邪神と呼ばれ、全ての人々がコウヤを倒そうと立ち向かって来た。これによってコウヤは倒れ、ゼストラーク達の怒りに触れた人々は、その数を半分にまで減らされたという。
とはいえ、邪神という共通の敵が出来たお陰で、世界の秩序がこの時、安定したのも確かだった。
「元邪神って言われても、やっぱりまだはっきりと思い出せないな」
かつての記憶はとても曖昧だが、この世界に転生してから、ゼストラーク達のことを家族のように感じている。魂が覚えているのだ。
「魂の傷が癒えるまで世界をゆっくり見聞しろって言われても、難しいんだよね~」
今、コウヤは完全な神族ではない。ステータスで表示される【未】は『未成熟』という意味。これによって、時折神界に行くことはできるが、ずっと滞在することができない。存在が安定していないからだ。
まずは弱ってしまった魂を回復させ、力を取り戻す必要があった。それでも、ゆっくりとだが、記憶は戻ってきている気がしている。
「実戦とか、まだ不安だし」
中途半端に思い出しかけている、神であった頃の記憶は、その頃の力と今の力の差を感じさせ、上手く調整できないのだ。
コウヤは決して自分が強いとは思っていない。もちろん実際は、冒険者達では敵わない相手を倒せるほどの隔絶した力を持っている。だが、コウヤの中には、前世の多くをベッドの上で過ごした感覚が未だに根強く残っており、自身ができることは他人もできると思い込んでいた。その上、神であった頃に容易くできていた記憶が混在しているのだ。
結果、日々戦いに身を置く冒険者になら、これくらいは問題なくできるだろうという勝手な思い込みが生まれた。これにより、『冒険者はすごい』『冒険者達は自分よりも強い』と思い込んでいるのだ。
そんなコウヤが今回、こうして出てきてしまったのは、単にキレた勢いだけだった。
それはともあれ、ゼストラーク達としては、コウヤが世界を見て回ることで、少しでもこの世界を好きになって欲しいと願っている。コウヤが冒険者になって旅することも推奨しているのだが、ギルド職員としての仕事が好きなコウヤには、冒険者になることは頭にない。
彼は、倒したキメラに改めて目を向ける。
「人って案外、やればできるもんだなぁ」
人じゃなくて神だけど、勢いってすごいと思うコウヤだ。目の前で死んでいるキメラは、倒せる力があるとしても、普段のコウヤなら全く相手にしようなんて考えない相手なのだから。
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