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第八章 学校と研修
311 一緒に行こうか
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すぐに出かけようと思ったのだが、そのまま消えればベニ達も心配する。明日は丁度休みだ。安心して出かけられるので、遅くなっても心配しないでくれと伝えに教会へ向かった。
「は~、エリィちゃんは……ちょっと出かけてくるって言っただけだったんだけどねえ。お土産にカニ獲ってくるって」
「そうなの? へえ。カニ、良いね」
そんな呑気な話ではなかったはずだが、どうにもまったりしてしまった。
因みに、パックンとテンキは人化した姿を神官達に見せながら、先に屋上に向かっている。そこに移動に使う予定の『飛行船エイII号機』が用意されているのだ。
コウヤの持つ『光飛行船エイ』を【オリジナル】として、これを基に同型機をいくつか作った。量産型とまで言えるほど誰にでも作れるものにはならなかったが、ゼストラークの技術も習得し始めたドラム組程の技術力があれば、なんとか出来るシロモノだ。
『闇飛行船マンタ』より小さいため、少人数での使い勝手が良い。ドラム組を派遣するための移動手段として丁度良い規模だ。
現在、『Ⅲ号機』までの三機が用意されている。だが、ゆくゆくは一般にも利用できる移動手段として確立させるつもりなので、まだ増える予定だ。とはいえ、現在は教会関連の特別な移動手段としてのみ使用していた。
それはさて置き、お茶でも淹れ出しそうなほどの雰囲気になってしまったコウヤを注意したのは、部屋に入ってきたルディエだった。
「兄さん、もう暗くなるし、行くなら早く向かわないと。それに、遅くなると色々終わっちゃうんじゃない?」
「あ、そうだねっ。急がないとっ」
「ボクも行くよ」
「ルー君、いいの? 疲れてない?」
ルディエは神子として、日によって王都や他の教会にも顔を出していた。神子の服を着て聖堂に居るルディエは、見るだけでも寿命が延びると評判だ。
『ボクを見て拝むのやめて欲しい……』
つい先日も、遠い目をしながらそう言っていた。
「別に、特別やる事もないし。寧ろ、体が鈍りそう」
「訓練はしてるんでしょ?」
「訓練と実戦は違うって知ってるくせに……」
「ふふっ。分かった。なら一緒に行こうか」
「うん」
「じゃあ、ベニばあさま。ルー君と行ってくるね」
振り向いて告げ、ルディエと連れ立って部屋を出て行く所で、なぜか王都に居るはずのニールに出会った。
「あれ? ニール、どうしたの?」
その手には、重箱が抱えられており、思わずそれに目がいった。
「ご一緒させていただきたく、参上いたしました。こちらはお夕食です。エリス様の分も合わせてご用意しました」
最近、ニールは城外でも不意に現れる。コウヤが用が出来てどこかへ行こうとする時が多い。どうやって察知しているのかと思っていたが、どうやら、白夜部隊から連絡を回してもらっているようなのだ。
『実力込みで、認めていただきました』
神官達の訓練にもしれっと紛れていたことがあり、どうしたのかと思っていたのだが、聞いた所によると、コウヤが王子の立場を得ると決まった頃。ふらっとユースールの訓練場に現れて、白夜部隊の面々と手合わせを願い出たらしい。
コウヤの傍に居るに値する実力があるかどうか見て欲しいと言われて、白夜部隊の者たちはそれぞれ相手をしたという。その結果、認められたというわけだ。
それを聞いた時。まるで道場破りみたいだなと思ったものだ。
これにより、コウヤが外出する時にニールへ連絡が入るようになったようだ。今回も、それによりいち早く駆けつけ、更にはできる侍従よろしく、夕食まで用意していた。
実際、コウヤの侍従長候補の筆頭らしい。
「ありがとう。夕食まで頭回ってなかったよ。なら、一緒に行こうか」
「はい!」
嬉しそうに目を輝かせるニールは当然のように斜め後ろについて、コウヤの後を追った。
夕日が完全に沈む前に飛び立ったのだが、問題の島の上空に着いた時には星の光も幾つか確認できる頃になっていた。
魔法によるステルス機能もしっかり搭載されているため、町の上空も問題なく進み、地上の様子を確認する。
「この辺……が、王都? のはずだよね?」
コウヤが首を傾げれば、隣に来たルディエが同じ場所を見ながら頷く。
「うん……この前、偵察した奴から写真を見せてもらったけど……間違いなく、ここに城っぽい建物があったはずなんだけど……」
そこだけ何もなく見える。ぽっかりと広い土地だけが空いているように見えるのだ。
《……主様。もう少し降りてみてください。恐らく、これは特殊な結界です》
「え?」
テンキの助言により、少しだけ高度を落とす。すると、確かに感じられた。ニールやルディエも気付いたらしい。
「歪み……が見えます」
「すごい……なに、この高度な結界……」
本当に集中しないと分からないのだ。そこにあるものが無いように見えるなんてこと、普通はありえない。
しかし、コウヤには中の様子も視えた。その目を通して、テンキやパックンも視えたらしい。この結界の力がダンゴのものだったことも関係しているかもしれない。
「あ~……エリィ姉まで……」
コウヤが思わずそれだけ言って絶句する。
《……ベニ様達とご一緒されるので、予想できないことではありませんでしたが……これは……》
テンキも、うわあと顔を顰める様だ。
首を傾げるルディエとニールに伝えるべきか迷う。しかし、そんな迷いを持たない素直な子がパックンだ。
《すごいよ! エリス様、金ピカのメイスでどんどん鎧の人達を壁に張り付けてく!》
「……え?」
「……メイス……」
そこにあったのは、愛と再生の女神が笑顔で無双する姿だったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「は~、エリィちゃんは……ちょっと出かけてくるって言っただけだったんだけどねえ。お土産にカニ獲ってくるって」
「そうなの? へえ。カニ、良いね」
そんな呑気な話ではなかったはずだが、どうにもまったりしてしまった。
因みに、パックンとテンキは人化した姿を神官達に見せながら、先に屋上に向かっている。そこに移動に使う予定の『飛行船エイII号機』が用意されているのだ。
コウヤの持つ『光飛行船エイ』を【オリジナル】として、これを基に同型機をいくつか作った。量産型とまで言えるほど誰にでも作れるものにはならなかったが、ゼストラークの技術も習得し始めたドラム組程の技術力があれば、なんとか出来るシロモノだ。
『闇飛行船マンタ』より小さいため、少人数での使い勝手が良い。ドラム組を派遣するための移動手段として丁度良い規模だ。
現在、『Ⅲ号機』までの三機が用意されている。だが、ゆくゆくは一般にも利用できる移動手段として確立させるつもりなので、まだ増える予定だ。とはいえ、現在は教会関連の特別な移動手段としてのみ使用していた。
それはさて置き、お茶でも淹れ出しそうなほどの雰囲気になってしまったコウヤを注意したのは、部屋に入ってきたルディエだった。
「兄さん、もう暗くなるし、行くなら早く向かわないと。それに、遅くなると色々終わっちゃうんじゃない?」
「あ、そうだねっ。急がないとっ」
「ボクも行くよ」
「ルー君、いいの? 疲れてない?」
ルディエは神子として、日によって王都や他の教会にも顔を出していた。神子の服を着て聖堂に居るルディエは、見るだけでも寿命が延びると評判だ。
『ボクを見て拝むのやめて欲しい……』
つい先日も、遠い目をしながらそう言っていた。
「別に、特別やる事もないし。寧ろ、体が鈍りそう」
「訓練はしてるんでしょ?」
「訓練と実戦は違うって知ってるくせに……」
「ふふっ。分かった。なら一緒に行こうか」
「うん」
「じゃあ、ベニばあさま。ルー君と行ってくるね」
振り向いて告げ、ルディエと連れ立って部屋を出て行く所で、なぜか王都に居るはずのニールに出会った。
「あれ? ニール、どうしたの?」
その手には、重箱が抱えられており、思わずそれに目がいった。
「ご一緒させていただきたく、参上いたしました。こちらはお夕食です。エリス様の分も合わせてご用意しました」
最近、ニールは城外でも不意に現れる。コウヤが用が出来てどこかへ行こうとする時が多い。どうやって察知しているのかと思っていたが、どうやら、白夜部隊から連絡を回してもらっているようなのだ。
『実力込みで、認めていただきました』
神官達の訓練にもしれっと紛れていたことがあり、どうしたのかと思っていたのだが、聞いた所によると、コウヤが王子の立場を得ると決まった頃。ふらっとユースールの訓練場に現れて、白夜部隊の面々と手合わせを願い出たらしい。
コウヤの傍に居るに値する実力があるかどうか見て欲しいと言われて、白夜部隊の者たちはそれぞれ相手をしたという。その結果、認められたというわけだ。
それを聞いた時。まるで道場破りみたいだなと思ったものだ。
これにより、コウヤが外出する時にニールへ連絡が入るようになったようだ。今回も、それによりいち早く駆けつけ、更にはできる侍従よろしく、夕食まで用意していた。
実際、コウヤの侍従長候補の筆頭らしい。
「ありがとう。夕食まで頭回ってなかったよ。なら、一緒に行こうか」
「はい!」
嬉しそうに目を輝かせるニールは当然のように斜め後ろについて、コウヤの後を追った。
夕日が完全に沈む前に飛び立ったのだが、問題の島の上空に着いた時には星の光も幾つか確認できる頃になっていた。
魔法によるステルス機能もしっかり搭載されているため、町の上空も問題なく進み、地上の様子を確認する。
「この辺……が、王都? のはずだよね?」
コウヤが首を傾げれば、隣に来たルディエが同じ場所を見ながら頷く。
「うん……この前、偵察した奴から写真を見せてもらったけど……間違いなく、ここに城っぽい建物があったはずなんだけど……」
そこだけ何もなく見える。ぽっかりと広い土地だけが空いているように見えるのだ。
《……主様。もう少し降りてみてください。恐らく、これは特殊な結界です》
「え?」
テンキの助言により、少しだけ高度を落とす。すると、確かに感じられた。ニールやルディエも気付いたらしい。
「歪み……が見えます」
「すごい……なに、この高度な結界……」
本当に集中しないと分からないのだ。そこにあるものが無いように見えるなんてこと、普通はありえない。
しかし、コウヤには中の様子も視えた。その目を通して、テンキやパックンも視えたらしい。この結界の力がダンゴのものだったことも関係しているかもしれない。
「あ~……エリィ姉まで……」
コウヤが思わずそれだけ言って絶句する。
《……ベニ様達とご一緒されるので、予想できないことではありませんでしたが……これは……》
テンキも、うわあと顔を顰める様だ。
首を傾げるルディエとニールに伝えるべきか迷う。しかし、そんな迷いを持たない素直な子がパックンだ。
《すごいよ! エリス様、金ピカのメイスでどんどん鎧の人達を壁に張り付けてく!》
「……え?」
「……メイス……」
そこにあったのは、愛と再生の女神が笑顔で無双する姿だったのだ。
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