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第七章 ギルドと集団暴走
284 コウヤ師匠は王子!
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ユースールの冒険者達は、コウヤを自分達の息子のように思っている。
ギルドの職員になる前から、コウヤの母親が早くに亡くなっていること。世話になっている祖母のような人達がいること。そして、父親を知らないことを聞いて知っていた。
だから、冒険者の男たちは父親代わりになれたらと願うし、女性の冒険者達は母親か姉のように思って欲しいと思っていた。
そこへきて、突然の父親の存在が明らかになったのだ。冒険者達は一様に、マンタに乗船してから考え込んでいた。
「「「「「っ……」」」」」
コウヤの実の父親が悪い奴だとは思っていない。なんと言ってもコウヤの父親だ。捨てたのだろうと思う気持ちが、希望を含めて三割ほど。だが、事情があって父親が迎えに来られないか、母親が黙ってその男の傍から姿をくらましたという可能性が高いと思っていた。
会いに来たらコウヤは許すかもしれないが、冒険者達は『今更何の用だ』と一度は叩き出すつもりでいる。
だが、いざ耳にすると、本当に父親が見つかったのかとすぐには確認することができずにいた。父親が迎えに来たら、コウヤが居なくなってしまう気がしていたのだ。
優しく公平なコウヤならば、母親との間にあった事情を聞いて、許して、ユースールを出て行ってしまうかもしれない。
その可能性が五割だと、冒険者達は頭を抱えた。そんな冒険者達の心情を理解できず、コウヤはマンタに乗ってからあまり騒がない彼らの様子に首を傾げていた。
「皆さん、やっぱり疲れていたんでしょうか。とっても静かですね」
察せられないのはコウヤだけだ。
タリスとアルキスがぼそぼそと話し合う。
「父親が居たこと、何気にショックなんだね。彼らの中では死んだことになってたのかな?」
「そりゃあ、あれだけ分かりやすくコウヤ、コウヤ言って可愛がってんだ。自分達が父親代わりにとか思ってたのは分からんでもない」
「コレ、このまま帰って大丈夫? っていうか、バラしていい感じなの?」
タリスは横目でアルキスの応えを窺った。これに、アルキスは悪びれる様子はない。寧ろ、とある理由で頃合いを窺っていたのだ。
「王家の肩書きが必要になりそうなんで」
「どうゆうこと? コウヤちゃんの後見は聖魔教の大司教様達だよ? 王家があの人達以上に強力って言えるの?」
今や世界で唯一、神に認められた教会のトップ。何なら、元神さまのコウヤも認めた育て親だ。立場は揺らがない。更には物理でも最強ときている。王家の力など霞んでしまうだろう。
しかし、いくら最強であろうと、相手がそれを理解していなければ意味はない。
「……教国が、聖女ファムリアの子どもだと嗅ぎつけたらしいんですよ。それで、コウヤの親権を主張しているようで……」
「それ、大司教達が一蹴して終わるでしょ」
鼻で笑って終わる気がすると続けるタリス。けれど、そう簡単なものではないのだ。
「それが、いくつかの国が、ただの冒険者ギルド職員ならば取り込めると考えているらしいんで……教国の神官達の治癒魔法はほとんど効かないって所に、明らかに聖女の血筋で能力の高い存在があるとなれば、分かるでしょう……」
「……アレかな……前任の奴らに言われて、コウヤちゃんが助けてた冒険者達が噂でも流したかな……」
「恐らくは……」
半ばコウヤもヤケになっていた頃だ。治療した者の中に、ユースールから出て行った者があったのだろう。そこから知られた可能性は高い。悪気なく自慢したとしてもおかしくはない。
「コウヤちゃん、隠してないもんね……」
「ええ……なので、大司教達にも相談して、近々コウヤを王家に迎え入れる算段を付けてたんです」
「……コウヤちゃんが、ギルド職員を辞めるとは思えないけど?」
「俺もそう思います。なので、縛るつもりはないです。今まで通りで良い。ただ、肩書きに『王子』ってのが加わるだけです」
「それ、どうなの?」
一国の王子がギルド職員。どんな国だと逆に他国の興味を引きそうだ。とはいえ、この国は昔から変わっている。アルキスが良い証拠だ。
「王弟である俺や王妃までも冒険者やってた国に今更でしょう」
「あ、そうだった。けど、ギルド職員は組織の人になっちゃうでしょ?」
「後ろ盾が増えるだけでは?」
「なるほど。了解。ギルドを上げて後見を務めるよ。前グラマスの権力は偉大だからね!」
「……越権行為で問題視されたり……」
「黙らせるから問題ないよ! おじいちゃん頑張っちゃうっ」
「……」
物理かなとアルキスはもう目をそらすことしかできなかった。
マンタがユースールの冒険者ギルド隣の屋上に到着する。
コウヤが降りる冒険者達を出口に誘導していると、リルファムが駆けてきた。そして、満面の笑みを浮かべてコウヤに抱き付いた。
「コウヤ兄さまぁ」
「リル様。こんにちは。お久しぶりです」
「はい! あいたかったです!」
相変わらず、笑顔がキラキラしている。本気で会いたいと、嬉しいと思っているのが分かった。
「ふふふ。コウヤ兄さまのにおい~」
「ん?」
スリスリと少し屈んだコウヤの腹の辺りに顔を埋めるリルファム。王子としての立場を理解しているため、あまりこうして親にも甘えることはないらしく、これはコウヤ限定の愛情表現になっているというのは、コウヤも知らない。
そんなリルファムの頭を撫でていると、ジルファスが何ともいえない表情で歩み寄ってきた。
無事で嬉しい。とても心配だった。リルファムが羨ましい。そんな様々な感情が混じり合っていた。
だから、声をかけたのはコウヤからだった。
「こんにちは。ジルファス様」
「っ、ああ……っ、コウヤ、怪我……いや、疲れていないかい?」
「はい。アルキス様や、近衛の方、魔法師の方達も来てくださって、助かりました」
「そうか……私も行きたかったのだが……」
「さすがに、問題になるでしょう」
「……そうだな……その……」
何か言いたい様子のジルファス。その言葉を黙って待つ。そんなコウヤとジルファスの様子を、冒険者達は静かに見つめていた。まだここではジルファスが父親だとはバレていない。少しそうかなと思っているくらいだ。
そのままならばよかった。しかし、そこに空気を読む気のない人達が割り込む。宮廷魔法師達だ。
「で、殿下! コウヤ師匠の父親だというのは本当なのですか!」
「コウヤ師匠がジルファス殿下の息子であるというのならっ、コウヤ師匠は王子! これほど素晴らしいことはありません!!」
「近衛の方はご存知だったのですか!? ズルすぎます!」
「あ……ああ……」
ジルファスが押されてコウヤから離れていく。せっかく詰めていた距離が開いていく。
すると、リルファムはなぜか安心したようにまたコウヤにきゅっと抱きつく力を込めた。
「兄さま。父上はべんめいがあるみたいなので、わたしとゆっくりおちゃをして、おはなしをしませんか? 兄さまのおはなし、ききたいです!」
「えっと……そうですねえ……収拾がつかなさそうですし……」
迷っている内に、宮廷魔法師達に続いて、冒険者達までもジルファスの方に詰め寄っていた。慌てて近衛騎士達が本来の役目に戻っている。
「あんたがコウヤの父親か。俺らのコウヤをなんで今まで放置するに至ったのか、その理由を教えてもらおう」
「え、ああ……っ」
グラムをはじめとした古株達が押していた。実力もジルファスより上なため、完全にジルファスは気圧されていた。
「コウヤが王子だと? ジルファス殿下っていやあ、次期国王の? マジかよ……でもこれ、隠す気ねえな。なら、警備キツめにしろって兵にそれとなく言っとくか……」
後ろの方で、今日飲みに行く約束もあるしと、それぞれの飲み仲間の兵達への確認をしているのが数人。
一方で、女性冒険者達が固まっている所では、キャッキャと楽しそうだ。
「コウヤが王子様かあ~。いつもの制服もいいけど、王子としての服でキメたら……っ、ヤバイ! 鼻血出そ……っ、でも見たい!」
王族がどうのということなど、彼らには小さな問題だ。
もっと言えば、父親が次期国王だろうと、王だろうと関係ない。実の父親よりも、自分たちの方がコウヤのことを思っている。想ってきたと自負しているのだ。そこを、問答無用で拐われては我慢ならないというのが、マンタに乗っている間に出た答えだった。
なので、冒険者達は強気だ。
「まさか、ここからコウヤを無理やり連れてったりしないよな?」
「次期国王? 王太子殿下? 権力使うとか、卑怯なことしないよな?」
「当然、俺らに勝たなきゃいかんのは分かってんだろ?」
「今更俺らより父親ヅラできると思ってんの?」
王族相手に、ものすごくガラが悪い。いつもより迫力がある。
「っ、み、皆さんがコウヤを大事に思っているのは分かっています……もちろん、無理に連れて行ったりしません!」
コウヤ本人が取り残されている状態なのだが、誰も気にしていない。
なので、コウヤは呑気にリルファムと手を繋いで少し離れた場所に用意されている屋上のテラス席に移動し、お茶会を開始した。
パックンとダンゴとテンキも完全に他人事と決め込み、コウヤの側に侍っている。
「記者会見ってあんな感じかな?」
「どうしたんです? 兄さま」
「ううん。そうだ。野菜のマドレーヌを焼いたんだ。食べてみてほしいな」
「ヤサイの? 兄さまのならたべられるとおもいます!」
飲み物はミルクティー。そして、カラフルな色の小さめのマドレーヌが詰め込まれた籠を用意した。
ここでも、ジルファス達の声は聞こえている。
「他国が、コウヤの……母親である聖女ファムリアから引き継いだ能力に目を付けたようなのです。それらから守るためにも、王族としての立場を持っているべきだと考えました」
これを聞いて、冒険者達は少し殺気立つ。もちろん、ジルファスに対してではない。狙ってくる他国にだ。
「面倒なことになっちゃったかな」
「兄さまは、わたしのたいせつな兄さまです! たこくの王女とかきたら、おいかえしてみせます!」
リルファムが燃えていた。それに目を丸くしていると、不意に傍らにその人が現れた。
「コウヤちゃんなら、王女が婚約者にって言ってくるわよね~」
「っ、エリィ姉っ」
「やっほー。やっと来られたわ♪ あ、美味しそ。もらっていい?」
「うん……」
ひょいっとマドレーヌを摘んで口にしたのは、エリスリリアだった。
*********
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
ギルドの職員になる前から、コウヤの母親が早くに亡くなっていること。世話になっている祖母のような人達がいること。そして、父親を知らないことを聞いて知っていた。
だから、冒険者の男たちは父親代わりになれたらと願うし、女性の冒険者達は母親か姉のように思って欲しいと思っていた。
そこへきて、突然の父親の存在が明らかになったのだ。冒険者達は一様に、マンタに乗船してから考え込んでいた。
「「「「「っ……」」」」」
コウヤの実の父親が悪い奴だとは思っていない。なんと言ってもコウヤの父親だ。捨てたのだろうと思う気持ちが、希望を含めて三割ほど。だが、事情があって父親が迎えに来られないか、母親が黙ってその男の傍から姿をくらましたという可能性が高いと思っていた。
会いに来たらコウヤは許すかもしれないが、冒険者達は『今更何の用だ』と一度は叩き出すつもりでいる。
だが、いざ耳にすると、本当に父親が見つかったのかとすぐには確認することができずにいた。父親が迎えに来たら、コウヤが居なくなってしまう気がしていたのだ。
優しく公平なコウヤならば、母親との間にあった事情を聞いて、許して、ユースールを出て行ってしまうかもしれない。
その可能性が五割だと、冒険者達は頭を抱えた。そんな冒険者達の心情を理解できず、コウヤはマンタに乗ってからあまり騒がない彼らの様子に首を傾げていた。
「皆さん、やっぱり疲れていたんでしょうか。とっても静かですね」
察せられないのはコウヤだけだ。
タリスとアルキスがぼそぼそと話し合う。
「父親が居たこと、何気にショックなんだね。彼らの中では死んだことになってたのかな?」
「そりゃあ、あれだけ分かりやすくコウヤ、コウヤ言って可愛がってんだ。自分達が父親代わりにとか思ってたのは分からんでもない」
「コレ、このまま帰って大丈夫? っていうか、バラしていい感じなの?」
タリスは横目でアルキスの応えを窺った。これに、アルキスは悪びれる様子はない。寧ろ、とある理由で頃合いを窺っていたのだ。
「王家の肩書きが必要になりそうなんで」
「どうゆうこと? コウヤちゃんの後見は聖魔教の大司教様達だよ? 王家があの人達以上に強力って言えるの?」
今や世界で唯一、神に認められた教会のトップ。何なら、元神さまのコウヤも認めた育て親だ。立場は揺らがない。更には物理でも最強ときている。王家の力など霞んでしまうだろう。
しかし、いくら最強であろうと、相手がそれを理解していなければ意味はない。
「……教国が、聖女ファムリアの子どもだと嗅ぎつけたらしいんですよ。それで、コウヤの親権を主張しているようで……」
「それ、大司教達が一蹴して終わるでしょ」
鼻で笑って終わる気がすると続けるタリス。けれど、そう簡単なものではないのだ。
「それが、いくつかの国が、ただの冒険者ギルド職員ならば取り込めると考えているらしいんで……教国の神官達の治癒魔法はほとんど効かないって所に、明らかに聖女の血筋で能力の高い存在があるとなれば、分かるでしょう……」
「……アレかな……前任の奴らに言われて、コウヤちゃんが助けてた冒険者達が噂でも流したかな……」
「恐らくは……」
半ばコウヤもヤケになっていた頃だ。治療した者の中に、ユースールから出て行った者があったのだろう。そこから知られた可能性は高い。悪気なく自慢したとしてもおかしくはない。
「コウヤちゃん、隠してないもんね……」
「ええ……なので、大司教達にも相談して、近々コウヤを王家に迎え入れる算段を付けてたんです」
「……コウヤちゃんが、ギルド職員を辞めるとは思えないけど?」
「俺もそう思います。なので、縛るつもりはないです。今まで通りで良い。ただ、肩書きに『王子』ってのが加わるだけです」
「それ、どうなの?」
一国の王子がギルド職員。どんな国だと逆に他国の興味を引きそうだ。とはいえ、この国は昔から変わっている。アルキスが良い証拠だ。
「王弟である俺や王妃までも冒険者やってた国に今更でしょう」
「あ、そうだった。けど、ギルド職員は組織の人になっちゃうでしょ?」
「後ろ盾が増えるだけでは?」
「なるほど。了解。ギルドを上げて後見を務めるよ。前グラマスの権力は偉大だからね!」
「……越権行為で問題視されたり……」
「黙らせるから問題ないよ! おじいちゃん頑張っちゃうっ」
「……」
物理かなとアルキスはもう目をそらすことしかできなかった。
マンタがユースールの冒険者ギルド隣の屋上に到着する。
コウヤが降りる冒険者達を出口に誘導していると、リルファムが駆けてきた。そして、満面の笑みを浮かべてコウヤに抱き付いた。
「コウヤ兄さまぁ」
「リル様。こんにちは。お久しぶりです」
「はい! あいたかったです!」
相変わらず、笑顔がキラキラしている。本気で会いたいと、嬉しいと思っているのが分かった。
「ふふふ。コウヤ兄さまのにおい~」
「ん?」
スリスリと少し屈んだコウヤの腹の辺りに顔を埋めるリルファム。王子としての立場を理解しているため、あまりこうして親にも甘えることはないらしく、これはコウヤ限定の愛情表現になっているというのは、コウヤも知らない。
そんなリルファムの頭を撫でていると、ジルファスが何ともいえない表情で歩み寄ってきた。
無事で嬉しい。とても心配だった。リルファムが羨ましい。そんな様々な感情が混じり合っていた。
だから、声をかけたのはコウヤからだった。
「こんにちは。ジルファス様」
「っ、ああ……っ、コウヤ、怪我……いや、疲れていないかい?」
「はい。アルキス様や、近衛の方、魔法師の方達も来てくださって、助かりました」
「そうか……私も行きたかったのだが……」
「さすがに、問題になるでしょう」
「……そうだな……その……」
何か言いたい様子のジルファス。その言葉を黙って待つ。そんなコウヤとジルファスの様子を、冒険者達は静かに見つめていた。まだここではジルファスが父親だとはバレていない。少しそうかなと思っているくらいだ。
そのままならばよかった。しかし、そこに空気を読む気のない人達が割り込む。宮廷魔法師達だ。
「で、殿下! コウヤ師匠の父親だというのは本当なのですか!」
「コウヤ師匠がジルファス殿下の息子であるというのならっ、コウヤ師匠は王子! これほど素晴らしいことはありません!!」
「近衛の方はご存知だったのですか!? ズルすぎます!」
「あ……ああ……」
ジルファスが押されてコウヤから離れていく。せっかく詰めていた距離が開いていく。
すると、リルファムはなぜか安心したようにまたコウヤにきゅっと抱きつく力を込めた。
「兄さま。父上はべんめいがあるみたいなので、わたしとゆっくりおちゃをして、おはなしをしませんか? 兄さまのおはなし、ききたいです!」
「えっと……そうですねえ……収拾がつかなさそうですし……」
迷っている内に、宮廷魔法師達に続いて、冒険者達までもジルファスの方に詰め寄っていた。慌てて近衛騎士達が本来の役目に戻っている。
「あんたがコウヤの父親か。俺らのコウヤをなんで今まで放置するに至ったのか、その理由を教えてもらおう」
「え、ああ……っ」
グラムをはじめとした古株達が押していた。実力もジルファスより上なため、完全にジルファスは気圧されていた。
「コウヤが王子だと? ジルファス殿下っていやあ、次期国王の? マジかよ……でもこれ、隠す気ねえな。なら、警備キツめにしろって兵にそれとなく言っとくか……」
後ろの方で、今日飲みに行く約束もあるしと、それぞれの飲み仲間の兵達への確認をしているのが数人。
一方で、女性冒険者達が固まっている所では、キャッキャと楽しそうだ。
「コウヤが王子様かあ~。いつもの制服もいいけど、王子としての服でキメたら……っ、ヤバイ! 鼻血出そ……っ、でも見たい!」
王族がどうのということなど、彼らには小さな問題だ。
もっと言えば、父親が次期国王だろうと、王だろうと関係ない。実の父親よりも、自分たちの方がコウヤのことを思っている。想ってきたと自負しているのだ。そこを、問答無用で拐われては我慢ならないというのが、マンタに乗っている間に出た答えだった。
なので、冒険者達は強気だ。
「まさか、ここからコウヤを無理やり連れてったりしないよな?」
「次期国王? 王太子殿下? 権力使うとか、卑怯なことしないよな?」
「当然、俺らに勝たなきゃいかんのは分かってんだろ?」
「今更俺らより父親ヅラできると思ってんの?」
王族相手に、ものすごくガラが悪い。いつもより迫力がある。
「っ、み、皆さんがコウヤを大事に思っているのは分かっています……もちろん、無理に連れて行ったりしません!」
コウヤ本人が取り残されている状態なのだが、誰も気にしていない。
なので、コウヤは呑気にリルファムと手を繋いで少し離れた場所に用意されている屋上のテラス席に移動し、お茶会を開始した。
パックンとダンゴとテンキも完全に他人事と決め込み、コウヤの側に侍っている。
「記者会見ってあんな感じかな?」
「どうしたんです? 兄さま」
「ううん。そうだ。野菜のマドレーヌを焼いたんだ。食べてみてほしいな」
「ヤサイの? 兄さまのならたべられるとおもいます!」
飲み物はミルクティー。そして、カラフルな色の小さめのマドレーヌが詰め込まれた籠を用意した。
ここでも、ジルファス達の声は聞こえている。
「他国が、コウヤの……母親である聖女ファムリアから引き継いだ能力に目を付けたようなのです。それらから守るためにも、王族としての立場を持っているべきだと考えました」
これを聞いて、冒険者達は少し殺気立つ。もちろん、ジルファスに対してではない。狙ってくる他国にだ。
「面倒なことになっちゃったかな」
「兄さまは、わたしのたいせつな兄さまです! たこくの王女とかきたら、おいかえしてみせます!」
リルファムが燃えていた。それに目を丸くしていると、不意に傍らにその人が現れた。
「コウヤちゃんなら、王女が婚約者にって言ってくるわよね~」
「っ、エリィ姉っ」
「やっほー。やっと来られたわ♪ あ、美味しそ。もらっていい?」
「うん……」
ひょいっとマドレーヌを摘んで口にしたのは、エリスリリアだった。
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読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
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