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第七章 ギルドと集団暴走
282 お祭りじゃない!?
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疲れを癒すため、まったりと午後を過ごした冒険者たちは、再び集合していた。
「丁度、昨日の今頃か?」
「ああ。なんか、終わってみるとあっという間だったな……」
グラムとセクタがしみじみと語り合う。
「すごい経験ができました」
「グラムさん、セクタさん。ありがとうございました」
「まさか、戦闘講習がこんなことになるなんて……」
「けど、たしかに良い経験だったと思う」
「それに……ここが守れてよかった」
「だな」
『雪の夜闇』の五人は今回のことで、しっかりと成長したようだ。このベルセンでも、彼らを見下す者はもういない。つい先ほど、受付嬢たちも彼らに頭を下げていた。これには、謝られた彼らの方が動揺していた。
そんな五人に、セクタが確認する。
「ここで修了の手続きすることもできるぞ? 残るか?」
この問いかけに迷うかと思っていたグラムとセクタ。しかし、彼らはきっぱりと告げた。
「いいえ。残った所で、あまり役に立つとも思えないですし、それよりも、ユースールでもっと力を付けたいです。それで、ここにいる俺らと同じ孤児たちをきちんと正しく導けるようになります!」
「……お前ら……」
セクタは呆然と、しっかりと前を向く彼らを見た。このベルセンの孤児たちから選ばれる『雪の夜闇』のメンバー。引き継がれてきたパーティ名は死地へ赴くための大義名分で、免罪符だった。
今まで、沢山の孤児たちが他の孤児たちを生かすためとはいえ、犠牲になってきた。自分たちの仲間である孤児を養うために『雪の夜闇』の名をもって日銭を稼ぎ、時に稼ぐために悪事にも加担してきた。
「神官様たちが孤児たちを教会で引き取ってくれるって聞きました。あの神官様たちは信用できます。俺らの稼ぎも、寄付として受け取ってもらいました」
「今回の報酬も全部って言ったら、めちゃくちゃ怒鳴られたけどな」
「あれが叱ってくれるってことなんだなって思った」
「そ、そうか……」
あの神官たちに怒鳴られて嬉しそうにするのはどうなのだろうか。グラムとセクタは、少しばかり新しい扉を開けていないか心配になる。
「確か『誰かのためというのは立派ですが、義務のように与えるのはやめなさい』だったっけ」
これを聞いて、グラムが笑った。
「ははっ。そりゃ言われるわ。聖魔教の神官さんたちは『義務』とか『偽善』が嫌いだからな」
「教会がそれを否定するって、普通じゃ考えられんがなあ」
セクタも同意する。
「そうなんですね……やっぱり違うなあ。あとなんか……『きちんと毎回、与える子たちに生きて笑顔を見せて、それが習慣になったら、その行為は本物だ』って言われたんですけど」
この時、グラムたちは気付いていなかった。いつの間にか、周りの冒険者たちも聞き入っている。
「あそこは、匿名の寄付を受け付けてねえんだよ」
「でも、貴族とか……そういうの、教会って受けてたはず」
「それは、他の教会な。聖魔教の教会はダメだ」
「なんで……」
不思議に思うのも仕方がない。匿名でも教会への寄付は当たり前だったのだから。その裏に何かあると分かっていても、寄付は寄付だ。けれど、聖魔教は許していない。
「知られたくないとか、恥ずかしいとかの理由でもダメだ。それ『ただ何となく』とかって、理由がないからってのが大きいだろ。偽善じゃないなら、理由がはっきり言えるはずだ。義務が、なんの義務なのかはっきり言えないのは、後ろめたく思ってるからだしな。そういう曖昧な『義務』とか『偽善』が神官さんたちは嫌いなんだよ」
ベルセンの者たちは、新しくなる教会に少し不安を感じていた。教会に対する不信感というのは、その実態がはっきりしなくても感じていたのだ。だから、静かにそれを聴いていた。
「施しを受けなきゃ回らない教会は、いざという時に何かに屈する。それじゃあ、本当に助けを求めてる奴が助からねえ。だから、はっきりとした理由のない寄付は受けねえってのが、大司教様たちの方針らしい」
「それって……すごいですね。も、もちろんあの神官様たちは戦いもすごかったですし……考え方が違うんだなって……」
「「「……っ」」」
『神官様たちは戦いも』という辺りで、周りの者たちが同時に息を呑んだ。それにより、ようやくグラムは、周りに聞き耳を立てられていたことに気付いた。
「ははっ。そんな怯えんなって。聖魔教の神官さんたちた頼もしいぞ? 貴族だって、ルールを無視すりゃボコボコにして、町から放り出すからな。物理的に」
「煩い商人とかもな。他の教会と懇意にしてたとか言って来たキラキラした商人、アレどうしたっけか」
「俺知ってる! 眩しくて迷惑だとかって、肥溜めに放り投げられてた!」
いつの間にか、その場は聖魔教の自慢話大会になり始めた。
「あ、私その後知ってる! ジザ様が『汚物処理させて申し訳ありません』って兵とゼットさんに引き渡してた。汚れたからって、服脱がせてたから、ただの汚い太ったおっさんになってたよ。めっちゃ笑った。ジザ様ステキ過ぎる!」
「おいおい。それならリエラ様の方が凄かったぞ!」
「っ……」
グラムがリエラの名前を聞いてビクリと肩を小さく震わせた。
「リエラ様はなあ、あんな華奢な見た目で、俺より大きな男を一瞬で投げ飛ばすんだよ! 教会の前で起きた乱闘騒ぎを、たった一人で治めたんだ」
「それ見た! アレだよな。聖魔教を潰したい教会に雇われた奴ら。二十人くらい居たよな」
「あ、それ! 花火みたく宙に舞ったやつでしょ! あの技知りたくて、リエラお姉様に弟子入りしたいって押しかけたのよ!」
「やっぱ、リエラ様最高ー!」
「……」
グラムが目を泳がせる。ユースール組で理由を知っているのは、セクタと『雪の夜闇』の二人だけ。
そこに、狙ったようにリエラがやってきた。
「あら、呼びました?」
「「「リエラ様!!」」」
神官だというのに様付け。けれどベルセンの人々も、もはや不思議に思わない。寧ろ、一緒に様付けしていたりする。
それだけ白夜部隊の戦いは印象的で、凄まじかった。
「ふふ。皆さん、元気ですね」
「はい! リエラお姉様はどうしてこちらに?」
キラキラとお姉様と呼ぶ女性の冒険者たち。彼女たちに艶やかな笑みを見せて、リエラはグラムへ一歩近付いた。
「報告をしようと思ったの」
「何のです?」
「……まさか……っ」
周りは何のだろうかと少しワクワクしている。けれど、グラムは激しく嫌な予感でいっぱいだった。そして、その予感は的中する。
「グラムさん♪」
「な、は、はい」
ルンルンとご機嫌なリエラの表情に、グラムは覚悟を決めた。
「コウヤ様に許可をいただきましたわ。約束、覚えてまして?」
「っ……ああ……こ、ここでか?」
「ここでがいいです♪ ほら、コウヤ様が来られましたわ」
姿を元に戻したコウヤがタリスとフレイ、それと領主補佐のゼフィルと階段を上っていくのが見えた。
「さあ、お早く」
「わ、わかった」
グラムはすっと息を吸い、ゆっくり吐いてから意を決して口にした。
「っ、リエラ。俺は、神様たちの次でいい。だから……俺と結婚してくれ」
「喜んで!」
リエラはグラムに抱きついていく。女性の中では背の高い方のリエラも、グラムにとっては小さな人だ。抱き上げて、もうどうにでもなれと笑った。
そして、周りはようやく理解していく。
「っ……グラムさんがリエラお姉様と結婚!?」
思わず叫んだ女性によって、その場はシンと一度静まり返り、一拍後に爆発した。
「「「えぇぇぇぇ!!」」」
コウヤたちの所まで聞こえたそれに、タリスは飛び上がって驚いていた。
「え? 結婚? グラムちゃんが? リエラお姉……あ、神官の? え? 結婚!?」
大混乱していた。
「集団暴走より大事じゃない!? どうすんの!? お祭りじゃない!?」
「ふふふ。マスター、お祭りって。ふふっ。そうですね。商店が競って安売りとか始めそうです。帰ったら凄いことになりそうですね」
グラムはユースールの冒険者の中でトップに位置する実力者。そんな英雄のような人が、これまたとっても有名なリエラと結婚を決めた。お祭り騒ぎにならない方がおかしい。
「あ、屋台部隊の所で話し合いが始まりましたね」
「うわあ、さすが商業ギルド職員……」
とはいえ、このままではそのまま宴会にでも突入しそうだ。
コウヤは拡声の魔法で先ずはグラムとリエラに声をかける。
「グラムさん、リエラさん。ご婚約、おめでとうございます」
「っ、ありがとう」
「ありがとうございます!」
これにより、周りの声も落とされ、皆の目もコウヤの方を向いた。
「ユースールに帰ったら、二人揃って大司教たちにも報告をお願いしますね」
「分かった」
「はい」
ベニたちは、リエラ達神官の親のようなものだ。きっと喜ぶだろう。
「さて、おめでたいお話もあって、皆さんの疲れも吹き飛んだようですね。改めて、昨日からの集団暴走お疲れ様でした。幸いにも、外壁に被害もなく、人的被害もほとんど出ておりません。冒険者の方々だけでなく、町の方々にも多くの援助をいただき、一丸となった結果が出たのだと思います」
誰もが静かにそれを聞いて頷く。ここには、冒険者たちだけでなく、避難していた町の住民やスラムの者たちも居る。全員で勝ち取ったものなのだと、誇らしい思いで胸をいっぱいにした。
「ここで、領主補佐よりお話があります」
コウヤが下がると、ゼフィルが前に出た。
「私は領主補佐のゼフィルと申します。先ずは皆さまに感謝を。そして、勇敢に戦ってくださった冒険者の方々に敬意を」
誰もが静かにゼフィルへ注目していた。誰もが感じたのだ。ここから、ベルセンが変わるのだということを。
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読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
「丁度、昨日の今頃か?」
「ああ。なんか、終わってみるとあっという間だったな……」
グラムとセクタがしみじみと語り合う。
「すごい経験ができました」
「グラムさん、セクタさん。ありがとうございました」
「まさか、戦闘講習がこんなことになるなんて……」
「けど、たしかに良い経験だったと思う」
「それに……ここが守れてよかった」
「だな」
『雪の夜闇』の五人は今回のことで、しっかりと成長したようだ。このベルセンでも、彼らを見下す者はもういない。つい先ほど、受付嬢たちも彼らに頭を下げていた。これには、謝られた彼らの方が動揺していた。
そんな五人に、セクタが確認する。
「ここで修了の手続きすることもできるぞ? 残るか?」
この問いかけに迷うかと思っていたグラムとセクタ。しかし、彼らはきっぱりと告げた。
「いいえ。残った所で、あまり役に立つとも思えないですし、それよりも、ユースールでもっと力を付けたいです。それで、ここにいる俺らと同じ孤児たちをきちんと正しく導けるようになります!」
「……お前ら……」
セクタは呆然と、しっかりと前を向く彼らを見た。このベルセンの孤児たちから選ばれる『雪の夜闇』のメンバー。引き継がれてきたパーティ名は死地へ赴くための大義名分で、免罪符だった。
今まで、沢山の孤児たちが他の孤児たちを生かすためとはいえ、犠牲になってきた。自分たちの仲間である孤児を養うために『雪の夜闇』の名をもって日銭を稼ぎ、時に稼ぐために悪事にも加担してきた。
「神官様たちが孤児たちを教会で引き取ってくれるって聞きました。あの神官様たちは信用できます。俺らの稼ぎも、寄付として受け取ってもらいました」
「今回の報酬も全部って言ったら、めちゃくちゃ怒鳴られたけどな」
「あれが叱ってくれるってことなんだなって思った」
「そ、そうか……」
あの神官たちに怒鳴られて嬉しそうにするのはどうなのだろうか。グラムとセクタは、少しばかり新しい扉を開けていないか心配になる。
「確か『誰かのためというのは立派ですが、義務のように与えるのはやめなさい』だったっけ」
これを聞いて、グラムが笑った。
「ははっ。そりゃ言われるわ。聖魔教の神官さんたちは『義務』とか『偽善』が嫌いだからな」
「教会がそれを否定するって、普通じゃ考えられんがなあ」
セクタも同意する。
「そうなんですね……やっぱり違うなあ。あとなんか……『きちんと毎回、与える子たちに生きて笑顔を見せて、それが習慣になったら、その行為は本物だ』って言われたんですけど」
この時、グラムたちは気付いていなかった。いつの間にか、周りの冒険者たちも聞き入っている。
「あそこは、匿名の寄付を受け付けてねえんだよ」
「でも、貴族とか……そういうの、教会って受けてたはず」
「それは、他の教会な。聖魔教の教会はダメだ」
「なんで……」
不思議に思うのも仕方がない。匿名でも教会への寄付は当たり前だったのだから。その裏に何かあると分かっていても、寄付は寄付だ。けれど、聖魔教は許していない。
「知られたくないとか、恥ずかしいとかの理由でもダメだ。それ『ただ何となく』とかって、理由がないからってのが大きいだろ。偽善じゃないなら、理由がはっきり言えるはずだ。義務が、なんの義務なのかはっきり言えないのは、後ろめたく思ってるからだしな。そういう曖昧な『義務』とか『偽善』が神官さんたちは嫌いなんだよ」
ベルセンの者たちは、新しくなる教会に少し不安を感じていた。教会に対する不信感というのは、その実態がはっきりしなくても感じていたのだ。だから、静かにそれを聴いていた。
「施しを受けなきゃ回らない教会は、いざという時に何かに屈する。それじゃあ、本当に助けを求めてる奴が助からねえ。だから、はっきりとした理由のない寄付は受けねえってのが、大司教様たちの方針らしい」
「それって……すごいですね。も、もちろんあの神官様たちは戦いもすごかったですし……考え方が違うんだなって……」
「「「……っ」」」
『神官様たちは戦いも』という辺りで、周りの者たちが同時に息を呑んだ。それにより、ようやくグラムは、周りに聞き耳を立てられていたことに気付いた。
「ははっ。そんな怯えんなって。聖魔教の神官さんたちた頼もしいぞ? 貴族だって、ルールを無視すりゃボコボコにして、町から放り出すからな。物理的に」
「煩い商人とかもな。他の教会と懇意にしてたとか言って来たキラキラした商人、アレどうしたっけか」
「俺知ってる! 眩しくて迷惑だとかって、肥溜めに放り投げられてた!」
いつの間にか、その場は聖魔教の自慢話大会になり始めた。
「あ、私その後知ってる! ジザ様が『汚物処理させて申し訳ありません』って兵とゼットさんに引き渡してた。汚れたからって、服脱がせてたから、ただの汚い太ったおっさんになってたよ。めっちゃ笑った。ジザ様ステキ過ぎる!」
「おいおい。それならリエラ様の方が凄かったぞ!」
「っ……」
グラムがリエラの名前を聞いてビクリと肩を小さく震わせた。
「リエラ様はなあ、あんな華奢な見た目で、俺より大きな男を一瞬で投げ飛ばすんだよ! 教会の前で起きた乱闘騒ぎを、たった一人で治めたんだ」
「それ見た! アレだよな。聖魔教を潰したい教会に雇われた奴ら。二十人くらい居たよな」
「あ、それ! 花火みたく宙に舞ったやつでしょ! あの技知りたくて、リエラお姉様に弟子入りしたいって押しかけたのよ!」
「やっぱ、リエラ様最高ー!」
「……」
グラムが目を泳がせる。ユースール組で理由を知っているのは、セクタと『雪の夜闇』の二人だけ。
そこに、狙ったようにリエラがやってきた。
「あら、呼びました?」
「「「リエラ様!!」」」
神官だというのに様付け。けれどベルセンの人々も、もはや不思議に思わない。寧ろ、一緒に様付けしていたりする。
それだけ白夜部隊の戦いは印象的で、凄まじかった。
「ふふ。皆さん、元気ですね」
「はい! リエラお姉様はどうしてこちらに?」
キラキラとお姉様と呼ぶ女性の冒険者たち。彼女たちに艶やかな笑みを見せて、リエラはグラムへ一歩近付いた。
「報告をしようと思ったの」
「何のです?」
「……まさか……っ」
周りは何のだろうかと少しワクワクしている。けれど、グラムは激しく嫌な予感でいっぱいだった。そして、その予感は的中する。
「グラムさん♪」
「な、は、はい」
ルンルンとご機嫌なリエラの表情に、グラムは覚悟を決めた。
「コウヤ様に許可をいただきましたわ。約束、覚えてまして?」
「っ……ああ……こ、ここでか?」
「ここでがいいです♪ ほら、コウヤ様が来られましたわ」
姿を元に戻したコウヤがタリスとフレイ、それと領主補佐のゼフィルと階段を上っていくのが見えた。
「さあ、お早く」
「わ、わかった」
グラムはすっと息を吸い、ゆっくり吐いてから意を決して口にした。
「っ、リエラ。俺は、神様たちの次でいい。だから……俺と結婚してくれ」
「喜んで!」
リエラはグラムに抱きついていく。女性の中では背の高い方のリエラも、グラムにとっては小さな人だ。抱き上げて、もうどうにでもなれと笑った。
そして、周りはようやく理解していく。
「っ……グラムさんがリエラお姉様と結婚!?」
思わず叫んだ女性によって、その場はシンと一度静まり返り、一拍後に爆発した。
「「「えぇぇぇぇ!!」」」
コウヤたちの所まで聞こえたそれに、タリスは飛び上がって驚いていた。
「え? 結婚? グラムちゃんが? リエラお姉……あ、神官の? え? 結婚!?」
大混乱していた。
「集団暴走より大事じゃない!? どうすんの!? お祭りじゃない!?」
「ふふふ。マスター、お祭りって。ふふっ。そうですね。商店が競って安売りとか始めそうです。帰ったら凄いことになりそうですね」
グラムはユースールの冒険者の中でトップに位置する実力者。そんな英雄のような人が、これまたとっても有名なリエラと結婚を決めた。お祭り騒ぎにならない方がおかしい。
「あ、屋台部隊の所で話し合いが始まりましたね」
「うわあ、さすが商業ギルド職員……」
とはいえ、このままではそのまま宴会にでも突入しそうだ。
コウヤは拡声の魔法で先ずはグラムとリエラに声をかける。
「グラムさん、リエラさん。ご婚約、おめでとうございます」
「っ、ありがとう」
「ありがとうございます!」
これにより、周りの声も落とされ、皆の目もコウヤの方を向いた。
「ユースールに帰ったら、二人揃って大司教たちにも報告をお願いしますね」
「分かった」
「はい」
ベニたちは、リエラ達神官の親のようなものだ。きっと喜ぶだろう。
「さて、おめでたいお話もあって、皆さんの疲れも吹き飛んだようですね。改めて、昨日からの集団暴走お疲れ様でした。幸いにも、外壁に被害もなく、人的被害もほとんど出ておりません。冒険者の方々だけでなく、町の方々にも多くの援助をいただき、一丸となった結果が出たのだと思います」
誰もが静かにそれを聞いて頷く。ここには、冒険者たちだけでなく、避難していた町の住民やスラムの者たちも居る。全員で勝ち取ったものなのだと、誇らしい思いで胸をいっぱいにした。
「ここで、領主補佐よりお話があります」
コウヤが下がると、ゼフィルが前に出た。
「私は領主補佐のゼフィルと申します。先ずは皆さまに感謝を。そして、勇敢に戦ってくださった冒険者の方々に敬意を」
誰もが静かにゼフィルへ注目していた。誰もが感じたのだ。ここから、ベルセンが変わるのだということを。
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