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第七章 ギルドと集団暴走
249 相変わらず仕事が速いね〜
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コウヤ達が戻って来たのは、ギルドを出てそろそろ一時間が経とうという頃だった。
近衛騎士の三人はスキルを使いすぎて疲れ切った様子で背中を少し丸めている。そんな彼らがギルドへ戻って来る所にタイミングを合わせて、コウヤも戻って来たのだ。
「お疲れ様です! これ飲んでくださいね。明日に響かないように」
コウヤが三人に差し出したのは三本の薬瓶。細めの瓶が、よく効く栄養ドリンクらしさを見せる。もちろん、それはコウヤの気分だ。そして、中身に偽りはない。とっても良く効く栄養ドリンクだった。魔法のある異世界仕様なので即効回復バッチリの自信作だ。
「あ、ありがとうございます……」
「なんでそんな元気に……いえ、わかってます」
「まだまだ道のりは遠いなあ……」
近衛騎士達は、無理と分かっていても目標があった。それは、近衛騎士だからこそ持たなくてはならないもの。
近衛騎士達は全員、コウヤがジルファスの血を引いていることを知っている。
本来ならばそんなコウヤを護る立場でなくてはならないのだ。今はコウヤも王家に入る気はさらさらない。けれど、いつそうなってもいいように、護れるように力を磨く。
訓練を付けてもらう度に、追い付けないなと感じながらも、いつかは護れるようになろうと目標を持っていたのだ。
彼らは静かにため息をひとつ吐いて、コウヤから薬を受け取る。その時、コウヤの服装がギルドの制服でないことに気付いた。
「あれ? コウヤ様、着替えられたんですか?」
ギルドを出てから、コウヤは少し良い身なりに着替えていた。髪もちょっとかしこまった感じに整えている。そんな髪をいつものように戻すため手で梳いた。
「はい。情報収集するには、ギルドの制服だと警戒されたりしますから。今回の設定は、商人見習いです!」
「お似合いです」
「ありがとうございますっ」
三人はコウヤの笑顔に癒された。そのまま受け取った薬をあおる。
「んっ、美味しい」
「な、なんかクセになるかも」
「すっぱい? 甘い? この量じゃ味わい足りない!」
それぞれ感想を言いながら、コウヤの後に続いてギルドに入る。
因みに、既にパックンはコウヤの腰の背中側にくっ付いており、その上にテンキとダンゴが丸まっていた。定位置がやはり落ち着くらしい。
「ん? あ……マジか。疲れが……」
「……これ、良く効くとかのレベルじゃないし……」
「コウヤ様の薬って、効果が良すぎて時々怖いんだよな……」
そんな声がコソコソと聞こえたが、コウヤは気にせず職員に声を掛ける。
「すみません。一応、王都内で従魔契約のない魔獣を全て確保したので、これから依頼に出ていたものとの照会をしたいんです。手伝っていただけませんか?」
「っ、お任せください! 私と二人連れて行きます!」
案内もしてくれたあの職員は、近衛騎士に全部処理できるかもと聞かされていたこともあり、驚きながらも動き出した。
「お願いします。あ、捕獲用のケージを出してもらえますか? 先に始めていますね」
「分かりました。ケージはあちらの倉庫に……」
捕獲用ケージと呼ぶのは、犬猫が入るキャリーケースのような見た目だ。ただし、少し大きめではある。
指差された先には倉庫がある。配置はどのギルドも変わらないので、コウヤも問題なくわかるのだが、他のギルド支部で勝手をするわけにはいかないだろうと断りを入れたかったのだ。
「あるだけ使うことになるかもしれませんけど、いいでしょうか」
「え、はい……」
職員は、目を泳がせながら返事をした。どれだけあったかなと捕獲用ケージの在庫を思い出そうとしたようだ。数がすぐに思い浮かばない職員は放っておいて、コウヤは容赦なく倉庫内にある捕獲用ケージを全て運び出すと決めた。
「パックン、ケージ運んでくれる?」
《任せなさい ᕦ(ò_óˇ)ᕤ 》
「うわあ……消えた……」
「えぇぇぇっ!」
近衛騎士がすごいなと呆れ半分の平坦な声を漏らす後ろで、職員は思わずのけぞっていた。
パックンのパックンを見て声を上げられるのはよくあることなので、コウヤはもはや気にしない。
部屋に向かいながら手順の説明をする。
「それじゃあ、俺が依頼番号で照会していくので、騎士さん達は俺が指定した子を捕獲ケージに入れて並べていってください」
「了解です!」
「職員さん達は、そのケージに処理番号の札をお願いします」
「わ、分かりました!」
そうだったと、職員が処理用の番号札を取りに走り出す。
部屋に入ると、手前三分の一を残して区切った柵の中に、六十匹以上の魔獣が眠っていた。その奥の方には、隅にもうひと枠柵が設けられている。
「あの、コウヤ様。あれはなぜ分けてあるんですか?」
「ああ。あれは魔獣じゃない子達です。依頼にあった純粋なペット達ですよ」
「……なるほど……」
それって、自分達が任されていた南側にもコウヤは来ていたのではないかと思ったが口にはしない。自分達、要らなかったんじゃないかとも。
少し落ち込んだが、こんなことはコウヤ相手にはいつものことだ。すぐに気持ちを切り替える。
「テンキとダンゴは、起きそうな子が居ないか見てて。ケージに入れた子は起こしてくれていいけど、暴れそうな子はまた寝かせてくれる?」
《承知しました》
《わかったでしゅ》
札を取りに行った職員も戻ってきたので、照会を始める。
「それじゃあ、テンポ良くいきますよ~」
そうして、依頼が出ていたペット達はほとんどが確認された。
「この残りの依頼は、残念ですけど時間も経ってしまっていますからね。亡くなった子も居ると思います。一応、軽くですが足取りを追えたものだけ、情報を裏に書いておきました。首輪や装飾品は可能な限り見つけましたので、それはこの袋に依頼番号を付けて入れてあります。確認してください」
「す、すごい……一体どうやって……」
小さくそんな呟きが聞こえたが、時間切れだ。
「残りの子達は後で引き取ります。テンキ、この後ユストさん連れてきて、引き取ってもらってくれる? 今日はこっちに居るみたいだから」
《お任せください》
ふっとテンキが消える。
「き、消えた!」
「転移が使えるんです。お気になさらず。さあ、ここは大丈夫なので、依頼完了の処理をお願いします。ただ……飼い主さんに注意が必要なので、ユースールから人を呼んでも良いか、うちのマスターに確認してきます」
「分かりました……お手数をおかけします……」
もう、職員は何が何だか分からなくなっていた。転移ができる魔獣ってなんだろうとか、色々ついて行けなかったのだ。
「いえ。あ、報酬は彼らに出しておいてください」
「はいっ。もちろんです!」
現実的な話がきて虚になりかけていた目が戻った。
代わりに動揺したのは近衛騎士達だ。
「えっ、コウヤ様! それはっ」
「もらってください。正統な報酬…….には少し足りないと思いますけど、あなた方の時間を使いましたからね」
「そんなっ」
「ふふ。気持ちですよ」
「っ……わかりました」
渋々だが納得してくれたようだ。報酬の受け取りのため、近衛騎士達が出て行く。
「ダンゴ、先にユースールに行ってペット担当のテーラ主任に事情を話して来てくれる? 多分、マスターは許可を出すと思うから」
《まかせるでしゅ!》
ダンゴならうまく説明もしてくれる。そして、この現状を知ればペット担当で、従魔術師のテーラはすぐにでも行くと言ってくれるはずだ。
「パックン、ここに居てこの子達見ててくれる?」
《いいよー》
ユストが来るにしても、一度には連れて行けないはずだ。それに、高位の魔物であるパックンが部屋に居れば、目を覚ました魔獣もただの獣もむやみに騒いだりしないだろう。最初は警戒するだろうが、次第に落ち着くはずだ。何よりもパックンは神の眷属なのだから。
捕獲用ケージには、遮音の術が付与されている。よって、中に入った子が騒いでも外には聞こえない。とはいえ、鳴き続けるのはよくないだろう。ただでさえ、消耗しているのだ。これ以上弱らせるわけにはいかない。
《目が覚めた子には食事もさせる!》
「ありがとう。なら、コレね」
《うわあい (*^◯^*) 》
コウヤが出した餌の入った袋をパックンして喜んでいた。
「なら、頼んだよ」
言い置いて、コウヤはギルドマスターの執務室へ向かった。
その時、後にした部屋からユストの歓喜の声が聞こえた。パックンを置いておいて良かった。
「マスター、コウヤです。戻りました」
「ん~、入って~」
中に入ると、あのソルマという青年の視線はかなり控えめになっていた。というか、あからさまに目を逸らされた。
「どうだった?」
「生きていた子達は全部捕獲できました。町中にいる契約なしの魔獣や魔物も全て回収して、ユストさんに預けてます。それで、やっぱり魔獣をペットとしていたものがあるので、テーラさんに来てもらうべきかなと思いまして」
「やっぱ、多いの?」
コウヤは正確な件数を思い出す。
「はい。想定していた三十五件中、八件は捕獲確認できませんでしたが、二十七件です」
「死んじゃってたのもあるもんね……けど、それで二十七件……元は辿れた?」
「依頼人にも直接確認するべきでしょうが、当たりは付けました。ただ、その先は国の管轄かなと」
「そうだねえ。うん。コウヤちゃんが直接持ってく?」
コウヤが一言、あの近衛騎士達にでも言伝を頼めば、王まで一気に上がる。けれど、本来はやはりやるべきではない。
「いえ、ここまできたら急ぎでもないですし、ギルドからの方が良いですよ。一応、これが俺の方でまとめたものです」
報告書としてまとめたものと、それに付随する資料も数枚付けてある。それを受け取り、タリスは一通り目を通す。
「ん~、相変わらず仕事が速いね~。はい。ルナちゃん」
「え、あ、はい……っ、ちょっ、これ!」
「正規の手続きで国に上げてね。じゃあ、テーラちゃん呼んできて」
「はい」
「えぇぇぇ!?」
ルナッカーダは報告書を見ながら、驚き続ける。青年が覗き込んで目を丸くするのを確認しながら、コウヤは部屋を出たのだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
近衛騎士の三人はスキルを使いすぎて疲れ切った様子で背中を少し丸めている。そんな彼らがギルドへ戻って来る所にタイミングを合わせて、コウヤも戻って来たのだ。
「お疲れ様です! これ飲んでくださいね。明日に響かないように」
コウヤが三人に差し出したのは三本の薬瓶。細めの瓶が、よく効く栄養ドリンクらしさを見せる。もちろん、それはコウヤの気分だ。そして、中身に偽りはない。とっても良く効く栄養ドリンクだった。魔法のある異世界仕様なので即効回復バッチリの自信作だ。
「あ、ありがとうございます……」
「なんでそんな元気に……いえ、わかってます」
「まだまだ道のりは遠いなあ……」
近衛騎士達は、無理と分かっていても目標があった。それは、近衛騎士だからこそ持たなくてはならないもの。
近衛騎士達は全員、コウヤがジルファスの血を引いていることを知っている。
本来ならばそんなコウヤを護る立場でなくてはならないのだ。今はコウヤも王家に入る気はさらさらない。けれど、いつそうなってもいいように、護れるように力を磨く。
訓練を付けてもらう度に、追い付けないなと感じながらも、いつかは護れるようになろうと目標を持っていたのだ。
彼らは静かにため息をひとつ吐いて、コウヤから薬を受け取る。その時、コウヤの服装がギルドの制服でないことに気付いた。
「あれ? コウヤ様、着替えられたんですか?」
ギルドを出てから、コウヤは少し良い身なりに着替えていた。髪もちょっとかしこまった感じに整えている。そんな髪をいつものように戻すため手で梳いた。
「はい。情報収集するには、ギルドの制服だと警戒されたりしますから。今回の設定は、商人見習いです!」
「お似合いです」
「ありがとうございますっ」
三人はコウヤの笑顔に癒された。そのまま受け取った薬をあおる。
「んっ、美味しい」
「な、なんかクセになるかも」
「すっぱい? 甘い? この量じゃ味わい足りない!」
それぞれ感想を言いながら、コウヤの後に続いてギルドに入る。
因みに、既にパックンはコウヤの腰の背中側にくっ付いており、その上にテンキとダンゴが丸まっていた。定位置がやはり落ち着くらしい。
「ん? あ……マジか。疲れが……」
「……これ、良く効くとかのレベルじゃないし……」
「コウヤ様の薬って、効果が良すぎて時々怖いんだよな……」
そんな声がコソコソと聞こえたが、コウヤは気にせず職員に声を掛ける。
「すみません。一応、王都内で従魔契約のない魔獣を全て確保したので、これから依頼に出ていたものとの照会をしたいんです。手伝っていただけませんか?」
「っ、お任せください! 私と二人連れて行きます!」
案内もしてくれたあの職員は、近衛騎士に全部処理できるかもと聞かされていたこともあり、驚きながらも動き出した。
「お願いします。あ、捕獲用のケージを出してもらえますか? 先に始めていますね」
「分かりました。ケージはあちらの倉庫に……」
捕獲用ケージと呼ぶのは、犬猫が入るキャリーケースのような見た目だ。ただし、少し大きめではある。
指差された先には倉庫がある。配置はどのギルドも変わらないので、コウヤも問題なくわかるのだが、他のギルド支部で勝手をするわけにはいかないだろうと断りを入れたかったのだ。
「あるだけ使うことになるかもしれませんけど、いいでしょうか」
「え、はい……」
職員は、目を泳がせながら返事をした。どれだけあったかなと捕獲用ケージの在庫を思い出そうとしたようだ。数がすぐに思い浮かばない職員は放っておいて、コウヤは容赦なく倉庫内にある捕獲用ケージを全て運び出すと決めた。
「パックン、ケージ運んでくれる?」
《任せなさい ᕦ(ò_óˇ)ᕤ 》
「うわあ……消えた……」
「えぇぇぇっ!」
近衛騎士がすごいなと呆れ半分の平坦な声を漏らす後ろで、職員は思わずのけぞっていた。
パックンのパックンを見て声を上げられるのはよくあることなので、コウヤはもはや気にしない。
部屋に向かいながら手順の説明をする。
「それじゃあ、俺が依頼番号で照会していくので、騎士さん達は俺が指定した子を捕獲ケージに入れて並べていってください」
「了解です!」
「職員さん達は、そのケージに処理番号の札をお願いします」
「わ、分かりました!」
そうだったと、職員が処理用の番号札を取りに走り出す。
部屋に入ると、手前三分の一を残して区切った柵の中に、六十匹以上の魔獣が眠っていた。その奥の方には、隅にもうひと枠柵が設けられている。
「あの、コウヤ様。あれはなぜ分けてあるんですか?」
「ああ。あれは魔獣じゃない子達です。依頼にあった純粋なペット達ですよ」
「……なるほど……」
それって、自分達が任されていた南側にもコウヤは来ていたのではないかと思ったが口にはしない。自分達、要らなかったんじゃないかとも。
少し落ち込んだが、こんなことはコウヤ相手にはいつものことだ。すぐに気持ちを切り替える。
「テンキとダンゴは、起きそうな子が居ないか見てて。ケージに入れた子は起こしてくれていいけど、暴れそうな子はまた寝かせてくれる?」
《承知しました》
《わかったでしゅ》
札を取りに行った職員も戻ってきたので、照会を始める。
「それじゃあ、テンポ良くいきますよ~」
そうして、依頼が出ていたペット達はほとんどが確認された。
「この残りの依頼は、残念ですけど時間も経ってしまっていますからね。亡くなった子も居ると思います。一応、軽くですが足取りを追えたものだけ、情報を裏に書いておきました。首輪や装飾品は可能な限り見つけましたので、それはこの袋に依頼番号を付けて入れてあります。確認してください」
「す、すごい……一体どうやって……」
小さくそんな呟きが聞こえたが、時間切れだ。
「残りの子達は後で引き取ります。テンキ、この後ユストさん連れてきて、引き取ってもらってくれる? 今日はこっちに居るみたいだから」
《お任せください》
ふっとテンキが消える。
「き、消えた!」
「転移が使えるんです。お気になさらず。さあ、ここは大丈夫なので、依頼完了の処理をお願いします。ただ……飼い主さんに注意が必要なので、ユースールから人を呼んでも良いか、うちのマスターに確認してきます」
「分かりました……お手数をおかけします……」
もう、職員は何が何だか分からなくなっていた。転移ができる魔獣ってなんだろうとか、色々ついて行けなかったのだ。
「いえ。あ、報酬は彼らに出しておいてください」
「はいっ。もちろんです!」
現実的な話がきて虚になりかけていた目が戻った。
代わりに動揺したのは近衛騎士達だ。
「えっ、コウヤ様! それはっ」
「もらってください。正統な報酬…….には少し足りないと思いますけど、あなた方の時間を使いましたからね」
「そんなっ」
「ふふ。気持ちですよ」
「っ……わかりました」
渋々だが納得してくれたようだ。報酬の受け取りのため、近衛騎士達が出て行く。
「ダンゴ、先にユースールに行ってペット担当のテーラ主任に事情を話して来てくれる? 多分、マスターは許可を出すと思うから」
《まかせるでしゅ!》
ダンゴならうまく説明もしてくれる。そして、この現状を知ればペット担当で、従魔術師のテーラはすぐにでも行くと言ってくれるはずだ。
「パックン、ここに居てこの子達見ててくれる?」
《いいよー》
ユストが来るにしても、一度には連れて行けないはずだ。それに、高位の魔物であるパックンが部屋に居れば、目を覚ました魔獣もただの獣もむやみに騒いだりしないだろう。最初は警戒するだろうが、次第に落ち着くはずだ。何よりもパックンは神の眷属なのだから。
捕獲用ケージには、遮音の術が付与されている。よって、中に入った子が騒いでも外には聞こえない。とはいえ、鳴き続けるのはよくないだろう。ただでさえ、消耗しているのだ。これ以上弱らせるわけにはいかない。
《目が覚めた子には食事もさせる!》
「ありがとう。なら、コレね」
《うわあい (*^◯^*) 》
コウヤが出した餌の入った袋をパックンして喜んでいた。
「なら、頼んだよ」
言い置いて、コウヤはギルドマスターの執務室へ向かった。
その時、後にした部屋からユストの歓喜の声が聞こえた。パックンを置いておいて良かった。
「マスター、コウヤです。戻りました」
「ん~、入って~」
中に入ると、あのソルマという青年の視線はかなり控えめになっていた。というか、あからさまに目を逸らされた。
「どうだった?」
「生きていた子達は全部捕獲できました。町中にいる契約なしの魔獣や魔物も全て回収して、ユストさんに預けてます。それで、やっぱり魔獣をペットとしていたものがあるので、テーラさんに来てもらうべきかなと思いまして」
「やっぱ、多いの?」
コウヤは正確な件数を思い出す。
「はい。想定していた三十五件中、八件は捕獲確認できませんでしたが、二十七件です」
「死んじゃってたのもあるもんね……けど、それで二十七件……元は辿れた?」
「依頼人にも直接確認するべきでしょうが、当たりは付けました。ただ、その先は国の管轄かなと」
「そうだねえ。うん。コウヤちゃんが直接持ってく?」
コウヤが一言、あの近衛騎士達にでも言伝を頼めば、王まで一気に上がる。けれど、本来はやはりやるべきではない。
「いえ、ここまできたら急ぎでもないですし、ギルドからの方が良いですよ。一応、これが俺の方でまとめたものです」
報告書としてまとめたものと、それに付随する資料も数枚付けてある。それを受け取り、タリスは一通り目を通す。
「ん~、相変わらず仕事が速いね~。はい。ルナちゃん」
「え、あ、はい……っ、ちょっ、これ!」
「正規の手続きで国に上げてね。じゃあ、テーラちゃん呼んできて」
「はい」
「えぇぇぇ!?」
ルナッカーダは報告書を見ながら、驚き続ける。青年が覗き込んで目を丸くするのを確認しながら、コウヤは部屋を出たのだ。
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