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第七章 ギルドと集団暴走
232 まあ予想通り
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無事に儀式は終わり、ゼストラーク達も神界へと戻った。祭壇の上に掲げられている四円柱は、正しく神に認められたことを示す光を纏っている。
その光に魅入っている人々に退席を促し、王族達はベニ達と共に奥の部屋に案内されていく。棟梁達は、ゆっくりと今日、明日と泊まって休んでもらうことになっていた。
その間のコウヤはといえば、コウルリーヤの姿を保ったまま、ゼストラーク達と一緒に神界に居た。
「コウヤちゃん、大丈夫?」
「そんなに心配しなくても、無理だってなったら戻るだけだよ」
「でも~っ」
エリスリリアはコウルリーヤの姿で神界に戻ってきたコウヤが居ることが嬉しい反面、まだ完全に神格の戻っていないコウヤを神界に留まらせることで負担がかかるのを心配していた。
「ふふ。心配してくれてありがとう、エリィ姉」
「うん……本当に無理しないでね?」
今、コウヤ達は王達が部屋に入るのを待っているのだ。ゼストラークとリクトルスは現在、王都とユースールの教会への道を作るのに忙しい。とはいえ、準備はしていたようで、あとはわずかな調整だけのようだ。これが終われば、いつでも教会から外に出ることも出来るようになる。
「分かってるよ。あ、ほら、あっちの準備できたみたい」
「そうっ。ならすぐに行くわよ! こっちも良いわね?」
「わわっ」
「こらっ、エリスっ。コウヤ君を引っ張らないっ。それと後五秒待つ!」
「早く早くっ」
リクトルスに待ったをかけられながら、エリスリリアはコウヤの袖を引っ張り、そわそわと待つ。
部屋に入ったのは、教会側のメンバーがベニ達三ばばさまと、ルディエ、サーナ、ジザルス、リウムの七人とパックン達。
王族側は、出席していたアビリス王、ジルファス、ミラルファ、アルキス、シンリームとベルナディオ宰相に、補佐の代表としてニールで七人だ。護衛の騎士達は部屋の外で待機している。
この部屋は大会議室で、この人数も問題なく席に着ける長い大机が入っている。パックン達は部屋の隅だ。半ば気配を消して控えている。
全員が席に着いた所で、ベニはセイとキイに目配せし、頷き合う。そして、三人が立ち上がると、ルディエ達も立つ。それに釣れられるように王達も立ち上がった。
「準備、整いました」
そうベニが口にするのを待っていた。こちらの調整も終わっていた。
最初にエリスリリアが飛び出すように顕現する。そんなエリスリリアに引っ張られてコウルリーヤが、その後にリクトルス、ゼストラークと続いて顕現する。
「大成功ねっ。これでいつでもここに来られるわよっ。あっ、ベニちゃん! セイちゃん! キイちゃん! お久~☆」
「「「久し振り~!」」」
緊張感は一気に弾けた。
「エリスはまったく……久し振りですね三人とも。さすがに大人しく大人になったと思ったのですけど、また若返るから……」
「リクト様も相変わらずみたいね。私らが変わるわけないわっ」
「「そうそうっ」」
「本質の問題ではなく、表に出る行動に落ち着きを持つようにと言いたいんですよ」
リクトルスは始終、苦笑い。
「そう言っておっても、リクトは三人の全く衰えないメイスの腕や訓練の様子を嬉しそうに見ておったぞ」
「っ、父上……まあ、肉体が衰えても腕が鈍らない所は褒めても良いとは思ってますよ」
これを聞いたベニ達は、示し合わせたようなタイミングで同じ表情を浮かべた。シンクロ率がハンパない。更には、エリスリリアまで同じ表情だ。
「リクトが褒めた!?」
「「「リクト様に褒められた!?」」」
「なんですかその信じられないって顔は! エリスも! だからもっと落ち着きを持てと言ってるんです!」
リクトルスも楽しそうなので良しとしよう。
「ふふっ。ほらリクト兄もエリィ姉も落ち着いて? 他の方達が驚いていますよ?」
「あらら。ごめんね? ベニちゃん達とだとどうしてもね」
「失礼しました……この三姉妹と会話するとどうしても……」
エリスリリアはベニ達とはしゃぎ、それをリクトルスがいつも注意してお説教するというのが常だったようだ。
「楽しくて良いですけどね。これからは、いつでも会いに来られるでしょう? ユースールにも来られるなら、その時にゆっくりね」
この時、コウヤも少し興奮していた。ようやく大切な家族といつでも会えるようになったのだ。だから油断していた。そして、それはエリスリリア達も同じ。
「そうねっ。ユースールが楽しみだわ! 是非案内してね? 手料理と満服亭のメニューを食べ比べしたいわっ」
「兵達の訓練に混ざるのも面白そうです。あの訓練は画期的ですよ。うん。さすがっ」
「家も見たいな。楽器作りも手伝おう」
「はいっ。なら落ち着いたらすぐにでも」
こんな会話がなされるタイミングも悪かった。最初は緊張していたアビリス王達も、エリスリリアやリクトルス達と戯れるベニ達の様子に、すっかり落ち着きはじめていたのだ。
ベニ達とは気さくに話すようになっていたため『友達の友達は友達になれるかも?』的な思考が働き、肩の力も抜けたのだ。
そして、会話もスムーズに頭に入ってきた。
すると、元々頭の回転の遅くない人たちだ。不意に気付いてしまった。
気配を隠すようにして控えるパックン達を確認し、彼らがこの場にそうして控えている意味を考える。信じられない思いで仮定した所で、サーナ達やルディエを見た。視線の先にいる人物を見て、確信するのに時間はかからなかった。
絞り出すような震える声で、アビリス王とジルファス、アルキスが口にする。
「「「っ……コウヤ……?」」」
「はい。あれ……?」
「「「……」」」
思わず自然に振り返って答えたコウヤは悪くない。悪くないがうっかり過ぎる。パックン達も呆れた。
《……主様らしいですね。上手く誤魔化せていたんですが……》
《……仕方ないでしゅよ。主様のうっかりは標準装備らしいでしゅから》
《まあ予想通り d( ̄  ̄) 》
もちろん、知っていたシンリームとニールもお手上げだと目を伏せた。
************
読んでくださりありがとうございます◎
二日空きます。
よろしくお願いします◎
その光に魅入っている人々に退席を促し、王族達はベニ達と共に奥の部屋に案内されていく。棟梁達は、ゆっくりと今日、明日と泊まって休んでもらうことになっていた。
その間のコウヤはといえば、コウルリーヤの姿を保ったまま、ゼストラーク達と一緒に神界に居た。
「コウヤちゃん、大丈夫?」
「そんなに心配しなくても、無理だってなったら戻るだけだよ」
「でも~っ」
エリスリリアはコウルリーヤの姿で神界に戻ってきたコウヤが居ることが嬉しい反面、まだ完全に神格の戻っていないコウヤを神界に留まらせることで負担がかかるのを心配していた。
「ふふ。心配してくれてありがとう、エリィ姉」
「うん……本当に無理しないでね?」
今、コウヤ達は王達が部屋に入るのを待っているのだ。ゼストラークとリクトルスは現在、王都とユースールの教会への道を作るのに忙しい。とはいえ、準備はしていたようで、あとはわずかな調整だけのようだ。これが終われば、いつでも教会から外に出ることも出来るようになる。
「分かってるよ。あ、ほら、あっちの準備できたみたい」
「そうっ。ならすぐに行くわよ! こっちも良いわね?」
「わわっ」
「こらっ、エリスっ。コウヤ君を引っ張らないっ。それと後五秒待つ!」
「早く早くっ」
リクトルスに待ったをかけられながら、エリスリリアはコウヤの袖を引っ張り、そわそわと待つ。
部屋に入ったのは、教会側のメンバーがベニ達三ばばさまと、ルディエ、サーナ、ジザルス、リウムの七人とパックン達。
王族側は、出席していたアビリス王、ジルファス、ミラルファ、アルキス、シンリームとベルナディオ宰相に、補佐の代表としてニールで七人だ。護衛の騎士達は部屋の外で待機している。
この部屋は大会議室で、この人数も問題なく席に着ける長い大机が入っている。パックン達は部屋の隅だ。半ば気配を消して控えている。
全員が席に着いた所で、ベニはセイとキイに目配せし、頷き合う。そして、三人が立ち上がると、ルディエ達も立つ。それに釣れられるように王達も立ち上がった。
「準備、整いました」
そうベニが口にするのを待っていた。こちらの調整も終わっていた。
最初にエリスリリアが飛び出すように顕現する。そんなエリスリリアに引っ張られてコウルリーヤが、その後にリクトルス、ゼストラークと続いて顕現する。
「大成功ねっ。これでいつでもここに来られるわよっ。あっ、ベニちゃん! セイちゃん! キイちゃん! お久~☆」
「「「久し振り~!」」」
緊張感は一気に弾けた。
「エリスはまったく……久し振りですね三人とも。さすがに大人しく大人になったと思ったのですけど、また若返るから……」
「リクト様も相変わらずみたいね。私らが変わるわけないわっ」
「「そうそうっ」」
「本質の問題ではなく、表に出る行動に落ち着きを持つようにと言いたいんですよ」
リクトルスは始終、苦笑い。
「そう言っておっても、リクトは三人の全く衰えないメイスの腕や訓練の様子を嬉しそうに見ておったぞ」
「っ、父上……まあ、肉体が衰えても腕が鈍らない所は褒めても良いとは思ってますよ」
これを聞いたベニ達は、示し合わせたようなタイミングで同じ表情を浮かべた。シンクロ率がハンパない。更には、エリスリリアまで同じ表情だ。
「リクトが褒めた!?」
「「「リクト様に褒められた!?」」」
「なんですかその信じられないって顔は! エリスも! だからもっと落ち着きを持てと言ってるんです!」
リクトルスも楽しそうなので良しとしよう。
「ふふっ。ほらリクト兄もエリィ姉も落ち着いて? 他の方達が驚いていますよ?」
「あらら。ごめんね? ベニちゃん達とだとどうしてもね」
「失礼しました……この三姉妹と会話するとどうしても……」
エリスリリアはベニ達とはしゃぎ、それをリクトルスがいつも注意してお説教するというのが常だったようだ。
「楽しくて良いですけどね。これからは、いつでも会いに来られるでしょう? ユースールにも来られるなら、その時にゆっくりね」
この時、コウヤも少し興奮していた。ようやく大切な家族といつでも会えるようになったのだ。だから油断していた。そして、それはエリスリリア達も同じ。
「そうねっ。ユースールが楽しみだわ! 是非案内してね? 手料理と満服亭のメニューを食べ比べしたいわっ」
「兵達の訓練に混ざるのも面白そうです。あの訓練は画期的ですよ。うん。さすがっ」
「家も見たいな。楽器作りも手伝おう」
「はいっ。なら落ち着いたらすぐにでも」
こんな会話がなされるタイミングも悪かった。最初は緊張していたアビリス王達も、エリスリリアやリクトルス達と戯れるベニ達の様子に、すっかり落ち着きはじめていたのだ。
ベニ達とは気さくに話すようになっていたため『友達の友達は友達になれるかも?』的な思考が働き、肩の力も抜けたのだ。
そして、会話もスムーズに頭に入ってきた。
すると、元々頭の回転の遅くない人たちだ。不意に気付いてしまった。
気配を隠すようにして控えるパックン達を確認し、彼らがこの場にそうして控えている意味を考える。信じられない思いで仮定した所で、サーナ達やルディエを見た。視線の先にいる人物を見て、確信するのに時間はかからなかった。
絞り出すような震える声で、アビリス王とジルファス、アルキスが口にする。
「「「っ……コウヤ……?」」」
「はい。あれ……?」
「「「……」」」
思わず自然に振り返って答えたコウヤは悪くない。悪くないがうっかり過ぎる。パックン達も呆れた。
《……主様らしいですね。上手く誤魔化せていたんですが……》
《……仕方ないでしゅよ。主様のうっかりは標準装備らしいでしゅから》
《まあ予想通り d( ̄  ̄) 》
もちろん、知っていたシンリームとニールもお手上げだと目を伏せた。
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