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第七章 ギルドと集団暴走

225 やっぱりちょっと違いますか?

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コウヤが幼児姿から元に戻って一週間が過ぎた。

実は、王都の聖魔教会はコウヤが小さくなっている間に既に完成しており、設備まできっちり入った状態になっている。

今日までドラム組の棟梁や屋台組のメンバーはのんびりと教会に泊まりながら王都観光を楽しんでもらっていた。そんな彼らを今日、マンタで迎えに行くことになっている。

そうして、教会に転移したコウヤ。因みに、レナルカはゲンの所でお留守番だ。『じぃじ、じぃじ』と呼ばれて見事に『じじバカ』になったゲンは、楽しそうに仕事をしながらレナルカと遊んでくれていた。なんだかゲンがどんどん若返っていくようで少し怖い。

訪ねてくる冒険者達や町の住民達も、幼児コウヤショックが訪れているらしく、やたらとレナルカを見に来たがる。癒されているらしいので良しとしよう。構われるレナルカも元気に喜んでいる。

「あ、やっぱり、これなら転移しても聖堂に居る人達に気付かれないね」
《昔は神官が突然転移してきたところで、驚くことはなかったのですけれどね》
《今やったら、質問責めに合うのがオチでしゅよ》
《時代の違いさ( ̄+ー ̄)》

聖域の中心である聖堂へ転移するのだが、意識して指定しなければ祭壇前になる。最も聖域が安定しているのが祭壇の辺りだからだ。なので、祭壇の横にカーテンのようなものを用意した。舞台袖のような感じだ。

そこに転移するように意識すれば、先ず見つかることなく横の通路へ入り、聖堂を出ることができる。ユースールの方も、同様のものの設置が済んでいる。

そのカーテンも品位を損なわない美しいものだ。当然のようにコウヤが作った。白い絹のような生地。これは、蚕のような魔物、カユラの繭から作っている。耐火、防水仕様、中級までの魔法も効かない。防具にも使える最高級品だ。

それに翡翠と淡い紅、茶金と紺に染めたキングスパイダーの糸で刺繍を施している。キングスパイダーは、玉座の迷宮の下層に棲む凶暴な蜘蛛だ。出会ってしまったら、それが子蜘蛛であっても死を覚悟しなくてはならない。だが、コウヤにとっては素敵な糸を紡いでくれる益虫でしかない。

様々な色に染まりやすく、魔力耐性が強い。重さがあるので布を織るのには向かないが、刺繍で十分効果を発揮してくれる。因みに、聖魔教で売り出している各種護符のお守りにはこれが刺繍糸として使用されている。

力のある魔法師が魔法陣を刺繍すれば、とても強力な護符となるのだ。もちろん、聖魔教のはコレだ。ただし、永遠に効果は続かない。だいたい二年だろう。身を守るものならば、身を守っただけ効果は早くなくなる。その注意もして渡していた。

盗まれないよう、持ち主がそれに魔力を流すことで所有者を固定する。効果がある間は魔力を帯びて淡く光るため、その光の具合で効果のあるなしが分かるようになっていた。

ただ、このコウヤが施した刺繍はほぼ永遠に輝き続ける。効果はこの教会の守護。教会の敷地内全てに適応される。害意ある者は敷地内には入ることができるが、聖堂の中までは入れない。そして、敷地内では誰かや何かに危害を加えようとすれば力が抜ける仕様だ。

くたんと、脱力して倒れた者たちは、素早く気付いた神官たちによって地下牢に連行される。

その後、尋問を受け、諭され、更生して解放される。決して洗脳はしていないはずだ。

お陰で、一般公開をはじめて数日。教会周辺でも、なんの問題も起きていなかった。

平和だなとざわざわとした喧騒を聴きながら教会の居住区の方へ進む。隣にある孤児院では、昼前の運動の時間なのだろう。中庭で駆け回る子ども達の姿が建物の間から見えた。

当初、集めた孤児達は生気の感じない様子だった。だが、ほんの数日で神官達に心を開き、楽しそうに暮らすようになった。

「あ、テルザさんだ」
《穏やかな顔をしておられますね》
「うん」

先生と慕ってくれる子ども達の様子をのんびりと眺めるテルザは、優しいおじいちゃんにしか見えなかった。少し前までのトゲトゲした雰囲気は全く感じられないのが不思議なくらいだ。

テルザは、こことユースールの教会を行き来し、それぞれの先生として働いてくれている。張り切り過ぎている気もするが、健康にも気を付けているので心配ないだろう。

居住区に入ってすぐ、棟梁とばったり出会った。

「おはようございます。棟梁」
「む、コウヤ……迎えか」
「はい。昼食が終わってからで大丈夫でしたか?」
「ああ」

珍しくなんだかお疲れの様子だ。棟梁やドラム組の者達は、仕事で疲れることはない。仕事をしたくて仕方のない人達なのだ。休養期間中の方が、暇で疲れるらしい。コウヤと一緒だ。だが、その疲れ具合とも違う。

「王都観光……楽しくなかったですか?」
「あ、いや……」
「ん? そういえば、宰相さんとはお話できました?」
「できた……食堂で食事しながら……楽しかった……」
「よかったですっ」
「っ、ありがとう……」

何十年振りかに再会することができた二人。喋るのが苦手な棟梁が楽しかったというのなら、相当楽しく、嬉しいことだったのだろう。ベルナディオ宰相も、心配していた甥が楽しそうなところを見て、安心したはずだ。

「それで、何か他に問題が?」

そこに、屋台組をまとめるドレッドヘアのお姉さん。ゼットと婚約中のマリアーナがやって来た。

「どこへ行っても、商業ギルドの連中がついて回って鬱陶しくてね」
「……なるほど……」
「何度かウザいことも言ってくるから、キレそうになってねえ……まあ、神官さんが綺麗にあしらってくれたけど」
「神官に……迷惑をかけた……」

気疲れだ。それでほとんどここに引きこもるようになったらしい。

「そうでしたか……分かりました」
「な、何が分かったんだい? コウヤ?」
「はい! ちょっと後で抗議入れておきます。大丈夫ですよ。アルキス様も、商業ギルドがおかしいって言ってましたから」

笑顔で返事をしておいた。問題ないとアピールだ。

「あ、アルキス様って、確か王弟の……」
「そうですよ。でも、冒険者ですし、とっても気さくな方です」
「なるほど……いや、コウヤが普通に話してたのは見てたからね」

そこは安心だとマリアーナは、なんとか頷いた。一方、棟梁の表情は曇ったままだ。

「……ここのギルド……気をつけてろ……」
「やっぱりちょっと違いますか?」
「……違う……」
「仕方ないさ。ユースールは貴族とかを相手にして商売を考えてないからね。それだけでも違うよ」

誇らしそうに言うマリアーナ。とっても微笑ましい。

「……コウヤ。その温かい目をやめてくれるかい? 恥ずかしいよ……っ」
「ははっ。すみません。早く結婚してくださいね」
「っ、そうするよっ……」

いつも漢らしいところのあるマリアーナがとっても可愛らしかった。

昼をゆっくりとってから出発すると声をかけ、コウヤは商業ギルドの様子を知ろうと、話を知っていそうな神官を探す。

見つけたのはジザルスだ。そこに、ビジェとアルキスがいた。

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三日空きます。
よろしくお願いします◎
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