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第六章 新教会のお披露目
186 聖域はいいよねえ
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コウヤは棟梁に宣言した通り、昼からの半日で資材の確保を森と迷宮で済ませた。
様々な性質の木を用意し、全てきっちり使えるように皮を剥ぎ乾燥させた。迷宮で手に入れたのはセメントのようなものと、硬さの違う煉瓦だ。因みに迷宮の名称はそのまま『石材の迷宮』である。ユースールからはかなり離れているが、コウヤが比較的良く行く迷宮の一つだった。
それから二日、コウヤはギルドでの仕事をこなしながら、釘や工具の補充も行った。そうして、出発の日がやってきたのだ。
「では、積み込みお願いします」
「「「……!?」」」
マンタを見た一同は、絶句していた。しばらく目を瞠り、微動だにしなかったのだが、棟梁をはじめとするドラム組は、突然マンタに駆け寄り、素材を確かめだす。
「なんだこれ……鉄? 薄いのか? いや、骨組みできっちり……」
「継ぎ目が綺麗だ……あ、場所によって素材を変えてる?」
「美しすぎる……この曲線……っ、なんて美人なんだ!」
職人の病だ。
「あいつらはしばらく放っておく。お前たち、乗り込むよ!」
「「「っ、おおっ!」」」
屋台部隊のまとめ役であるマリアーナは、マンタに興味津々のドラム組の制御を諦め、部隊の者達を先導し、コウヤの待つ貨物庫に向かった。
「コウヤ、固定はしないのかい?」
「この貨物庫自体に空間制御の魔法を付与してあるんです。ハッチが閉まった時の状態をそのまま維持して固定させるから、問題ないですよ」
アクロバット飛行をしても荷物が動かないようにしてあるのだ。安全、安心である。
「これで全部ですね? そろそろドラム組も落ち着いたでしょうか」
「……中に入れよう」
「そうですね。また興味のあるものが中にあるでしょうから。テンキ、ビジェ手伝って」
《承知しました主》
「わかっタ」
何とか中に入ってもらい、出発となった。勿論、当然のように職人達は、サーナ達を案内に艦内を興味深く見回っていた。
今回のコウヤの同行者はパックン達従魔組と、サーナとルディエを含む白夜部隊の数名とビジェ。レナルカはいつも通り背負っており、今回はベニとキイもいる。セイは一歩先に王都に戻り、テルザの家に滞在しているのだ。
「ばあさま。教会、留守にしちゃって良かったの?」
「構わんさね。優秀な神官達が居るしねえ。いつでも帰れるやろ?」
「王都は久しぶりだしねえ」
そうして、ゆったりと空の旅を楽しみ、王都の近くに降り立った。
ルディエ達を先頭に、十分ほど離れた王都の門へゾロゾロと向かう。見た目は大きな商隊だ。ドラム組と屋台部隊に分かれて商隊登録しているので、比較的すぐに門をくぐることができた。
真っ直ぐに教会建設予定地であるテルザの屋敷へ向かう。
「すぐに始められるか?」
棟梁がその場所を見ただけでうずうずし出していた。良く見れば、ドラム組の者全員だ。久し振りの大仕事だ。今回の建設予定地のように広い土地を使えるのは、ユースールでもそうそうないのだ。興奮しても仕方がない。
一方、屋台部隊は冷静に、滞在することになるコンテナハウスに入り、場所を整えている。ドラム組の場所もだ。彼ら屋台部隊は、ドラム組の補佐をするのだから。彼らの屋台は綺麗に端に並べていた。
「できますよ。近所の方には既に建築に入ることは知らせてあります。ほら、覗いているでしょう」
大通りから二本奥だ。だが、この場所の前に通る道はそれなりに広いものだった。沿道には店はないが、沢山の家が綺麗に並んでいる。
そんな家の窓から、住民達がこちらを覗き見ていた。ただ、その目は迷惑そうだ。やはり大工は嫌われてしまっている。それを寂しげに確認していると、セイとジザルスがテルザの屋敷から出てきた。
「お揃いだねえ」
「セイ。話には聞いていたが、本当に良い範囲で聖域になっているねえ」
「気持ち、セイの肌艶も良さそうやない?」
「「「聖域はいいよねえ」」」
うふふ、ほほほと笑いだすばば様達は放っておいて、こちらは気にせずはじめてしまおう。
「棟梁、はじめてくれますか?」
「任せてくれ」
いつもは口数の少ない棟梁も、興奮しているらしく、言葉ははっきりとしていた。
「足場を組んだら挨拶だ。気合い入れろ」
「「「おうっ!」」」
素早く指示を出し、足場を組んでいく。この足場を組む時の音は、カキン、カコンというものだ。ここでも音には気を使っている。
そうして、あっという間に、一帯が布で覆われた。
「お~い。コウヤ!」
「え? あ、アルキス様? と、ミラルファ様……」
そこに、アルキスとミラルファが冒険者のような服装でそこにやってきたのだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
様々な性質の木を用意し、全てきっちり使えるように皮を剥ぎ乾燥させた。迷宮で手に入れたのはセメントのようなものと、硬さの違う煉瓦だ。因みに迷宮の名称はそのまま『石材の迷宮』である。ユースールからはかなり離れているが、コウヤが比較的良く行く迷宮の一つだった。
それから二日、コウヤはギルドでの仕事をこなしながら、釘や工具の補充も行った。そうして、出発の日がやってきたのだ。
「では、積み込みお願いします」
「「「……!?」」」
マンタを見た一同は、絶句していた。しばらく目を瞠り、微動だにしなかったのだが、棟梁をはじめとするドラム組は、突然マンタに駆け寄り、素材を確かめだす。
「なんだこれ……鉄? 薄いのか? いや、骨組みできっちり……」
「継ぎ目が綺麗だ……あ、場所によって素材を変えてる?」
「美しすぎる……この曲線……っ、なんて美人なんだ!」
職人の病だ。
「あいつらはしばらく放っておく。お前たち、乗り込むよ!」
「「「っ、おおっ!」」」
屋台部隊のまとめ役であるマリアーナは、マンタに興味津々のドラム組の制御を諦め、部隊の者達を先導し、コウヤの待つ貨物庫に向かった。
「コウヤ、固定はしないのかい?」
「この貨物庫自体に空間制御の魔法を付与してあるんです。ハッチが閉まった時の状態をそのまま維持して固定させるから、問題ないですよ」
アクロバット飛行をしても荷物が動かないようにしてあるのだ。安全、安心である。
「これで全部ですね? そろそろドラム組も落ち着いたでしょうか」
「……中に入れよう」
「そうですね。また興味のあるものが中にあるでしょうから。テンキ、ビジェ手伝って」
《承知しました主》
「わかっタ」
何とか中に入ってもらい、出発となった。勿論、当然のように職人達は、サーナ達を案内に艦内を興味深く見回っていた。
今回のコウヤの同行者はパックン達従魔組と、サーナとルディエを含む白夜部隊の数名とビジェ。レナルカはいつも通り背負っており、今回はベニとキイもいる。セイは一歩先に王都に戻り、テルザの家に滞在しているのだ。
「ばあさま。教会、留守にしちゃって良かったの?」
「構わんさね。優秀な神官達が居るしねえ。いつでも帰れるやろ?」
「王都は久しぶりだしねえ」
そうして、ゆったりと空の旅を楽しみ、王都の近くに降り立った。
ルディエ達を先頭に、十分ほど離れた王都の門へゾロゾロと向かう。見た目は大きな商隊だ。ドラム組と屋台部隊に分かれて商隊登録しているので、比較的すぐに門をくぐることができた。
真っ直ぐに教会建設予定地であるテルザの屋敷へ向かう。
「すぐに始められるか?」
棟梁がその場所を見ただけでうずうずし出していた。良く見れば、ドラム組の者全員だ。久し振りの大仕事だ。今回の建設予定地のように広い土地を使えるのは、ユースールでもそうそうないのだ。興奮しても仕方がない。
一方、屋台部隊は冷静に、滞在することになるコンテナハウスに入り、場所を整えている。ドラム組の場所もだ。彼ら屋台部隊は、ドラム組の補佐をするのだから。彼らの屋台は綺麗に端に並べていた。
「できますよ。近所の方には既に建築に入ることは知らせてあります。ほら、覗いているでしょう」
大通りから二本奥だ。だが、この場所の前に通る道はそれなりに広いものだった。沿道には店はないが、沢山の家が綺麗に並んでいる。
そんな家の窓から、住民達がこちらを覗き見ていた。ただ、その目は迷惑そうだ。やはり大工は嫌われてしまっている。それを寂しげに確認していると、セイとジザルスがテルザの屋敷から出てきた。
「お揃いだねえ」
「セイ。話には聞いていたが、本当に良い範囲で聖域になっているねえ」
「気持ち、セイの肌艶も良さそうやない?」
「「「聖域はいいよねえ」」」
うふふ、ほほほと笑いだすばば様達は放っておいて、こちらは気にせずはじめてしまおう。
「棟梁、はじめてくれますか?」
「任せてくれ」
いつもは口数の少ない棟梁も、興奮しているらしく、言葉ははっきりとしていた。
「足場を組んだら挨拶だ。気合い入れろ」
「「「おうっ!」」」
素早く指示を出し、足場を組んでいく。この足場を組む時の音は、カキン、カコンというものだ。ここでも音には気を使っている。
そうして、あっという間に、一帯が布で覆われた。
「お~い。コウヤ!」
「え? あ、アルキス様? と、ミラルファ様……」
そこに、アルキスとミラルファが冒険者のような服装でそこにやってきたのだ。
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