女神なんてお断りですっ。

紫南

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633 前代未聞のお祭り騒ぎ

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2017. 12. 29

**********

ベリアローズとユフィアの結婚式から数年が過ぎた。

その年、盛大だったと国の者が口を揃えて自慢するこの国の王太子と第二王子の結婚式にも勝るとも劣らない出来事があった。

フェルマー学園の卒業式。

これは、おおよそ卒業式では歴史上でも類を見ないお祭り騒ぎで、世界中が注目していた。

その原因は一人の少女だった。

「……屋敷が贈り物で埋まったって……サルバの方も?」
「はい。あちらではリジット殿が取り憑かれたように昼夜を問わず仕分けしておられます」
「あのリジットが……?」

世界中、どこを見てもこんなにも優秀な執事、家令はいないだろうと認められるヒュースリー伯爵家の家令、リジット・バーンズ。

どんな仕事であろうと、半日もかけずにやり遂げられる手腕を持つ彼が、一日でも終わらない作業をしていると聞いては、その量はおおよその見当もつかない。

「学園街の屋敷に届けられた物は、早急に学園の方へ届けるよう手配いたしまして、闘技場が埋まり出しております」
「闘技場に運んだの? ここの? あの国内でも有数の大きさを誇る学園の闘技場に?」
「はい。さすがはラキア様です。とても懸命なご判断であるかと」

届けられているのは、ティアラール・ヒュースリーへの卒業祝いの品だった。

この数年、ティアは自分が伯爵令嬢である事の情報を解禁し、冒険者としても、令嬢としても精力的に動き回った。

それは国を越えた活動もあり、人族の中で最も異種族と交流を持った者と言える程だ。

魔族の国はもちろん、エルフの国やドワーフの国、獣人族の国、竜人族の国にも行った。

お陰で、少しずつこのフリーデル王国へも異種族の者が来訪するようになっていた。それは裏を返せば、彼らが他国へと出かけるようになったということを意味する。

ここ六百年近く、どの国も閉鎖的だったのだ。これは世界の大きな一歩だと言えた。

そのきっかけを作ったティアが学園を卒業する。これは祝わなくてはいけないだろうと、世界各国から個人、国問わず祝辞と贈り物が届けられているのだ。

もちろん、ティアが女神サティアの生まれ変わりであることは、世界中でまことしやかに囁かれており、その影響もあった。

昨日から来客が多いなと感じてはいたのだが、贈り物がそんな量になっているとは思いもしなかったティアだ。

今現在の学園街にある伯爵家の別邸は、アリシアとベティが切り盛りしている。ラキアは既にエルヴァストと結婚した身、どれだけ本人が嫌だといってもメイドをやらせておけるものではない。

その上、彼女は既に一児の母となっており、本来ならばそちらに掛り切りになっているのが当然である。

しかし、そこはティア至上主義のラキアだ。子どもを産む時期から、子育ての仕方まで、ティアを基準にして考えた。卒業までは何だかんだと学園に拘束される。その間に自分も動けなくなるのは良い。卒業までに子育て環境も整え、気兼ねなくティアの世話もやけるようにと考えたらしい。

それでも妊娠中も今までも、時折訪問しては色々と二人を指導していた。今回はティアの卒業式ということもあり、張り切って出動してきている。今回の判断もラキアだからできた。闘技場でも問題となる量なのだ。来てくれて正解だったといえる。

エルヴァストや彼らの息子には申し訳ないが、今後も頼らせてもらいたい。

ともかく、今気になるのはこの後の予定だ。

「ただの卒業式だよね?」
「いえ、先ほどそうではなくなりました」
「うん? どういうこと?」

現在ティアは、代表の控え室にいる。式の最終確認の為、朝早くから呼び出されていたのだ。そこで、学園長と他の生徒達を待つ間、シルが現状の報告をしてくれていた。

「王がこの状況を見兼ねて対策を打ち出したようです。ティア様の卒業式を一目見ようとする者達が続出しておりまして、王都はお祭り騒ぎです。常よりも他国の方々の姿も多く、このままではトラブルも起きると予測され……式が終わり次第、ティア様の特別パレードが学園街から王城まで計画されております」
「……ナンダッテ……?」

卒業式を観覧したいという者達は大勢おり、絶対に会場に入りきらない。だが、せっかく他国からも一目見ようとやって来ているのだ。一目見せてやれば良いではないかという王の配慮……お節介だった。

因みにパレードは、ベリアローズとユフィアの結婚式の時にやったものが王の琴線に触れたらしく、この数年、すぐにやりたがるのだ。お金もかかる上に、住民達に迷惑な場合があるので、頻繁にやるものではないと注意して、これまで押しとどめてきたが、今回、確実に好機と見ただろうことは考えなくても分かった。

「それと、現在クィーグの者総出で世界中の神教会へ放映具を配達しております」
「それって……まさか」
「はい。ティア様の晴れの舞台を教会の者達が望んだ為です」
「何してんのっ!? ってか神殿内で集会になっちゃうじゃん! コワっ! 何考えてんの!?」

絶対あいつら拝むだろうと思わずにはいられない。怪しげな集会にしか見えないものが繰り広げられるのは避けられない。

「うぅっ……絶対また魔力が増える……これ以上増えたらどうなんのっ。人じゃなくなっちゃうじゃん」

もうとうの昔に、人外の魔力持ちになっているのは認めていないティアだ。ハイヒューマンとはあくまでも人族の枠組みの中にあり、その外ではないのだ。しかし、もちろんそんな枠など飛び出しているのが今のティアだ。周りだって理解している。

「いいえ、ティア様は女神様ですので、人族ではありません」
「……認めない……認めないからねっ!」

誰がなんと言おうと、ティアは人族で通していくのだ。例え、ちょっと多種族にもあり得ない力を持っていたとしてもだ。

「ティア様がそう仰るのなら……はい」
「うん。シルは素直でいいねっ。涙出てくるよっ」
「どうぞ、お拭きください」
「シルぅ~、なんて気がきくのっ。いつの間にリジットの弟子にっ!?」
「弟子にはなっておりませんが……ティア様が望まれるのでしたら……」

すかさずフォローに入るシルは本当に優秀だ。これはもう執事にして良いレベルだと思うと、訳の分からないテンションのティアのせいで、シルも混乱しだした。その時、ようやく学園長や他の代表達が姿を現したのだ。

**********

舞台裏の裏☆のお話。


ティア「そろそろ終わりだね~。大掃除はっと……って何これ!」

この辺は収録してる? こっちはいいか……。

ティア「ちょっとブタカン……なにしてんの。部屋が……埋まってんじゃん!!」

え? ああっ!? なんて事! これじゃ出られない!

ティア「出られないじゃなくて! 掃除はどうしたのっ」

あ~……いえ、やってはいたのですが、ついでに今回の収録内容と類似した所を確認しようと山に手をかけた所までは覚えているんですが……どうした事でしょう……。

ティア「どうしたって……どうしたよ! 知らないからね! そこで年越ししなさい!」

ええっ!? 助けてくれない!?

ティア「助けません! 掃除しながら出てきなさい!」

ヤダー! そっちから、そっちからも道を!

ティア「知りません!」

うわぁんっ。ティアちゃぁ~んっ。

妖精王  《ん? お? どうしたこれ。ドラゴンでも暴れたか?》

いえ……私が掘り進めました……。

妖精王  《ははっ、スゲェ山がいくつもあったもんなぁ。どれ、手伝ってやるよ》

マジですか!? お、お願いします!

妖精王  《任せろ。ホレ》

浮いたぁぁぁっ。

妖精王  《俺も片付けは苦手でなぁ。こうやって壁際に積んじまうのよ》

そういえば、王の間の壁際は金塊とかで埋まってましたね。

妖精王  《おう。隅に埃が溜まるとか言われなくていいだろ。お宝で埋まってっからな。はははっ》

……埃は……その手前に溜まるようになるんでしょうけど……そうですね。隅ではないです。

妖精王  《だろ? これでいいんだよ》

ですねっ。あ、山が小さくなって探しやすそうです。ありがとうございます!

妖精王  《よかったな》

はい。
ということで、近々今回の書籍化に伴い引き下げされる部分がありますので、ご了承ください。


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


七巻は妖精王様の出番です!


さて、卒業。その後は?


次回、明日0時です。
追い込み行きますよ!
よろしくお願いします◎
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