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621 お返しです
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2017. 10. 2
**********
マティに飛び乗ったティアは、先ずはと結界を張る為の残りの二つの魔導具を手にする。
「マティ、魔導具をセットするから、端までお願い」
《わかってるって、任せてよ》
ティアが言わずとも、マティには誓約者であるティアが何をしたいのかが分かるのだ。だから、ティアが飛び乗った時点で、マティはその場所へと駆け出していた。
一つはすぐに仕掛けられた。ほんの少し魔力を流すと、魔導具はそれ自体を守るための結界を張り、動かせなくなる。ただし、その状態を保てるのは一時間ほどだ。最後の一つを仕掛けなければ使えなくなってしまう。
とはいえ、これはシェリスとティアで作った特別製。本来ならば数分しか猶予が取れないというのが同類の魔導具である。一時間も猶予があるのだから、余裕だろうとタカを括っていたティアだったが、これを当然、トゥーレガルフは許さなかった。
「ちょっ!? 図体デカイくせに速っ」
《マティに追いつくなんてっ!》
もちろん、平原ではないのだから、マティの動きは制限される。そんな事情はあるものの、マティの動きについてくるものはそうそういないはずだった。
「っ、最後の一個がっ」
《うりゃぁっ》
近付いてきたトゥーレガルフに、マティが咄嗟に鋭い爪で真ん中の頭を斜めに引っ掻く。
《グラァっ!》
《ふんっ、片目潰してもまだ五個も目があるなんて反則だぁっ》
「マティ……」
確かに真ん中の一体の目を片方潰したとしても、両脇の奴らには痛くも痒くもないだろう。
《ねぇ、主。あれってケンカしたりしないのかな?》
「マティ……余裕?」
《ヨユウはないよ? だって、追いつかれちゃうんだもん。結構イラっときてます》
「だよね~」
なぜだろう。かなりピンチなのに、いつもの癖というか、軽口が出てしまう。
《グルルルァっ》
《うわわっ、スゴイの来るっ!》
「避けてよっ!?」
《ガンバるっ!!》
あの厄介な三種合成の技がティア達に向かって放たれる。
それをなんとかやり過ごす。とはいえ、大きな穴が固い石の地面に空いてしまった。バカにでいない威力だ。それに肝を冷やしながらティアも反撃に移る。
「それがどんだけ厄介か思い知りな」
ティアは三段階に設定した魔法陣を五つ空中に出現させた。
一つ目は火、二つ目が風、三つ目が光の雷電だ。今は何とか隙を作り、最後の魔導具を仕掛ける時間を稼ぐのが目的なので、小さくても良かったのだが、威力と大きさはあえて無理をして奴と同じようにしてやった。
「いっけーっ! 名付けてっ! 【炎雷砲】!!」
《おおぉぉっ。スッゴイ》
「マティ、今のうち」
《ラジャっ》
《グァァァァっっ》
声の具合から、それなりのダメージはありそうだとニヤリとしながら最後の魔導具をセットする。そして、発動させるため、魔力を流しこもうとした時だった。
「え……ルクス?」
マティがやって来た時と同じように、ルクスの気配が唐突に現れて飛び込んできた。
「ティアっ、無事かっ」
「あれ? ディストレアっ!?」
《わぁぉ》
マティの本来の姿を見せて、仲間達を驚かせるのが普通だったティアとしては、初の驚きだ。
「あ、えっと、これは……マティアス様が……」
「母様がっ?」
《説明は後だ。それよりもコレをどうにかするぞ》
「あ、はい……なんだろう、母様っぽい……」
雰囲気が似ているのだろうか。有無を言わせない何かがある。
《マティも逆らわない方が良い気がする……》
「やっぱり?」
なぜだろうとこの危機的状況でも、揃って首を傾げてしまった。そうしながらも、結界を発動させたのは条件反射だ。
そうすると、ルクスも気を引き締め相手を睨む。
「一体あれは?」
答えたのはルクスが連れているディストレアだ。
《降魔獣トゥーレガルフだ。地上に厄災を招き、滅びをもたらす。神の怒りを体現した魔獣と言われている》
「神の……」
ルクスは顔色を変える。当然だ。それは神の使徒に他ならない。
《神がもたらした神具。それを悪意のまま使い続けることで、生み出される》
「神具……もしかしてあの水晶の玉……神具だったのっ?」
《そこに転がっているものか。おそらく神玉だな。最強の結界具と言われていた》
それが何だったのか分かり、ティアは目を見開く。神玉はラピスタの神具だったはずだ。血筋は今のフリーデル王国の者になる。
「だから、王太子が……」
王太子が狙われたのはこの神具の使い手とするためだったのだろう。
《気をつけろ。あれの体毛は我らのものより頑丈だ。普通の魔術では傷など付かん。牙と爪には毒がある。それほど強いものではないが、治癒魔術は効かん。この我の目の傷がそうだ。いつまでも疼くでな》
「戦ったことがあるの?」
《うむ。我が唯一この世で苦戦した相手だ。なぁに、倒せぬものではないわ》
「それは心強いね」
先ほどの魔術の砲撃によって、トゥーレガルフは動きを止めていた。白銀にも輝くその体毛は、所々くすんで焦げているように見える。
「あははっ、倒せるヒントを自身で教えてくれるなんて良い奴じゃん」
《確かに効いている。余裕だな、姫よ》
「そんな事ないって。余裕だったら結界も私自身で張ったよ」
《なるほど。では行くぞ》
「うんっ」
ここからが正念場だ。
**********
舞台裏の裏では。
ティア「ブタカン。生きてる?」
い、いえ……ほぼ死にかけと申しますか……全てにおいて努力中であります……。
ティア「でも、本当に濃縮したね」
ええ……削りつつも、キャストの方々の出番はそれなりに長めにと頑張ったつもりです。
ティア「カランタが裏で号泣してたよ。おいしいところ作ってやったんだって?」
そこはまぁ、この後の濃縮具合を鑑みた結果と申しましょうか。あくまでも自然な流れですよ?
ティア「そうなの? なら、なんであんなに喜んでるんだろ……」
それはティアちゃんとの絡みが……。
ティア「うん?」
いえいえっ、どこが嬉しかったんでしょうね?
私としましては、第一王子とビアンさんの機嫌を取れた事の方が大きいのですが。
ティア「あ~、確かに機嫌良かったね。あっ、あとウルさんが生き生きしてたっ」
そこは普段の功を労ったためでしょうね。とにかく、削ったのに不満が出なくて良かったです。
ティア「まぁね。一人、マジで怖いほど機嫌の良いのが裏にいるのが心配ではあるけど……」
あの方ですか……普段からイっちゃってるんで、近付かない方がいいです。
ティア「それ、ブタカンが言う? 私との絡みあるんだけど?」
あ~、え~っと、それで該当部ですけれど、264話までの予定です。
収録しきれなかった部分は、後日閑話や番外編として書き直させていただきますねっ。
ティア「ちょっと、なに誤魔化そうとしてんの?」
い、いえ、誤魔化すなんてっ。
大体、舞台とは人と人との絡みがあってこそと言いますかっ。
ぶっちゃけティアちゃんくらいしか相手にできないと申しますかっ……はっ!
ティア「へぇ……危ないと分かった上での設定だと……」
だっ、だって、ティアちゃん最恐じゃないですかっ!
ティア「キョウの意味が違ぁうっ! お陰で目ぇ付けられたでしょっ!」
それは元からですって!
ティア「問答無用っ!」
ふぎゃぁぁぁっ!!
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
満足いただけるものになるよう、頑張ります。
味方も到着。倒しましょう。
次回、通常に戻るにはもう少しお待ちください。
また来週、月曜9日0時です。
よろしくお願いします◎
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マティに飛び乗ったティアは、先ずはと結界を張る為の残りの二つの魔導具を手にする。
「マティ、魔導具をセットするから、端までお願い」
《わかってるって、任せてよ》
ティアが言わずとも、マティには誓約者であるティアが何をしたいのかが分かるのだ。だから、ティアが飛び乗った時点で、マティはその場所へと駆け出していた。
一つはすぐに仕掛けられた。ほんの少し魔力を流すと、魔導具はそれ自体を守るための結界を張り、動かせなくなる。ただし、その状態を保てるのは一時間ほどだ。最後の一つを仕掛けなければ使えなくなってしまう。
とはいえ、これはシェリスとティアで作った特別製。本来ならば数分しか猶予が取れないというのが同類の魔導具である。一時間も猶予があるのだから、余裕だろうとタカを括っていたティアだったが、これを当然、トゥーレガルフは許さなかった。
「ちょっ!? 図体デカイくせに速っ」
《マティに追いつくなんてっ!》
もちろん、平原ではないのだから、マティの動きは制限される。そんな事情はあるものの、マティの動きについてくるものはそうそういないはずだった。
「っ、最後の一個がっ」
《うりゃぁっ》
近付いてきたトゥーレガルフに、マティが咄嗟に鋭い爪で真ん中の頭を斜めに引っ掻く。
《グラァっ!》
《ふんっ、片目潰してもまだ五個も目があるなんて反則だぁっ》
「マティ……」
確かに真ん中の一体の目を片方潰したとしても、両脇の奴らには痛くも痒くもないだろう。
《ねぇ、主。あれってケンカしたりしないのかな?》
「マティ……余裕?」
《ヨユウはないよ? だって、追いつかれちゃうんだもん。結構イラっときてます》
「だよね~」
なぜだろう。かなりピンチなのに、いつもの癖というか、軽口が出てしまう。
《グルルルァっ》
《うわわっ、スゴイの来るっ!》
「避けてよっ!?」
《ガンバるっ!!》
あの厄介な三種合成の技がティア達に向かって放たれる。
それをなんとかやり過ごす。とはいえ、大きな穴が固い石の地面に空いてしまった。バカにでいない威力だ。それに肝を冷やしながらティアも反撃に移る。
「それがどんだけ厄介か思い知りな」
ティアは三段階に設定した魔法陣を五つ空中に出現させた。
一つ目は火、二つ目が風、三つ目が光の雷電だ。今は何とか隙を作り、最後の魔導具を仕掛ける時間を稼ぐのが目的なので、小さくても良かったのだが、威力と大きさはあえて無理をして奴と同じようにしてやった。
「いっけーっ! 名付けてっ! 【炎雷砲】!!」
《おおぉぉっ。スッゴイ》
「マティ、今のうち」
《ラジャっ》
《グァァァァっっ》
声の具合から、それなりのダメージはありそうだとニヤリとしながら最後の魔導具をセットする。そして、発動させるため、魔力を流しこもうとした時だった。
「え……ルクス?」
マティがやって来た時と同じように、ルクスの気配が唐突に現れて飛び込んできた。
「ティアっ、無事かっ」
「あれ? ディストレアっ!?」
《わぁぉ》
マティの本来の姿を見せて、仲間達を驚かせるのが普通だったティアとしては、初の驚きだ。
「あ、えっと、これは……マティアス様が……」
「母様がっ?」
《説明は後だ。それよりもコレをどうにかするぞ》
「あ、はい……なんだろう、母様っぽい……」
雰囲気が似ているのだろうか。有無を言わせない何かがある。
《マティも逆らわない方が良い気がする……》
「やっぱり?」
なぜだろうとこの危機的状況でも、揃って首を傾げてしまった。そうしながらも、結界を発動させたのは条件反射だ。
そうすると、ルクスも気を引き締め相手を睨む。
「一体あれは?」
答えたのはルクスが連れているディストレアだ。
《降魔獣トゥーレガルフだ。地上に厄災を招き、滅びをもたらす。神の怒りを体現した魔獣と言われている》
「神の……」
ルクスは顔色を変える。当然だ。それは神の使徒に他ならない。
《神がもたらした神具。それを悪意のまま使い続けることで、生み出される》
「神具……もしかしてあの水晶の玉……神具だったのっ?」
《そこに転がっているものか。おそらく神玉だな。最強の結界具と言われていた》
それが何だったのか分かり、ティアは目を見開く。神玉はラピスタの神具だったはずだ。血筋は今のフリーデル王国の者になる。
「だから、王太子が……」
王太子が狙われたのはこの神具の使い手とするためだったのだろう。
《気をつけろ。あれの体毛は我らのものより頑丈だ。普通の魔術では傷など付かん。牙と爪には毒がある。それほど強いものではないが、治癒魔術は効かん。この我の目の傷がそうだ。いつまでも疼くでな》
「戦ったことがあるの?」
《うむ。我が唯一この世で苦戦した相手だ。なぁに、倒せぬものではないわ》
「それは心強いね」
先ほどの魔術の砲撃によって、トゥーレガルフは動きを止めていた。白銀にも輝くその体毛は、所々くすんで焦げているように見える。
「あははっ、倒せるヒントを自身で教えてくれるなんて良い奴じゃん」
《確かに効いている。余裕だな、姫よ》
「そんな事ないって。余裕だったら結界も私自身で張ったよ」
《なるほど。では行くぞ》
「うんっ」
ここからが正念場だ。
**********
舞台裏の裏では。
ティア「ブタカン。生きてる?」
い、いえ……ほぼ死にかけと申しますか……全てにおいて努力中であります……。
ティア「でも、本当に濃縮したね」
ええ……削りつつも、キャストの方々の出番はそれなりに長めにと頑張ったつもりです。
ティア「カランタが裏で号泣してたよ。おいしいところ作ってやったんだって?」
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ティア「そうなの? なら、なんであんなに喜んでるんだろ……」
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ティア「うん?」
いえいえっ、どこが嬉しかったんでしょうね?
私としましては、第一王子とビアンさんの機嫌を取れた事の方が大きいのですが。
ティア「あ~、確かに機嫌良かったね。あっ、あとウルさんが生き生きしてたっ」
そこは普段の功を労ったためでしょうね。とにかく、削ったのに不満が出なくて良かったです。
ティア「まぁね。一人、マジで怖いほど機嫌の良いのが裏にいるのが心配ではあるけど……」
あの方ですか……普段からイっちゃってるんで、近付かない方がいいです。
ティア「それ、ブタカンが言う? 私との絡みあるんだけど?」
あ~、え~っと、それで該当部ですけれど、264話までの予定です。
収録しきれなかった部分は、後日閑話や番外編として書き直させていただきますねっ。
ティア「ちょっと、なに誤魔化そうとしてんの?」
い、いえ、誤魔化すなんてっ。
大体、舞台とは人と人との絡みがあってこそと言いますかっ。
ぶっちゃけティアちゃんくらいしか相手にできないと申しますかっ……はっ!
ティア「へぇ……危ないと分かった上での設定だと……」
だっ、だって、ティアちゃん最恐じゃないですかっ!
ティア「キョウの意味が違ぁうっ! お陰で目ぇ付けられたでしょっ!」
それは元からですって!
ティア「問答無用っ!」
ふぎゃぁぁぁっ!!
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
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