女神なんてお断りですっ。

紫南

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619 白金の獣

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2017. 9. 22

**********

ティアは、ようやく巨大なディストレアの偽物を倒す事が出来たと胸を撫で下ろしていた。

「首がなくなっても動くなんて反則じゃん」

そう、頭の部分が消滅したというのに、あれは反撃に出ようとした。

ただでさえ、技を返した事で部屋には嵐が吹き荒れ、上にあった城を半壊させる勢いで天井を吹っ飛ばしてしまった後だ。

這いつくばって風をやり過ごし、ようやく治まったかと顔を上げた所で、頭が消えて方向を失ったらしいそれが弱り切ったジェルバとゼブロの方へ向かい出したのには焦った。

すぐさまハルバードで残りの体の部分を細切れにして、なんとか事なきを得たという所だ。

「はぁ……これで終わ……っ」

片も付いたし、カランタや双子の子ども達も無事だと確認する。そして、ジェルバを問い詰めようかと思った時だった。

「なに……っ」

物凄く嫌な気配が生まれたのだ。それは、ジェルバから少しばかり離れた場所だった。

水晶の玉のようなものが転がっている。戦っている間、それは確かにそこにあった。目の端にチラチラと映り込んでいたのは気のせいではないはずだ。これまでの戦闘で、よく割れなかったものだと感心する。

普通ならそれで終わりなのだが、その水晶、先ほどから黒くなっている。間違いなく、少し前までは透明だったはずだ。この周りの灯りを反射して写し込んでいたのは覚えている。

何の変哲もない水晶。だから、この場に転がっているのがとても妙だった。

それを裏付けるように水晶の中では煙のようなものが黒く渦を巻いていく。塗りつぶしていく。

そして、唐突にヒビが入った。

「っ……なに……この気配……っ」

何かおかしい。気分が悪くなった。

黒い煙が溢れ出す。水晶はもう真っ二つに割れているようだ。

溢れ出た煙はゆっくりと形を作っていく。それを呆然と眺め、次第にティア達は表情を凍りつかせていく。

「おっ、大きい……っ」

ふざけるなと叫びたい衝動にかられながら、ティアはゴクリと唾をのんだ。

どう見ても、先ほどのディストレアよりもふた回りは大きい。

次第に姿が確立されていく。先ほどの黒い獣とは違う。確実に生き物としてそれは存在していた。

息遣いも聞こえる。いや、それよりも唸り声が響いていた。

カランタが呆然とそれの正体を口にした。

「降魔獣……トゥーリガルフ……」
「降魔獣……?」

聞いた事がない。それはなんだ。そう問いかけたいが、それから目を離すことができなかった。

金を仄かに纏う白い毛並み。それだけならば、美しい獣だと思えるだろう。しかし、それには三つの狼の頭が付いていた。その額には、紋様がある。

真ん中は橙色の紋様。左側は緑色の紋様。右側は黄色い紋様があった。

これはまさか、それぞれが持っている属性の色なのではないかと尋ねようとした時だった。

呆気なく答えが分かった。

「……まさかっ……! ちょっ、【絶世界牢】!!」

絶対にヤバイ。だから、ティアが知る最高出力の結界を展開した。勿論、ジェルバやゼブロもしっかり覆った。お陰で範囲が広くなり、はっきり言ってキツイ。

だが、弱音を吐いている余裕はなかった。三つの狼の口から、火、風、光が放たれる。それが一つにまとまり、大きな塊となって向かってくる。光はどうやら、雷のようだ。こんなもの、掠っただけでも塵になる。

「くっ!!」
「ティアっ」

結界に当たる。破られるようなことはない。仮にも神属性の最高火力を注ぎ込んだ魔術なのだからそこは問題ない。だが、圧力は凄かった。

その上、ごっそりと魔力を持っていかれる感覚。発動にも魔力をそれなりに削られるが、接触と同時にそれに対抗できる力を発揮する術式だ。威力に比例して更に魔力を持っていかれるのだ。

「っ……っ……」

さすがのティアも思わず膝を付いた。魔力がこれほど減った感覚は、久し振りに感じた。

「し、心臓に悪い……いっ!?」

そんな信じられない力の攻撃が、また展開されようとしていた。

**********

舞台裏のお話。


魔族A 「陛下っ、飛ばし過ぎですっ」

カル 「まだまだっ」

魔族B  「ダメですって、飛竜が潰れますっ」

カル  「なら先に行くよ」

魔族A  「それもダメです! いくら陛下が強くても、こればかりは我々も居なくてはアレに手を出せないのですよ!」

魔族B  「あちらの状態も分からないのですっ」

カル  「う~む……確かに私一人ではアレを止められないが……んん?」

マティアス  『お~い、カルっ』

カル  「マティっ!? そのディストレアは……」

マティアス  『私の親みたいなもんだ。それより、急ぐんだろ? 手を貸してやるよ』

カル  「え……」

マティアス  『【改変】』

魔族A  「えっ!? ちょっ、飛竜がっ!!』

魔族B  「……天馬になった……?」

マティアス  『よしっ、それじゃ、あっちは任せた。こっちは任せろ』

カル「……うん……相変わらずおかしいね……」

マティアス  『はっはっはっ、褒めるなよ。じゃぁなっ』

カル「……私は褒めたか?」

魔族達「「いいえ……」」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


非常識なのは親譲りみたいです。


ティアちゃんのピンチ。


次回、月曜25日0時です。
よろしくお願いします◎
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