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2017. 6. 9
**********
トゥーレは、暗闇に慣れた目で赤白の宮殿の入り口を確認する。
色々と考えて鬱々としていた彼は、少しだけ表情を緩めた。
「久し振りだし、一階から行くか」
転移でダスバの店まで行くのではなく、気晴らしを兼ねて、戦いながら正規のルートで行こうと決める。
しかし、そこで唐突に、ダスバが赤白の宮殿の入り口から半ば馬に引きずられるように出て来たのが見えた。
「ダスバ?」
トゥーレは不審に思った。ダスバが夜とはいえ外に出るなど珍しい。あの馬はもしや世話役の妖精、パールファンムが姿を変えたのではないかと思った。だが、それにしては強引過ぎる。ダスバは完全に引きずられていたのだ。
「一体……」
一体何があったのかと、思わず立ち止まり考えていたが、馬の足は速く、すぐに見失ってしまいそうだった。
「あ、ダスバっ」
はっとして、トゥーレは腰に履いた剣を確認すると、ダスバを追いかける事に決めた。
それからどれだけ走っただろう。体力は三バカほどではないが、若い事もあってその辺の冒険者にも劣らない。最近はクィーグの者達とも訓練を共にしていたのだ。ディムースから王都まで全力で走れと言われれば出来る自信もあった。
だから、王都手前でダスバがシルと合流し、馬を引き渡す所を遠目だが確認する事ができた。
シルは気付いていたはずだ。一瞬、視線を向けたのが分かった。別に隠れていたわけではなく、トゥーレがこの時居たのは、森の中だった。単に追い付けなかったのだ。そして、シルが馬に乗って走り出した時、ようやくそこを抜けられた。
荒い息をするダスバに、トゥーレは駆け寄る。
「ダスバっ、大丈夫かっ?」
「え? あ、あれっ……トゥーレ? おかえり。もしかして、追ってきてくれたの?」
「まぁな。シルさんはどこへ?」
「ウィストだって。ティアさん達が向かうから、先行するみたい」
「ティア様が……?」
シルの様子から見て、かなり急を要するのだというのは分かった。
それに、クィーグの中で訓練を受けたからわかる。シルは完全に戦闘モードに入っていた。
「一体何があったんだ……」
呟くトゥーレの言葉を質問と取って、ようやく呼吸を落ち着ける事ができたらしいダスバが口を開く。
「ちょっと前に、妖精王様まで出て行ったし、ファルさんが育ててた戦闘用の馬も沢山連れて行ったんだ。まるで城攻めでもするみたいだよね」
「……まさか……」
ウィストに何があるのかを知るトゥーレには分かった。『まるで』ではない。間違いなく国が落ちる。
その恐ろしさにだんだんと顔色を失くしていくトゥーレの事など気付いていないダスバは、笑いながら最悪の状況を告げる。
「妖精達が言うには今、ティアさんの所にカル様とか、豪嵐のメンバーが揃ってるんだってさ。凄いよね。伝説の冒険者のバーティが集まるなんてさ」
「それって……」
「あっ、トゥーレは知らない? 六人全員がSランクの、史上最強の冒険者達のパーティがあったんだ。その中には、僕と同じドワーフがいてね。僕らは戦いに特化してるわけじゃないから、Sランクになった同族ってダグストール様だけなんだっ」
「そ、そうか」
ダスバは興奮気味だ。しかし、トゥーレが確認したかったのは、そんな最強の冒険者達の事ではない。今現在、ティアの所にその人たちが集まってしまっているというのが事実かどうかだ。
「それが本当なら……総力戦なんじゃ……」
考えたくない。史上最強の冒険者達が集まり、更に恐らく現在この世界で最強のティアがいる。世界でもあっという間に滅ぼしかねない戦力が集結し、それがウィストに向かおうとしている。
「国が消し飛ぶ……」
故郷は跡形も残らないかもしれない。
「あははっ。そうだね。ウィストって小さい国だし、完全に消されちゃいそう。まぁ、あのティアさんに喧嘩を売った時点で滅亡は目に見えて……って、トゥーレ大丈夫? なんか白いよ?」
「あ、ああ……すまん、ダスバ……ここから一人で帰れるか……?」
「え? うん。多分大丈夫。気分悪い?」
歩けない程調子が悪いのではないかと心配するダスバに、トゥーレは力無い笑みで答える。
「いや。最悪の可能性に目眩がしただけだ。もう回復した」
「そう?」
衝撃から完全に立ち直る事は無理そうだが、だからといって立ち止まっている事はできない。
「俺もウィストに行ってくる。ちょっと気になる人もいるから」
「そっか。知り合い? なら、ティアさんが行く前に救出しておかないとね。でも気を付けて。巻き込まれたらひとたまりも無いよ?」
ダスバは軽い言いようで間違いない可能性を示唆する。これには頬が引きつるのを止められない。
「た、確かに……何とか逃げ延びてみせるよ」
「うん。ウィストには、いっぱいクィーグの人達も行ってるって聞くし、ちゃんと安全な所はあるはずだから」
「そうだよな……ありがとう。行ってくる……」
「本当に気を付けてね」
手を振って見送ってくれるダスバ。友人が本気で無事を祈ってくれているのを背中で感じながら、トゥーレはウィストに向かって駆け出す。そして、呟いた。
「……間違いなく総力戦じゃないかっ」
泣きそうになりながら、トゥーレは必死で駆ける。こうして、思わぬ状況で故郷に向かう覚悟が決まってしまったのだった。
◆◆◆◆◆
その頃ティアは、汚れてしまったドレスを脱ぎ、冒険者の姿に着替える。ただ、いつもの簡易なものではない。バトラールが身に付ける濃紺のジャケットを羽織り、背中には母、マティアスの形見とも言うべき、ふた振りの剣が着けられている。
「ティア様……よくお似合いです」
「ありがとう、ラキアちゃん。それにしても、ラキアちゃんはそれでいいの?」
目の前には、メイド姿のラキアがいた。ドレスよりはましだが、これから戦いに行くのに相応しいとは思えない。しかし、ラキアは大きく頷く。
「もちろんです。これが私の戦闘服ですので」
ラキアも参戦するという事で、ドレスを脱ぎ着替えたのだが、それは当然のようにメイド服だった。
「それにしても……ねぇ、カル姐。何か普通のメイド服より、色々仕込めそうな感じなんだけど……何、このメイド服」
ティアはラキアのメイド服をよくよく見て、入り口辺りの壁に寄りかかり、着替えるのを待っていたカルツォーネに尋ねる。このメイド服を提供した本人だ。
「動きやすくていいだろう? かなり昔のなんだが、持っていて正解だったな」
「ありがとうございます、カル様。メイド服としての形は崩さず、動きやすさと機能性を重視した作り……参考にさせていただきます」
「うん。とっても似合うよっ。まるで君の為にあつらえたようだ。私が持っていたのも、君の為だったんだね」
「そ、そんなっ、大変光栄です」
カルツォーネにも絶賛された上、その多機能性にラキアは大変感激していた。だが、ティアはそのメイド服を見ていて、昔噂で聞いた事を思い出す。
「そういえば、ミスティ姉様から聞いた気がするんだけど、もしかしてあのメイド服……」
ただのメイド服ではない。作られた目的は、まさにラキアのような者の為。
「ああ、知っていたのかい? 昔、メイド騎士部隊ってのがあってね。戦場に連れて行くメイド達の戦闘服だよ。近衛隊より強く、最も王の近くにいる最強の盾だったんだ」
「近衛隊より……承知いたしました」
「ちょっ、ラキアちゃん!?」
やる気充分、自信満々なその様子にティアは慌てる。そんな大戦時の覚悟など期待していない。ようやくエルヴァストとの仲がまとまったのだ。無茶をさせる気はない。だが、ラキアはいつものクールな態度が幻だったかのように、ぐっと拳を握り締めていた。
「よもや、このような機会が巡ってくるとは……今こそ、マクレートの血を引く者としての戦果を上げてみせますっ」
「いやいやいやっ、落ち着いて? 正式な婚約が目前の女の子なんだから、主人よりそっちを優先しないとね?」
「ご心配には及びません。エル様は寛大です。何より、ティア様を優先するのは常識です」
「違うと思う!」
エルヴァストは友人であり、この国の王子だ。ティアを優先する事が当然という立場ではない。
「いいえ。間違いありません」
あまりにも、自信満々な態度に、苦笑いさえ引きつった。そこに、あろうことかカルツォーネも参戦する。
「そうだね。ティアが最優先なのが私達の常識だ。心配ないよ、ティア。君が望む未来しか認めないから」
「へ……?」
「カル様の仰る通りです。ですから、ティア様がなさる事が当然であり、常識になるのです」
「……違うと思う……」
しかし、ティア達が出てくるのを待っている者達もそれを常識化してしまっているので、もうどうにもならない。
「さぁ、行こう。君の望む未来を実現する為に」
「行きましょう、ティア様。この世界はティア様のものです」
「いや……だから、違うと思う……」
いつの間にか世界までもティアのものになるという。女神なんかより、無茶苦茶な存在になりそうだ。
この二人の言葉は冗談だと無理やり自分を納得させ、ティアは外へ向かった。そして、いよいよウィストに出発する。
最後の因縁を断ち切る為に。
**********
舞台裏のお話。
サクヤ「いいの? ラキアちゃんにとって、ティアが永遠の一番よ?」
エルヴァスト「問題ありません。何より、覚悟の上です」
サクヤ「……いや、寛大過ぎるわよ……」
エルヴァスト「そうでしょうか? ですが、もし、私とティアが同時期に病に倒れたとしましょう。その場合、間違いなくラキアはティアを優先します」
サクヤ「そ、そんな事ないわよ。あ、今はそうかもしれないけど、結婚したらないわ」
エルヴァスト「そうですね。もし、夫婦となっていたなら……」
サクヤ「そうよっ。夫が優先に決まってるわっ。自信を持ってっ」
エルヴァスト「ええ。自信を持って言えます。きっと、ティアの近くに移されるでしょう」
サクヤ「えっ……」
エルヴァスト「ティアを看る片手間に看てくれるはずです」
サクヤ「……っ、どうしよう……否定できないっ……」
エルヴァスト「ははっ、私もティアが心配になりますから、丁度いいです」
サクヤ「……あなたも、たいがいね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
二番で問題ないそうです。
ようやくっ、ようやく出発します!
次回、月曜12日の0時です。
よろしくお願いします◎
**********
トゥーレは、暗闇に慣れた目で赤白の宮殿の入り口を確認する。
色々と考えて鬱々としていた彼は、少しだけ表情を緩めた。
「久し振りだし、一階から行くか」
転移でダスバの店まで行くのではなく、気晴らしを兼ねて、戦いながら正規のルートで行こうと決める。
しかし、そこで唐突に、ダスバが赤白の宮殿の入り口から半ば馬に引きずられるように出て来たのが見えた。
「ダスバ?」
トゥーレは不審に思った。ダスバが夜とはいえ外に出るなど珍しい。あの馬はもしや世話役の妖精、パールファンムが姿を変えたのではないかと思った。だが、それにしては強引過ぎる。ダスバは完全に引きずられていたのだ。
「一体……」
一体何があったのかと、思わず立ち止まり考えていたが、馬の足は速く、すぐに見失ってしまいそうだった。
「あ、ダスバっ」
はっとして、トゥーレは腰に履いた剣を確認すると、ダスバを追いかける事に決めた。
それからどれだけ走っただろう。体力は三バカほどではないが、若い事もあってその辺の冒険者にも劣らない。最近はクィーグの者達とも訓練を共にしていたのだ。ディムースから王都まで全力で走れと言われれば出来る自信もあった。
だから、王都手前でダスバがシルと合流し、馬を引き渡す所を遠目だが確認する事ができた。
シルは気付いていたはずだ。一瞬、視線を向けたのが分かった。別に隠れていたわけではなく、トゥーレがこの時居たのは、森の中だった。単に追い付けなかったのだ。そして、シルが馬に乗って走り出した時、ようやくそこを抜けられた。
荒い息をするダスバに、トゥーレは駆け寄る。
「ダスバっ、大丈夫かっ?」
「え? あ、あれっ……トゥーレ? おかえり。もしかして、追ってきてくれたの?」
「まぁな。シルさんはどこへ?」
「ウィストだって。ティアさん達が向かうから、先行するみたい」
「ティア様が……?」
シルの様子から見て、かなり急を要するのだというのは分かった。
それに、クィーグの中で訓練を受けたからわかる。シルは完全に戦闘モードに入っていた。
「一体何があったんだ……」
呟くトゥーレの言葉を質問と取って、ようやく呼吸を落ち着ける事ができたらしいダスバが口を開く。
「ちょっと前に、妖精王様まで出て行ったし、ファルさんが育ててた戦闘用の馬も沢山連れて行ったんだ。まるで城攻めでもするみたいだよね」
「……まさか……」
ウィストに何があるのかを知るトゥーレには分かった。『まるで』ではない。間違いなく国が落ちる。
その恐ろしさにだんだんと顔色を失くしていくトゥーレの事など気付いていないダスバは、笑いながら最悪の状況を告げる。
「妖精達が言うには今、ティアさんの所にカル様とか、豪嵐のメンバーが揃ってるんだってさ。凄いよね。伝説の冒険者のバーティが集まるなんてさ」
「それって……」
「あっ、トゥーレは知らない? 六人全員がSランクの、史上最強の冒険者達のパーティがあったんだ。その中には、僕と同じドワーフがいてね。僕らは戦いに特化してるわけじゃないから、Sランクになった同族ってダグストール様だけなんだっ」
「そ、そうか」
ダスバは興奮気味だ。しかし、トゥーレが確認したかったのは、そんな最強の冒険者達の事ではない。今現在、ティアの所にその人たちが集まってしまっているというのが事実かどうかだ。
「それが本当なら……総力戦なんじゃ……」
考えたくない。史上最強の冒険者達が集まり、更に恐らく現在この世界で最強のティアがいる。世界でもあっという間に滅ぼしかねない戦力が集結し、それがウィストに向かおうとしている。
「国が消し飛ぶ……」
故郷は跡形も残らないかもしれない。
「あははっ。そうだね。ウィストって小さい国だし、完全に消されちゃいそう。まぁ、あのティアさんに喧嘩を売った時点で滅亡は目に見えて……って、トゥーレ大丈夫? なんか白いよ?」
「あ、ああ……すまん、ダスバ……ここから一人で帰れるか……?」
「え? うん。多分大丈夫。気分悪い?」
歩けない程調子が悪いのではないかと心配するダスバに、トゥーレは力無い笑みで答える。
「いや。最悪の可能性に目眩がしただけだ。もう回復した」
「そう?」
衝撃から完全に立ち直る事は無理そうだが、だからといって立ち止まっている事はできない。
「俺もウィストに行ってくる。ちょっと気になる人もいるから」
「そっか。知り合い? なら、ティアさんが行く前に救出しておかないとね。でも気を付けて。巻き込まれたらひとたまりも無いよ?」
ダスバは軽い言いようで間違いない可能性を示唆する。これには頬が引きつるのを止められない。
「た、確かに……何とか逃げ延びてみせるよ」
「うん。ウィストには、いっぱいクィーグの人達も行ってるって聞くし、ちゃんと安全な所はあるはずだから」
「そうだよな……ありがとう。行ってくる……」
「本当に気を付けてね」
手を振って見送ってくれるダスバ。友人が本気で無事を祈ってくれているのを背中で感じながら、トゥーレはウィストに向かって駆け出す。そして、呟いた。
「……間違いなく総力戦じゃないかっ」
泣きそうになりながら、トゥーレは必死で駆ける。こうして、思わぬ状況で故郷に向かう覚悟が決まってしまったのだった。
◆◆◆◆◆
その頃ティアは、汚れてしまったドレスを脱ぎ、冒険者の姿に着替える。ただ、いつもの簡易なものではない。バトラールが身に付ける濃紺のジャケットを羽織り、背中には母、マティアスの形見とも言うべき、ふた振りの剣が着けられている。
「ティア様……よくお似合いです」
「ありがとう、ラキアちゃん。それにしても、ラキアちゃんはそれでいいの?」
目の前には、メイド姿のラキアがいた。ドレスよりはましだが、これから戦いに行くのに相応しいとは思えない。しかし、ラキアは大きく頷く。
「もちろんです。これが私の戦闘服ですので」
ラキアも参戦するという事で、ドレスを脱ぎ着替えたのだが、それは当然のようにメイド服だった。
「それにしても……ねぇ、カル姐。何か普通のメイド服より、色々仕込めそうな感じなんだけど……何、このメイド服」
ティアはラキアのメイド服をよくよく見て、入り口辺りの壁に寄りかかり、着替えるのを待っていたカルツォーネに尋ねる。このメイド服を提供した本人だ。
「動きやすくていいだろう? かなり昔のなんだが、持っていて正解だったな」
「ありがとうございます、カル様。メイド服としての形は崩さず、動きやすさと機能性を重視した作り……参考にさせていただきます」
「うん。とっても似合うよっ。まるで君の為にあつらえたようだ。私が持っていたのも、君の為だったんだね」
「そ、そんなっ、大変光栄です」
カルツォーネにも絶賛された上、その多機能性にラキアは大変感激していた。だが、ティアはそのメイド服を見ていて、昔噂で聞いた事を思い出す。
「そういえば、ミスティ姉様から聞いた気がするんだけど、もしかしてあのメイド服……」
ただのメイド服ではない。作られた目的は、まさにラキアのような者の為。
「ああ、知っていたのかい? 昔、メイド騎士部隊ってのがあってね。戦場に連れて行くメイド達の戦闘服だよ。近衛隊より強く、最も王の近くにいる最強の盾だったんだ」
「近衛隊より……承知いたしました」
「ちょっ、ラキアちゃん!?」
やる気充分、自信満々なその様子にティアは慌てる。そんな大戦時の覚悟など期待していない。ようやくエルヴァストとの仲がまとまったのだ。無茶をさせる気はない。だが、ラキアはいつものクールな態度が幻だったかのように、ぐっと拳を握り締めていた。
「よもや、このような機会が巡ってくるとは……今こそ、マクレートの血を引く者としての戦果を上げてみせますっ」
「いやいやいやっ、落ち着いて? 正式な婚約が目前の女の子なんだから、主人よりそっちを優先しないとね?」
「ご心配には及びません。エル様は寛大です。何より、ティア様を優先するのは常識です」
「違うと思う!」
エルヴァストは友人であり、この国の王子だ。ティアを優先する事が当然という立場ではない。
「いいえ。間違いありません」
あまりにも、自信満々な態度に、苦笑いさえ引きつった。そこに、あろうことかカルツォーネも参戦する。
「そうだね。ティアが最優先なのが私達の常識だ。心配ないよ、ティア。君が望む未来しか認めないから」
「へ……?」
「カル様の仰る通りです。ですから、ティア様がなさる事が当然であり、常識になるのです」
「……違うと思う……」
しかし、ティア達が出てくるのを待っている者達もそれを常識化してしまっているので、もうどうにもならない。
「さぁ、行こう。君の望む未来を実現する為に」
「行きましょう、ティア様。この世界はティア様のものです」
「いや……だから、違うと思う……」
いつの間にか世界までもティアのものになるという。女神なんかより、無茶苦茶な存在になりそうだ。
この二人の言葉は冗談だと無理やり自分を納得させ、ティアは外へ向かった。そして、いよいよウィストに出発する。
最後の因縁を断ち切る為に。
**********
舞台裏のお話。
サクヤ「いいの? ラキアちゃんにとって、ティアが永遠の一番よ?」
エルヴァスト「問題ありません。何より、覚悟の上です」
サクヤ「……いや、寛大過ぎるわよ……」
エルヴァスト「そうでしょうか? ですが、もし、私とティアが同時期に病に倒れたとしましょう。その場合、間違いなくラキアはティアを優先します」
サクヤ「そ、そんな事ないわよ。あ、今はそうかもしれないけど、結婚したらないわ」
エルヴァスト「そうですね。もし、夫婦となっていたなら……」
サクヤ「そうよっ。夫が優先に決まってるわっ。自信を持ってっ」
エルヴァスト「ええ。自信を持って言えます。きっと、ティアの近くに移されるでしょう」
サクヤ「えっ……」
エルヴァスト「ティアを看る片手間に看てくれるはずです」
サクヤ「……っ、どうしよう……否定できないっ……」
エルヴァスト「ははっ、私もティアが心配になりますから、丁度いいです」
サクヤ「……あなたも、たいがいね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
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二番で問題ないそうです。
ようやくっ、ようやく出発します!
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よろしくお願いします◎
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