女神なんてお断りですっ。

紫南

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559 頼りになる双子です

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2017. 1. 30

**********

ラキアとエルヴァストは、優雅にホールの中央で踊っている。

ティアとレイナルートは並んでそんな二人を見守っていた。そして、王達もそうだった。

「素晴らしいな……」

王は感心しきりだ。ティアとレイナルートのダンスも見事なものだったが、それに引けをとらない。

多くの舞踏会を経験してきた王であっても、ティアのダンスよりも素晴らしいものを見たことはない。そう言わしめるほどの腕なのだ。

しかし、ラキアとエルヴァストのダンスは、そのティアのダンスに引けを取らない。それは、驚くべきものだった。

だが、それもそのはず。

「私の秘蔵っ子ですから」
「なるほど。それに、エルのダンスも見てくれたか?」

王は面白そうに肘掛けに肘を置き、頬杖をついて体を傾けながら言った。

「……分かりますか?」

ティアはこれまで、よくベリアローズと一緒にエルヴァストのダンス練習にも付き合った。しかし、エルヴァストのダンスは元々かなりのもので、指導した事が、そう分かるものではないと思っていたのだ。

「他の者には分からないだろうが、私には分かるぞ」
「わたくしにも分かりますますよ。相手方も相当なものですが、少し前から、リードがとても上手になりましたわ」

王も王妃も、よくエルヴァストを見ていたようだと分かる。もちろん、レイナルートも知っていた。

「君だったのか。以前から、エルにダンスの教師は誰かと聞いていたのだが……」
「答えないでしょうね。教えていたのは、私と水王ですから」
「ほぉ」

王は目を輝かせる。精霊王である水王にまで指導を受けていたと知って、驚きと羨ましさを表情に出していた。

そこに、会場を見て回っていたイルーシュとカイラントが、エイミールに連れられ戻ってくる。

「ラキアねえさまキレイ~」
「ぼくもおどる~」
「ふふっ、よくラキアちゃんだって分かったね」

いつもはメイド姿。化粧っ気もほとんどない。そんな普段から着飾った事のないラキアが、今はどこぞの王女にも引けを取らない仕様になっているのだ。見分けられるとは思えなかった。しかし、双子は当然のように言う。

「だって、ケハイでわかるよ?」
「だって、かおをみなくてもわかるよ?」
「凄いねぇ。二人共。それじゃぁ……」

そういって屈み込み、ティアは二人に耳打ちする。すると、二人は大きく頷き、ラキア達の方へ向かう。

「何を言ったんだ?」

レイナルートが心配そうに立ち上がったティアに尋ねる。王は、レイナルートが尋ねると知っていて声をかけないのだ。しかし、耳はしっかりティアの声を捉えようとしていた。

「二人を連れてくるように頼んだの。エル様は、きっとこちらに来るをためらうと思うので」
「それはありそうだな」

仲睦まじい様子のエルヴァストとラキア。そろそろ曲が終わる頃だ。先ほどからエルヴァストの視線が飛んでくるのに気付いていた。

これは、確かに双子に手を引かれでもないと中々こちらには来ないだろうと王も思っているだろう。

しかし、双子にこれを頼んだだけではない。

「後は……怪しい奴らをチェックするようにね……」
「何か言ったかい?」
「いいえ~♪」

隠密行動を学んだ双子は、無意識に気配を消して人々の間を抜けていく。そして、その途中で注意すべき人物をチェックしていくのだ。

記憶力もかなりのものだと知ったティアは、双子をとても頼りにしているのだ。

「あの子達とエル兄様がいれば、なんとか切り抜けられそうね」

ティアが気配で注意を向けているのは、ローズだ。今もキツイ視線を送ってくれている。そんな視線にクスリと魅力的な笑みを浮かべるティアだった。

**********

舞台裏のお話。

イルーシュ「キレイ、キレイ~」

カイラント「ねえさま、キレイ~」

エイミール「楽しそうですね」

イルーシュ「たのしいよっ。ねえさまたちキレイだもん」

カイラント「ねえさまのところいきたいっ」

エイミール「いいですよ。お食事ももうよろしいのですか?」

イルーシュ「うん。おなかすいたら、パパよぶ」

カイラント「パパすぐくるもん」

エイミール「パ……パパ?」

イルーシュ「はやくいこ」

カイラント「はやくはやく~」

エイミール「は、はい……」

火王  《イルとカイの好物は……》


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


そう、火のパパです。


楽しい舞踏会です。
お父様とお母様にラキアちゃんを紹介……できますか?


では次回、金曜3日の0時です。
よろしくお願いします◎
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