女神なんてお断りですっ。

紫南

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547 Aランクを量産しました

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2016. 12. 25

**********

クロノスは、竜人族であるファルにも指導を受けていた。そして、ティアは記憶にあるアリアの技術を、教えている。

その実力は、ティアが一番良く分かっていた。

「うん。余裕だったでしょ? ごめんね。まさか、三バカ達より後になるなんて」
「いいえ。このような機会をいただき感謝しております」

ルクスの次でもおかしくはなかったのだが、完全に失念していたと、大人の姿のティアは、苦笑を浮かべる。たったそれだけで、周りは釘付けだ。

お陰でクロノスは、ギロリと周りを威嚇しなくてはならなかった。しかし、そんなクロノスの努力など気にする事なく、ティアは頬杖をついて続ける。

周りに会話は聞こえないようにしてはいるのだ。こんな会話も普通に出来る。

「これで、後はお祖父様かな」
「今、二日目でおられましたか?」
「そう。まさか、お祖父様があんなに悔しがるとはね……」

ゼノスバートは、その実力を知る孫のティアに遅れをとるのは納得はする。しかし、長年共に暮らした実力もよく知っていると思っていたベリアローズに先を越されるのは悔しかったようだ。

クロノスが遅ればせながら、Aランク認定試験を受けると聞き、二日前に試験を始めていた。

「ファル様から聞きましたが、ここ数ヶ月、とても努力なさっていたとか」
「うん。あの年には思えない急成長振りだって言ってたな……」

ゼノスバートも六十。身体的にも衰えを感じている。そんな中、ゼノスバートは驚異の成長を遂げた。

かつてないほどのやる気。気力が体の衰えを感じさせなかったのだろう。ファルもこれならばAランクになれると判断はしていたようだ。

「Aランクの冒険者が増えるのは良いことだよね」

約十年に一人試験を受け、その中でも受かるのは僅か。それを思うと、あり得ない確率をティアの周りで出してしまったということだ。

「そういえば、王都よりサルバを拠点にしてる人の方がAランクの人、多くなっちゃったかも」
「この王都にいらっしゃるのは三人でしたか」
「う~ん。今は四人かな」
「あ、エル様ですね」

エルヴァストも、ベリアローズと共にAランクになった。しかし、それを知っているのは、王をはじめとしたほんの数人だ。

エルヴァストの姿を、冒険者達が見ていたとしても、まさか自国の王子がAランクの冒険者などとは分からない。

「サラちゃんは、またサルバとディムースを行き来いしてるみたいだしね」

ザランは王都を離れていた。

「ここでかなり活躍されていたと聞きましたが」
「やっぱり王都は性に合わないんだってさ」
「そんな……」

この王都で、Aランクでありながらパーティを決めないザランはとても貴重だった。

固定のパーティを組まずに一人でいるAランクの冒険者は珍しい。ザランの他には、ゲイルがそうだった。今はボランもだが、強い冒険者の元には、多くの人が集う。それによって、自然とパーティが出来上がるものなのだ。

「サラちゃんは、一人か私達とだよね~。今回もサラちゃんは必須だよ」
「私も是非参加させてください」
「オッケー」

クロノスは、今の騎士達が嫌いだ。騎士でありながら、持つべき志も力もない彼らが許せないらしい。

「ティア様に教えていただいた騎士の何たるかを、彼らに分からせてやります」

気合いは十分のようだ。

◆◆◆◆◆

その日、本来の姿に戻り、クロノスと学園街にある屋敷に着くと、ラキアが手紙を持って困惑していた。

「へぇ。エル兄様がねぇ」
「はい。私などに舞踏会での相手をとは、何を考えておられるのか……」

ラキア宛てに届いた手紙には、対抗戦後に行われる舞踏会に相手役として参加して欲しいと書いてあった。

「ダンスが不安なわけじゃないでしょう?」
「はい……そこは、ティア様に訓練の一つとして教えていただいておりますので……」

ティアは、ラキアにはいずれこんな日が来ると信じて、体力をつける為に家の中で出来る訓練だと言って、教えてあった。

エルヴァストの思いは未だラキアには届いていないが、いつかは必ず通じる事を願っている。

「なら、何がそんな顔をさせてるの?」

そう尋ねると、ラキアは更に不安げに顔をしかめたのだ。

**********

舞台裏のお話。

アデル「ラキアさんやったぁ!」

キルシュ「だが、少し唐突ではないか?」

アデル「エル兄さん、焦ってるのかもね」

キルシュ「あぁ……姉上とベル先輩のがあるから……」

アデル「伝わるといいね」

キルシュ「エル先輩が諦めるはずないだろう」

アデル「そうだよね。それに、ティアが賛成しちゃってるから、何とかなるんじゃないかな」

キルシュ「ラキアさんの気持ちはどうなるんだ?」

アデル「大丈夫! 好きだよ」

キルシュ「何でそう思うんだ?」

アデル「だって、ティアが行ってたもん。絶対イケるって」

キルシュ「……何がイケるんだ……」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


イケるでしょ。


クロちゃんもAランク。
これでほぼメンバーは決まったかも?
ラキアちゃんとエルさんの行くえは?


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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