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543 おバカさん?
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2016. 12. 18
**********
深夜に近くなる頃。ティアは王宮へ向かっていた。
今日はのんびりと約束の時間に到着するように調整しながら、夜の町を歩いている。
さすがに、十二歳になったとはいえ、一人で夜の町を冷やかしながら進むのは目立つ。そこで、バトラールの姿になっていた。
髪色と瞳は目立たないように濃い茶色に変えている。それでもすれ違った何人かは振り返る。
しかし、ティアはそれらを全く気にしていなかった。
あと二週間を切った冒険者と騎士で行う対抗戦。ティアは、そこで冒険者側に誰を出場させるかを考えていたのだ。
Aランクの冒険者のみを出場させる事になる為、メンバーは限られてはいる。しかし、考えているメンバーは、ゲイルをはじめ、ヒュースリー伯爵家の者だ。
「地王に家の警護を任せたとして、フルで……八人……十人かな……あれ?」
そこで気付いた。当たり前のように数に入れていたクロノスが、まだAランクになっていない。
「しまった……クロちゃんの事、忘れてた……う~ん……まだ一週間はあるか」
対抗戦までには、二週間はないとはいえ、一週間もあれば、認定試験を受けられる。
「寧ろ、クロちゃんには必須だもんね」
理由はカルツォーネだ。どうもクロノスに想いを寄せているらしいという事で、友人としても、主人としても是非オススメしたい縁だった。
その為には、せめてクロノスにAランクになってもらわなくてはならない。いつかは必ずと考えていたのだが、今がその時のようだ。
「明日にでも呼び寄せないと……精霊ちゃん。リジットに伝言お願い」
そうどこにともなく声をかけると、小さな精霊がやってくる。
《まかせて~》
《すぐにね~》
《おじかんのしていはできません》
精霊達に明日、クロノスを寄越して欲しいと伝言を頼んだ。
そうして、しばらくすると、城壁が見えてきた。
「さてと。どっから入ろうかな」
一番最初に見えてきた城の門を見て呟く。すると、足下にいたマティが顔を上げて主張する。
《フラムがいないから、空からは無理だね。マティなら飛び越えられるよ?》
フラムは今夜、屋敷に置いてきた。まだまだ子ども。夜は寝かせてやりたい。
一方、マティは昼間にお昼寝が多い為、夜の方が元気だ。最近は『ディストレアって夜行性だったっけ?』と思うほどだった。
城壁の周りをゆっくりと歩きながら、高い塀を見上げる。警備はティアがテコ入れしているので、ほとんど隙はなくなっていた。
「良い配置だね……」
こんな事なら、穴を空けておけば良かったなとチラリと思ってしまったティアだ。
《あれ?》
「……あらら……」
警備に感心しながら歩いていると、前方に城壁を睨み付けている何者かを見つけた。それも複数、十人には満たないが、こんな場所と時間にいるなど、不審だといっているようなもの。更には全員、黒いフード付きの外套を着ている。
不穏な気配を感じながらも、ティアは何をするのかと離れて様子を見る事にした。
《何するんだろうね》
「うん……」
すると、その中の一人が、両手をやや上、城壁の上へと手を挙げるのがみえた。
「あいつ、まさかっ」
その直後、魔法陣が展開される。
「バカかっ」
いくつもの小さな火の球が城壁の上へと放たれる。しかし、当然だが城の周囲には特殊な魔術を遮る結界が張られている。
小さな火の球は、結界に当たるとポスポスと情けない音を立て、消えていった。だが、感知されないわけではない。
失敗したと分かると、フードを被った数人は、慌てるような素ぶりを見せる。
「……結界の事も知らないバカだったとは……」
《呆れちゃうね》
そう言ってから、ティアは逃げようとする者達の前に立ちはだかった。
「お前ら、何が目的だ?」
「っ、だ、誰だ、貴様っ」
「どけ!」
その声から、若い男だと分かる。彼らは無謀にも腰に履いていた剣を抜いた。先ほど、魔術を放った者も分からなくなる。
「なるほど。魔術士じゃないんだ? 全員同じ剣……そういう事か」
「何を言っているっ。かかってこい!」
「はいはい」
そうして、ティアは一気に彼らとの距離を詰めると、手刀で全員を沈めたのだった。
**********
舞台裏のお話。
ラキア「ルクスさん。着いていかれなくて良かったのですか?」
ルクス「……過保護にし過ぎるのもと……」
ラキア「今更ですね」
ルクス「うっ……」
ラキア「前から忠告していますが、いつまでも保護者面をしていると、恋愛対象に見られませんよ」
ルクス「なっ!」
ラキア「ルクスさんはどうしたいのです? ずっと保護者でいる気はないのでしょう?」
ルクス「……あぁ……」
ラキア「そんな事では、マスターにティア様を攫われてしまいますよ」
ルクス「あっ、あいつにはっ」
ラキア「マスターが本気になったら敵いませんからね。今のうちです」
ルクス「え? あれで本気じゃない……?」
ラキア「当たり前でしょう。マスターが本気でしたら、とっくにティア様はここにはいらっしゃいません」
ルクス「……確かに……」
ラキア「しっかりなさいませ」
ルクス「……はい……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ラキアちゃんに説教されるヘタレなルクス君です。
ティアちゃんは着々と準備中。
どうも、おバカさん達が、おバカな行動に出たようです。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
**********
深夜に近くなる頃。ティアは王宮へ向かっていた。
今日はのんびりと約束の時間に到着するように調整しながら、夜の町を歩いている。
さすがに、十二歳になったとはいえ、一人で夜の町を冷やかしながら進むのは目立つ。そこで、バトラールの姿になっていた。
髪色と瞳は目立たないように濃い茶色に変えている。それでもすれ違った何人かは振り返る。
しかし、ティアはそれらを全く気にしていなかった。
あと二週間を切った冒険者と騎士で行う対抗戦。ティアは、そこで冒険者側に誰を出場させるかを考えていたのだ。
Aランクの冒険者のみを出場させる事になる為、メンバーは限られてはいる。しかし、考えているメンバーは、ゲイルをはじめ、ヒュースリー伯爵家の者だ。
「地王に家の警護を任せたとして、フルで……八人……十人かな……あれ?」
そこで気付いた。当たり前のように数に入れていたクロノスが、まだAランクになっていない。
「しまった……クロちゃんの事、忘れてた……う~ん……まだ一週間はあるか」
対抗戦までには、二週間はないとはいえ、一週間もあれば、認定試験を受けられる。
「寧ろ、クロちゃんには必須だもんね」
理由はカルツォーネだ。どうもクロノスに想いを寄せているらしいという事で、友人としても、主人としても是非オススメしたい縁だった。
その為には、せめてクロノスにAランクになってもらわなくてはならない。いつかは必ずと考えていたのだが、今がその時のようだ。
「明日にでも呼び寄せないと……精霊ちゃん。リジットに伝言お願い」
そうどこにともなく声をかけると、小さな精霊がやってくる。
《まかせて~》
《すぐにね~》
《おじかんのしていはできません》
精霊達に明日、クロノスを寄越して欲しいと伝言を頼んだ。
そうして、しばらくすると、城壁が見えてきた。
「さてと。どっから入ろうかな」
一番最初に見えてきた城の門を見て呟く。すると、足下にいたマティが顔を上げて主張する。
《フラムがいないから、空からは無理だね。マティなら飛び越えられるよ?》
フラムは今夜、屋敷に置いてきた。まだまだ子ども。夜は寝かせてやりたい。
一方、マティは昼間にお昼寝が多い為、夜の方が元気だ。最近は『ディストレアって夜行性だったっけ?』と思うほどだった。
城壁の周りをゆっくりと歩きながら、高い塀を見上げる。警備はティアがテコ入れしているので、ほとんど隙はなくなっていた。
「良い配置だね……」
こんな事なら、穴を空けておけば良かったなとチラリと思ってしまったティアだ。
《あれ?》
「……あらら……」
警備に感心しながら歩いていると、前方に城壁を睨み付けている何者かを見つけた。それも複数、十人には満たないが、こんな場所と時間にいるなど、不審だといっているようなもの。更には全員、黒いフード付きの外套を着ている。
不穏な気配を感じながらも、ティアは何をするのかと離れて様子を見る事にした。
《何するんだろうね》
「うん……」
すると、その中の一人が、両手をやや上、城壁の上へと手を挙げるのがみえた。
「あいつ、まさかっ」
その直後、魔法陣が展開される。
「バカかっ」
いくつもの小さな火の球が城壁の上へと放たれる。しかし、当然だが城の周囲には特殊な魔術を遮る結界が張られている。
小さな火の球は、結界に当たるとポスポスと情けない音を立て、消えていった。だが、感知されないわけではない。
失敗したと分かると、フードを被った数人は、慌てるような素ぶりを見せる。
「……結界の事も知らないバカだったとは……」
《呆れちゃうね》
そう言ってから、ティアは逃げようとする者達の前に立ちはだかった。
「お前ら、何が目的だ?」
「っ、だ、誰だ、貴様っ」
「どけ!」
その声から、若い男だと分かる。彼らは無謀にも腰に履いていた剣を抜いた。先ほど、魔術を放った者も分からなくなる。
「なるほど。魔術士じゃないんだ? 全員同じ剣……そういう事か」
「何を言っているっ。かかってこい!」
「はいはい」
そうして、ティアは一気に彼らとの距離を詰めると、手刀で全員を沈めたのだった。
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舞台裏のお話。
ラキア「ルクスさん。着いていかれなくて良かったのですか?」
ルクス「……過保護にし過ぎるのもと……」
ラキア「今更ですね」
ルクス「うっ……」
ラキア「前から忠告していますが、いつまでも保護者面をしていると、恋愛対象に見られませんよ」
ルクス「なっ!」
ラキア「ルクスさんはどうしたいのです? ずっと保護者でいる気はないのでしょう?」
ルクス「……あぁ……」
ラキア「そんな事では、マスターにティア様を攫われてしまいますよ」
ルクス「あっ、あいつにはっ」
ラキア「マスターが本気になったら敵いませんからね。今のうちです」
ルクス「え? あれで本気じゃない……?」
ラキア「当たり前でしょう。マスターが本気でしたら、とっくにティア様はここにはいらっしゃいません」
ルクス「……確かに……」
ラキア「しっかりなさいませ」
ルクス「……はい……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ラキアちゃんに説教されるヘタレなルクス君です。
ティアちゃんは着々と準備中。
どうも、おバカさん達が、おバカな行動に出たようです。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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