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504 決意しました
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2016. 10. 10
**********
ティアの前にカルツォーネが座り、その隣にはサクヤがいる。
ティアの隣にはカランタ。その向こうの一人がけの椅子にシェリスが座っている。
カランタはビクビクとしつつもシェリスにティアを近付けさせまいとしているようだ。
そんな、少々緊張感のある状態をまるで無視したカルツォーネが、いつもと変わらぬ爽やかな笑顔で始めた。
「お隣のウィストだったかな。そこに彼らがいるのは間違いないよ。悟られない程度に、こちらの動きは制限しているから、アジトはまだ見つかっていないけど、トップだと目されている神子は、王宮にいる」
「ずっと?」
「あぁ、ずっとだ。あのライダロフとかいう奴が接触しないかと待っているんだが、動かない」
「へぇ……」
アジトが見つけられないのなら、外に出ている者をマークして接触を待ち、そこから手繰るつもりでいるようだ。しかし、今の所成果はなかった。
「神子とか呼ばれて、敬われてたっぽいのに、案外図太いのね。その子、側室になったんでしょ? そこでの様子は分からない?」
「それがねぇ……なんだか王とは親子みたいに仲が良いらしいんだよ」
「親子……あっ」
言われて思い出した。
「なんだい?」
「あ~……なんか、娘だったかもって……」
「それって、まさか……」
「双子だったとかはないですよね?」
「ううん。そうじゃないかって、ソフバって奴が」
そう言っていたはずだ。亡くなった第二王女と瓜二つなのだと。
「そういえば、前より聞かないわよね。王室に双子が生まれたって話」
「貴族でもありませんね」
「だよね……私もすっかり忘れてた……」
昔から、王室で双子が生まれるのは不吉とされていた。たいてい、生まれて直ぐに殺されてしまうか、片方をどこか違う土地に養子に出すことになる。
今回のウィスト王室も、生まれた双子の片割れが神子だったのではないかと思われているのだ。
「不吉だなんて。ただの迷信なのに、人族って馬鹿な風習を止められない所があるわよね」
残念だわと言うサクヤに、カランタが肩を落としながら弁明する。
「風習とか慣習になっちゃうとね……時間をかけてじっくりその必要性があるかないかを調べるとか、人族にはできないからさ。君たちみたいに、真相を知って、それを広めるのは難しいんだよ……」
常識として定着させるのにも、何代もの時間がかかる。けれど、定着してしまえば、今度は覆す事が難しくなる。
「何にしても、そうなるとその神子。本当に何を考えてるのかしら」
「そっか。もし、自分が王女の双子の片割れだったと知ってたら、王を恨んでたりとか?」
「あり得るね。その第二王女の死も、少し妙なんだ」
「妙?」
カルツォーネは、腕を組み、高く組んだ足を揺らす。
「表向きは病気でという事になっているようなんだが、事故だったと言う者もいるし、暗殺されたと言う者もいるんだ」
「彼らの関与を疑っているのですか?」
「あぁ……それも調べさせているよ」
王女の死の真相。それが分かれば、もしかしたら、神子の考えも読めるかもしれない。
「とりあえず、曖昧な部分は全て情報を集めるように指示を出した。ただ……」
「ただ?」
暗く影を落とした表情。その後、カルツォーネは辛そうにティアを見つめた。
「彼らは、あの国の奥に潜り込んでしまった。そうなると……」
言い淀んだカルツォーネの後を継いだのはサクヤだった。
「下手をすれば、国を滅ぼす事になるわね」
「敵対した国の一つや二つ。滅んだ所で何とも思いませんが……」
シェリスでさえ躊躇する。その理由は、ティアとカランタにあった。しかし、カランタはグッと力を込めた表情で皆
言わんとする事を口にする。
「かつてのバトラールと同じ事になるって事だよね……」
皆の視線がカランタに集まる。膝の上にある手は、固く握りしめ過ぎて白くなってしまっていた。
そこに、そっとティアは手を重ねた。
「っティア……」
「心配ないよ。私も、あの時は何も見えてなかった。子どもだったんだね……もう後悔も反省もしっかりしたもん。それに……手伝ってくれるんでしょ?」
明るい表情で、ティアはシェリスやカルツォーネ、サクヤへと笑みを向ける。すると、当然だろうとはっきりとした声が返ってきた。
「もちろんです。暗躍でもなんでもしましょう」
「君一人に背負わせるなんて事、出来るわけがないだろう? たまには魔王らしい事をしてもバチは当たらないかもねぇ」
「暗躍なら任せなさい。王宮に潜り込めって言われても出来ちゃうわよん♪」
これほど頼もしい味方もいないだろう。
「ぼ、僕もっ!」
「カランタ?」
必死な様子のカランタにの顔を覗き込み首を傾げる。その表情は、先ほどよりも決意を宿していた。
そのままの力強さでカランタは続ける。
「僕なら分かると思うんだ。誰よりも、王が危うい事を知ってる。その想いも分かると思う」
きっと辛いはずだ。けれど、カランタは自分のかつての間違いを見つめ直そうとしている。
それならばとティアも心を決めた。
「それじゃぁ、国を救いますか」
「うんっ」
前とは立場が違う。きっと違う結末に向かう事が出来る。
この国に手出しもさせない。それは、ここにいる全員が一致する想いだ。世界でも類を見ない最強メンバーが決めたなら、これほど頼もしい事はない。
「あ、でも派手に動くの禁止ね」
「……それ、ティアが言うんだ……」
「うん?」
その後、皆で笑ってしまったのだった。
**********
舞台裏のお話。
シル「ここは治安が良いな……」
クロノス「シル?」
シル「クロノスさん。お久しぶりです」
クロノス「あぁ。珍しいなここまで遠出するのは」
シル「ええ、サルバに来たのは初めてですね。クロノスさんは見回りですか?」
クロノス「いや。ティア様がいらっしゃるようだからな。それに……」
シル「……あぁ、魔王様ですね。あ、どこへ?」
クロノス「この先のパン屋の菓子が気に入りなんだ。土産にな」
シル「魔王様がですか?」
クロノス「それとサクヤ先生には、隣のお酒だ」
シル「べ、勉強になりますっ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
接待慣れ?
暗躍し放題です。
国に手出しはさせませんが、王達の協力は必要かもしれませんね。
過去の清算の時です。
では次回、一日空けて12日です。
よろしくお願いします◎
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ティアの前にカルツォーネが座り、その隣にはサクヤがいる。
ティアの隣にはカランタ。その向こうの一人がけの椅子にシェリスが座っている。
カランタはビクビクとしつつもシェリスにティアを近付けさせまいとしているようだ。
そんな、少々緊張感のある状態をまるで無視したカルツォーネが、いつもと変わらぬ爽やかな笑顔で始めた。
「お隣のウィストだったかな。そこに彼らがいるのは間違いないよ。悟られない程度に、こちらの動きは制限しているから、アジトはまだ見つかっていないけど、トップだと目されている神子は、王宮にいる」
「ずっと?」
「あぁ、ずっとだ。あのライダロフとかいう奴が接触しないかと待っているんだが、動かない」
「へぇ……」
アジトが見つけられないのなら、外に出ている者をマークして接触を待ち、そこから手繰るつもりでいるようだ。しかし、今の所成果はなかった。
「神子とか呼ばれて、敬われてたっぽいのに、案外図太いのね。その子、側室になったんでしょ? そこでの様子は分からない?」
「それがねぇ……なんだか王とは親子みたいに仲が良いらしいんだよ」
「親子……あっ」
言われて思い出した。
「なんだい?」
「あ~……なんか、娘だったかもって……」
「それって、まさか……」
「双子だったとかはないですよね?」
「ううん。そうじゃないかって、ソフバって奴が」
そう言っていたはずだ。亡くなった第二王女と瓜二つなのだと。
「そういえば、前より聞かないわよね。王室に双子が生まれたって話」
「貴族でもありませんね」
「だよね……私もすっかり忘れてた……」
昔から、王室で双子が生まれるのは不吉とされていた。たいてい、生まれて直ぐに殺されてしまうか、片方をどこか違う土地に養子に出すことになる。
今回のウィスト王室も、生まれた双子の片割れが神子だったのではないかと思われているのだ。
「不吉だなんて。ただの迷信なのに、人族って馬鹿な風習を止められない所があるわよね」
残念だわと言うサクヤに、カランタが肩を落としながら弁明する。
「風習とか慣習になっちゃうとね……時間をかけてじっくりその必要性があるかないかを調べるとか、人族にはできないからさ。君たちみたいに、真相を知って、それを広めるのは難しいんだよ……」
常識として定着させるのにも、何代もの時間がかかる。けれど、定着してしまえば、今度は覆す事が難しくなる。
「何にしても、そうなるとその神子。本当に何を考えてるのかしら」
「そっか。もし、自分が王女の双子の片割れだったと知ってたら、王を恨んでたりとか?」
「あり得るね。その第二王女の死も、少し妙なんだ」
「妙?」
カルツォーネは、腕を組み、高く組んだ足を揺らす。
「表向きは病気でという事になっているようなんだが、事故だったと言う者もいるし、暗殺されたと言う者もいるんだ」
「彼らの関与を疑っているのですか?」
「あぁ……それも調べさせているよ」
王女の死の真相。それが分かれば、もしかしたら、神子の考えも読めるかもしれない。
「とりあえず、曖昧な部分は全て情報を集めるように指示を出した。ただ……」
「ただ?」
暗く影を落とした表情。その後、カルツォーネは辛そうにティアを見つめた。
「彼らは、あの国の奥に潜り込んでしまった。そうなると……」
言い淀んだカルツォーネの後を継いだのはサクヤだった。
「下手をすれば、国を滅ぼす事になるわね」
「敵対した国の一つや二つ。滅んだ所で何とも思いませんが……」
シェリスでさえ躊躇する。その理由は、ティアとカランタにあった。しかし、カランタはグッと力を込めた表情で皆
言わんとする事を口にする。
「かつてのバトラールと同じ事になるって事だよね……」
皆の視線がカランタに集まる。膝の上にある手は、固く握りしめ過ぎて白くなってしまっていた。
そこに、そっとティアは手を重ねた。
「っティア……」
「心配ないよ。私も、あの時は何も見えてなかった。子どもだったんだね……もう後悔も反省もしっかりしたもん。それに……手伝ってくれるんでしょ?」
明るい表情で、ティアはシェリスやカルツォーネ、サクヤへと笑みを向ける。すると、当然だろうとはっきりとした声が返ってきた。
「もちろんです。暗躍でもなんでもしましょう」
「君一人に背負わせるなんて事、出来るわけがないだろう? たまには魔王らしい事をしてもバチは当たらないかもねぇ」
「暗躍なら任せなさい。王宮に潜り込めって言われても出来ちゃうわよん♪」
これほど頼もしい味方もいないだろう。
「ぼ、僕もっ!」
「カランタ?」
必死な様子のカランタにの顔を覗き込み首を傾げる。その表情は、先ほどよりも決意を宿していた。
そのままの力強さでカランタは続ける。
「僕なら分かると思うんだ。誰よりも、王が危うい事を知ってる。その想いも分かると思う」
きっと辛いはずだ。けれど、カランタは自分のかつての間違いを見つめ直そうとしている。
それならばとティアも心を決めた。
「それじゃぁ、国を救いますか」
「うんっ」
前とは立場が違う。きっと違う結末に向かう事が出来る。
この国に手出しもさせない。それは、ここにいる全員が一致する想いだ。世界でも類を見ない最強メンバーが決めたなら、これほど頼もしい事はない。
「あ、でも派手に動くの禁止ね」
「……それ、ティアが言うんだ……」
「うん?」
その後、皆で笑ってしまったのだった。
**********
舞台裏のお話。
シル「ここは治安が良いな……」
クロノス「シル?」
シル「クロノスさん。お久しぶりです」
クロノス「あぁ。珍しいなここまで遠出するのは」
シル「ええ、サルバに来たのは初めてですね。クロノスさんは見回りですか?」
クロノス「いや。ティア様がいらっしゃるようだからな。それに……」
シル「……あぁ、魔王様ですね。あ、どこへ?」
クロノス「この先のパン屋の菓子が気に入りなんだ。土産にな」
シル「魔王様がですか?」
クロノス「それとサクヤ先生には、隣のお酒だ」
シル「べ、勉強になりますっ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
接待慣れ?
暗躍し放題です。
国に手出しはさせませんが、王達の協力は必要かもしれませんね。
過去の清算の時です。
では次回、一日空けて12日です。
よろしくお願いします◎
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