352 / 457
連載
502 説明するのって大変
しおりを挟む
2016. 10. 7
**********
笑顔で提案するティア。こんな事は、誰も予想していなかっただろう。
「それは頼もしい。是非お願いしよう」
「父上っ!?」
嬉しそうに提案を呑む王に、エルヴァストは慌てた。レイナルートに至っては、完全に思考を停止しているようだ。
「ティア、何を考えてるんだっ! マスターが知ったら、王宮が一瞬にして吹っ飛ぶっ」
エルヴァストが危惧するのは、これを知ったシェリスが引き起こすであろう惨事についてだ。
「所詮は仮だし、この後説得してくるから大丈夫……大丈夫だよ」
「全く大丈夫に感じないぞ!」
目を逸らし、二度も同じ事を言うティアに、信用などない。それでも、ここはこの作戦でいきたいのだ。
「努力するから。それに、今の婚約者候補達の中に、あの組織の息がかかったのを相手に出来るような令嬢はいないでしょ?」
「ま、まぁ、そうだろうが……しかし……」
エルヴァストは何とかならないものかと考えているようだ。だが、ティアも引くわけにはいかない。最も効率の良い接触方法を思いついてしまったのだ。これ以上の案はないだろう。
「任せて。ちゃんと王太子さんも守ってあげるし、国にも手出しさせないよ」
そう言われて、しぶしぶだが、エルヴァストが引き下がる。
「それは……ティアなら間違いはないと分かっているさ……」
これ以上頼もしい者はいないと、エルヴァストは良く分かっているのだ。
「ならば、良いか? コリアート、聞いたな。バトラール・フィスマをレイナルートの婚約者候補に追加してくれ」
「か、畏まりました」
「ついでに他の令嬢達の見定めも頼もうか」
「いいよ。それじゃぁ、そういう事で、シェリーをサクッと説得してくるね」
ティアはそうして、王宮を後にしたのだ。
◆◆◆◆◆
火王との散歩から帰って来たフラムに乗って、ティアは一人サルバへ飛んだ。
理由は勿論、仮ではあるが、レイナルートの婚約者候補になったとシェリスに説明するためだ。
「やっぱり、どんな人か気になるんだよね」
ティアは、サティアの生まれ変わりだと名乗るローズ・リザラントに会ってみたいと思っていた。
「……」
「王太子妃になるのを狙ってるなら、絶対接触できるでしょ? 敵対関係にあった方が人となりって遠慮なく調べやすいしさぁ」
「……」
「シェリ~……聞いてる~?」
「……」
話し始めてから、シェリスの表情が消えていた。理由は分かっているのだが、今の所、対応策が見当たらない。
「シェリー……ちゃんと仮のだよ? 嘘の婚約者。本当じゃないから」
「当然です!」
「っ!? う、うん……」
聞こえていたようで安心した。ただ、その他の問題が明るみに出てしまったようだ。
「仮だとしても、許したくはありませんね。あなたの事です。舞踏会などにもそうして出席するつもりなのでしょう?」
「そこが重要だと思うからね」
「……ティアに触れられないよう、今のうちに両腕を切り落として……」
「……落ち着いてね、シェリー……」
やはり、すぐに説明に来て良かった。これを他人の口から聞かされていたら、間違いなくレイナルートは消えていただろう。
それでなくとも、物騒な言葉と空気が飛び出してきているのだ。ここは慎重に、丁寧に説得しなくてはならない。
「ティアがそのような立場を取らずとも、寧ろ王太子に接触させて調べるように命じれば良いでしょう」
つまりシェリスは、王太子にローズへ近付き、身辺調査をさせろと言っているのだ。しかし、それは難しいだろう。
「これがエル兄様だったら単独調査も任せられたんだけど、王太子はね……性格的に難しいと思ったの。真面目過ぎて、あれは駆け引きとか無理なタイプだわ」
「次期王がそれでどうするんです」
「だよねぇ。そこの問題もあるけど、だからって、今回のはハードルが高過ぎるんだよ。また肝心な所で尻尾を切られるのは困るもの」
腹芸なんてものは、少しずつ人生経験を重ねて会得していくものだ。王宮なんて、環境的にはもってこいだが、だからといって、それが出来るようになるまで待つ時間はない。
今のレイナルートでは、今回のようにいきなりラスボスに当たるような真似をすれば、確実に潰れる。
「婚約者候補っていうより、教師って感じだと思ってよ。学ぶのに補佐が必要って事。その補佐役をするのに婚約者候補って肩書きが一番効率がいいんだ。ついでに、王太子の婚約者に相応しい令嬢を見定めて欲しいって王様に言われたしね」
「あなたが決めるんですか?」
「そういう事。ねっ、本当に仮の候補でしょ?」
婚約者に相応しいかを見定めろという事は、ティアは本当の候補の中にはいないという事なのだ。これならば良いだろうと笑顔で畳み掛けるが、シェリスの嫉妬心は底なしだった。
「それでも、一時、仮とはいえ、ティアを婚約者にするなど、おこがましいにもほどがあります!」
「……えっと……」
思わず、笑顔のまま固まってしまう。
「しかし、一時の夢を見させてもらうと思ってという事ならば、私も目を瞑りましょう」
「あ、うん……そうだね~……」
意外と早く納得してくれたぞと胸を撫で下ろす。
「それに、ティアではなくバトラールとしてですからね。本当のあなたではないのですし」
「うんうん。それこそ、夢か幻かって感じかな?」
これならば問題ない。王太子にもクィーグから護衛を数人つける。万が一、シェリスの逆鱗に触れても、察知はできるだろう。
準備は万全に。対策に抜かりなどあってはならない。だが、シェリスはそう甘くない。
「そうですね。では、この機会に、正式に結婚しておきましょう」
「……へ……?」
なぜだろうか。婚約者候補と言っているのに、結婚までいってしまった。
「そうすれば、王太子も手を出すべきではないと自覚するでしょうしね」
「……えっと、待ってね……結婚んん!?」
これは、あれではないのか。お久しぶりの暴走モードなのではないのか。
「ええ。ただ……ドレスがあと数年先の最も似合うサイズで用意してしまったのですよね……仕方がありません。ティアとの結婚は私の悲願、夢ですからね。バトラールの姿でお願いします。大丈夫ですよね? 最近は何日でも力を保てるのですものね?」
「う、うん……それはそう……だけど……」
非常にマズイ。大変マズイ状況だ。
「ちょっ、ちょっと落ち着こうか?」
「おや。私はとても落ち着いていますよ? 寧ろ、これほど心穏やかなのは何百年ぶりでしょう……」
「へ、へぇ~……」
どうすれば良いのだろうか。こんな状態のシェリスは初めてだ。
「っ、か、母様助けてください……っ」
「そうですっ、いっそ、里に来てくださいっ。世界樹の前で誓いましょうっ」
「うぅっ……誰か……助け……」
こんなにも誰かの気迫に押されたのは初めてだ。真っ先に頭に浮かんだのはかつての母、マティアス。そしてその後に、煌めく光が見える。
「さぁ、ティアっ、結婚しましょう」
「っ……!」
前のめりなシェリスに、迫られた経験をした事がないティアは、どう返したらいいのかと焦る。その時だった。
「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!」
窓から白い固まりが飛び込んできたのだ。
**********
舞台裏のお話。
ルクス「……ティアが危ない……」
ビアン「なぜ着いていかなかったんだ
」
ルクス「話がややこしくなるだろう。ただでさえ、あいつはティアに執着しているんだ。絶対に反対する」
ビアン「反対するから良いと思ったのか?」
ルクス「いや。その後に自分も正式に婚約するだのなんだのと言い出すに決まっている。そうなると、俺がいれば話が進まなくなるだろう」
エル「さすがは師匠……ですが、それでは考えが甘いかと」
ルクス「そうか?」
エル「はい。何より、ティアはそれほど色恋の経験はないでしょう。父上を見て過去の婚約者の姿を重ね、頬を染めていたくらいです。迫られた事もないのでは?」
ルクス「……た、確かに……」
エル「マスターなら、この機会にと本気で結婚まで漕ぎ着けようとするかもしれませんよ?」
ルクス「っ、ティ、ティアっ!!」
エル「大丈夫です。応援は既に向かっています」
ルクス「え?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
予見? それとも?
今まで大人しかっただけに、一気に爆発中です。
情熱が時を経ても変わらずにあるというのは尊敬しますが、何事にも節度がありますよね。
ピンチは脱した?
では次回、一日空けて9日です。
よろしくお願いします◎
**********
笑顔で提案するティア。こんな事は、誰も予想していなかっただろう。
「それは頼もしい。是非お願いしよう」
「父上っ!?」
嬉しそうに提案を呑む王に、エルヴァストは慌てた。レイナルートに至っては、完全に思考を停止しているようだ。
「ティア、何を考えてるんだっ! マスターが知ったら、王宮が一瞬にして吹っ飛ぶっ」
エルヴァストが危惧するのは、これを知ったシェリスが引き起こすであろう惨事についてだ。
「所詮は仮だし、この後説得してくるから大丈夫……大丈夫だよ」
「全く大丈夫に感じないぞ!」
目を逸らし、二度も同じ事を言うティアに、信用などない。それでも、ここはこの作戦でいきたいのだ。
「努力するから。それに、今の婚約者候補達の中に、あの組織の息がかかったのを相手に出来るような令嬢はいないでしょ?」
「ま、まぁ、そうだろうが……しかし……」
エルヴァストは何とかならないものかと考えているようだ。だが、ティアも引くわけにはいかない。最も効率の良い接触方法を思いついてしまったのだ。これ以上の案はないだろう。
「任せて。ちゃんと王太子さんも守ってあげるし、国にも手出しさせないよ」
そう言われて、しぶしぶだが、エルヴァストが引き下がる。
「それは……ティアなら間違いはないと分かっているさ……」
これ以上頼もしい者はいないと、エルヴァストは良く分かっているのだ。
「ならば、良いか? コリアート、聞いたな。バトラール・フィスマをレイナルートの婚約者候補に追加してくれ」
「か、畏まりました」
「ついでに他の令嬢達の見定めも頼もうか」
「いいよ。それじゃぁ、そういう事で、シェリーをサクッと説得してくるね」
ティアはそうして、王宮を後にしたのだ。
◆◆◆◆◆
火王との散歩から帰って来たフラムに乗って、ティアは一人サルバへ飛んだ。
理由は勿論、仮ではあるが、レイナルートの婚約者候補になったとシェリスに説明するためだ。
「やっぱり、どんな人か気になるんだよね」
ティアは、サティアの生まれ変わりだと名乗るローズ・リザラントに会ってみたいと思っていた。
「……」
「王太子妃になるのを狙ってるなら、絶対接触できるでしょ? 敵対関係にあった方が人となりって遠慮なく調べやすいしさぁ」
「……」
「シェリ~……聞いてる~?」
「……」
話し始めてから、シェリスの表情が消えていた。理由は分かっているのだが、今の所、対応策が見当たらない。
「シェリー……ちゃんと仮のだよ? 嘘の婚約者。本当じゃないから」
「当然です!」
「っ!? う、うん……」
聞こえていたようで安心した。ただ、その他の問題が明るみに出てしまったようだ。
「仮だとしても、許したくはありませんね。あなたの事です。舞踏会などにもそうして出席するつもりなのでしょう?」
「そこが重要だと思うからね」
「……ティアに触れられないよう、今のうちに両腕を切り落として……」
「……落ち着いてね、シェリー……」
やはり、すぐに説明に来て良かった。これを他人の口から聞かされていたら、間違いなくレイナルートは消えていただろう。
それでなくとも、物騒な言葉と空気が飛び出してきているのだ。ここは慎重に、丁寧に説得しなくてはならない。
「ティアがそのような立場を取らずとも、寧ろ王太子に接触させて調べるように命じれば良いでしょう」
つまりシェリスは、王太子にローズへ近付き、身辺調査をさせろと言っているのだ。しかし、それは難しいだろう。
「これがエル兄様だったら単独調査も任せられたんだけど、王太子はね……性格的に難しいと思ったの。真面目過ぎて、あれは駆け引きとか無理なタイプだわ」
「次期王がそれでどうするんです」
「だよねぇ。そこの問題もあるけど、だからって、今回のはハードルが高過ぎるんだよ。また肝心な所で尻尾を切られるのは困るもの」
腹芸なんてものは、少しずつ人生経験を重ねて会得していくものだ。王宮なんて、環境的にはもってこいだが、だからといって、それが出来るようになるまで待つ時間はない。
今のレイナルートでは、今回のようにいきなりラスボスに当たるような真似をすれば、確実に潰れる。
「婚約者候補っていうより、教師って感じだと思ってよ。学ぶのに補佐が必要って事。その補佐役をするのに婚約者候補って肩書きが一番効率がいいんだ。ついでに、王太子の婚約者に相応しい令嬢を見定めて欲しいって王様に言われたしね」
「あなたが決めるんですか?」
「そういう事。ねっ、本当に仮の候補でしょ?」
婚約者に相応しいかを見定めろという事は、ティアは本当の候補の中にはいないという事なのだ。これならば良いだろうと笑顔で畳み掛けるが、シェリスの嫉妬心は底なしだった。
「それでも、一時、仮とはいえ、ティアを婚約者にするなど、おこがましいにもほどがあります!」
「……えっと……」
思わず、笑顔のまま固まってしまう。
「しかし、一時の夢を見させてもらうと思ってという事ならば、私も目を瞑りましょう」
「あ、うん……そうだね~……」
意外と早く納得してくれたぞと胸を撫で下ろす。
「それに、ティアではなくバトラールとしてですからね。本当のあなたではないのですし」
「うんうん。それこそ、夢か幻かって感じかな?」
これならば問題ない。王太子にもクィーグから護衛を数人つける。万が一、シェリスの逆鱗に触れても、察知はできるだろう。
準備は万全に。対策に抜かりなどあってはならない。だが、シェリスはそう甘くない。
「そうですね。では、この機会に、正式に結婚しておきましょう」
「……へ……?」
なぜだろうか。婚約者候補と言っているのに、結婚までいってしまった。
「そうすれば、王太子も手を出すべきではないと自覚するでしょうしね」
「……えっと、待ってね……結婚んん!?」
これは、あれではないのか。お久しぶりの暴走モードなのではないのか。
「ええ。ただ……ドレスがあと数年先の最も似合うサイズで用意してしまったのですよね……仕方がありません。ティアとの結婚は私の悲願、夢ですからね。バトラールの姿でお願いします。大丈夫ですよね? 最近は何日でも力を保てるのですものね?」
「う、うん……それはそう……だけど……」
非常にマズイ。大変マズイ状況だ。
「ちょっ、ちょっと落ち着こうか?」
「おや。私はとても落ち着いていますよ? 寧ろ、これほど心穏やかなのは何百年ぶりでしょう……」
「へ、へぇ~……」
どうすれば良いのだろうか。こんな状態のシェリスは初めてだ。
「っ、か、母様助けてください……っ」
「そうですっ、いっそ、里に来てくださいっ。世界樹の前で誓いましょうっ」
「うぅっ……誰か……助け……」
こんなにも誰かの気迫に押されたのは初めてだ。真っ先に頭に浮かんだのはかつての母、マティアス。そしてその後に、煌めく光が見える。
「さぁ、ティアっ、結婚しましょう」
「っ……!」
前のめりなシェリスに、迫られた経験をした事がないティアは、どう返したらいいのかと焦る。その時だった。
「ちょっと待ったぁぁぁぁっ!」
窓から白い固まりが飛び込んできたのだ。
**********
舞台裏のお話。
ルクス「……ティアが危ない……」
ビアン「なぜ着いていかなかったんだ
」
ルクス「話がややこしくなるだろう。ただでさえ、あいつはティアに執着しているんだ。絶対に反対する」
ビアン「反対するから良いと思ったのか?」
ルクス「いや。その後に自分も正式に婚約するだのなんだのと言い出すに決まっている。そうなると、俺がいれば話が進まなくなるだろう」
エル「さすがは師匠……ですが、それでは考えが甘いかと」
ルクス「そうか?」
エル「はい。何より、ティアはそれほど色恋の経験はないでしょう。父上を見て過去の婚約者の姿を重ね、頬を染めていたくらいです。迫られた事もないのでは?」
ルクス「……た、確かに……」
エル「マスターなら、この機会にと本気で結婚まで漕ぎ着けようとするかもしれませんよ?」
ルクス「っ、ティ、ティアっ!!」
エル「大丈夫です。応援は既に向かっています」
ルクス「え?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
予見? それとも?
今まで大人しかっただけに、一気に爆発中です。
情熱が時を経ても変わらずにあるというのは尊敬しますが、何事にも節度がありますよね。
ピンチは脱した?
では次回、一日空けて9日です。
よろしくお願いします◎
10
お気に入りに追加
4,569
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。