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469 ご報告します
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2016. 8. 4
********************************************
フードを目深に被った三人のウィストの暗殺部隊だという者達は、真っ直ぐにこちらへと向かって来ている。
迷う事なく向かってくる彼らの目的を確認する為、ティア達は素早く気配を消し、森の中へ身を隠す。
用があるのは、恐らくウィストの者達だ。彼らを残し、少々離れた場所で待機する事にしたのだ。
この間、フラムに手紙を任せていた。飛び立ったフラムについて過保護な火王もいなくなったのは、仕方がない。
横目で不安そうに固まるウィストの者達を見ながら、ティアはカルツォーネと連絡を取っていた。
『なら、ウィストにジェルバがいる可能性が高いんだね。わかった。私も行こう。ウィスト周辺にいる諜報部の者達も向かわせる』
「私が調べてからでもいいのに」
カルツォーネは、直ぐにでもこちらへ来ようとしているようだ。会話の途中で近くにいるであろう補佐に出掛ける旨を告げている様子が伺えた。
『君が大人しく調べるだけで終われるかい? 連絡する前に、本丸に辿り着いて、一戦始めてしまうように思うのは私だけかな?』
「「「ごもっとも」」」
《主ならあり得る》
「……ちょっと……」
強く否定できないのは、ティア自身も自分の行動に確信が持てないからだ。
『事後報告が得意なんだものね。大丈夫。マティもそうだったよ』
「それ……得意っていうものなのかな……」
慰めてくれているようなのだが、微妙にフォローになっていなかった。
『それじゃぁ、後で。保護者の皆、ティアを頼むよ』
そう言って、通信を終えた。
「最近、カル姐がなんか生き生きしてるんだけど……」
「恋の力だねっ」
「こっ……そっか……クロちゃんの居場所、チェックしとかなくっちゃ……」
もうここにいる者達は皆、カルツォーネの想い人を知っている。知らないのは当のクロノスだけなのだという事も。
その時、男達の方に動きがあった。
「どうやら奴ら、あそこにあった魔導具を確認したようだ」
ルクスはフードの一人が、いつの間にか廃墟に入り、出てきた所を確認していた。
「あっ、危ない!」
「やっぱり、彼らを消す気みたいね」
三人のフードを被った者達は、男達を囲み、武器で斬りかかっていく。その動きを示唆していたお陰で、男達は何とか一撃を凌いでいた。
しかし、相手はプロだ。カランタは悲鳴を上げそうになりながらティアを見る。
「ティアっ……」
「分かってる。見殺しには出来ない。マティ」
《は~い。行って来ま~す》
先ずはマティが本来の姿で駆け出して行く。消していた気配を一気に解放した為、驚いて振り向くが、ディストレアだという事実を知り、さすがに百戦錬磨の暗殺部隊の者であったとしても、恐怖で咄嗟に動けなくなっていた。
「俺達も」
「行きます」
「僕は彼らを結界で守るよ」
次々に飛び出していくルクス達を見送り、ティアは一人静かに立ち上がる。すると、その後ろに控えていた水王が注意を呼び掛けた。
《ティア様》
「うん。彼らも信用されてないって事かな。とはいえ、こうも簡単に侵入されてはね……」
三人の暗殺部隊だけでなく、それを追って新たに二人の人物が国境を越えてきていたのだ。
そこに、門の様子を確認しに行っていた風王が戻ってくる。
「どうだった?」
《怪我人が出ておりました。侵入者はこちらで処理すると伝えましたので、兵達はあの場に留まっております》
「そう……あの魔導具も数があるわけではないという事なのかな」
ウィストの暗殺部隊だという黒フードの三人と、その後を密かに着けてきたらしい黒ずくめの二人は、姿を隠す魔導具を持っていなかった。
夜ならば上手くすり抜ける技量もあるのだろうが、今はまだ日が高い。お陰で、国境の見張りの兵達と一戦交えて来たようだ。
《捕らえて参りましょうか》
《こそこそとこちらの動きを伺っているようですし、目障りですわ》
好戦的な風王と水王は苛立っていた。だからといって、任せるわけにはいかないだろう。
「私が行く。こっちが片付くまでに終わらせるよ。水王は、ここの奴らを死なせないように頼むよ。しっかり捕らえて」
《分かりましたわ……》
少々納得がいかないようだが、我慢してもらおう。
「風王は、門の所にこれを届けて。その後、私と合流を。あっちの二人をここまで引きずって来ないといけないから」
《承知しました》
ティアは、アイテムボックスから薬の瓶を入れた箱を取り出す。それを風王に託すと、気配を消してこちらの様子を離れて伺っている二人の元へと向かったのだった。
◆◆◆◆◆
ティアから手紙を預かったフラムは、密かに最速記録を出そうとしていた。
首に着けたプレートの横には、手紙を入れる小さな筒がある。どれだけスピードを出しても外れない特殊なそれにより、気兼ねなく飛ぶ事ができた。
王都の傍まで本来の姿に戻って飛ばして、再び小さな大きさに変わる。ティアに言われ、手紙を届けたり、人を運ぶ時は必ずそうして本来の姿を町の者に見られないようにしていた。
飛竜もそうだが、空を飛ぶ場合は、出発する町と、降り立つ町の外門の上でチェックを受けることになっている。
フラムだけの時もそうするようにとティアに言い含められている。
《キュ……キュ~》
人見知りなフラムでも、数回顔を合わせ、ティアが認めた者には慣れる。今回も、見知った門番が立っているのに気付き、そこへ急降下していった。
《キュキュ~っ》
「えっ、フラム? ちょっと、危ないってっ」
《キュキュゥ☆》
「……このイタズラっ子め」
《キュ~♪》
顔にぶつかる寸前でブレーキをかけ、目の前でパタパタと浮くフラムに、門番の男は苦笑する。
「また一人で来たのか? 気を付けてな」
《キュ~っ》
確認したと、門番の男に見送られながら、フラムは王宮へ向けて飛んだ。
目指す気配は、はっきりと感じられているのだ。そうして、王宮の訓練場の上空へ辿り着いた。
しかし、そこで困ったなと空中で止まる。
下には、確かに目的とするエルヴァストがいる。だがその他に三十人ほどの知らない男達がいたのだ。それも、エルヴァストとの距離が近い。
どうしようかと考えていれば、隣に火王が現れた。
《大丈夫だ。エルヴァストと兵達の間に……》
《キュキュ!》
火王の言葉がヒントになった。ティアならばこうするだろう。それを、フラムは実践する。
《フラム?》
《キュ~……キュフッ!!》
そうして、フラムは細く長い炎の柱をエルヴァストと訓練を受けていた騎士達の間に吐き出したのだ。
「なっ⁉︎ あ、フラムっ⁉︎」
《キュ~》
《……》
上手くいったと喜びながら、フラムはエルヴァストの前に舞い降りた。騎士達とエルヴァストの間には、見事に距離が空いている。
どうだ、褒めてくれと言わんばかりのフラムの様子に、エルヴァストは肩を落としながら苦笑する。
「フラム……お前もティアに似てきたな……」
《キュ? キュ~》
褒められてたと嬉しそうにクルクルと舞うフラム。それを見てエルヴァストは、叱るならばティアにだなと心に決めた。
「それでフラム。今日は何の届け物かな?」
《キュっ》
そうだったと、フラムは首元の手紙を確認してくれとエルヴァストの目の前へ差し出した。
それを一読したエルヴァストは、未だにフラムの登場に驚いている騎士達を宥めていたビアンへ声をかける。
「ビアン。ここは任せる。フラムも一緒に来るか?」
《キュ》
気を引き締めるエルヴァストの肩にフラムが止まる。それを確認して、エルヴァストは王の執務室へと駆け出したのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
リューク「珍しいですな。殿下が騎士達の訓練場になど」
レイナルート「父上に、例の対抗戦までに騎士達を特訓するよう言われたのだ。だが、先ずは現状を見なければ対策の立てようがない」
リューク「成る程。真面目な殿下らしい」
レイナルート「……あれは……」
リューク「そうでした。エルヴァスト殿下が見ているようで……」
レイナルート「エルは……いつから剣など……」
リューク「それが、私にも分からないのです。ビアンも口を割らないものですから……」
レイナルート「そうか……かなり厳しいようだな。辛そうだ」
リューク「殿下の前でだらしがない……ん?」
レイナルート「どうした?」
リューク「いえ。今、何か上から……っ、殿下、お下がりをっ」
レイナルート「なっ、なんだっ⁉︎ 火柱がっ……ドラゴンっ……」
リューク「ドラゴンですね……殿下が知っているのでしょうか……」
エル『ビアン。ここは任せる』
リューク「どこかへ行かれるようですね……」
レイナルート「……っ父上の所か。私も行くぞ」
リューク「あっ、お待ちを殿下っ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
お兄ちゃんの知らない世界……。
飼い主や親の行動を良く見ています。
一人でお使いが出来るようになりましたが、周りに助けられているようです。
初めてのお使いで皆が見守っているようなものでしょうか。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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フードを目深に被った三人のウィストの暗殺部隊だという者達は、真っ直ぐにこちらへと向かって来ている。
迷う事なく向かってくる彼らの目的を確認する為、ティア達は素早く気配を消し、森の中へ身を隠す。
用があるのは、恐らくウィストの者達だ。彼らを残し、少々離れた場所で待機する事にしたのだ。
この間、フラムに手紙を任せていた。飛び立ったフラムについて過保護な火王もいなくなったのは、仕方がない。
横目で不安そうに固まるウィストの者達を見ながら、ティアはカルツォーネと連絡を取っていた。
『なら、ウィストにジェルバがいる可能性が高いんだね。わかった。私も行こう。ウィスト周辺にいる諜報部の者達も向かわせる』
「私が調べてからでもいいのに」
カルツォーネは、直ぐにでもこちらへ来ようとしているようだ。会話の途中で近くにいるであろう補佐に出掛ける旨を告げている様子が伺えた。
『君が大人しく調べるだけで終われるかい? 連絡する前に、本丸に辿り着いて、一戦始めてしまうように思うのは私だけかな?』
「「「ごもっとも」」」
《主ならあり得る》
「……ちょっと……」
強く否定できないのは、ティア自身も自分の行動に確信が持てないからだ。
『事後報告が得意なんだものね。大丈夫。マティもそうだったよ』
「それ……得意っていうものなのかな……」
慰めてくれているようなのだが、微妙にフォローになっていなかった。
『それじゃぁ、後で。保護者の皆、ティアを頼むよ』
そう言って、通信を終えた。
「最近、カル姐がなんか生き生きしてるんだけど……」
「恋の力だねっ」
「こっ……そっか……クロちゃんの居場所、チェックしとかなくっちゃ……」
もうここにいる者達は皆、カルツォーネの想い人を知っている。知らないのは当のクロノスだけなのだという事も。
その時、男達の方に動きがあった。
「どうやら奴ら、あそこにあった魔導具を確認したようだ」
ルクスはフードの一人が、いつの間にか廃墟に入り、出てきた所を確認していた。
「あっ、危ない!」
「やっぱり、彼らを消す気みたいね」
三人のフードを被った者達は、男達を囲み、武器で斬りかかっていく。その動きを示唆していたお陰で、男達は何とか一撃を凌いでいた。
しかし、相手はプロだ。カランタは悲鳴を上げそうになりながらティアを見る。
「ティアっ……」
「分かってる。見殺しには出来ない。マティ」
《は~い。行って来ま~す》
先ずはマティが本来の姿で駆け出して行く。消していた気配を一気に解放した為、驚いて振り向くが、ディストレアだという事実を知り、さすがに百戦錬磨の暗殺部隊の者であったとしても、恐怖で咄嗟に動けなくなっていた。
「俺達も」
「行きます」
「僕は彼らを結界で守るよ」
次々に飛び出していくルクス達を見送り、ティアは一人静かに立ち上がる。すると、その後ろに控えていた水王が注意を呼び掛けた。
《ティア様》
「うん。彼らも信用されてないって事かな。とはいえ、こうも簡単に侵入されてはね……」
三人の暗殺部隊だけでなく、それを追って新たに二人の人物が国境を越えてきていたのだ。
そこに、門の様子を確認しに行っていた風王が戻ってくる。
「どうだった?」
《怪我人が出ておりました。侵入者はこちらで処理すると伝えましたので、兵達はあの場に留まっております》
「そう……あの魔導具も数があるわけではないという事なのかな」
ウィストの暗殺部隊だという黒フードの三人と、その後を密かに着けてきたらしい黒ずくめの二人は、姿を隠す魔導具を持っていなかった。
夜ならば上手くすり抜ける技量もあるのだろうが、今はまだ日が高い。お陰で、国境の見張りの兵達と一戦交えて来たようだ。
《捕らえて参りましょうか》
《こそこそとこちらの動きを伺っているようですし、目障りですわ》
好戦的な風王と水王は苛立っていた。だからといって、任せるわけにはいかないだろう。
「私が行く。こっちが片付くまでに終わらせるよ。水王は、ここの奴らを死なせないように頼むよ。しっかり捕らえて」
《分かりましたわ……》
少々納得がいかないようだが、我慢してもらおう。
「風王は、門の所にこれを届けて。その後、私と合流を。あっちの二人をここまで引きずって来ないといけないから」
《承知しました》
ティアは、アイテムボックスから薬の瓶を入れた箱を取り出す。それを風王に託すと、気配を消してこちらの様子を離れて伺っている二人の元へと向かったのだった。
◆◆◆◆◆
ティアから手紙を預かったフラムは、密かに最速記録を出そうとしていた。
首に着けたプレートの横には、手紙を入れる小さな筒がある。どれだけスピードを出しても外れない特殊なそれにより、気兼ねなく飛ぶ事ができた。
王都の傍まで本来の姿に戻って飛ばして、再び小さな大きさに変わる。ティアに言われ、手紙を届けたり、人を運ぶ時は必ずそうして本来の姿を町の者に見られないようにしていた。
飛竜もそうだが、空を飛ぶ場合は、出発する町と、降り立つ町の外門の上でチェックを受けることになっている。
フラムだけの時もそうするようにとティアに言い含められている。
《キュ……キュ~》
人見知りなフラムでも、数回顔を合わせ、ティアが認めた者には慣れる。今回も、見知った門番が立っているのに気付き、そこへ急降下していった。
《キュキュ~っ》
「えっ、フラム? ちょっと、危ないってっ」
《キュキュゥ☆》
「……このイタズラっ子め」
《キュ~♪》
顔にぶつかる寸前でブレーキをかけ、目の前でパタパタと浮くフラムに、門番の男は苦笑する。
「また一人で来たのか? 気を付けてな」
《キュ~っ》
確認したと、門番の男に見送られながら、フラムは王宮へ向けて飛んだ。
目指す気配は、はっきりと感じられているのだ。そうして、王宮の訓練場の上空へ辿り着いた。
しかし、そこで困ったなと空中で止まる。
下には、確かに目的とするエルヴァストがいる。だがその他に三十人ほどの知らない男達がいたのだ。それも、エルヴァストとの距離が近い。
どうしようかと考えていれば、隣に火王が現れた。
《大丈夫だ。エルヴァストと兵達の間に……》
《キュキュ!》
火王の言葉がヒントになった。ティアならばこうするだろう。それを、フラムは実践する。
《フラム?》
《キュ~……キュフッ!!》
そうして、フラムは細く長い炎の柱をエルヴァストと訓練を受けていた騎士達の間に吐き出したのだ。
「なっ⁉︎ あ、フラムっ⁉︎」
《キュ~》
《……》
上手くいったと喜びながら、フラムはエルヴァストの前に舞い降りた。騎士達とエルヴァストの間には、見事に距離が空いている。
どうだ、褒めてくれと言わんばかりのフラムの様子に、エルヴァストは肩を落としながら苦笑する。
「フラム……お前もティアに似てきたな……」
《キュ? キュ~》
褒められてたと嬉しそうにクルクルと舞うフラム。それを見てエルヴァストは、叱るならばティアにだなと心に決めた。
「それでフラム。今日は何の届け物かな?」
《キュっ》
そうだったと、フラムは首元の手紙を確認してくれとエルヴァストの目の前へ差し出した。
それを一読したエルヴァストは、未だにフラムの登場に驚いている騎士達を宥めていたビアンへ声をかける。
「ビアン。ここは任せる。フラムも一緒に来るか?」
《キュ》
気を引き締めるエルヴァストの肩にフラムが止まる。それを確認して、エルヴァストは王の執務室へと駆け出したのだった。
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舞台裏のお話。
リューク「珍しいですな。殿下が騎士達の訓練場になど」
レイナルート「父上に、例の対抗戦までに騎士達を特訓するよう言われたのだ。だが、先ずは現状を見なければ対策の立てようがない」
リューク「成る程。真面目な殿下らしい」
レイナルート「……あれは……」
リューク「そうでした。エルヴァスト殿下が見ているようで……」
レイナルート「エルは……いつから剣など……」
リューク「それが、私にも分からないのです。ビアンも口を割らないものですから……」
レイナルート「そうか……かなり厳しいようだな。辛そうだ」
リューク「殿下の前でだらしがない……ん?」
レイナルート「どうした?」
リューク「いえ。今、何か上から……っ、殿下、お下がりをっ」
レイナルート「なっ、なんだっ⁉︎ 火柱がっ……ドラゴンっ……」
リューク「ドラゴンですね……殿下が知っているのでしょうか……」
エル『ビアン。ここは任せる』
リューク「どこかへ行かれるようですね……」
レイナルート「……っ父上の所か。私も行くぞ」
リューク「あっ、お待ちを殿下っ」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
お兄ちゃんの知らない世界……。
飼い主や親の行動を良く見ています。
一人でお使いが出来るようになりましたが、周りに助けられているようです。
初めてのお使いで皆が見守っているようなものでしょうか。
では次回、また明日です。
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