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468 話し合いは終わりです
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2016. 8. 2
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元々、話し合って解決なんて選択はティアの中では下位の策だ。他国の進入者など、放り出せば済むのだから。
ルクス達は、ティアが飽きだした気配に気付いたようだ。
「まずいな……このままだと、直接ウィストに乗り込みかねない……」
「だよねぇ……そんでその神官を見つけて締め上げるよ。一人の神官を特定するなんて、ティアには造作もないもの……」
「裏で関わる人物も特定していらっしゃるようですし、下手をすれば、ウィストのような小国、消えかねません」
こそこそと後ろで展開される会話。沈黙が降りている今のこの場所では、はっきりと聞こえてしまった。
「ちょっと、三人とも……」
ティアが振り向き、注意しようと睨む。これに、慌ててカランタが弁明を試みた。
「いや、だって。彼らが口を割るより先に、君の方が我慢の限界でしょ? そうなると……ねぇ?」
だってそうでしょうと言うカランタ。これにティアが答える。だが、それは反論ではなかった。
「よくわかってるじゃない。こいつらはその辺に埋めておいて、直接行った方が早いわ。何なら、見せしめに国境の門の所に吊るそうか。留守中にこれ以上、進入されるのはムカつく」
「「「……そこはお好きに……」」」
「「えっ⁉︎」」
ルクス達としては、彼らがどうなろうと構わない。ティアは殺しはしないのだ。カランタも、国へ返して殺されるより、この国に留まっていてくれた方がいいと思っている。
その際、埋められていても、投獄されていても、吊るされていても変わらないだろう。その場から動けなくなるのならば、良いのではないかと思ったのだ。
「ならそれでいい?」
ティアは、案外あっさり方針が決まり、次の行動の同意も得られた事で、機嫌良く椅子から飛び降りた。
「でも、行くなら僕も行くからね?」
「当然だな」
「私もお供いたします」
「え~……いいよ」
ダメだと言って聞くわけがない。ティアも大概だが、ルクス達も最近は言う事を聞かなかったりする。
ティアが許可を出すと三人がほっとしたように笑う。
「さてと、なら……」
「「っ……」」
ティアは二人の男達をゆっくりと振り返る。その目は邪魔となるものをどう排除しようかと思案する目だ。とても人を見る目ではない。感情のないものだった。
男達はここでようやく自分達の立場が危ういものだという事を自覚したらしい。
「ま、待ってくれ! 話を聞いてほしいっ」
「ちゃんと事情を話す! だからっ……」
今更慌てても遅い。
「人数的には、ギリギリ男爵の所の牢に入るよね」
「き、聞いて……」
「……」
既にこの後の計画でティアの頭は一杯なのだ。
「その間に情報を集めてもらって……フラムに王宮へ手紙を届けてもらった方がいいかな……今の時間ならエル兄様は執務中……いや、なんか騎士に特訓してるって聞いたなぁ……」
「「……」」
そう呟きながら、連絡用の小さな紙をアイテムボックスから取り出し、ウィストへ出掛けてくる旨を書きつける。
それを覗き込んだルクスが、不思議そうに尋ねた。
「わざわざ連絡するなんて珍しいな」
今までのティアならば、カルツォーネやシェリス達に連絡はしても、王宮へ宛てて手紙を書くなどしない。
「ウィストについては、王様も気にしてたからね。男爵から報告が行ったとしても、手元に届くのに何日もかかる。そこで事態がどうなってるか分からないじゃない? でも、私が直接向かったとなると話は違ってくる」
「対応の仕方って事か? まぁ、国と国の話になるから、色々と難しいんだろうな」
下手をすれば戦争になる。彼らの問題ではなく、国の問題になるのだ。
暗い表情のルクスに首を傾げ、カランタがここで重要となる部分を指摘する。
「違うよ、ルクス君。この場合は、ティアが対応するからどんな報告が来ても、安心して何もせずに待ってろって事を伝える為の手紙だよ」
「王はティア様を信頼しておられますから」
そう付け加えるシルに、ティアは得意気に腰に手を当て、胸を反らす。しかし、ルクスには寝耳に水だ。ティアへ向けた瞳は何も映してはいなかった。
「……いつの間に王とそんなに親密な関係に? 聞いていないんだけどなぁ」
「っ、へ⁉︎ い、言ってなかっ……言ってなかった……」
「聞いてないなぁ」
「う、うん。ルクス。落ち着こう。ちょっと言い忘れてただけだからねっ」
「言い訳は聞きたくないなぁ」
「うわ~……お久しぶりの怒りマーク!」
腕を組み、まだまだルクスの胸辺りまでしかない身長のティアを真下に眺め下ろすルクス。顔が怒りに引きつっているのが見て取れた。
しかし、その時だ。ティアは唐突に、この場へ向かってくる怪しい気配に気付いた。
「っ、待って、何か来る」
「何かって……っ」
その気配に、ルクスも気付いた。カランタもシルも神経を研ぎ澄ます。
「速いっ!」
「これって、人?」
魔力の大きさから、人である事が推測できる。しかし、その移動速度が異常だった。
そこへ、外にいる水王が気を利かせてテーブルの上へ小さな水鏡を出現させた。
映し出されたのは三人の黒いローブに身を包んだ者達。その彼らが走る事で揺れる胸元に掛かった飾りを見て、シルが正体に気付く。
「あの首飾りっ、ウィスト王家に仕える暗殺部隊のものです!」
彼らはもう数分の距離に近付いてきていた。
************************************************
舞台裏のお話。
ゼノ「ファル殿」
ファル「……ゼノ……どうした……」
ゼノ「ご指導いただきたく参りました」
ファル「……ゲイルと一緒ではないのか……」
ゼノ「ええ。あれが帰ってくる前に飛び出して来ましたからなぁ」
ファル「……怒っているだろうな……」
ゼノ「そうでしょうなぁ。今は屋敷にルクスもクロノスもいないので、アレは動けませんよ」
ファル「……それを知っていて一人で……」
ゼノ「はい。アレに置いていかれるのは仕方がないと思っていましたが、孫達に置いていかれるのは我慢なりませんからな。良い機会です」
ファル「……認定試験か……」
ゼノ「おぉ、お気付きでしたか」
ファル「……ベルとエルに勧めたのは私とティアだ……」
ゼノ「そうでしたか。では、私もお願いいたします」
ファル「……お前は今のティアの祖父だからな……仕方がない。貴族には必要のないものなのだが……」
ゼノ「はっはっはっ。私は昔、冒険者として自由に生きたかったのです。ティアと同じですよ」
ファル「……そのようだな。いいだろう。必ず合格させてみせよう……」
ゼノ「ありがとうございますっ」
ファル「……ふっ、ティアと同じ目をしている……」
ゼノ「なんですかな?」
ファル「……いや、お前は子どものように無邪気な目をするな……」
ゼノ「マスターにも同じような事を言われますよ。昔と同じ悪ガキにしか見えないと」
ファル「……シェリスが……そうか……」
ゼノ「正直、マスターにそう言われるのは、ゲイルも私も嫌いではありませんのでな」
ファル「……シェリスが気に入るか……面白い……」
ゼノ「では、お願いいたしますぞっ」
ファル「……あぁ……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ゼノじぃちゃん頑張ります。
少々、緊迫した状況になりました。
ルクス君のお説教が回避できて良かったと思うべきでしょうか。
目的はもしかして?
では次回、4日です。
よろしくお願いします◎
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元々、話し合って解決なんて選択はティアの中では下位の策だ。他国の進入者など、放り出せば済むのだから。
ルクス達は、ティアが飽きだした気配に気付いたようだ。
「まずいな……このままだと、直接ウィストに乗り込みかねない……」
「だよねぇ……そんでその神官を見つけて締め上げるよ。一人の神官を特定するなんて、ティアには造作もないもの……」
「裏で関わる人物も特定していらっしゃるようですし、下手をすれば、ウィストのような小国、消えかねません」
こそこそと後ろで展開される会話。沈黙が降りている今のこの場所では、はっきりと聞こえてしまった。
「ちょっと、三人とも……」
ティアが振り向き、注意しようと睨む。これに、慌ててカランタが弁明を試みた。
「いや、だって。彼らが口を割るより先に、君の方が我慢の限界でしょ? そうなると……ねぇ?」
だってそうでしょうと言うカランタ。これにティアが答える。だが、それは反論ではなかった。
「よくわかってるじゃない。こいつらはその辺に埋めておいて、直接行った方が早いわ。何なら、見せしめに国境の門の所に吊るそうか。留守中にこれ以上、進入されるのはムカつく」
「「「……そこはお好きに……」」」
「「えっ⁉︎」」
ルクス達としては、彼らがどうなろうと構わない。ティアは殺しはしないのだ。カランタも、国へ返して殺されるより、この国に留まっていてくれた方がいいと思っている。
その際、埋められていても、投獄されていても、吊るされていても変わらないだろう。その場から動けなくなるのならば、良いのではないかと思ったのだ。
「ならそれでいい?」
ティアは、案外あっさり方針が決まり、次の行動の同意も得られた事で、機嫌良く椅子から飛び降りた。
「でも、行くなら僕も行くからね?」
「当然だな」
「私もお供いたします」
「え~……いいよ」
ダメだと言って聞くわけがない。ティアも大概だが、ルクス達も最近は言う事を聞かなかったりする。
ティアが許可を出すと三人がほっとしたように笑う。
「さてと、なら……」
「「っ……」」
ティアは二人の男達をゆっくりと振り返る。その目は邪魔となるものをどう排除しようかと思案する目だ。とても人を見る目ではない。感情のないものだった。
男達はここでようやく自分達の立場が危ういものだという事を自覚したらしい。
「ま、待ってくれ! 話を聞いてほしいっ」
「ちゃんと事情を話す! だからっ……」
今更慌てても遅い。
「人数的には、ギリギリ男爵の所の牢に入るよね」
「き、聞いて……」
「……」
既にこの後の計画でティアの頭は一杯なのだ。
「その間に情報を集めてもらって……フラムに王宮へ手紙を届けてもらった方がいいかな……今の時間ならエル兄様は執務中……いや、なんか騎士に特訓してるって聞いたなぁ……」
「「……」」
そう呟きながら、連絡用の小さな紙をアイテムボックスから取り出し、ウィストへ出掛けてくる旨を書きつける。
それを覗き込んだルクスが、不思議そうに尋ねた。
「わざわざ連絡するなんて珍しいな」
今までのティアならば、カルツォーネやシェリス達に連絡はしても、王宮へ宛てて手紙を書くなどしない。
「ウィストについては、王様も気にしてたからね。男爵から報告が行ったとしても、手元に届くのに何日もかかる。そこで事態がどうなってるか分からないじゃない? でも、私が直接向かったとなると話は違ってくる」
「対応の仕方って事か? まぁ、国と国の話になるから、色々と難しいんだろうな」
下手をすれば戦争になる。彼らの問題ではなく、国の問題になるのだ。
暗い表情のルクスに首を傾げ、カランタがここで重要となる部分を指摘する。
「違うよ、ルクス君。この場合は、ティアが対応するからどんな報告が来ても、安心して何もせずに待ってろって事を伝える為の手紙だよ」
「王はティア様を信頼しておられますから」
そう付け加えるシルに、ティアは得意気に腰に手を当て、胸を反らす。しかし、ルクスには寝耳に水だ。ティアへ向けた瞳は何も映してはいなかった。
「……いつの間に王とそんなに親密な関係に? 聞いていないんだけどなぁ」
「っ、へ⁉︎ い、言ってなかっ……言ってなかった……」
「聞いてないなぁ」
「う、うん。ルクス。落ち着こう。ちょっと言い忘れてただけだからねっ」
「言い訳は聞きたくないなぁ」
「うわ~……お久しぶりの怒りマーク!」
腕を組み、まだまだルクスの胸辺りまでしかない身長のティアを真下に眺め下ろすルクス。顔が怒りに引きつっているのが見て取れた。
しかし、その時だ。ティアは唐突に、この場へ向かってくる怪しい気配に気付いた。
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その気配に、ルクスも気付いた。カランタもシルも神経を研ぎ澄ます。
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魔力の大きさから、人である事が推測できる。しかし、その移動速度が異常だった。
そこへ、外にいる水王が気を利かせてテーブルの上へ小さな水鏡を出現させた。
映し出されたのは三人の黒いローブに身を包んだ者達。その彼らが走る事で揺れる胸元に掛かった飾りを見て、シルが正体に気付く。
「あの首飾りっ、ウィスト王家に仕える暗殺部隊のものです!」
彼らはもう数分の距離に近付いてきていた。
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舞台裏のお話。
ゼノ「ファル殿」
ファル「……ゼノ……どうした……」
ゼノ「ご指導いただきたく参りました」
ファル「……ゲイルと一緒ではないのか……」
ゼノ「ええ。あれが帰ってくる前に飛び出して来ましたからなぁ」
ファル「……怒っているだろうな……」
ゼノ「そうでしょうなぁ。今は屋敷にルクスもクロノスもいないので、アレは動けませんよ」
ファル「……それを知っていて一人で……」
ゼノ「はい。アレに置いていかれるのは仕方がないと思っていましたが、孫達に置いていかれるのは我慢なりませんからな。良い機会です」
ファル「……認定試験か……」
ゼノ「おぉ、お気付きでしたか」
ファル「……ベルとエルに勧めたのは私とティアだ……」
ゼノ「そうでしたか。では、私もお願いいたします」
ファル「……お前は今のティアの祖父だからな……仕方がない。貴族には必要のないものなのだが……」
ゼノ「はっはっはっ。私は昔、冒険者として自由に生きたかったのです。ティアと同じですよ」
ファル「……そのようだな。いいだろう。必ず合格させてみせよう……」
ゼノ「ありがとうございますっ」
ファル「……ふっ、ティアと同じ目をしている……」
ゼノ「なんですかな?」
ファル「……いや、お前は子どものように無邪気な目をするな……」
ゼノ「マスターにも同じような事を言われますよ。昔と同じ悪ガキにしか見えないと」
ファル「……シェリスが……そうか……」
ゼノ「正直、マスターにそう言われるのは、ゲイルも私も嫌いではありませんのでな」
ファル「……シェリスが気に入るか……面白い……」
ゼノ「では、お願いいたしますぞっ」
ファル「……あぁ……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ゼノじぃちゃん頑張ります。
少々、緊迫した状況になりました。
ルクス君のお説教が回避できて良かったと思うべきでしょうか。
目的はもしかして?
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