女神なんてお断りですっ。

紫南

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連載

466 他国の人々

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2016. 7. 31
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ティアは、地下でルクスが壊した魔導具を全て回収し、地上に戻って来た。

すると、あれほど苦しそうだった盗賊達が体を起こし、自分達の身にいったい何が起こったのかと話し合っている。

ティア達に助けられた事だけは分かるようで、攻撃してくる様子や、逃げる気もないようだ。

ふと目を向けた先。盗賊達から少し離れた場所では、カランタが地面に手と膝をつき、息を荒げていた。

近付いたティアに、カランタがゆっくりと顔を上げ、情けない声を出した。

「ティアぁ~」
「なんか、見たことある体勢だね」

初めてカランタとティアとして出会った時。膝をつかせたなと思い出す。

「うぅ……酷いよぉ」
「あ~、はいはい。これをあげよう」
「……ありがと……」

ティアはアイテムボックスから取り出した回復薬をカランタへと手渡した。しかし、それが優しさだけで済まない所がティアだ。

「天使に効くか確認したいんだよね~」
「素直に労ってよっ!」

座り込んで薬を一気に飲んだカランタ。それを、ティアは屈み込んで正面から実証実験を楽しむかのようにニヤニヤと見つめる。これには、泣きそうになりながらカランタが非難した。

最近、カランタは心を読まないようにしているようで、ティアが照れ隠しでそうしている事に気付かない。お陰で、自然な掛け合いが成立してしまう。

「なによ。出来たじゃん。さすがは天使様。白い羽とキラキラ属性は伊達じゃないね」
「……それ、褒めてる?」
「何言ってんの。この上なく、天使様を褒め称えてるでしょ?」

天使の力を信頼し、この場を任せたのだ。ティアにしてみれば、最高ランクの信頼の証だろう。

だが、残念ながらそれは他人に伝わりにくい。

「その天使様っていうのやめてよぉ。ティアに言われるのヤダ」
「ヤダって言われても、天使じゃん」
「そうだけど……たまには、と、父様って……昔みたいに……」
「さぁってと、話し合いをしましょうか」
「……うぅ……っ」

だらしない顔で、おかしな注文をつけにかかった天使など無視だ。薬を飲んで明らかに回復した様子なので、もう心配してやる必要もないだろう。

ティアが盗賊達の方へ視線を向けると、彼らは少々警戒した様子でこちらを見ていた。それも分からなくはない。

彼らに近付き、口を開こうとしたところで、風王が現れた。そして、仕入れてきた情報を耳打ちする。

盗賊達の中には精霊視力を持った者はいないらしく、カランタとルクスだけが不思議そうに内心、首を傾げていた。

受け取った情報を素早く自分の中で整理すると、そのまま口を開く。

「いらっしゃい。他国の方々。正式な入国をしていないようだね」
「っ⁉︎」

盗賊達だけでなく、ルクス達も息をのみ、この場に緊張が走る。

「門を通る時に使った魔導具はどこ? 大人しくあの国を出なくちゃならなくなった事情を話してくれれば、力になるけど?」

そう言えば、一人の男に視線が集まった。

「あなたがここのリーダー?」
「そ、そうだ……」

四十代後半といった所だろうか。その男は立ち上がり、ティアへと歩み寄る。

その瞳には、隠しきれない戸惑いの色が見えていた。武器は腰に剣が一振り。ティアには、風王の情報から、彼らの事情も予想出来ていた。それを踏まえると、ここで敵対するような馬鹿ではないだろうと考え、まずはこちらの立場を明かす。

「私はティア。冒険者で、あなた方のようにこの先の町を襲おうとする盗賊を退治するのよう依頼を受けた。けど……あなた達が盗賊ではないのなら、敵にはならないよ?」
「……この国では、お嬢ちゃんのような子どもに、盗賊退治を任せるのか?」

男は警戒を解かず、少しでも何か優位に立てる情報を手に入れようと探りを入れる。それに、ティアは正直に答えてやった。

「これでもAランクの冒険者だよ。 冒険者のランクは世界共通。どの国でも変わらないから分かるよね?」
「Aランク⁉︎ ウィストじゃぁ、国に三人もいねぇ……それが、こんな……」
「こんな小娘が? って感じ? 言っておくけど、あなた達の国なら、一人でも丸一日あれば落とせるよ? Aランクってのは、そういう存在だからね」
「あ、あぁ……そうだな……」

冒険者ギルドは世界中にある。国の中にあるが、正確に言えばその国に属しているわけではない。

王の命は聞かないが要望は聞く。そんな本来、単独の自由な組織なのだ。だからこそ、その国によってランク付けに差が出るような事もない。

人族と魔族やエルフなど、種族が違ったとしてもランク付けの違いがないのだ。

ただし、種族によってこれとは別のランク付けがあるのだが、人族にはないので関係ない。

「立ち話もなんだね。もうすぐ合流組も来るみたいだし、少しゆっくり話そうか」

そうして、ティアはゲルヴァローズの欠片を取り出し、家を出現させた。

「なっ⁉︎」

当然、これを知らない彼らは驚く。だが、ティアには、わざわざ懇切丁寧に説明してやる気はない。

「水王。水鏡をお願い。それと風王は会話を届けて。ここの人たちにも中の様子が分かるように」


誰もが見えるように顕現した水王は、上空に水鏡を展開する。それは、家の中を映し出していた。

そして、今は聞こえないが、同じように顕現した風王の力によって、家の中での会話も聞こえるようにしてもらった。

「さぁ、これで安心でしょ? 入って。事情を聞こう。もうすぐ来る人達のリーダーも一緒にね」

そう言ってティアが向けたその視線の先には、本来の姿になったマティと火王に先導されてやって来た数名の男女が現れた。

「っ、ディっ⁉︎」

息を止めてしまうのも仕方が無い。更に、目の端に映ったそれを目にした半数は気絶してしまっていたのだった。


************************************************
舞台裏のお話。

サクヤ「こんにちは~」

ラキア「これは、ようこそいらっしゃいませ、カグヤ先生。それと、ウル師長様」

ウル「その呼び方は変わりませんか?」

ラキア「はい。ティア様が、魔術師長として認めておられるのは、ウル師長様だけですので」

ウル「え……」

サクヤ「へぇ。それって、今の魔術師長の子は認めてないってこと?」

ラキア「そのようです。経験値が足りないと仰っておいででした」

ウル「……」

サクヤ「若かったっけ?」

ラキア「いいえ。ウル師長様よりも四つ年上です。魔術師長としては妥当な年齢だそうですね」

サクヤ「そういえばそうねぇ。昔から大体六十か、七十過ぎが多かったものね。たまに若い子が選ばれてたけど」

ラキア「私もそうお聞きしました。ですが、ウル師長様は三十でその座に指名されたとか」

サクヤ「そうなの? 凄いじゃない。若い子を選ぶ時は、結構色々と難しいって聞いた事があるけど」

ラキア「ええ。若い分、人生経験も少ないですし、いくら魔力が高く優秀であっても、その後、何の影響を受け、考え方などが変わるか分かりませんから」

サクヤ「それはありそうね。優秀である事は重要だけど、国に仇名す事になったら困るものね。それは慎重にもなるわ」

ラキア「ですから、その場合は、特別な監査官が数人つくのだそうです」

サクヤ「こわっ。なにそれっ。監視役?」

ラキア「はい。クィーグの方から選ばれるそうですよ」

サクヤ「やだ、最強じゃない」

ラキア「因みに、代々魔術師長様には、年齢に関係なく必ず一人は監査官がついていると」

サクヤ「ウルにもついていたのね」

ウル「え?」

サクヤ「あら? 知らなかったの?」

ウル「はい……え?」

ラキア「あぁ、ウル師長様の最後の担当でしたら、師長様の引退と同時に現役を退かれ、今はディムースで子ども達の先生をしていらっしゃいますよ?」

サクヤ「まぁっ。先生だなんて。同じじゃない。今度挨拶しましょうね、ウル」

ウル「はい……え?」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


初めて聞く裏話?


珍しく暴れる事なく話し合い。
ティアちゃんも少しは大人になったのでしょうか。
ただ、素直にはなれないようです。
連行されてきました侵入者さん達。
マティには逆らえませんね。


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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