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2016. 6. 24
突然ですが、12歳編スタートです◎
********************************************
フェルマー学園。
教師であるサクヤが、中庭を駆け回っていた。木の上から建物の屋上まで見上げて探し回っても、気配を消したその人が見つからないのだ。
「どこ行っちゃったのよっ……」
そうしてもう一度教室の方を見ようと校舎へ入ると、そこでアデルと出くわした。
「あっ、アデルちゃん。ティアがどこ行ったか知らない?」
「カグヤ先生? 素が出てるよ」
「うっ……こほんっ。フェルマーさん。ヒュースリーさんがどこにいるか知りませんか」
思わずサクヤモードになって問い掛けてしまったのは、刻限が迫って焦っていたからだ。サクヤは気を取り直して尋ねる。
「ティアなら、さっき闘技場の方へ……あれ? もしかして時間を忘れてるのかな? シルさんがついてると思うんだけど」
「闘技場……こんな日に何してるのよ……」
「こんな日だからじゃないかな? 午前中、大人しかったもん」
「それは……そうね……」
今日の午前中。小学部の卒業式があったのだ。ティアは入学式の時と同様、見事に代表生徒として言葉を述べていた。
この日、各学部の卒業式が執り行われたのだ。
入学式は小学部に入る時だけに行われるのだが、卒業式だけは区切りを付け、新たな想いで次の学部へと進んでもらう為に、小学部、中学部、高学部それぞれで行われる。
時間を分けられ、小学部が午前。中学部が午後の二時間ずつ。
高学部だけは最終学年という事で中学部の卒業式が終わった二時間後に盛大に行われるのだが、その後もダンスパーティーと夜まで続く。
そして、アデル達は今日、小学部を卒業した。
「カグヤ先生」
忙しさに頭を抱えるサクヤの下に、キルシュがやってきた。ここひと月ほどで一気に背も伸び、大人びてきたキルシュは、エルヴァストやベリアローズに続き、女生徒に大人気だ。
「ティアは見つかりましたか?」
「まだ。闘技場の方だってアデルちゃんに今聞いた所」
「そうですか。警備の方にクィーグの方達は出払っていますし……僕が行きます。先生も、もうすぐ打ち合わせの時間ですよ」
「うそっ! もうそんな時間っ?」
高学部の卒業式が始まる一時間前だ。最終の打ち合わせがあった。
「ティアの入りは三十分前ですから、まだ間に合いますよね」
「ええ。頼むわねっ」
「はい。ただ先生。モード、切り換えて行ってください」
「うっ、そうだった……ありがとう。ティアにバレたら笑われるわ……」
どうも最近、キルシュやアデルの前でもサクヤモードになってしまうようだ。気を付けてはいても、ついつい素が出てしまうのだろう。
サクヤは深呼吸を数回してからカグヤ先生として職員室へと駆けていった。
そんなサクヤを見送り、キルシュとアデルは苦笑する。
「先生は中学部でも担当するんだって。ティアから目を離すのは不安だとか昨日言ってたもん」
「あぁやって、またティアに振り回されるんだな……気の毒に」
午前中に卒業式を無事終えた二人には、まだその先の事を考える気がない。中学部に上がるのはひと月先なのだ。教師達より少しだけ気を抜く余裕がある。
「それでアデル。ご両親と帰ったんじゃなかったのか?」
卒業生であり、代表でもないアデルは、他の卒業生と共に両親と帰宅しているはずなのだ。
「キルシュ達の手伝いでもと思ったんだよ。それに、父さんと母さんは、ティアとキルシュのお父さん達とヒュースリーの別邸で宴会してるって」
「うちの両親もか……」
「仲良いよね」
アデルの両親は、この二年。度々サルバを訪れ、同じくヒュースリーの屋敷を訪れるファルやカルツォーネと交流してきた。
彼らはアデルとの付き合い方を反省していたらしい。そして、フィスタークやシアンの人柄に触れ、友人となっていった。
一方、キルシュの両親は、夫人を治療したシェリスとの関係から、フィスターク達と親しく話すようになった。
友人同士である子ども達の事もあり、いつの間にか両親達も気安い仲となっていたのだ。
「そんじゃ、ティアを探しに行きますか」
「だな」
こうして、二人は揃って、退屈から逃げ出した手のかかる友人を迎えに行くのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
カル「ぐぅ……っ」
王佐「がんばってください。もう少しです」
近衛「卒業式はいいと言っていたじゃないですか。やる気を出してください」
カル「わ、分かっているんだが……っ」
王佐「はぁ……そういえば、クロノスさんがいらしていますよ」
カル「っ、なっ、なんだってっ!」
王佐「ちょっ、落ち着いてください。あっ、お待ちをっ」
近衛「今言ったらダメですって」
王佐「いや、もう集中が切れていらしたからな……」
近衛「このまま出発されるかもしれませんよ?」
王佐「そこはなんとか……そうですねぇ。荷物の用意を遅らせて……それで、その間に仕事を終えてもらわなくては」
近衛「そうですね。卒業式は今日ですけど、お祝いはディムースで明日ですか」
王佐「……行きたいですね……」
近衛「言わないでくださいよ……自分も行きたいです……」
王佐「……とりあえず、陛下を迎えに行ってもらえますか? クロノスさんにも上手く言って、陛下のやる気を引き出してください」
近衛「もういっそのこと、さっさとくっつけますか」
王佐「いや……クロノスさんは鈍いですからね……」
近衛「陛下も、彼には奥手ですからね……」
王佐「もう少し待ちましょう」
近衛「はい」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
くっつける気みたいです。
12才編スタートです。
二年が経ち、どんな変化があったのか。
先に卒業したベル兄ちゃんやエル兄ちゃんも気になります。
そして、あの組織は?
では次回、一日空けて26日です。
よろしくお願いします◎
突然ですが、12歳編スタートです◎
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フェルマー学園。
教師であるサクヤが、中庭を駆け回っていた。木の上から建物の屋上まで見上げて探し回っても、気配を消したその人が見つからないのだ。
「どこ行っちゃったのよっ……」
そうしてもう一度教室の方を見ようと校舎へ入ると、そこでアデルと出くわした。
「あっ、アデルちゃん。ティアがどこ行ったか知らない?」
「カグヤ先生? 素が出てるよ」
「うっ……こほんっ。フェルマーさん。ヒュースリーさんがどこにいるか知りませんか」
思わずサクヤモードになって問い掛けてしまったのは、刻限が迫って焦っていたからだ。サクヤは気を取り直して尋ねる。
「ティアなら、さっき闘技場の方へ……あれ? もしかして時間を忘れてるのかな? シルさんがついてると思うんだけど」
「闘技場……こんな日に何してるのよ……」
「こんな日だからじゃないかな? 午前中、大人しかったもん」
「それは……そうね……」
今日の午前中。小学部の卒業式があったのだ。ティアは入学式の時と同様、見事に代表生徒として言葉を述べていた。
この日、各学部の卒業式が執り行われたのだ。
入学式は小学部に入る時だけに行われるのだが、卒業式だけは区切りを付け、新たな想いで次の学部へと進んでもらう為に、小学部、中学部、高学部それぞれで行われる。
時間を分けられ、小学部が午前。中学部が午後の二時間ずつ。
高学部だけは最終学年という事で中学部の卒業式が終わった二時間後に盛大に行われるのだが、その後もダンスパーティーと夜まで続く。
そして、アデル達は今日、小学部を卒業した。
「カグヤ先生」
忙しさに頭を抱えるサクヤの下に、キルシュがやってきた。ここひと月ほどで一気に背も伸び、大人びてきたキルシュは、エルヴァストやベリアローズに続き、女生徒に大人気だ。
「ティアは見つかりましたか?」
「まだ。闘技場の方だってアデルちゃんに今聞いた所」
「そうですか。警備の方にクィーグの方達は出払っていますし……僕が行きます。先生も、もうすぐ打ち合わせの時間ですよ」
「うそっ! もうそんな時間っ?」
高学部の卒業式が始まる一時間前だ。最終の打ち合わせがあった。
「ティアの入りは三十分前ですから、まだ間に合いますよね」
「ええ。頼むわねっ」
「はい。ただ先生。モード、切り換えて行ってください」
「うっ、そうだった……ありがとう。ティアにバレたら笑われるわ……」
どうも最近、キルシュやアデルの前でもサクヤモードになってしまうようだ。気を付けてはいても、ついつい素が出てしまうのだろう。
サクヤは深呼吸を数回してからカグヤ先生として職員室へと駆けていった。
そんなサクヤを見送り、キルシュとアデルは苦笑する。
「先生は中学部でも担当するんだって。ティアから目を離すのは不安だとか昨日言ってたもん」
「あぁやって、またティアに振り回されるんだな……気の毒に」
午前中に卒業式を無事終えた二人には、まだその先の事を考える気がない。中学部に上がるのはひと月先なのだ。教師達より少しだけ気を抜く余裕がある。
「それでアデル。ご両親と帰ったんじゃなかったのか?」
卒業生であり、代表でもないアデルは、他の卒業生と共に両親と帰宅しているはずなのだ。
「キルシュ達の手伝いでもと思ったんだよ。それに、父さんと母さんは、ティアとキルシュのお父さん達とヒュースリーの別邸で宴会してるって」
「うちの両親もか……」
「仲良いよね」
アデルの両親は、この二年。度々サルバを訪れ、同じくヒュースリーの屋敷を訪れるファルやカルツォーネと交流してきた。
彼らはアデルとの付き合い方を反省していたらしい。そして、フィスタークやシアンの人柄に触れ、友人となっていった。
一方、キルシュの両親は、夫人を治療したシェリスとの関係から、フィスターク達と親しく話すようになった。
友人同士である子ども達の事もあり、いつの間にか両親達も気安い仲となっていたのだ。
「そんじゃ、ティアを探しに行きますか」
「だな」
こうして、二人は揃って、退屈から逃げ出した手のかかる友人を迎えに行くのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
カル「ぐぅ……っ」
王佐「がんばってください。もう少しです」
近衛「卒業式はいいと言っていたじゃないですか。やる気を出してください」
カル「わ、分かっているんだが……っ」
王佐「はぁ……そういえば、クロノスさんがいらしていますよ」
カル「っ、なっ、なんだってっ!」
王佐「ちょっ、落ち着いてください。あっ、お待ちをっ」
近衛「今言ったらダメですって」
王佐「いや、もう集中が切れていらしたからな……」
近衛「このまま出発されるかもしれませんよ?」
王佐「そこはなんとか……そうですねぇ。荷物の用意を遅らせて……それで、その間に仕事を終えてもらわなくては」
近衛「そうですね。卒業式は今日ですけど、お祝いはディムースで明日ですか」
王佐「……行きたいですね……」
近衛「言わないでくださいよ……自分も行きたいです……」
王佐「……とりあえず、陛下を迎えに行ってもらえますか? クロノスさんにも上手く言って、陛下のやる気を引き出してください」
近衛「もういっそのこと、さっさとくっつけますか」
王佐「いや……クロノスさんは鈍いですからね……」
近衛「陛下も、彼には奥手ですからね……」
王佐「もう少し待ちましょう」
近衛「はい」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
くっつける気みたいです。
12才編スタートです。
二年が経ち、どんな変化があったのか。
先に卒業したベル兄ちゃんやエル兄ちゃんも気になります。
そして、あの組織は?
では次回、一日空けて26日です。
よろしくお願いします◎
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