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連載
435 決意表明みたいなものです
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2016. 6. 17
********************************************
舞台から下りたティアは、待ち構えていたカルツォーネに抱きつかれていた。
「ティアっ、素晴らしかったよ!」
ティアとしては、ほとんどヤケクソ気味だった為、全くどこにここまで感銘を受けてくれたのかが、はっきりいって分からなかった。
カルツォーネはティアの肩を掴んだまま体を離すと、優しい笑みを浮かべて続けた。
「それに、ちゃんと君は考えてくれていたんだね」
そう言ったカルツォーネの後ろに、サクヤとシェリス、そして、駆け付けたファルが並んでいた。一様に慈愛に満ちた笑みを浮かべている。
それを見てティアは思わず苦笑した。
「だって、次は許してくれなさそうなんだもの。何より、自分に言い聞かせたかったんだ」
過去を後悔する事など、自分には許されないと思ってきた。進んだ道が誤りであったと認める事は、あの時死んでいった者達に失礼だと思ったのだ。
「今でも、過去の事はあれ以外の方法なんてなかったと思うし、間違いじゃなかったと言える。けど……間違いじゃなくても、正しい事でもなかったって思うから……」
満点の正解なんて、この世界にはないだろう。何を正解にするのかなんて事は、人の考えが様々にあるように、数多く存在するのだ。
「だから、せめて今度は沢山の選択肢を用意して、みんなで考えたいんだ。その中で相応しい答えが見つけられるようにしたい。私がやれる事は全部やって、焦って一人で答えを出さなきゃならない状況を作らないようにしたいなって」
追い詰められる前に、今度は逃げずに手を尽くそう。そう思うから。
「みんなも隠し事しないでね」
お互い抱え込まないで関わっていこう。共に生きる覚悟もある。
今の世界が許さなくても、この関係を絶つ気はない。
ティアはカルツォーネ達と再会してからそれぞれに誓った。いつでも困った事があれば駆け付けるからという彼らに、次は必ず告げるからと。
そうは言っても、彼らには今の立場もある。何より、世界の状況が共にあるには難しくなっていた。
だから、心のどこかで建前でしかなくなってしまうだろうと思っていたのだ。しかし、今回の騒動でティアはようやく自覚した。
この友人達は、本気でなにがあっても、ティアの為に今度は駆け付けるつもりなのだと。
その本気の思いと覚悟を実感したティアは、それならば自分もちゃんとこれに向き合わなくてはならないと思った。そうして考えた答えがこれだったのだ。
カルツォーネがもう一度ティアを抱き締めて離す。
「そう。私達は仲間で、友人で、家族なんだ。いつだって力になるよ。君が望めば国だって世界だって変えてやるからね」
ティアを真っ直ぐに見つめウィンクするカルツォーネ。
「ティアの為なら、国を滅ぼす事も厭いませんよ?」
シェリスは穏やかな笑みを浮かべながら物騒な事を宣言する。
「あんたは相変わらずよね。そんなんじゃ、ティアが悪者になっちゃうじゃない。分かってないわね。私なら国を乗っ取って、ティアを王にするわ」
サクヤはシェリスを横目で睨んで言った。
「……それも……良くない……国は明け渡させる……」
ファルも静かに決意を込める。
「いや……なんでみんなして国規模の話を……ううん。もういいや」
今何を言っても無駄だろう。この姿のせいで、女王になったティアしか見えていないようなのだ。
盛り上がる友人達をよそに、ティアが舞台を下りた事で正気に戻った人々の賑やかな声に耳を澄ませた。
思い思いに散って行き、これから楽しい食事が始まる。
少し離れた場所に固まっているベリアローズやアデル達に目を向けると、ティアと話したそうにしながらも、食事を始めた人々の方を羨ましげに見ているのが分かった。
そこへ、マティが通りすがりにティアへと伝える。
《主はまだ用があるんでしょ? アデル達は連れて行くよ。フラムも連れてご飯食べてくる》
「ふふっ、よろしく。後で行くから。それと、あっちの端で隠れてるサラちゃんも回収しといて」
《サラちゃんってば、主が心配で来たなら、ちゃんと顔を見せればいいのに。世話が焼けるなぁ》
そう言ってマティがアデル達の下へ走って行った。合流すると二三言葉を伝えて、皆を連れて離れていく。
アデル達は一度ティアの方へと目を向けるが、ティアが頷くのを見て、そのまま食事へと繰り出していった。
ラキアもマティと同様に何かを察したらしく、所在無げにティアを見つめていたルクスやクロノス、ビアン、ウルスヴァン、ユメルとカヤルも連れて行ったようだ。
残ったのはカルツォーネ達だ。しかし、それも妖精王が声をかける。
《ティアはいつもの格好に着替えたいんだろ? 待ってるのもいるみたいだし、俺らは先に行ってるからな。早く来ないとなくなるとだけ言っておこう》
「着替えるなら手伝って……もらうといいわ」
サクヤが手伝うと言おうとして変えたのは、そこでティアが気にしている気配を感じたからだ。
カルツォーネもシェリスもファルも気付いたようだ。
「早く来てくださいね」
「君の好きなものを取り置いておくよ」
「……待っている……」
そんな彼らに頷いて、ティアは大宿へ向かう。その時見上げた最上階の一室。そこに白い羽が見えた。
「すぐに戻るから」
そう振り向いて友人達に告げると、部屋へと向かったのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
ビアン「なんだか本当に王を振り切ってよかったなと思ったんだが……」
ラキア「間違いなく今ここにお見えでしたら、大層、居心地の悪い思いをしたでしょうね」
ビアン「いや……うん」
ウル「恨み言の一つや二つなどと言っていられなかったでしょう……」
ラキア「マスター達の様子ですと、今後、王への評価は厳しくなりますね。少しでもティア様の邪魔になると判断されれば、退位に追い込みかねません」
ビアン「っ、そこまで⁉︎」
ウル「……もう諦めてティアさんに国を渡しましょうか」
ビアン「師長殿っ!!」
ウル「あぁ、もう師長ではありませんが、王を説得しましょう。心配ありません。まだ影響力は持っておりますからね」
ビアン「そんな遠い所を見ないでっ! まだ大丈夫ですからっ。早まらないでくださいよっ!!」
ラキア「いつでも協力いたします」
ウル「ラキアさんが味方でしたら心強いですね」
ビアン「何かを悟ったような穏やかな笑みをっ⁉︎ ルクスっ、助けてくれ!」
ルクス「……諦めたら楽になる」
クロノス「ティア様にお任せいただければ、問題はなにもなくなりますよ」
ユメル「ビアンさん。残念だけど……」
カヤル「希望は別の所に見つけるべきだよ」
ビアン「味方がいないっ⁉︎」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ティアちゃん支持派ですから。
カル姐さん達との絆を確かめました。
彼らは今度はティアに暗躍させる気はないのかもしれません。
何かあれば、表に立って変えてしまえという事でしょう。
国王には厳しい状況ですね。
さて、カランタ君とあの人は?
では次回、一日空けて19日です。
よろしくお願いします◎
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舞台から下りたティアは、待ち構えていたカルツォーネに抱きつかれていた。
「ティアっ、素晴らしかったよ!」
ティアとしては、ほとんどヤケクソ気味だった為、全くどこにここまで感銘を受けてくれたのかが、はっきりいって分からなかった。
カルツォーネはティアの肩を掴んだまま体を離すと、優しい笑みを浮かべて続けた。
「それに、ちゃんと君は考えてくれていたんだね」
そう言ったカルツォーネの後ろに、サクヤとシェリス、そして、駆け付けたファルが並んでいた。一様に慈愛に満ちた笑みを浮かべている。
それを見てティアは思わず苦笑した。
「だって、次は許してくれなさそうなんだもの。何より、自分に言い聞かせたかったんだ」
過去を後悔する事など、自分には許されないと思ってきた。進んだ道が誤りであったと認める事は、あの時死んでいった者達に失礼だと思ったのだ。
「今でも、過去の事はあれ以外の方法なんてなかったと思うし、間違いじゃなかったと言える。けど……間違いじゃなくても、正しい事でもなかったって思うから……」
満点の正解なんて、この世界にはないだろう。何を正解にするのかなんて事は、人の考えが様々にあるように、数多く存在するのだ。
「だから、せめて今度は沢山の選択肢を用意して、みんなで考えたいんだ。その中で相応しい答えが見つけられるようにしたい。私がやれる事は全部やって、焦って一人で答えを出さなきゃならない状況を作らないようにしたいなって」
追い詰められる前に、今度は逃げずに手を尽くそう。そう思うから。
「みんなも隠し事しないでね」
お互い抱え込まないで関わっていこう。共に生きる覚悟もある。
今の世界が許さなくても、この関係を絶つ気はない。
ティアはカルツォーネ達と再会してからそれぞれに誓った。いつでも困った事があれば駆け付けるからという彼らに、次は必ず告げるからと。
そうは言っても、彼らには今の立場もある。何より、世界の状況が共にあるには難しくなっていた。
だから、心のどこかで建前でしかなくなってしまうだろうと思っていたのだ。しかし、今回の騒動でティアはようやく自覚した。
この友人達は、本気でなにがあっても、ティアの為に今度は駆け付けるつもりなのだと。
その本気の思いと覚悟を実感したティアは、それならば自分もちゃんとこれに向き合わなくてはならないと思った。そうして考えた答えがこれだったのだ。
カルツォーネがもう一度ティアを抱き締めて離す。
「そう。私達は仲間で、友人で、家族なんだ。いつだって力になるよ。君が望めば国だって世界だって変えてやるからね」
ティアを真っ直ぐに見つめウィンクするカルツォーネ。
「ティアの為なら、国を滅ぼす事も厭いませんよ?」
シェリスは穏やかな笑みを浮かべながら物騒な事を宣言する。
「あんたは相変わらずよね。そんなんじゃ、ティアが悪者になっちゃうじゃない。分かってないわね。私なら国を乗っ取って、ティアを王にするわ」
サクヤはシェリスを横目で睨んで言った。
「……それも……良くない……国は明け渡させる……」
ファルも静かに決意を込める。
「いや……なんでみんなして国規模の話を……ううん。もういいや」
今何を言っても無駄だろう。この姿のせいで、女王になったティアしか見えていないようなのだ。
盛り上がる友人達をよそに、ティアが舞台を下りた事で正気に戻った人々の賑やかな声に耳を澄ませた。
思い思いに散って行き、これから楽しい食事が始まる。
少し離れた場所に固まっているベリアローズやアデル達に目を向けると、ティアと話したそうにしながらも、食事を始めた人々の方を羨ましげに見ているのが分かった。
そこへ、マティが通りすがりにティアへと伝える。
《主はまだ用があるんでしょ? アデル達は連れて行くよ。フラムも連れてご飯食べてくる》
「ふふっ、よろしく。後で行くから。それと、あっちの端で隠れてるサラちゃんも回収しといて」
《サラちゃんってば、主が心配で来たなら、ちゃんと顔を見せればいいのに。世話が焼けるなぁ》
そう言ってマティがアデル達の下へ走って行った。合流すると二三言葉を伝えて、皆を連れて離れていく。
アデル達は一度ティアの方へと目を向けるが、ティアが頷くのを見て、そのまま食事へと繰り出していった。
ラキアもマティと同様に何かを察したらしく、所在無げにティアを見つめていたルクスやクロノス、ビアン、ウルスヴァン、ユメルとカヤルも連れて行ったようだ。
残ったのはカルツォーネ達だ。しかし、それも妖精王が声をかける。
《ティアはいつもの格好に着替えたいんだろ? 待ってるのもいるみたいだし、俺らは先に行ってるからな。早く来ないとなくなるとだけ言っておこう》
「着替えるなら手伝って……もらうといいわ」
サクヤが手伝うと言おうとして変えたのは、そこでティアが気にしている気配を感じたからだ。
カルツォーネもシェリスもファルも気付いたようだ。
「早く来てくださいね」
「君の好きなものを取り置いておくよ」
「……待っている……」
そんな彼らに頷いて、ティアは大宿へ向かう。その時見上げた最上階の一室。そこに白い羽が見えた。
「すぐに戻るから」
そう振り向いて友人達に告げると、部屋へと向かったのだった。
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舞台裏のお話。
ビアン「なんだか本当に王を振り切ってよかったなと思ったんだが……」
ラキア「間違いなく今ここにお見えでしたら、大層、居心地の悪い思いをしたでしょうね」
ビアン「いや……うん」
ウル「恨み言の一つや二つなどと言っていられなかったでしょう……」
ラキア「マスター達の様子ですと、今後、王への評価は厳しくなりますね。少しでもティア様の邪魔になると判断されれば、退位に追い込みかねません」
ビアン「っ、そこまで⁉︎」
ウル「……もう諦めてティアさんに国を渡しましょうか」
ビアン「師長殿っ!!」
ウル「あぁ、もう師長ではありませんが、王を説得しましょう。心配ありません。まだ影響力は持っておりますからね」
ビアン「そんな遠い所を見ないでっ! まだ大丈夫ですからっ。早まらないでくださいよっ!!」
ラキア「いつでも協力いたします」
ウル「ラキアさんが味方でしたら心強いですね」
ビアン「何かを悟ったような穏やかな笑みをっ⁉︎ ルクスっ、助けてくれ!」
ルクス「……諦めたら楽になる」
クロノス「ティア様にお任せいただければ、問題はなにもなくなりますよ」
ユメル「ビアンさん。残念だけど……」
カヤル「希望は別の所に見つけるべきだよ」
ビアン「味方がいないっ⁉︎」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ティアちゃん支持派ですから。
カル姐さん達との絆を確かめました。
彼らは今度はティアに暗躍させる気はないのかもしれません。
何かあれば、表に立って変えてしまえという事でしょう。
国王には厳しい状況ですね。
さて、カランタ君とあの人は?
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