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407 その下には
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2016. 5. 9
********************************************
ティアは、その屋敷を改めて見上げ、深呼吸をする。
この合宿中、食事は、各自部屋で摂る事を勧められていた。
学園とは違い、広い学食や、全員が揃って食事を出来る部屋がないのだ。
ただし、初日の今日の昼食は、広い庭でシートを広げられ、ピクニック仕様の昼食会が開かれていた。
おかげで、ルクス達の追及をあれ以降受けることがなかったのだ。
「さてと……」
無意識に屋敷の中の気配を探れば、既にティア以外の全員が中に揃っていた。
集まっているのは、恐らく一階にあった屋敷の食堂だろう。
そこに向かって意を決して歩き出したティア。しかし、不意に不可思議な感覚に気付いた。
「うん?」
もう一度屋敷を見上げる。しかし、特に怪しい気配も、カランタの気配もない。気のせいかという事で済ませ、首を傾げながらもそのまま屋敷の中へ入った。
「あ、ティア。遅かったね」
一階の広い食堂へ行くと、アデルがそう言って手招いた。長いテーブルの上には、既に食事が用意されている。
その料理を見て、ティアは皿を運んでいたサクヤへ目を向けた。そう、今はカグヤ仕様ではなく、サクヤの姿で堂々と動き回っていたのだ。
「サクヤ姐さんが作ってくれたの?」
「そうよ。ここにいる間は、魔術の授業はほとんどないじゃない? だから、私とウルは、他の先生達のサポートなんだけど、そんなにやることはないのよね~」
魔術が安全に使える特殊な部屋や、武闘場などもないこの施設では、魔術の実践の授業はできない。
やれるのは座学のみ。それでも、他の授業よりもコマ数は減らされているのだ。
「だからといって、調理場に混ざっておられるのはどうかと……」
そう言って呆れ顔をするのは、ウルスヴァンだ。
「だって、食堂のお姉さんになってみたかったんだもの。昔は、王宮の調理場とかでも働いてたのよ?」
「え……」
サクヤの料理の腕は、そこで磨かれたものだったらしい。
「料理人って、イケメンが多かったのよね~」
「サクヤ姐さん……変な所でハンティングするの好きだよね……」
「ふふっ、あの頃は若かったわぁ。手に職を持った男ってイイのよね」
「そ、そうなんだ……一時期シスターにもなってたって聞いたけど……」
「あったわね。そんなことも」
「そっか……」
無駄に人生経験の多いサクヤだ。
食事は、何事もなく進められた。更に、部屋へ行っても、なんの追及もない。
これには、逆に気になって仕方がなかったりする。
内心落ち着かないティアだが、他の子ども達はもう寝る準備が万端だ。ルクス達も、ここでは警備の心配もないので、かなりリラックスした様子だった。
ベッドの上に座り、部屋を見回す。誰もティアへ何かを問い詰めようとする素振りは見せていない。一番気にしていそうなルクスさえも静かな様子なのだ。首を傾げずにはいられない。
一度落ち着こうと息を大きく吐き出し、体の力を抜いてベッドに転がった。少々気を張っていたからだろうか。そうすると、不意にまた何かを感じたのだ。
顔を顰めたティアは、寝転がったまま静かに感覚を研ぎ澄ます。
「っ⁉︎」
ハッとしたように飛び起きるティア。
その様子に、流石に皆が目を向ける。
「ティア? どうかしたの?」
アデルが驚いたように目を見開いてティアへ声をかけた。
ティアは返事をすることも忘れ、ベッドから飛び降り、部屋を見回す。
切迫したその様子に、サクヤが近寄ってきた。
「どうしたのよ」
そこで、サクヤならばわかるだろうと思ったティアは、口を開く。
「感じない?」
「へ? や、やだ。また私をからかおうっていうの?」
「違うっ! これは多分……結界……中途半端に発動してて気持ち悪いんだよ」
「結界? ……あっ……」
ティアは、自分が寝転がっていた時、自分の下に何かを強く感じたのだ。それを考えながら、もしかしてと思い、ベッドの下を覗き込んだ。
しかし、当然暗くて見えない。更に、隣のベッドの方からも力を感じたのだ。
そこで、ティアは一度立ち上がる。それから、顎に手をやって皆に言った。
「ちょっと皆ベッドから下りてくれる?」
その言葉で、皆が一斉にベッドから下りる。ティアからただならぬ気配を感じていた為だろう。
それらを確認したティアは、風の魔術で全てのベッドを浮かび上がらせた。
「あ、あったわっ。これ……連糸結界なんじゃ……」
そう、サクヤがベッドの裏に描かれていた魔法陣を見て呆然と呟いたのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
ルクス「大丈夫だ……きっとそのうち話してくれる……」
エル「ルクス師匠?」
ルクス「自然に……いつも通りに……その時を待つんだ……」
エル「……」
クロノス「どうかしましたか?」
エル「あ、あぁ、一体あれは何を?」
クロノス「あれ……ルクスの事ですか? 一種の精神統一だそうです」
エル「精神統一というより、暗示に見えるが……」
クロノス「ブレる意思を統一しているのです。まだ準備段階ですね」
エル「そ、そうなのか……」
クロノス「ご心配なさらず。ルクスは最近、とある所で秘密特訓をしているようですからね。精神も鍛えられると張り切っておりました」
エル「それは良かった。だが、あれは時間がかかりそうだな……」
クロノス「ええ。夕刻までには終わるかと」
エル「そこまでかかるのか……いや、ティアが戻るまでに何とか落ち着くといいな……」
ルクス「っ、ティアっ?……気のせいか……」
クロノス「今、この場であの方の名は口になさいませんように」
エル「あ、あぁ……よく分かった……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ルクス君は、平常心を取り戻そうとする修行中です。
カランタ君が探していたものに関係するのでしょうか。
結界なので、害はないはず。
サクヤ姐さんも警戒していなかったようですからね。
屋敷に隠された秘密があるのでしょうか。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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ティアは、その屋敷を改めて見上げ、深呼吸をする。
この合宿中、食事は、各自部屋で摂る事を勧められていた。
学園とは違い、広い学食や、全員が揃って食事を出来る部屋がないのだ。
ただし、初日の今日の昼食は、広い庭でシートを広げられ、ピクニック仕様の昼食会が開かれていた。
おかげで、ルクス達の追及をあれ以降受けることがなかったのだ。
「さてと……」
無意識に屋敷の中の気配を探れば、既にティア以外の全員が中に揃っていた。
集まっているのは、恐らく一階にあった屋敷の食堂だろう。
そこに向かって意を決して歩き出したティア。しかし、不意に不可思議な感覚に気付いた。
「うん?」
もう一度屋敷を見上げる。しかし、特に怪しい気配も、カランタの気配もない。気のせいかという事で済ませ、首を傾げながらもそのまま屋敷の中へ入った。
「あ、ティア。遅かったね」
一階の広い食堂へ行くと、アデルがそう言って手招いた。長いテーブルの上には、既に食事が用意されている。
その料理を見て、ティアは皿を運んでいたサクヤへ目を向けた。そう、今はカグヤ仕様ではなく、サクヤの姿で堂々と動き回っていたのだ。
「サクヤ姐さんが作ってくれたの?」
「そうよ。ここにいる間は、魔術の授業はほとんどないじゃない? だから、私とウルは、他の先生達のサポートなんだけど、そんなにやることはないのよね~」
魔術が安全に使える特殊な部屋や、武闘場などもないこの施設では、魔術の実践の授業はできない。
やれるのは座学のみ。それでも、他の授業よりもコマ数は減らされているのだ。
「だからといって、調理場に混ざっておられるのはどうかと……」
そう言って呆れ顔をするのは、ウルスヴァンだ。
「だって、食堂のお姉さんになってみたかったんだもの。昔は、王宮の調理場とかでも働いてたのよ?」
「え……」
サクヤの料理の腕は、そこで磨かれたものだったらしい。
「料理人って、イケメンが多かったのよね~」
「サクヤ姐さん……変な所でハンティングするの好きだよね……」
「ふふっ、あの頃は若かったわぁ。手に職を持った男ってイイのよね」
「そ、そうなんだ……一時期シスターにもなってたって聞いたけど……」
「あったわね。そんなことも」
「そっか……」
無駄に人生経験の多いサクヤだ。
食事は、何事もなく進められた。更に、部屋へ行っても、なんの追及もない。
これには、逆に気になって仕方がなかったりする。
内心落ち着かないティアだが、他の子ども達はもう寝る準備が万端だ。ルクス達も、ここでは警備の心配もないので、かなりリラックスした様子だった。
ベッドの上に座り、部屋を見回す。誰もティアへ何かを問い詰めようとする素振りは見せていない。一番気にしていそうなルクスさえも静かな様子なのだ。首を傾げずにはいられない。
一度落ち着こうと息を大きく吐き出し、体の力を抜いてベッドに転がった。少々気を張っていたからだろうか。そうすると、不意にまた何かを感じたのだ。
顔を顰めたティアは、寝転がったまま静かに感覚を研ぎ澄ます。
「っ⁉︎」
ハッとしたように飛び起きるティア。
その様子に、流石に皆が目を向ける。
「ティア? どうかしたの?」
アデルが驚いたように目を見開いてティアへ声をかけた。
ティアは返事をすることも忘れ、ベッドから飛び降り、部屋を見回す。
切迫したその様子に、サクヤが近寄ってきた。
「どうしたのよ」
そこで、サクヤならばわかるだろうと思ったティアは、口を開く。
「感じない?」
「へ? や、やだ。また私をからかおうっていうの?」
「違うっ! これは多分……結界……中途半端に発動してて気持ち悪いんだよ」
「結界? ……あっ……」
ティアは、自分が寝転がっていた時、自分の下に何かを強く感じたのだ。それを考えながら、もしかしてと思い、ベッドの下を覗き込んだ。
しかし、当然暗くて見えない。更に、隣のベッドの方からも力を感じたのだ。
そこで、ティアは一度立ち上がる。それから、顎に手をやって皆に言った。
「ちょっと皆ベッドから下りてくれる?」
その言葉で、皆が一斉にベッドから下りる。ティアからただならぬ気配を感じていた為だろう。
それらを確認したティアは、風の魔術で全てのベッドを浮かび上がらせた。
「あ、あったわっ。これ……連糸結界なんじゃ……」
そう、サクヤがベッドの裏に描かれていた魔法陣を見て呆然と呟いたのだった。
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舞台裏のお話。
ルクス「大丈夫だ……きっとそのうち話してくれる……」
エル「ルクス師匠?」
ルクス「自然に……いつも通りに……その時を待つんだ……」
エル「……」
クロノス「どうかしましたか?」
エル「あ、あぁ、一体あれは何を?」
クロノス「あれ……ルクスの事ですか? 一種の精神統一だそうです」
エル「精神統一というより、暗示に見えるが……」
クロノス「ブレる意思を統一しているのです。まだ準備段階ですね」
エル「そ、そうなのか……」
クロノス「ご心配なさらず。ルクスは最近、とある所で秘密特訓をしているようですからね。精神も鍛えられると張り切っておりました」
エル「それは良かった。だが、あれは時間がかかりそうだな……」
クロノス「ええ。夕刻までには終わるかと」
エル「そこまでかかるのか……いや、ティアが戻るまでに何とか落ち着くといいな……」
ルクス「っ、ティアっ?……気のせいか……」
クロノス「今、この場であの方の名は口になさいませんように」
エル「あ、あぁ……よく分かった……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ルクス君は、平常心を取り戻そうとする修行中です。
カランタ君が探していたものに関係するのでしょうか。
結界なので、害はないはず。
サクヤ姐さんも警戒していなかったようですからね。
屋敷に隠された秘密があるのでしょうか。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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