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383 面倒な材料ですが
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2016. 4. 5
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そこで眠っているのは、実際の年齢よりも遥かに年老いた様子の女性。
頬はこけ、唇もすぐに乾いてしまうようだ。肌に艶もなく、所々に黒に見える程の濃い緑の斑点があった。
それらを確認したシェリスは、夫人の手を取り、状態を更に確認する。目を止めたのは爪だ。
「これは……『幻惑の言の葉』……とも言えませんね……」
「では『幻遊唱歌』かい?だが、あれは確か、眠ったらおしまいだっただろう?」
「ええ。ですが『幻惑の言の葉』ならば、ここまで爪の色が変化しない筈なのです。時間が経っていたとしてもおかしい……それに……」
シェリスは更に目を近づけて見る。
「これは、もしや『幽玄の宴』……」
「なに? そんなもの、私でも聞いた事がないぞ?」
「でしょうね。私も古い記述でしか知りません。だいたい、この毒を作る為の花は、もうこの世にはないと言われています」
その花がないからこそ、作られなくなった毒であり、記述も殆どなくなっていたのだ。
「それじゃぁ、どうやってその毒を作ったっていうんだい?」
「……分かりませんね……それよりも問題なのは、解毒の為に必要な材料です」
これだけの年月が経っているが、万が一を考え『幻遊唱歌』 の解毒に必要な材料も全て持っている。『幻惑の言の葉』の材料も然り。
『幽玄の宴』の解毒に必要な材料はそれらとほぼ同じだが、ただ一つ、ないものがあった。
「それも今はないなんて言わないだろうね?」
「それは大丈夫です。ただ、この辺りで採取できる場所が分かりません。コウスセイランというのですが、深い森、泉の湧く水源の端。日の光と月の光が適度に当たる場所というのが条件なのです」
「……深層のお姫様を見つけるようなものだね……」
条件さえ整えば、そこに一年中咲き続ける。エルフの里では、このコウスセイラン専用の環境を整え、常に手に入れる事ができるようになっているらしい。
ただし、採取し、薬にするには更に条件があった。
「その上面倒な事に、コウスセイランを薬として使うには全ての属性の力が必要なのです……」
「なんだって?」
シェリスの話によれば、コウスセイランには二種類あり、白い花と黄色い花がある。この二つは根を共にしており、採る時には一緒に採らなくてはならない。
ただ、必ず隣り合って咲くので、見つけるのに苦労する事はない。
しかし、採取には闇と光の属性の魔力が必要となり、混ぜる薬には水と風の魔力を満たす。薬に混ぜるのはそれぞれの花の中にある実の部分。それを火と土の力で取り出さなくてはならないと言うのだ。
「更に言いますと……同時に使う魔力量は同じでなくてはなりません」
「……言いたくはないけれど……酷く面倒だね……」
「まだどこにあるかも分かっていませんしね」
「君、ちょっと自棄になってないかい?」
「やる気は失せてきました」
「……どうしようねぇ……」
どこに自生しているのかが分からない事には動きようもない。
その時、それまで静かに部屋の隅で何やら考え込んでいたクロノスが口を開いた。
「マスター。コウスセイランでしたか。その花『青丘の森』にあるはずです」
「……それをどこで?」
シェリスが思わぬ進言に驚きながらも尋ねた。
「はい。以前、ティア様が地の王に聞いたという話を覚えております」
「ティアが……」
「『青丘の森』は、このバレンから目と鼻の先です」
「そうだね。けど、もしそこになかったらどうする?環境の条件も厳しいんだ。万が一という事もある。他に聞いていないかい?」
薬を作るのにも苦労しそうだが、この育つ環境というのが問題だ。恐らく光の入り具合によっても変わってくる。
数ヶ月前は大丈夫でも、今は分からないだろう。
「もし、そこにないようでしたら、伯爵家に戻り、リジットさんに頼めば地の王に尋ねる事が出来ます」
「リジット……なるほど。それならば問題ないですね。カル。あなたは光の属性がありましたね」
「あぁ」
「「「えっ?」」」
このシェリスの言葉に、クロノスとアリシア、ベティが思わず驚きの声を上げた。
「おや、なんだい?」
「あ、いえ、魔王様ですし、カル様は闇の属性をお持ちなのではと、勝手に思っていたものですから……」
「いえいえ、魔王様であっても、納得しましたっ。煌めく光こそカル様に相応しいですっ」
「成る程。常に輝いておられますね」
三人は納得だと、カルツォーネを見つめた。
「『闇風の黒鬼』なんて二つ名があるくらいですから、闇のイメージを持ってもおかしくはありません」
「シェリーまで……私は闇属性は持っていないのだけどね」
ただ、どうにも魔王という勝手な世間のイメージでは闇属性が標準装備だったのだ。
「まったく、それで? 闇の属性はどうするんだい?」
「クロノス。あなたが持っていましたね」
「はい」
「「「えっ?」」」
「なにか?」
今度はカルツォーネが驚いていた。
「うそ……クロノス様は白の似合う騎士では……」
「で、でも、いつもティア様の影にお仕えするイメージですもんねっ」
「そうか……マクレートだから、光のイメージが強かったんだ。すまない」
こうして花の採取はクロノスとカルツォーネで行う事に決定した。
************************************************
舞台裏のお話。
アリシア「あぁ……カル様。やっぱりステキ」
ベティ「煌めきが違うよね」
アリシア「うん。でも、カル様の魅力はそれだけじゃない」
ベティ「そうだよね。だって、マスターと友人ってだけでポイント高いよ」
アリシア「それはある。あの曲者のマスターを、さりげなくサポートされているんだもんね」
ベティ「ティア様とはまた違ったアプローチの仕方で、マスターを真人間に見せてる……なんでも出来る人って、中々いないよね」
メイド長「あなた達、あの方のお名前はなんというの?」
アリシア「カルツォーネ様。カル様とお呼びしております」
メイドA「なんて凛々しいの……」
メイドB「爽やかだわ……」
メイド長「まるで王子……」
アリシア「違いますよ。あの方は王様です」
メイド達「「「わかるっ」」」
ベティ「ですよね~。あんな方に支配されてみたぁい」
メイド達「「「(コクコク!)」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
メイドの心も掴みました。
王との言葉に引っかかりを覚える事もありません。
カル姐さんについてきてもらって助かりました。
面倒な花もあったものです。
薬の材料ですからね。
色々と成分や薬効なんかの関係で必要なんでしょう。
カル姐さんの煌めきは、光属性ですね。
間違いありません。
採る時に、もう一つ重要な事がありました。
それの解決もカル姐さんがいれば大丈夫?
では次回、一日空けて7日です。
よろしくお願いします◎
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そこで眠っているのは、実際の年齢よりも遥かに年老いた様子の女性。
頬はこけ、唇もすぐに乾いてしまうようだ。肌に艶もなく、所々に黒に見える程の濃い緑の斑点があった。
それらを確認したシェリスは、夫人の手を取り、状態を更に確認する。目を止めたのは爪だ。
「これは……『幻惑の言の葉』……とも言えませんね……」
「では『幻遊唱歌』かい?だが、あれは確か、眠ったらおしまいだっただろう?」
「ええ。ですが『幻惑の言の葉』ならば、ここまで爪の色が変化しない筈なのです。時間が経っていたとしてもおかしい……それに……」
シェリスは更に目を近づけて見る。
「これは、もしや『幽玄の宴』……」
「なに? そんなもの、私でも聞いた事がないぞ?」
「でしょうね。私も古い記述でしか知りません。だいたい、この毒を作る為の花は、もうこの世にはないと言われています」
その花がないからこそ、作られなくなった毒であり、記述も殆どなくなっていたのだ。
「それじゃぁ、どうやってその毒を作ったっていうんだい?」
「……分かりませんね……それよりも問題なのは、解毒の為に必要な材料です」
これだけの年月が経っているが、万が一を考え『幻遊唱歌』 の解毒に必要な材料も全て持っている。『幻惑の言の葉』の材料も然り。
『幽玄の宴』の解毒に必要な材料はそれらとほぼ同じだが、ただ一つ、ないものがあった。
「それも今はないなんて言わないだろうね?」
「それは大丈夫です。ただ、この辺りで採取できる場所が分かりません。コウスセイランというのですが、深い森、泉の湧く水源の端。日の光と月の光が適度に当たる場所というのが条件なのです」
「……深層のお姫様を見つけるようなものだね……」
条件さえ整えば、そこに一年中咲き続ける。エルフの里では、このコウスセイラン専用の環境を整え、常に手に入れる事ができるようになっているらしい。
ただし、採取し、薬にするには更に条件があった。
「その上面倒な事に、コウスセイランを薬として使うには全ての属性の力が必要なのです……」
「なんだって?」
シェリスの話によれば、コウスセイランには二種類あり、白い花と黄色い花がある。この二つは根を共にしており、採る時には一緒に採らなくてはならない。
ただ、必ず隣り合って咲くので、見つけるのに苦労する事はない。
しかし、採取には闇と光の属性の魔力が必要となり、混ぜる薬には水と風の魔力を満たす。薬に混ぜるのはそれぞれの花の中にある実の部分。それを火と土の力で取り出さなくてはならないと言うのだ。
「更に言いますと……同時に使う魔力量は同じでなくてはなりません」
「……言いたくはないけれど……酷く面倒だね……」
「まだどこにあるかも分かっていませんしね」
「君、ちょっと自棄になってないかい?」
「やる気は失せてきました」
「……どうしようねぇ……」
どこに自生しているのかが分からない事には動きようもない。
その時、それまで静かに部屋の隅で何やら考え込んでいたクロノスが口を開いた。
「マスター。コウスセイランでしたか。その花『青丘の森』にあるはずです」
「……それをどこで?」
シェリスが思わぬ進言に驚きながらも尋ねた。
「はい。以前、ティア様が地の王に聞いたという話を覚えております」
「ティアが……」
「『青丘の森』は、このバレンから目と鼻の先です」
「そうだね。けど、もしそこになかったらどうする?環境の条件も厳しいんだ。万が一という事もある。他に聞いていないかい?」
薬を作るのにも苦労しそうだが、この育つ環境というのが問題だ。恐らく光の入り具合によっても変わってくる。
数ヶ月前は大丈夫でも、今は分からないだろう。
「もし、そこにないようでしたら、伯爵家に戻り、リジットさんに頼めば地の王に尋ねる事が出来ます」
「リジット……なるほど。それならば問題ないですね。カル。あなたは光の属性がありましたね」
「あぁ」
「「「えっ?」」」
このシェリスの言葉に、クロノスとアリシア、ベティが思わず驚きの声を上げた。
「おや、なんだい?」
「あ、いえ、魔王様ですし、カル様は闇の属性をお持ちなのではと、勝手に思っていたものですから……」
「いえいえ、魔王様であっても、納得しましたっ。煌めく光こそカル様に相応しいですっ」
「成る程。常に輝いておられますね」
三人は納得だと、カルツォーネを見つめた。
「『闇風の黒鬼』なんて二つ名があるくらいですから、闇のイメージを持ってもおかしくはありません」
「シェリーまで……私は闇属性は持っていないのだけどね」
ただ、どうにも魔王という勝手な世間のイメージでは闇属性が標準装備だったのだ。
「まったく、それで? 闇の属性はどうするんだい?」
「クロノス。あなたが持っていましたね」
「はい」
「「「えっ?」」」
「なにか?」
今度はカルツォーネが驚いていた。
「うそ……クロノス様は白の似合う騎士では……」
「で、でも、いつもティア様の影にお仕えするイメージですもんねっ」
「そうか……マクレートだから、光のイメージが強かったんだ。すまない」
こうして花の採取はクロノスとカルツォーネで行う事に決定した。
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舞台裏のお話。
アリシア「あぁ……カル様。やっぱりステキ」
ベティ「煌めきが違うよね」
アリシア「うん。でも、カル様の魅力はそれだけじゃない」
ベティ「そうだよね。だって、マスターと友人ってだけでポイント高いよ」
アリシア「それはある。あの曲者のマスターを、さりげなくサポートされているんだもんね」
ベティ「ティア様とはまた違ったアプローチの仕方で、マスターを真人間に見せてる……なんでも出来る人って、中々いないよね」
メイド長「あなた達、あの方のお名前はなんというの?」
アリシア「カルツォーネ様。カル様とお呼びしております」
メイドA「なんて凛々しいの……」
メイドB「爽やかだわ……」
メイド長「まるで王子……」
アリシア「違いますよ。あの方は王様です」
メイド達「「「わかるっ」」」
ベティ「ですよね~。あんな方に支配されてみたぁい」
メイド達「「「(コクコク!)」
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メイドの心も掴みました。
王との言葉に引っかかりを覚える事もありません。
カル姐さんについてきてもらって助かりました。
面倒な花もあったものです。
薬の材料ですからね。
色々と成分や薬効なんかの関係で必要なんでしょう。
カル姐さんの煌めきは、光属性ですね。
間違いありません。
採る時に、もう一つ重要な事がありました。
それの解決もカル姐さんがいれば大丈夫?
では次回、一日空けて7日です。
よろしくお願いします◎
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