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359 再会してしまったようです
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2016. 3. 3
********************************************
赤白の宮殿へと入ったティア達一行は、なんの問題もなく二階層のドワーフの店まで辿り着こうとしていた。
「スゴイ楽しいねっ」
「あぁ。数が多くて退屈もしないし、遺体が残らないから、素材を剥ぎ取る手間も省ける。それなのに妙にリアルで、手応えも感じる。不思議だな」
アデルとキルシュは、初めてのダンジョンに興奮しているようだ。
「分かっちゃいたが、また一段とあいつらは強くなったな」
「ティアの傍に常にいるんすから、影響とかモロに受けてるっぽいっすもん」
「おぉ、成る程な。その上、未だ伸び代もわからねぇお子様ときた。まったく、ちょっと見ない間に別人になるのな」
ゲイルとザランは、楽しそうに自信満々でティアと並んで先頭を歩くアデルとキルシュを感心しながら見つめていた。
その隣では、ベリアローズとエルヴァストが未だ殆ど実力を発揮できずにいる事にうずうずしていた。
「ティアが楽しめるわけだ。一人で突破は無理かもしれんが、私も突っ切ってみたい」
「それは分からなくもないな」
自分の実力を知る良い機会だと二人はその機会を伺っていた。
「こんな遊び場が近くにあるとは……」
「保護者も大変ねぇ。でもごめんなさい。学園で預かる身としては、本来なら止めるべきなのよね……」
「いえ、ティアを止めるなんて、元々、誰も出来っこないですから……」
「そうなのよね……」
保護者代表のルクスとサクヤの二人は、最後尾で頭を抱えていた。
「ティア様の自由を奪う事など許されません」
《マティも止めな~い》
ルクスとサクヤに並んで歩くシルとマティは止める気ゼロだった。
「あ、ほら、ここがお店だよ」
ティアが先頭で指をさした先、そこには、相変わらずダンジョンに似合わない可愛らしい小さな店があった。
しかし、その店には先客がいたようだ。
「うん?珍しいなぁ」
硝子張りの窓から見えたのは六人の冒険者。恐らくパーティなのだろう。全員、男だった。
「なんか揉めてねぇか?」
覗き見たゲイルが、その男たちの様子に面倒な事が起こっていそうだと、眉を寄せた。
その下から中を覗いたアデルは、はっとして言った。
「あ、あの人、ティアに腕を砕かれた人だよっ」
「え?……そうだっけ?」
「間違いないな。その脇に居るのも、確かあの時、ティアに倒れた男の処理を頼んだ人達だ」
「私が頼んだ?」
ティアの記憶の中からは、既に抹消されていた存在だったようだ。アデルとキルシュの指摘を受けても、思い出せないと首を傾げる。
「まぁ、いいや、中入ろう」
思い出す事も止めたティアは、中の様子など気にせずにドアを開けた。
カラカラと耳障りの良い鐘の音が響く。これによって振り向いた冒険者の男達が険しい表情でティアを見た。
「なんだ?今取り込みちゅ……」
男の一人がそう言って動きを止める。
「ダスバさんっ、出来てる?」
「……あぁ、出来ている」
営業用の姿なのだろう。ダスバは、体格が良く、中年に差し掛かろうとする年齢のドワーフの姿をしていた。
話し方もオドオドとした感じではなく、口数少なげな要件だけを告げる人付き合いの苦手なドワーフのそれだ。
「おい、俺らの用件がまだだろうっ」
「ガキのお使いなんて後にしやがれっ」
「俺らがどんだけ苦労してここまで来たと思ってやがるっ」
そんな言葉が男達の口から飛び出すが、ティアは聞かなかったふりで通していた。
そのまま彼らの姿さえ視界に入っていないというようにスタスタとカウンターへ向かい、ダスバへ目を合わせる。
「急がせちゃってごめんね。あ、アデル、シルさん、こっち来て」
「なぁに?」
「はい……?」
アデルとシルを呼んだティアは、ダスバへ紹介する。
「この二人が今回頼んだ物の持ち主になるから、見極めよろしく」
「そうか。今持ってくる」
そうしてダスバが一旦奥へと引っ込む。
そこで再び男達が口を開いた。
「おいっ、ふざけんなよっ!」
「俺らの方が先だろうが!!」
「ガキはすっこんでろっ」
先ほどから怒っているのは六人のうちの三人だけだ。
ティアは、何も言ってこない残りの三人を評価した。そうしてその三人を確認しようとようやく目を向けたのだが、当の三人は真っ青になって固まっていたのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
パールファンム《まったく、ウザい冒険者達よね。ティアちゃんが来てくれて助かったわね》
ダスバ「うん……あの人達、こ、コワイ……」
パールファンム《ただのチンピラにしか見えないわ》
ダスバ「ねぇ、何か……あっちの人達、ティアさんを見て固まってない?」
パールファンム《本当ね?どうしたのかしら?》
ダスバ「知り合いなのかな?」
パールファンム《う~ん……怯えてる?》
ダスバ「なにかあったとか?」
パールファンム《あり得るわね。あれだけ失礼な物言いだもの。ティアちゃんの地雷を踏んでてもおかしくないわ》
ダスバ「成る程……」
パールファンム《少し様子を見た方が良さそうね》
ダスバ「そ、そうだね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ちょっと避難してます。
子ども達は、ゲーム感覚なのでしょうね。
ダンジョンを楽しめそうです。
やられた方は覚えていたのでしょう。
いつだったかギルドで絡んで来た冒険者との再会です。
声も出ない様子。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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赤白の宮殿へと入ったティア達一行は、なんの問題もなく二階層のドワーフの店まで辿り着こうとしていた。
「スゴイ楽しいねっ」
「あぁ。数が多くて退屈もしないし、遺体が残らないから、素材を剥ぎ取る手間も省ける。それなのに妙にリアルで、手応えも感じる。不思議だな」
アデルとキルシュは、初めてのダンジョンに興奮しているようだ。
「分かっちゃいたが、また一段とあいつらは強くなったな」
「ティアの傍に常にいるんすから、影響とかモロに受けてるっぽいっすもん」
「おぉ、成る程な。その上、未だ伸び代もわからねぇお子様ときた。まったく、ちょっと見ない間に別人になるのな」
ゲイルとザランは、楽しそうに自信満々でティアと並んで先頭を歩くアデルとキルシュを感心しながら見つめていた。
その隣では、ベリアローズとエルヴァストが未だ殆ど実力を発揮できずにいる事にうずうずしていた。
「ティアが楽しめるわけだ。一人で突破は無理かもしれんが、私も突っ切ってみたい」
「それは分からなくもないな」
自分の実力を知る良い機会だと二人はその機会を伺っていた。
「こんな遊び場が近くにあるとは……」
「保護者も大変ねぇ。でもごめんなさい。学園で預かる身としては、本来なら止めるべきなのよね……」
「いえ、ティアを止めるなんて、元々、誰も出来っこないですから……」
「そうなのよね……」
保護者代表のルクスとサクヤの二人は、最後尾で頭を抱えていた。
「ティア様の自由を奪う事など許されません」
《マティも止めな~い》
ルクスとサクヤに並んで歩くシルとマティは止める気ゼロだった。
「あ、ほら、ここがお店だよ」
ティアが先頭で指をさした先、そこには、相変わらずダンジョンに似合わない可愛らしい小さな店があった。
しかし、その店には先客がいたようだ。
「うん?珍しいなぁ」
硝子張りの窓から見えたのは六人の冒険者。恐らくパーティなのだろう。全員、男だった。
「なんか揉めてねぇか?」
覗き見たゲイルが、その男たちの様子に面倒な事が起こっていそうだと、眉を寄せた。
その下から中を覗いたアデルは、はっとして言った。
「あ、あの人、ティアに腕を砕かれた人だよっ」
「え?……そうだっけ?」
「間違いないな。その脇に居るのも、確かあの時、ティアに倒れた男の処理を頼んだ人達だ」
「私が頼んだ?」
ティアの記憶の中からは、既に抹消されていた存在だったようだ。アデルとキルシュの指摘を受けても、思い出せないと首を傾げる。
「まぁ、いいや、中入ろう」
思い出す事も止めたティアは、中の様子など気にせずにドアを開けた。
カラカラと耳障りの良い鐘の音が響く。これによって振り向いた冒険者の男達が険しい表情でティアを見た。
「なんだ?今取り込みちゅ……」
男の一人がそう言って動きを止める。
「ダスバさんっ、出来てる?」
「……あぁ、出来ている」
営業用の姿なのだろう。ダスバは、体格が良く、中年に差し掛かろうとする年齢のドワーフの姿をしていた。
話し方もオドオドとした感じではなく、口数少なげな要件だけを告げる人付き合いの苦手なドワーフのそれだ。
「おい、俺らの用件がまだだろうっ」
「ガキのお使いなんて後にしやがれっ」
「俺らがどんだけ苦労してここまで来たと思ってやがるっ」
そんな言葉が男達の口から飛び出すが、ティアは聞かなかったふりで通していた。
そのまま彼らの姿さえ視界に入っていないというようにスタスタとカウンターへ向かい、ダスバへ目を合わせる。
「急がせちゃってごめんね。あ、アデル、シルさん、こっち来て」
「なぁに?」
「はい……?」
アデルとシルを呼んだティアは、ダスバへ紹介する。
「この二人が今回頼んだ物の持ち主になるから、見極めよろしく」
「そうか。今持ってくる」
そうしてダスバが一旦奥へと引っ込む。
そこで再び男達が口を開いた。
「おいっ、ふざけんなよっ!」
「俺らの方が先だろうが!!」
「ガキはすっこんでろっ」
先ほどから怒っているのは六人のうちの三人だけだ。
ティアは、何も言ってこない残りの三人を評価した。そうしてその三人を確認しようとようやく目を向けたのだが、当の三人は真っ青になって固まっていたのだった。
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舞台裏のお話。
パールファンム《まったく、ウザい冒険者達よね。ティアちゃんが来てくれて助かったわね》
ダスバ「うん……あの人達、こ、コワイ……」
パールファンム《ただのチンピラにしか見えないわ》
ダスバ「ねぇ、何か……あっちの人達、ティアさんを見て固まってない?」
パールファンム《本当ね?どうしたのかしら?》
ダスバ「知り合いなのかな?」
パールファンム《う~ん……怯えてる?》
ダスバ「なにかあったとか?」
パールファンム《あり得るわね。あれだけ失礼な物言いだもの。ティアちゃんの地雷を踏んでてもおかしくないわ》
ダスバ「成る程……」
パールファンム《少し様子を見た方が良さそうね》
ダスバ「そ、そうだね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ちょっと避難してます。
子ども達は、ゲーム感覚なのでしょうね。
ダンジョンを楽しめそうです。
やられた方は覚えていたのでしょう。
いつだったかギルドで絡んで来た冒険者との再会です。
声も出ない様子。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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