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300 過去編 15 クィーグ部隊
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2015. 12. 11
300回達成!
辿り着いてしまいました。
なんとかですが。
良いんです。
一話ずつが短いのはそれもありです!
続ける事に意味がある!
これで行きましょう。
これからもよろしくお願いいたします◎
********************************************
盗賊団の宝物庫。
そこには、大量に貯め込んだ財宝が雑多に置かれていた。
「おぉ……歴史を感じるねぇ」
宝物庫の中に入り、部屋を見回したサティアが発した第一声がこれだ。その量は、この盗賊団が長く生き延びてきた証拠だった。
「管理はズサン過ぎだけどね……」
本当に雑多に置かれている様子に、分類ごとに分けるぐらいしろよと言いたくなったサティアだ。
「見張りは一人だったし……もうこれは、お好きにどうぞって言ってるね。うんっ。お好きにさせてもらいますっ」
そうサティアは一人で何度も頷き、無理やり状況に納得する。
「さぁってと、探すぞぉ!」
幾つも並ぶ財宝の山の中に、先ほどから嫌な気配をヒシヒシと感じていた。それも一つや二つではない。だが、その内の一つがサクヤが取り戻して欲しいと言っていたナイフの筈だ。
「呪いのナイフとか……ちょっとトキメクんですけどぉっ」
サティアは、期待に胸を膨らませていた。実際に呪いのナイフなどというものを見た事はない。好奇心旺盛なサティアにとっては、それが恐ろしい物であるという印象がなかった。
「ふっ、ふふ~んっ。あ、これは違うね。結構ヤバそうな鏡だなぁ……ノゾキ見禁止ってやつだね」
好奇心は旺盛だが、マティアスに鍛えられた危機回避能力は高く、本当にヤバイものには手を出さないサティアだ。
そうこうしている内に、目的としていたナイフではなく、サティアの方の探し物を先に見つける事ができた。
「あったっ。うんうん。これで間違いないね」
何度も目にしていたアスハの笛。だが、サティアは咄嗟にそれに伸ばそうとした手を止めた。
「なんで……?」
見た目は確かにアスハの持っていた笛だ。それは間違いないと思う。だが、その笛から発せられている力の様なものが、いつもとは違ったのだ。
サティアの中の何かが、触れるべきではないと囁いていた。その時だった。
「誰?」
「はっ、失礼いたします。サティア様」
「っ……え~っと……確かシルさん?」
「はい。覚えていてくださったとは……」
「うん?だって、シルさん。私の担当みたいだったから」
「……そういうわけではないのですが……」
突然、その姿を現したのは、クィーグ部隊の三番手のシルと呼ばれる人物だった。
「あ、今度会ったら聞こうと思ってたの。名前教えてよ。シルって、古代語の三って意味でしょ?」
サティアは、姿が見えないながらも、いつも見守ってくれているクィーグ部隊の気配に気付いていた。
このクィーグ部隊を知っているのは、王族、一部の近衛、大臣のみ。ただし、彼らに命令が出来るのは王族だけだ。
バトラール王家を守り、常に影に控えるクィーグ部隊は十人。彼らは全員、実力順に番号で呼び合うのが慣わしだった。
「サティア様。我らに名はありません。どうぞ、シルとお呼びください」
「え~……なんかヤダ」
「……」
嫌だと言われても、シルにどうにかできるものでもない。黒い布で隠された表情は窺い知る事は出来ないが、唯一見えるその瞳には、少々の困惑の色が浮かんでいた。
「う~ん……うん。今度までに何か考えとくね」
「……御心のままに……」
彼ら必殺の答えにくい時の常套句にも、サティアは気にする事なく満足気に頷いていた。
「それで、どうしたの?シルさんが出てくるなんて……っまさか、絶体絶命のピンチが近いっ⁉︎ 任せてっ!心の準備も戦闘準備ももうできるからっ」
「いえ、そうではなく……いつもの棍棒はどうなさったのですか?今どこから……その凶悪な物はなんでしょうか……」
「うん?コレ?いいでしょぉ」
様々な武器に精通するクィーグ部隊。その三番手ともなるシルでさえ、ティアが自慢気に見せるソレは見たことがなかった。
サティアがどこからともなく取り出し、左手にはめたのは、銀に煌めく指輪。
普通の指輪と違うのは、掌の三分の一程の大きさの比較的厚みのある鉄の板であること。それに、でこぼこと波打つ形。そして、親指を除く四本の指がそれぞれ入るように開けられた穴。
サティアの小さな手指にピッタリとはまり、握り込むと指に添って一直線に綺麗な波打つ銀の突起が出来ていた。
「これねっ、母様が指輪をした手で盗賊を殴った時、ものすっごく痛そうな武器になってたのを見て思い付いたのっ。これだと、かさばらないし、オシャレだと思えばドレスを着た時も持ってられるかなって」
「……」
サティアは失敗を反省し、次に生かせる子だと評判だ。だが、時に大幅にズレた対応策を打ち出してしまう。
前回の失敗は、舞踏会を抜け出し、姉を誘拐した犯人を武器も持たずに追った事だった。
「これで、もうアリアに怒られないよね」
ドレスを着た状態でも仕込める武器の考案。それを達成できたとサティアは得意気に胸を張った。
ここで、それを着けたままで舞踏会に出るのはおかしいのではないかと指摘しないのは、本来、余計な口出しは無用だとするクィーグの在り方だ。
ただし、今回はサティアが考えて出した答えを否定して傷付けるのを恐れたという心情もあった。だから、そんな想いを隠す為、口にしたのは別の事だ。
「……一つ、確認させていただいてもよろしいでしょうか……」
「なに?」
その凶悪な形や、サティアの話から使用法を予想していたシルは、布で隠れ、普段から殆ど使うことのない頬の筋肉が、少々痙攣するのを止められなかった。
「……どう使うのですか?」
「うん?どうって……こう、抉るんだよ。これはしっかりホネまでいくね。殴る場所は慎重に選ばないと服が汚れちゃうかも」
「……因みに、その武器の名をお聞きしても?」
「拳鍔って言ってた。ほら、剣にもあるじゃん。これをコブシに付けたみたいだからとかなんとか」
「……なんて物をこの方に……っ」
シルは、これを嬉々としてサティアと発明し、与えたであろうダグストールを恨んだ。
「はっ、それで、実験台はどこっ?」
「……残念ながら、この近くには現在、外で倒れている見張りの一人しかおりません」
「なんで? シルさん。祭りの予告に来たんじゃないの?」
「何のですか……」
乱闘になる。それすなわち祭りと認識している時点で、サティアがかなり危険な思想に染まっている事が確認できた。
「じゃぁ、なんで来たの?」
新しい武器が試せると期待していたサティアは、不満そうに口を尖らせる。
「その笛ですが、持ち主から引き離されて時間が経った為に、力が溢れてしまっているのです。こちらで対策を練り、回収致しますので、お触れになりませんようにお願いに参りました」
「へぇ~……うん。何か触んない方が良いのは分かった。早く何か考えてね」
「はい。では、くれぐれもよろしくお願い致します。私は至急報告に行って参りますので」
「オッケー。その内にもう一個の方を探しとく」
「はい。では暫し、失礼いたします」
「ほいほ~い」
シルがふっとその姿を消した時には、既にサティアはナイフを探しに掛かっていたのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
サクヤ「あらぁん。何か来たわね……ずっと着けてた人ね……サティアちゃんの護衛かしらん?」
カル「サク姐。もう少し加減をしてもらわないと困るのだけど」
サクヤ「カル。どう?中の方は」
カル「サティアなら上手くやるだろうけど、サク姐があまり暴れ過ぎると、アジトごと吹っ飛んでしまうよ」
サクヤ「やだぁ。ちゃんと手加減してるわよ」
カル「……けど、入り口が一つなくなったよ?」
サクヤ「……っわ、わざとよっ。計算よっ。逃げ道を断つっていうねっ」
カル「それなら良いのだけれど……彼が戸惑っていたよ」
サクヤ「あ、さっき入って行ったサティアの護衛の彼?」
カル「恐らく、サティアの為に脱出経路の安全を確認したんだろうね」
サクヤ「いやんっ、デキる男なのねっ」
カル「ふふっ、あの一族の者だからね」
サクヤ「あの? あぁっ、あのっ?」
カル「ん?出てきたね」
サクヤ「え~、お話したかったわぁ」
カル「まったくサク姐は……ん?」
サクヤ「あら?これって……」
カル「……間違いないね」
サクヤ「どうしたのかしら。私は嬉しいけどっ」
カル「何だかきな臭いね……」
サクヤ「それは……そうね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
まだ若いサクヤ姐さん。
落ち着きはありません。
そして、やってくるその気配は……。
300回記念として、子どもで無邪気だったティアちゃんを思い出してみました。
今とあまり変わらない……ような気がするのは気のせいだと思いたいですっ。
クィーグ部隊について、この後のお話でようやく関わってきます。
今現在、とても身近にいるあの一族だったりします。
この続きはまた。
忘れない内にちゃんと繋げますのでお待ちください。
では次回、一日空けて13日です。
よろしくお願いします◎
300回達成!
辿り着いてしまいました。
なんとかですが。
良いんです。
一話ずつが短いのはそれもありです!
続ける事に意味がある!
これで行きましょう。
これからもよろしくお願いいたします◎
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盗賊団の宝物庫。
そこには、大量に貯め込んだ財宝が雑多に置かれていた。
「おぉ……歴史を感じるねぇ」
宝物庫の中に入り、部屋を見回したサティアが発した第一声がこれだ。その量は、この盗賊団が長く生き延びてきた証拠だった。
「管理はズサン過ぎだけどね……」
本当に雑多に置かれている様子に、分類ごとに分けるぐらいしろよと言いたくなったサティアだ。
「見張りは一人だったし……もうこれは、お好きにどうぞって言ってるね。うんっ。お好きにさせてもらいますっ」
そうサティアは一人で何度も頷き、無理やり状況に納得する。
「さぁってと、探すぞぉ!」
幾つも並ぶ財宝の山の中に、先ほどから嫌な気配をヒシヒシと感じていた。それも一つや二つではない。だが、その内の一つがサクヤが取り戻して欲しいと言っていたナイフの筈だ。
「呪いのナイフとか……ちょっとトキメクんですけどぉっ」
サティアは、期待に胸を膨らませていた。実際に呪いのナイフなどというものを見た事はない。好奇心旺盛なサティアにとっては、それが恐ろしい物であるという印象がなかった。
「ふっ、ふふ~んっ。あ、これは違うね。結構ヤバそうな鏡だなぁ……ノゾキ見禁止ってやつだね」
好奇心は旺盛だが、マティアスに鍛えられた危機回避能力は高く、本当にヤバイものには手を出さないサティアだ。
そうこうしている内に、目的としていたナイフではなく、サティアの方の探し物を先に見つける事ができた。
「あったっ。うんうん。これで間違いないね」
何度も目にしていたアスハの笛。だが、サティアは咄嗟にそれに伸ばそうとした手を止めた。
「なんで……?」
見た目は確かにアスハの持っていた笛だ。それは間違いないと思う。だが、その笛から発せられている力の様なものが、いつもとは違ったのだ。
サティアの中の何かが、触れるべきではないと囁いていた。その時だった。
「誰?」
「はっ、失礼いたします。サティア様」
「っ……え~っと……確かシルさん?」
「はい。覚えていてくださったとは……」
「うん?だって、シルさん。私の担当みたいだったから」
「……そういうわけではないのですが……」
突然、その姿を現したのは、クィーグ部隊の三番手のシルと呼ばれる人物だった。
「あ、今度会ったら聞こうと思ってたの。名前教えてよ。シルって、古代語の三って意味でしょ?」
サティアは、姿が見えないながらも、いつも見守ってくれているクィーグ部隊の気配に気付いていた。
このクィーグ部隊を知っているのは、王族、一部の近衛、大臣のみ。ただし、彼らに命令が出来るのは王族だけだ。
バトラール王家を守り、常に影に控えるクィーグ部隊は十人。彼らは全員、実力順に番号で呼び合うのが慣わしだった。
「サティア様。我らに名はありません。どうぞ、シルとお呼びください」
「え~……なんかヤダ」
「……」
嫌だと言われても、シルにどうにかできるものでもない。黒い布で隠された表情は窺い知る事は出来ないが、唯一見えるその瞳には、少々の困惑の色が浮かんでいた。
「う~ん……うん。今度までに何か考えとくね」
「……御心のままに……」
彼ら必殺の答えにくい時の常套句にも、サティアは気にする事なく満足気に頷いていた。
「それで、どうしたの?シルさんが出てくるなんて……っまさか、絶体絶命のピンチが近いっ⁉︎ 任せてっ!心の準備も戦闘準備ももうできるからっ」
「いえ、そうではなく……いつもの棍棒はどうなさったのですか?今どこから……その凶悪な物はなんでしょうか……」
「うん?コレ?いいでしょぉ」
様々な武器に精通するクィーグ部隊。その三番手ともなるシルでさえ、ティアが自慢気に見せるソレは見たことがなかった。
サティアがどこからともなく取り出し、左手にはめたのは、銀に煌めく指輪。
普通の指輪と違うのは、掌の三分の一程の大きさの比較的厚みのある鉄の板であること。それに、でこぼこと波打つ形。そして、親指を除く四本の指がそれぞれ入るように開けられた穴。
サティアの小さな手指にピッタリとはまり、握り込むと指に添って一直線に綺麗な波打つ銀の突起が出来ていた。
「これねっ、母様が指輪をした手で盗賊を殴った時、ものすっごく痛そうな武器になってたのを見て思い付いたのっ。これだと、かさばらないし、オシャレだと思えばドレスを着た時も持ってられるかなって」
「……」
サティアは失敗を反省し、次に生かせる子だと評判だ。だが、時に大幅にズレた対応策を打ち出してしまう。
前回の失敗は、舞踏会を抜け出し、姉を誘拐した犯人を武器も持たずに追った事だった。
「これで、もうアリアに怒られないよね」
ドレスを着た状態でも仕込める武器の考案。それを達成できたとサティアは得意気に胸を張った。
ここで、それを着けたままで舞踏会に出るのはおかしいのではないかと指摘しないのは、本来、余計な口出しは無用だとするクィーグの在り方だ。
ただし、今回はサティアが考えて出した答えを否定して傷付けるのを恐れたという心情もあった。だから、そんな想いを隠す為、口にしたのは別の事だ。
「……一つ、確認させていただいてもよろしいでしょうか……」
「なに?」
その凶悪な形や、サティアの話から使用法を予想していたシルは、布で隠れ、普段から殆ど使うことのない頬の筋肉が、少々痙攣するのを止められなかった。
「……どう使うのですか?」
「うん?どうって……こう、抉るんだよ。これはしっかりホネまでいくね。殴る場所は慎重に選ばないと服が汚れちゃうかも」
「……因みに、その武器の名をお聞きしても?」
「拳鍔って言ってた。ほら、剣にもあるじゃん。これをコブシに付けたみたいだからとかなんとか」
「……なんて物をこの方に……っ」
シルは、これを嬉々としてサティアと発明し、与えたであろうダグストールを恨んだ。
「はっ、それで、実験台はどこっ?」
「……残念ながら、この近くには現在、外で倒れている見張りの一人しかおりません」
「なんで? シルさん。祭りの予告に来たんじゃないの?」
「何のですか……」
乱闘になる。それすなわち祭りと認識している時点で、サティアがかなり危険な思想に染まっている事が確認できた。
「じゃぁ、なんで来たの?」
新しい武器が試せると期待していたサティアは、不満そうに口を尖らせる。
「その笛ですが、持ち主から引き離されて時間が経った為に、力が溢れてしまっているのです。こちらで対策を練り、回収致しますので、お触れになりませんようにお願いに参りました」
「へぇ~……うん。何か触んない方が良いのは分かった。早く何か考えてね」
「はい。では、くれぐれもよろしくお願い致します。私は至急報告に行って参りますので」
「オッケー。その内にもう一個の方を探しとく」
「はい。では暫し、失礼いたします」
「ほいほ~い」
シルがふっとその姿を消した時には、既にサティアはナイフを探しに掛かっていたのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
サクヤ「あらぁん。何か来たわね……ずっと着けてた人ね……サティアちゃんの護衛かしらん?」
カル「サク姐。もう少し加減をしてもらわないと困るのだけど」
サクヤ「カル。どう?中の方は」
カル「サティアなら上手くやるだろうけど、サク姐があまり暴れ過ぎると、アジトごと吹っ飛んでしまうよ」
サクヤ「やだぁ。ちゃんと手加減してるわよ」
カル「……けど、入り口が一つなくなったよ?」
サクヤ「……っわ、わざとよっ。計算よっ。逃げ道を断つっていうねっ」
カル「それなら良いのだけれど……彼が戸惑っていたよ」
サクヤ「あ、さっき入って行ったサティアの護衛の彼?」
カル「恐らく、サティアの為に脱出経路の安全を確認したんだろうね」
サクヤ「いやんっ、デキる男なのねっ」
カル「ふふっ、あの一族の者だからね」
サクヤ「あの? あぁっ、あのっ?」
カル「ん?出てきたね」
サクヤ「え~、お話したかったわぁ」
カル「まったくサク姐は……ん?」
サクヤ「あら?これって……」
カル「……間違いないね」
サクヤ「どうしたのかしら。私は嬉しいけどっ」
カル「何だかきな臭いね……」
サクヤ「それは……そうね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
まだ若いサクヤ姐さん。
落ち着きはありません。
そして、やってくるその気配は……。
300回記念として、子どもで無邪気だったティアちゃんを思い出してみました。
今とあまり変わらない……ような気がするのは気のせいだと思いたいですっ。
クィーグ部隊について、この後のお話でようやく関わってきます。
今現在、とても身近にいるあの一族だったりします。
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よろしくお願いします◎
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