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296 底上げしときたいです
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2015. 12. 6
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ダンジョン。
それは、一般的に古代の遺跡と言い換えられる事が多い。
特殊な環境の広大な洞窟や地下世界。その中には、うち捨てられた財宝が眠り、それらを守るように特に強力な魔物や魔獣が棲みついている。
更には古代人達が仕掛けた罠もいたる所に配置されており、その全てを把握できた者はいない。
「ダンジョンって……ティア……何をする気だ?」
ティアに、そんなダンジョンへ後日行ってくるように予告されているルクスは、いつものティアの企みに対しての嫌な予感とも合間って、その言葉に過敏に反応した。
「この辺でダンジョンって言ったら、山三つ向こうの『赤白の宮殿』かい?そこに騎士様を連れていくとか?」
クレアが、先日パーティで訪れたダンジョンを思い出しながら顔を歪ませた。
「あはは。あそこは無理だよ。だって母さっ……お、お母様にも負けそうな騎士さん達が行けるわけないじゃんねぇ」
「シアンちゃんにも負けるって……え?シアンちゃんが強いのかい?」
「うん……ゲイルパパもたじたじって感じ……」
「それは……どうなっちまったんだろうねぇ……」
「ウン……モンダイダヨネ~……」
咄嗟に言い直したのだが、おかしな方へ話がソレてしまった事に冷や汗を流すティアだ。
アブナっ。普通に母様の話をする所だったっ。
実は、この『赤白の宮殿』と呼ばれるダンジョンは、マティアスやシェリスがかつて組んでいた豪嵐のメンバーで創り上げたダンジョンなのだ。
そう、ダンジョンは創る事が出来る。もちろん、誰もが創れるわけではない。何より、一から創る事はさすがに不可能だ。元となるダンジョンを創り変える事が出来るという意味だった。
まぁ、あそこは騎士とか暗部の訓練場にしてたんだけどね……。
当時も全階層を攻略出来る者がおらず、難攻不落の最高難易度を誇るダンジョンとして有名だった。
「実際問題さぁ、今の騎士様達の実力ってどうなんだろうね?」
女達が何かを思い出しながらそう話す。
「Dランクの魔獣にも手を焼いてたって聞いた事あるもんね」
「しょせん、貴族の坊ちゃん達だしね。実力的にはギリDランク?」
「そうなると、あそこの一階層もやっぱ無理だね。最初の通路のビックラットで逃げ出すと見た」
女達は、ダンジョンでの事を思い出して予想する。
「私らでも二階層のお店に行くだけでギリギリだったもんね」
クレアが所属するパーティのランクはA。国内でもAランクのパーティは現在、五つしかない。その一つであるメンバーが全員女。それも、平均年齢五十六という珍しいパーティだ。
その名は『花風』。
この国でも屈指の実力を持つ。そんなパーティでさえも、全二十階層あると言われているダンジョンの二階層までしか辿り着けないのだ。その難易度がよく分かる。
だが、ティアはそれよりも気になる事があった。
「お店って……ドワーフの?」
「おや。さすがはティアちゃん。よく知ってるねぇ」
「うん……まぁね……」
少々歯切れが悪くなっている理由は、店のある階層が、記憶とは違うからだ。
五階層だった筈だけど……。
何らかの理由で二階層まで上がって来たのかもしれない。
『赤白の宮殿』は地下ダンジョンだ。入ってすぐが一階層。その下へと二階層、三階層と延びている。
その中に、ドワーフの鍛冶屋がある。国外にある数少ない店だ。
確か、最初は十階層に創ったのに、あまりにも誰も到達しないから、五階層に上げたんだよね……。
その後、恐らく、更に挑戦者が減り、二階層まで上がって来たのだろう。そこでなんとか冒険者相手に商売が出来る。だがそれは、冒険者達でさえも力が落ちているという事に他ならない。
やっぱ、ここは底上げしとかないとね。
ティアは、騎士だけでなく、あわよくば冒険者達の力も上げようと、密かに決意したのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
ゼノスバート「フィスターク。そろそろ本気で考えるべきだ」
リジット「本日で、通算千回目の修繕作業となりました……」
ユメル「因みに、壁へ穴を空けるより、地面やお屋敷の床に穴を空けるのが、現在のブームだそうです」
カヤル「植樹の折、穴掘りとして役に立った事が嬉しかったそうです」
フィスターク「元気なのは良いことだよね……」
ゼノスバート「現実を見ろっ」
リジット「……このまま放置すれば、近い将来、お屋敷が沈みます……」
フィスターク「……し、シアンを怒る……出来るだろうか……」
ゼノスバート「やるしかない。お前は夫として、嫌われても妻の暴走を止める義務がある」
フィスターク「嫌われてしまうかも……」
ゼノスバート「それでもやるんだっ」
フィスターク「……」
クロノス「失礼いたします。ただいま戻りました」
ユ・カ「「兄さんっ」」
リジット「おや。あちらは……ゲイルさんが残るのですか?」
クロノス「はい。ティア様がそう判断なさる筈です」
ゼノスバート「……そうか……」
クロノス「それで、お揃いでどうかなさいましたか?」
ゼノスバート「あ、あぁ、シアンをフィスタークに叱るように言っているんだが……」
フィスターク「……私だけでは……」
リジット「しっかりなさいませ。旦那様でなくて、誰が止められるのですか」
フィスターク「う……うん……そうだね」
クロノス「旦那様。サポート役でしたら……」
フィスターク「え?君がいてくれるのかいっ?」
クロノス「いえ、私ではなく……そうですね……夕刻までお待ちください」
フィスターク「へ?」
クロノス「ティア様が動かれます」
ユ・カ「「へ?」」
リジット「はい?」
ゼノスバート「ティア?」
クロノス「はい。お待ちください」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
クロちゃんは、何かを感じています。
ダンジョン……マティアスままが手掛けたダンジョン……。
恐ろしい!!
どんな地獄でしょう!
リアル血の池とかありそうで怖いですっ。
ティアちゃんは、騎士だけでなく、冒険者達までも犠牲にする気のようです。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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ダンジョン。
それは、一般的に古代の遺跡と言い換えられる事が多い。
特殊な環境の広大な洞窟や地下世界。その中には、うち捨てられた財宝が眠り、それらを守るように特に強力な魔物や魔獣が棲みついている。
更には古代人達が仕掛けた罠もいたる所に配置されており、その全てを把握できた者はいない。
「ダンジョンって……ティア……何をする気だ?」
ティアに、そんなダンジョンへ後日行ってくるように予告されているルクスは、いつものティアの企みに対しての嫌な予感とも合間って、その言葉に過敏に反応した。
「この辺でダンジョンって言ったら、山三つ向こうの『赤白の宮殿』かい?そこに騎士様を連れていくとか?」
クレアが、先日パーティで訪れたダンジョンを思い出しながら顔を歪ませた。
「あはは。あそこは無理だよ。だって母さっ……お、お母様にも負けそうな騎士さん達が行けるわけないじゃんねぇ」
「シアンちゃんにも負けるって……え?シアンちゃんが強いのかい?」
「うん……ゲイルパパもたじたじって感じ……」
「それは……どうなっちまったんだろうねぇ……」
「ウン……モンダイダヨネ~……」
咄嗟に言い直したのだが、おかしな方へ話がソレてしまった事に冷や汗を流すティアだ。
アブナっ。普通に母様の話をする所だったっ。
実は、この『赤白の宮殿』と呼ばれるダンジョンは、マティアスやシェリスがかつて組んでいた豪嵐のメンバーで創り上げたダンジョンなのだ。
そう、ダンジョンは創る事が出来る。もちろん、誰もが創れるわけではない。何より、一から創る事はさすがに不可能だ。元となるダンジョンを創り変える事が出来るという意味だった。
まぁ、あそこは騎士とか暗部の訓練場にしてたんだけどね……。
当時も全階層を攻略出来る者がおらず、難攻不落の最高難易度を誇るダンジョンとして有名だった。
「実際問題さぁ、今の騎士様達の実力ってどうなんだろうね?」
女達が何かを思い出しながらそう話す。
「Dランクの魔獣にも手を焼いてたって聞いた事あるもんね」
「しょせん、貴族の坊ちゃん達だしね。実力的にはギリDランク?」
「そうなると、あそこの一階層もやっぱ無理だね。最初の通路のビックラットで逃げ出すと見た」
女達は、ダンジョンでの事を思い出して予想する。
「私らでも二階層のお店に行くだけでギリギリだったもんね」
クレアが所属するパーティのランクはA。国内でもAランクのパーティは現在、五つしかない。その一つであるメンバーが全員女。それも、平均年齢五十六という珍しいパーティだ。
その名は『花風』。
この国でも屈指の実力を持つ。そんなパーティでさえも、全二十階層あると言われているダンジョンの二階層までしか辿り着けないのだ。その難易度がよく分かる。
だが、ティアはそれよりも気になる事があった。
「お店って……ドワーフの?」
「おや。さすがはティアちゃん。よく知ってるねぇ」
「うん……まぁね……」
少々歯切れが悪くなっている理由は、店のある階層が、記憶とは違うからだ。
五階層だった筈だけど……。
何らかの理由で二階層まで上がって来たのかもしれない。
『赤白の宮殿』は地下ダンジョンだ。入ってすぐが一階層。その下へと二階層、三階層と延びている。
その中に、ドワーフの鍛冶屋がある。国外にある数少ない店だ。
確か、最初は十階層に創ったのに、あまりにも誰も到達しないから、五階層に上げたんだよね……。
その後、恐らく、更に挑戦者が減り、二階層まで上がって来たのだろう。そこでなんとか冒険者相手に商売が出来る。だがそれは、冒険者達でさえも力が落ちているという事に他ならない。
やっぱ、ここは底上げしとかないとね。
ティアは、騎士だけでなく、あわよくば冒険者達の力も上げようと、密かに決意したのだった。
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舞台裏のお話。
ゼノスバート「フィスターク。そろそろ本気で考えるべきだ」
リジット「本日で、通算千回目の修繕作業となりました……」
ユメル「因みに、壁へ穴を空けるより、地面やお屋敷の床に穴を空けるのが、現在のブームだそうです」
カヤル「植樹の折、穴掘りとして役に立った事が嬉しかったそうです」
フィスターク「元気なのは良いことだよね……」
ゼノスバート「現実を見ろっ」
リジット「……このまま放置すれば、近い将来、お屋敷が沈みます……」
フィスターク「……し、シアンを怒る……出来るだろうか……」
ゼノスバート「やるしかない。お前は夫として、嫌われても妻の暴走を止める義務がある」
フィスターク「嫌われてしまうかも……」
ゼノスバート「それでもやるんだっ」
フィスターク「……」
クロノス「失礼いたします。ただいま戻りました」
ユ・カ「「兄さんっ」」
リジット「おや。あちらは……ゲイルさんが残るのですか?」
クロノス「はい。ティア様がそう判断なさる筈です」
ゼノスバート「……そうか……」
クロノス「それで、お揃いでどうかなさいましたか?」
ゼノスバート「あ、あぁ、シアンをフィスタークに叱るように言っているんだが……」
フィスターク「……私だけでは……」
リジット「しっかりなさいませ。旦那様でなくて、誰が止められるのですか」
フィスターク「う……うん……そうだね」
クロノス「旦那様。サポート役でしたら……」
フィスターク「え?君がいてくれるのかいっ?」
クロノス「いえ、私ではなく……そうですね……夕刻までお待ちください」
フィスターク「へ?」
クロノス「ティア様が動かれます」
ユ・カ「「へ?」」
リジット「はい?」
ゼノスバート「ティア?」
クロノス「はい。お待ちください」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
クロちゃんは、何かを感じています。
ダンジョン……マティアスままが手掛けたダンジョン……。
恐ろしい!!
どんな地獄でしょう!
リアル血の池とかありそうで怖いですっ。
ティアちゃんは、騎士だけでなく、冒険者達までも犠牲にする気のようです。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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