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291 騎士への意識
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2015. 11. 29
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王都での騎士達の素行調査は、学園街よりもより分かりやすく進んだ。
騎士であるという権威を振りかざしている者しかいないのではないかと思える程、呆れた状況がそこにはあった。
ティアは先ず、裏通りに一歩入ったのだが、昼時だった事もあり、適当な飲食店へと向かった。そこで、まさに騎士達数人が、散々、食事にケチを付けながらも飲食をした後、殆どお代を払わないという、その現場に出くわしたのだ。
「これがこの料理とも言えん物の対価だ。まったく、国の為に働く我らにこんな物を出すとはな」
「店も汚ないし、我らには相応しくない」
「この王都にも相応しくないと思うがな」
「まったくだな」
そう言って、正規の代金には程遠い量の貨幣を、半ば床にばら撒いて、店を出て行ったのだ。
「……チンピラ……?」
思わずティアは、彼らの服装を二度見どころか、五度見して確認した。
「ぶっ、お、お嬢ちゃんっ……チンピラって……くっ、フハハハハ」
ティアのその呟きが聞こえたのだろう。店にいた男の一人が爆笑しだした。
「くっ、確かにっ。ありゃぁ、チンピラにしか見えんよなぁっ」
「それも、出来損ないのなっ」
「そっかぁ~……チンピラなら、代金がこんだけ貰えただけでも御の字だよなぁ」
次第に店にいた全員が笑い出し、最後には店の店主さえもが笑って、納得だと頷いていた。
あれ?
これは珍しい状況だ。騎士への刷り込み的な敬いの意識はどこへいったのか。
「この辺って、騎士の評判、良くないの?」
ここは王都だ。何処よりも騎士が集う場所だ。貴族と同じくらい、騎士を高位の存在と認識している民達にとって、この騎士の姿を日常的に見る事が出来る王都では、より騎士へ対する態度や意識は、強い尊敬の念を持って向けられる。少なくとも、過去ではそうだった。
「ははっ。そりゃぁ、表立って言う奴はいねぇよ。それに、騎士様ってぇのは、やっぱ、偉い奴らだってな。けどよぉ……」
そう言って、男は声をひそめる。面白くなってきたと思っていたティアは、嬉しそうに男の方へと耳に手をやり、聞きますよと態度で示す。
これに、男も口へと手をやり、ティアへと小さな声で言った。
「紅翼の騎士様達を知っちまうとな。ダメな騎士様ってぇのが分かっちまったんだよ」
「あ~……」
あいつらかと思わず言いそうになったティアだ。
そんなティアの様子が、同意を示すものだと感じた男は、それから声を元の大きさに戻し、得意気に続けた。
「あの騎士様達こそ、本物だなっ。マジで尊敬するよ」
ティアはドキリとした。それは、彼らを変えるきっかけを作った事による、気まずいものではない。『本物の騎士』を知ってもらえた事への喜びによるものだ。
「そうなんだ……あ、でもそれなら、アイツっ……紅翼の騎士様達が、注意したりしないの?」
紅翼の騎士達には、騎士とは何か。どうあるべきかを叩き込んだつもりだ。ティアが知る彼らが他の騎士達の行いを見れば、黙ってはいない筈だと思った。
この問いかけに、店にいた者達は、苦笑する。そして、言いにくそうに一人が口を開いた。
「そうだなぁ……その……騎士様達にも、上下関係とかがあるんだろうな……」
「紅翼の騎士ってぇ名前を聞くようになったすぐくらいは良かったんだけどなぁ……」
互いに顔を見合わせ、確認し合う客達の様子に、ティアも少し察しがついた。
「もしかして、他の騎士様達にハブられてる……とか……」
これに、全員がすかさず声を発する事なく頷いた。
「……そんな……子どもじゃないんだから……」
確かに、いくら紅翼の騎士達の姿や行いが正しいものだとしても、たった十数人と少人数だ。それより何倍もいる騎士達が否定すれば、異質なものでしかない。
「だよなぁ……」
「お陰で、紅翼の騎士様達は、学園街の方に拠点を持って行ってるって話だ」
自分達の今までの行いや態度が正しいと思いたい騎士達は、紅翼の騎士達を学園街へと追いやったらしい。
そうされても、国王が認めた騎士団であり、民達からの信頼もある。表向きは、将来を担う子ども達が多く集う学園街の重要性を示唆し、警備の必要性を示すことで、紅翼の騎士団が王都から退く理由としたのだ。
「……どおりで……出くわす確率が高い訳だ……」
ティアは、常日頃から王都に常駐する筈の彼らによく出会うなと思って、気になっていたのだ。単に、ティアの気配を察したから出会う訳ではないと知ると、少しほっとした。
だよね……いくらなんでも、そこまで気配察知されたら困るわ……。
これによりティアは、紅翼の騎士団に対する警戒意識を、ほんの少しだけ緩める事ができたのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
街人A「どうされました?紅翼の騎士様」
紅翼の騎士A「あ、いいえ。何やら呼ばれたような気がしたのです」
街人B「あちらは王都ですからなぁ。紅翼の騎士様の助けを待つ者がいるのでは?」
紅翼の騎士B「ははっ。王都には他の騎士団がおります」
街人B「いやいや、きっと、紅翼の騎士様を求めているのですよ」
街人A「そうそう」
紅翼の騎士A「それは、光栄だ。では、我らはこれで。またお困りの際は、お呼びください」
街人B「紅翼の騎士様達は、呼ばなくても駆け付けてくださるじゃありませんか」
街人A「本当に、ありがとうございます」
紅翼の騎士B「いえ。我らは、あなた方の為にいるのですからね」
街人A・B「「ありがたや~」」
紅翼の騎士A・B「「では、良い一日を…………なぁ……っ」」
紅翼の騎士A「すまん。なんだ?」
紅翼の騎士B「いや、お前から言ってくれ」
紅翼の騎士A「あぁ……どうも、やはり王都の方が気になるなと思ってな」
紅翼の騎士B「私もだ……まさか……いや、まさかな」
紅翼の騎士A「だよなぁ……あ、アイツも……」
紅翼の騎士C「……」
紅翼の騎士B「おい。大丈夫か?」
紅翼の騎士C「ん?お、おお。呆っとしてたか……なんでかな……なんかあっちから呼ばれてるような気が……」
紅翼の騎士A・B「「お前もかっ」」
紅翼の騎士C「お前達も?なら、王都でまさか……」
紅翼の騎士A・B「「まさかな……」」
街人C「おい。紅翼の騎士様達はどうされたんだろうな?」
街人D「あぁ……あっちにいた紅翼の騎士様達もあんな感じに、同じ方を見てたな……」
街人「「わからん……」」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ミステリーです。
超常現象の前触れでしょうか……。
ちょっと中途半端ですね……申し訳ない。
王都には、もはやダメ騎士しかいないようです。
あの変態に足を突っ込んでいる紅翼の騎士達が尊敬されています。
良い方を知ってしまったら、その下を見てがっかりしてしまいますよね。
騎士の更生……解決策はあるのか。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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王都での騎士達の素行調査は、学園街よりもより分かりやすく進んだ。
騎士であるという権威を振りかざしている者しかいないのではないかと思える程、呆れた状況がそこにはあった。
ティアは先ず、裏通りに一歩入ったのだが、昼時だった事もあり、適当な飲食店へと向かった。そこで、まさに騎士達数人が、散々、食事にケチを付けながらも飲食をした後、殆どお代を払わないという、その現場に出くわしたのだ。
「これがこの料理とも言えん物の対価だ。まったく、国の為に働く我らにこんな物を出すとはな」
「店も汚ないし、我らには相応しくない」
「この王都にも相応しくないと思うがな」
「まったくだな」
そう言って、正規の代金には程遠い量の貨幣を、半ば床にばら撒いて、店を出て行ったのだ。
「……チンピラ……?」
思わずティアは、彼らの服装を二度見どころか、五度見して確認した。
「ぶっ、お、お嬢ちゃんっ……チンピラって……くっ、フハハハハ」
ティアのその呟きが聞こえたのだろう。店にいた男の一人が爆笑しだした。
「くっ、確かにっ。ありゃぁ、チンピラにしか見えんよなぁっ」
「それも、出来損ないのなっ」
「そっかぁ~……チンピラなら、代金がこんだけ貰えただけでも御の字だよなぁ」
次第に店にいた全員が笑い出し、最後には店の店主さえもが笑って、納得だと頷いていた。
あれ?
これは珍しい状況だ。騎士への刷り込み的な敬いの意識はどこへいったのか。
「この辺って、騎士の評判、良くないの?」
ここは王都だ。何処よりも騎士が集う場所だ。貴族と同じくらい、騎士を高位の存在と認識している民達にとって、この騎士の姿を日常的に見る事が出来る王都では、より騎士へ対する態度や意識は、強い尊敬の念を持って向けられる。少なくとも、過去ではそうだった。
「ははっ。そりゃぁ、表立って言う奴はいねぇよ。それに、騎士様ってぇのは、やっぱ、偉い奴らだってな。けどよぉ……」
そう言って、男は声をひそめる。面白くなってきたと思っていたティアは、嬉しそうに男の方へと耳に手をやり、聞きますよと態度で示す。
これに、男も口へと手をやり、ティアへと小さな声で言った。
「紅翼の騎士様達を知っちまうとな。ダメな騎士様ってぇのが分かっちまったんだよ」
「あ~……」
あいつらかと思わず言いそうになったティアだ。
そんなティアの様子が、同意を示すものだと感じた男は、それから声を元の大きさに戻し、得意気に続けた。
「あの騎士様達こそ、本物だなっ。マジで尊敬するよ」
ティアはドキリとした。それは、彼らを変えるきっかけを作った事による、気まずいものではない。『本物の騎士』を知ってもらえた事への喜びによるものだ。
「そうなんだ……あ、でもそれなら、アイツっ……紅翼の騎士様達が、注意したりしないの?」
紅翼の騎士達には、騎士とは何か。どうあるべきかを叩き込んだつもりだ。ティアが知る彼らが他の騎士達の行いを見れば、黙ってはいない筈だと思った。
この問いかけに、店にいた者達は、苦笑する。そして、言いにくそうに一人が口を開いた。
「そうだなぁ……その……騎士様達にも、上下関係とかがあるんだろうな……」
「紅翼の騎士ってぇ名前を聞くようになったすぐくらいは良かったんだけどなぁ……」
互いに顔を見合わせ、確認し合う客達の様子に、ティアも少し察しがついた。
「もしかして、他の騎士様達にハブられてる……とか……」
これに、全員がすかさず声を発する事なく頷いた。
「……そんな……子どもじゃないんだから……」
確かに、いくら紅翼の騎士達の姿や行いが正しいものだとしても、たった十数人と少人数だ。それより何倍もいる騎士達が否定すれば、異質なものでしかない。
「だよなぁ……」
「お陰で、紅翼の騎士様達は、学園街の方に拠点を持って行ってるって話だ」
自分達の今までの行いや態度が正しいと思いたい騎士達は、紅翼の騎士達を学園街へと追いやったらしい。
そうされても、国王が認めた騎士団であり、民達からの信頼もある。表向きは、将来を担う子ども達が多く集う学園街の重要性を示唆し、警備の必要性を示すことで、紅翼の騎士団が王都から退く理由としたのだ。
「……どおりで……出くわす確率が高い訳だ……」
ティアは、常日頃から王都に常駐する筈の彼らによく出会うなと思って、気になっていたのだ。単に、ティアの気配を察したから出会う訳ではないと知ると、少しほっとした。
だよね……いくらなんでも、そこまで気配察知されたら困るわ……。
これによりティアは、紅翼の騎士団に対する警戒意識を、ほんの少しだけ緩める事ができたのだった。
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舞台裏のお話。
街人A「どうされました?紅翼の騎士様」
紅翼の騎士A「あ、いいえ。何やら呼ばれたような気がしたのです」
街人B「あちらは王都ですからなぁ。紅翼の騎士様の助けを待つ者がいるのでは?」
紅翼の騎士B「ははっ。王都には他の騎士団がおります」
街人B「いやいや、きっと、紅翼の騎士様を求めているのですよ」
街人A「そうそう」
紅翼の騎士A「それは、光栄だ。では、我らはこれで。またお困りの際は、お呼びください」
街人B「紅翼の騎士様達は、呼ばなくても駆け付けてくださるじゃありませんか」
街人A「本当に、ありがとうございます」
紅翼の騎士B「いえ。我らは、あなた方の為にいるのですからね」
街人A・B「「ありがたや~」」
紅翼の騎士A・B「「では、良い一日を…………なぁ……っ」」
紅翼の騎士A「すまん。なんだ?」
紅翼の騎士B「いや、お前から言ってくれ」
紅翼の騎士A「あぁ……どうも、やはり王都の方が気になるなと思ってな」
紅翼の騎士B「私もだ……まさか……いや、まさかな」
紅翼の騎士A「だよなぁ……あ、アイツも……」
紅翼の騎士C「……」
紅翼の騎士B「おい。大丈夫か?」
紅翼の騎士C「ん?お、おお。呆っとしてたか……なんでかな……なんかあっちから呼ばれてるような気が……」
紅翼の騎士A・B「「お前もかっ」」
紅翼の騎士C「お前達も?なら、王都でまさか……」
紅翼の騎士A・B「「まさかな……」」
街人C「おい。紅翼の騎士様達はどうされたんだろうな?」
街人D「あぁ……あっちにいた紅翼の騎士様達もあんな感じに、同じ方を見てたな……」
街人「「わからん……」」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ミステリーです。
超常現象の前触れでしょうか……。
ちょっと中途半端ですね……申し訳ない。
王都には、もはやダメ騎士しかいないようです。
あの変態に足を突っ込んでいる紅翼の騎士達が尊敬されています。
良い方を知ってしまったら、その下を見てがっかりしてしまいますよね。
騎士の更生……解決策はあるのか。
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