231 / 234
ミッション11 昇級試験と野営導具
438 女性に化ける必要が?
しおりを挟む
「交代……? 騙す……」
ユゼリアには全く意味がわからなかった。
「ユゼリアお兄様には見せていませんでしたか?」
「そういえば……?」
最近はユゼリアやワンザ、エンリアントも含めてリサーナとカリュエルはよく一緒にいる。だから、てっきりそれも教えた気でいたのだ。
「見せましょうか」
「そうしよう」
「「では! チェンジ!」」
二人とも衣装変換の魔導具を着けているため、それはいつでもどこでもできた。
そして、見事に姿が入れ替わる。立ち方から仕草も変えれば本当にどちらか分からない。
「「っ……えっ!?」」
「おお……っ」
ユゼリアとワンザは少し引き気味に目を丸くし、エンリアントは思わず感嘆の声を上げていた。
「どうです?」
「まあ、こんなものだな」
「こっ、声もそっくりだ……っ、入れ替わっている……?」
「こんなことが……」
「「まあねっ」」
二人とも満更ではない顔をしていた。
「見慣れてる私たちでもパッと見で見分けられないもんね。兄上も姉上もすごいです」
「いいな~。私も髪伸ばしてみようかな……リュブランはどうやってるの? カツラ? だよね?」
セルジュが羨ましそうにする。そして、リュブランに目を向ける。
「うん。カツラは母上がたまにセットを変えてくれるんだ。今回は確か、姉上みたいな髪型だったかな」
「えっ! 見たい! やってみてよ!」
「いいよ? よっと、こんな感じ?」
「うわ~。あ、並ぶとやっぱり似てるね!」
「本当っ?」
女装も違和感なくできてしまう。それがごく自然で当たり前のことのように受け入れている。
「今度、三姉妹になってお父様を驚かせましょうか」
そうカリュエルが提案すれば、リサーナも頷く。
「それ、良いね。楽しそうだ」
「はい! 是非!」
リュブランもワクワク感を隠そうともせずに同意した。
「ど、どうしてこんなことを……?」
ユゼリアの問いかけに、リュブランが答えた。
「特級の冒険者には必須なんですよ。貴族の礼儀作法や教養も修得しないといけないんだそうです。寧ろ、その辺の令嬢や令息達よりもしっかり身に付けますよ?」
「そうなのか?」
「ええ。それも、冒険者は国も跨いで活動するので、他国の文化や独自の王宮での作法も国ごとで変えて対応できるように勉強するそうです」
「それは……すごいことではないか?」
「そうですよ? なので、貴族が冒険者ごときとかバカにするのが、不思議なんですよね……」
「「っ……」」
ユゼリアとワンザは、それを聞いて目を丸くする。これにセルジュが口を挟む。
「あ~、結構バカにしてるのいそうだよね。今度ある課外授業でも、護衛でついてくれる冒険者の人たちに口答えしそうだもん」
「そこの所、実際どうなのです?」
カリュエルが元の姿に戻ってユゼリアに目を向ける。
「……下に見ているようではあった……」
「あらあら。困ったものですわね。学園の課外授業での護衛となれば、三級以上でしょうか? その辺りから教養とかも学ぶと聞きましたけれど」
リサーナはフィルズへ確認した。
「そうだな。貴族相手の依頼も増える。だから、学園の生徒が知るレベルの礼儀作法や教養は四級から指導があるな。三級で王宮に上がれるくらいのものを身に付けるらしい」
「四級で? あら? では、フィルさんは……とうにということですわね?」
「ああ。だから四級から三級に上がるまで、期間が長くなるんだろうな」
「そうでしたのね」
フィルズが異例なのだ。仮にも貴族の令息として過ごしていたフィルズにとっては、問題なく修得しているもの。そこに、流民として各国での礼儀作法や教養を知っているクラルスやリーリルからの教えが入り、既に特級になれるだけのものは身に付いていた。
これを知っていた公爵領都の冒険者ギルド長のルイリや、一部の冒険者達は、さっさと試験を受けて来いとフィルズを送り出したのだ。
そんなことがと興味深そうに話を聞いていたユゼリアは、疑問を口にする。
「教養や礼儀作法はわかったが……なぜその、女性に化ける必要が?」
「女性の護衛は少ないもの。女性は女性を連れているべきと男性は思われるでしょう?」
「あ、ああ……騎士であっても、あまり近くには配置できないと……っ、なるほど。それで女性に化けた男性の護衛を用意すると」
「ええ。見た目だけでも取り繕う必要がありますもの。どれだけ命の危険があっても、強い男性を傍に置けないというのは理不尽ですわ」
「そうだったのか……」
危険があっても、世間体だけは守らなくてはならない。それがどれほど馬鹿らしいことかとリサーナは吐き捨てるように告げた。
「そういえば、これで思い出しましたわ。あの女との茶会はどうしましょう」
「ん? 茶会?」
フィルズも聞いていない話。首を傾げてみせた。
「ええ。ほら、公開審判の前に、あの女からの茶会の誘いがありましたでしょう?」
「そういえば……ユゼリアと三人でってやつだったな」
「そう。それを改めてしたいと、手紙が来たのですわ。私とお兄様に」
ここでカリュエルも頷く。フィルズは、今の第一王妃メルナの状態を思い出す。
「……離宮の一室に監禁されているはずだが?」
「ですわよね? おかしいと思って、フィルさんに確認をお願いしようと思っていましたの。文字はあの女の侍女のものですわ」
「侍女か……すぐに調べさせる」
「お願いしますわ」
そんな話をしていると、ドアがノックされたのだ。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
ユゼリアには全く意味がわからなかった。
「ユゼリアお兄様には見せていませんでしたか?」
「そういえば……?」
最近はユゼリアやワンザ、エンリアントも含めてリサーナとカリュエルはよく一緒にいる。だから、てっきりそれも教えた気でいたのだ。
「見せましょうか」
「そうしよう」
「「では! チェンジ!」」
二人とも衣装変換の魔導具を着けているため、それはいつでもどこでもできた。
そして、見事に姿が入れ替わる。立ち方から仕草も変えれば本当にどちらか分からない。
「「っ……えっ!?」」
「おお……っ」
ユゼリアとワンザは少し引き気味に目を丸くし、エンリアントは思わず感嘆の声を上げていた。
「どうです?」
「まあ、こんなものだな」
「こっ、声もそっくりだ……っ、入れ替わっている……?」
「こんなことが……」
「「まあねっ」」
二人とも満更ではない顔をしていた。
「見慣れてる私たちでもパッと見で見分けられないもんね。兄上も姉上もすごいです」
「いいな~。私も髪伸ばしてみようかな……リュブランはどうやってるの? カツラ? だよね?」
セルジュが羨ましそうにする。そして、リュブランに目を向ける。
「うん。カツラは母上がたまにセットを変えてくれるんだ。今回は確か、姉上みたいな髪型だったかな」
「えっ! 見たい! やってみてよ!」
「いいよ? よっと、こんな感じ?」
「うわ~。あ、並ぶとやっぱり似てるね!」
「本当っ?」
女装も違和感なくできてしまう。それがごく自然で当たり前のことのように受け入れている。
「今度、三姉妹になってお父様を驚かせましょうか」
そうカリュエルが提案すれば、リサーナも頷く。
「それ、良いね。楽しそうだ」
「はい! 是非!」
リュブランもワクワク感を隠そうともせずに同意した。
「ど、どうしてこんなことを……?」
ユゼリアの問いかけに、リュブランが答えた。
「特級の冒険者には必須なんですよ。貴族の礼儀作法や教養も修得しないといけないんだそうです。寧ろ、その辺の令嬢や令息達よりもしっかり身に付けますよ?」
「そうなのか?」
「ええ。それも、冒険者は国も跨いで活動するので、他国の文化や独自の王宮での作法も国ごとで変えて対応できるように勉強するそうです」
「それは……すごいことではないか?」
「そうですよ? なので、貴族が冒険者ごときとかバカにするのが、不思議なんですよね……」
「「っ……」」
ユゼリアとワンザは、それを聞いて目を丸くする。これにセルジュが口を挟む。
「あ~、結構バカにしてるのいそうだよね。今度ある課外授業でも、護衛でついてくれる冒険者の人たちに口答えしそうだもん」
「そこの所、実際どうなのです?」
カリュエルが元の姿に戻ってユゼリアに目を向ける。
「……下に見ているようではあった……」
「あらあら。困ったものですわね。学園の課外授業での護衛となれば、三級以上でしょうか? その辺りから教養とかも学ぶと聞きましたけれど」
リサーナはフィルズへ確認した。
「そうだな。貴族相手の依頼も増える。だから、学園の生徒が知るレベルの礼儀作法や教養は四級から指導があるな。三級で王宮に上がれるくらいのものを身に付けるらしい」
「四級で? あら? では、フィルさんは……とうにということですわね?」
「ああ。だから四級から三級に上がるまで、期間が長くなるんだろうな」
「そうでしたのね」
フィルズが異例なのだ。仮にも貴族の令息として過ごしていたフィルズにとっては、問題なく修得しているもの。そこに、流民として各国での礼儀作法や教養を知っているクラルスやリーリルからの教えが入り、既に特級になれるだけのものは身に付いていた。
これを知っていた公爵領都の冒険者ギルド長のルイリや、一部の冒険者達は、さっさと試験を受けて来いとフィルズを送り出したのだ。
そんなことがと興味深そうに話を聞いていたユゼリアは、疑問を口にする。
「教養や礼儀作法はわかったが……なぜその、女性に化ける必要が?」
「女性の護衛は少ないもの。女性は女性を連れているべきと男性は思われるでしょう?」
「あ、ああ……騎士であっても、あまり近くには配置できないと……っ、なるほど。それで女性に化けた男性の護衛を用意すると」
「ええ。見た目だけでも取り繕う必要がありますもの。どれだけ命の危険があっても、強い男性を傍に置けないというのは理不尽ですわ」
「そうだったのか……」
危険があっても、世間体だけは守らなくてはならない。それがどれほど馬鹿らしいことかとリサーナは吐き捨てるように告げた。
「そういえば、これで思い出しましたわ。あの女との茶会はどうしましょう」
「ん? 茶会?」
フィルズも聞いていない話。首を傾げてみせた。
「ええ。ほら、公開審判の前に、あの女からの茶会の誘いがありましたでしょう?」
「そういえば……ユゼリアと三人でってやつだったな」
「そう。それを改めてしたいと、手紙が来たのですわ。私とお兄様に」
ここでカリュエルも頷く。フィルズは、今の第一王妃メルナの状態を思い出す。
「……離宮の一室に監禁されているはずだが?」
「ですわよね? おかしいと思って、フィルさんに確認をお願いしようと思っていましたの。文字はあの女の侍女のものですわ」
「侍女か……すぐに調べさせる」
「お願いしますわ」
そんな話をしていると、ドアがノックされたのだ。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
2,731
お気に入りに追加
14,824
あなたにおすすめの小説

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?
藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」
愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう?
私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。
離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。
そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。
愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。