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ミッション10 子ども達の成長
404 話してくれ
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集まっていた貴族達は、ファスター王に場所を譲る。それを当たり前のことと捉えて、やってきたファスター王は、フィルズに問いかける。
「フィルは、そいつらのことを知っているのか?」
「ああ。闇ギルドも気を遣う、賢者の遺物を所有する怪しい組織があるって話は聞いている」
教えてくれたのは、黒子達だ。
「それが、こやつらか?」
ファスター王が指差した映像に出ているのは、行商人の一行だ。
「そのようだな。隣のガーネルからレヴィに復讐するって来た奴らを煽って連れてきたのもこいつらだ」
「なるほど。色々とやってくれたようだな……それで、トクラ侯爵よ。この者達の手を借りて、何をしようとした?」
《グルルルルル》
シャルテも成体の姿になって、ライデンと共に威嚇する。
「っ……」
「だんまりが一番イラつくんだよな~。嘘吐けなくなってるはずなんだが……ジュエルのやつ、ちょい効きすぎか? いや、誤作動程度か……」
金の腕輪は魔導具だ。ジュエルが今、城を支配している状態で、通常業務に必要な魔導具だけは影響がないように調整していたようだが、少しばかりツメが甘いらしい。
頼むぞと念話を飛ばすと、ジュエルの了解する声が聞こえた。とはいえ、だんまりというのは使えてしまうのだ。それならばと標的を変えた。
「う~ん……なあ、お前が喋るか?」
「っ、わ、わたひは……っ」
侍従は少しばかり痺れ薬が入っていることもあるが、体を震わせていた。そんな侍従に、フィルズは屈み込んで視線を合わせるようにして声をかける。
「お前さあ、痺れ薬入れたじゃん? そうするとアレだよ……ちょい、下の方の感覚が弱くなんの、どうなるか知ってる?」
「え、わ、わかり、ません……」
「わかりやすく言うと、ここでお漏らしする可能性が大なわけよ」
「……っ!! へ!?」
「だからさあ、早く喋って、捕まった方がいいと思うんだよ」
「っ!!」
真っ青になった侍従は口を開きかける。しかし、そこでトクラ侯爵が声を上げた。
「貴様!! 話したらどうなるかわかっているんだろうな!!」
「ひいっ!!」
怯えながら丸くなる侍従。もう、ほぼ話す方に傾いているのは分かっている。だから、フィルズは最後のトドメとして提案した。
「ああ、あの死にかけのジジイは気にするな。大丈夫だ。あいつも一生外に出られなくなる。お前にも罪があるが、同じ場所には入れないように俺からしっかり頼んでおいてやるよ。だから、あいつがお前に手を出すことは絶対にない。お前の……家族にもだ」
「っ、か、家族もっ……」
「大丈夫だ。教会に保護を頼もう。俺を信じてくれ」
「っ……」
信じてもいいか、本当に家族は無事でいられるのか、それを侍従の男は、フィルズの目を見て考えていた。そこで、ファスター王が少し身を屈めてフィルズの肩に手を置いて告げた。
「心配するな。フィルはこの国の神殿長に好かれている。そのフィルの要請だ。かならず保護してくれるだろう」
「っ、本当に……」
「「ああ」」
フィルズとファスター王が同時に頷けば、侍従の男は涙を流しながら決意した。
「話します」
「き、貴様!!」
「「「黙っていろ」」」
フィルズとファスター王、そして、リゼンフィアが同時にトクラ侯爵を睨み付けると、シャルテとライデンが一歩ずつ近づいて唸りを上げた。
《ガルルルゥゥゥゥッ》
《グルルルルル》
「ひいっ!!」
侯爵は気絶したようだ。
「話してくれ」
「はい……だ、旦那様は数日前、闇ギルドからの連絡が途絶えたことと、この時期に全ての貴族を召集して会議が開かれることを知り、闇ギルドとの繋がりがバレたのだろうと考えておいででした……」
かなり痺れも取れてきているようだが、本人は気付いていない。
「あの闇ギルドが、依頼人達を道連れにする可能性に気付いていたんだな?」
「はい。道連れにされるかもしれないと口にされているのも聞きました」
きちんと、実態の把握をしていたようだ。闇ギルドの方の切り札も知っていたのだろう。だからこそ、全力で支えてもいたのだ。王都に彼らが潜んでいたことに、ラスタリュート達が気付けなかった原因が侯爵だった。
「国で特に有力な貴族をバックに付ける……そういうやり方が上手かったようだからな」
「なるほどな。他国もそうか」
「だろうな」
「捕まえられないわけだ……」
国の重鎮が庇っていたのでは、国の騎士がいくら捕まえたがっても、情報は筒抜けだ。上手くいくはずがない。
「で? お前は今日、この魔導具でどうしろと言われていたんだ?」
「あの場所で私兵を連れて待機し、合図が来たらそれを発動させて、会議室を襲えと願えと言われました。まさか、その通りに人が動くなんて……っ」
よく思い返してみれば、彼は怯えた様子で戦う者達を見て、魔導具を抱えていた。どうやら、魔導具の効果は知らなかったようだ。
「騒ぎを起こして、その混乱に乗じて逃げると仰っていたので……」
「へえ……じゃあ、合図ってのは何で分かる?」
フィルズはトクラ侯爵にもチラリと目を向ける。すると、黒子がどこからともなく現れて、トクラ侯爵の持ち物を調べはじめる。それには、侍従は気付いていないようだ。
「小さな楕円形の石を渡されて、それが赤く光るからと……」
それを聞いて、また新たな黒子が現れた。今度はフィルズの傍らに現れたため、侍従にも見えていた。ビクリと体を震わせ、黒子がフィルズに差し出した物を確認する。
「あっ、それです!」
「これは……そういうことか」
トクラ侯爵のポケットからも似たような物が出てきた。そちらは、ボタンのようなものが付いている。それを見比べて頷く。
「試してみないのか?」
ファスター王が興味深そうに、フィルズの手元を覗き込んでくる。
「多分、これを押すと、他にも反応するのが出てくる。だから、今こうなってんだ」
「ん?」
そう言って、フィルズはイヤフィスから聞こえた報告から、スクリーンの方へと視線を向ける。
「なっ!」
そこには、監査の入った各地で襲撃を受けている様子が映し出されていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「フィルは、そいつらのことを知っているのか?」
「ああ。闇ギルドも気を遣う、賢者の遺物を所有する怪しい組織があるって話は聞いている」
教えてくれたのは、黒子達だ。
「それが、こやつらか?」
ファスター王が指差した映像に出ているのは、行商人の一行だ。
「そのようだな。隣のガーネルからレヴィに復讐するって来た奴らを煽って連れてきたのもこいつらだ」
「なるほど。色々とやってくれたようだな……それで、トクラ侯爵よ。この者達の手を借りて、何をしようとした?」
《グルルルルル》
シャルテも成体の姿になって、ライデンと共に威嚇する。
「っ……」
「だんまりが一番イラつくんだよな~。嘘吐けなくなってるはずなんだが……ジュエルのやつ、ちょい効きすぎか? いや、誤作動程度か……」
金の腕輪は魔導具だ。ジュエルが今、城を支配している状態で、通常業務に必要な魔導具だけは影響がないように調整していたようだが、少しばかりツメが甘いらしい。
頼むぞと念話を飛ばすと、ジュエルの了解する声が聞こえた。とはいえ、だんまりというのは使えてしまうのだ。それならばと標的を変えた。
「う~ん……なあ、お前が喋るか?」
「っ、わ、わたひは……っ」
侍従は少しばかり痺れ薬が入っていることもあるが、体を震わせていた。そんな侍従に、フィルズは屈み込んで視線を合わせるようにして声をかける。
「お前さあ、痺れ薬入れたじゃん? そうするとアレだよ……ちょい、下の方の感覚が弱くなんの、どうなるか知ってる?」
「え、わ、わかり、ません……」
「わかりやすく言うと、ここでお漏らしする可能性が大なわけよ」
「……っ!! へ!?」
「だからさあ、早く喋って、捕まった方がいいと思うんだよ」
「っ!!」
真っ青になった侍従は口を開きかける。しかし、そこでトクラ侯爵が声を上げた。
「貴様!! 話したらどうなるかわかっているんだろうな!!」
「ひいっ!!」
怯えながら丸くなる侍従。もう、ほぼ話す方に傾いているのは分かっている。だから、フィルズは最後のトドメとして提案した。
「ああ、あの死にかけのジジイは気にするな。大丈夫だ。あいつも一生外に出られなくなる。お前にも罪があるが、同じ場所には入れないように俺からしっかり頼んでおいてやるよ。だから、あいつがお前に手を出すことは絶対にない。お前の……家族にもだ」
「っ、か、家族もっ……」
「大丈夫だ。教会に保護を頼もう。俺を信じてくれ」
「っ……」
信じてもいいか、本当に家族は無事でいられるのか、それを侍従の男は、フィルズの目を見て考えていた。そこで、ファスター王が少し身を屈めてフィルズの肩に手を置いて告げた。
「心配するな。フィルはこの国の神殿長に好かれている。そのフィルの要請だ。かならず保護してくれるだろう」
「っ、本当に……」
「「ああ」」
フィルズとファスター王が同時に頷けば、侍従の男は涙を流しながら決意した。
「話します」
「き、貴様!!」
「「「黙っていろ」」」
フィルズとファスター王、そして、リゼンフィアが同時にトクラ侯爵を睨み付けると、シャルテとライデンが一歩ずつ近づいて唸りを上げた。
《ガルルルゥゥゥゥッ》
《グルルルルル》
「ひいっ!!」
侯爵は気絶したようだ。
「話してくれ」
「はい……だ、旦那様は数日前、闇ギルドからの連絡が途絶えたことと、この時期に全ての貴族を召集して会議が開かれることを知り、闇ギルドとの繋がりがバレたのだろうと考えておいででした……」
かなり痺れも取れてきているようだが、本人は気付いていない。
「あの闇ギルドが、依頼人達を道連れにする可能性に気付いていたんだな?」
「はい。道連れにされるかもしれないと口にされているのも聞きました」
きちんと、実態の把握をしていたようだ。闇ギルドの方の切り札も知っていたのだろう。だからこそ、全力で支えてもいたのだ。王都に彼らが潜んでいたことに、ラスタリュート達が気付けなかった原因が侯爵だった。
「国で特に有力な貴族をバックに付ける……そういうやり方が上手かったようだからな」
「なるほどな。他国もそうか」
「だろうな」
「捕まえられないわけだ……」
国の重鎮が庇っていたのでは、国の騎士がいくら捕まえたがっても、情報は筒抜けだ。上手くいくはずがない。
「で? お前は今日、この魔導具でどうしろと言われていたんだ?」
「あの場所で私兵を連れて待機し、合図が来たらそれを発動させて、会議室を襲えと願えと言われました。まさか、その通りに人が動くなんて……っ」
よく思い返してみれば、彼は怯えた様子で戦う者達を見て、魔導具を抱えていた。どうやら、魔導具の効果は知らなかったようだ。
「騒ぎを起こして、その混乱に乗じて逃げると仰っていたので……」
「へえ……じゃあ、合図ってのは何で分かる?」
フィルズはトクラ侯爵にもチラリと目を向ける。すると、黒子がどこからともなく現れて、トクラ侯爵の持ち物を調べはじめる。それには、侍従は気付いていないようだ。
「小さな楕円形の石を渡されて、それが赤く光るからと……」
それを聞いて、また新たな黒子が現れた。今度はフィルズの傍らに現れたため、侍従にも見えていた。ビクリと体を震わせ、黒子がフィルズに差し出した物を確認する。
「あっ、それです!」
「これは……そういうことか」
トクラ侯爵のポケットからも似たような物が出てきた。そちらは、ボタンのようなものが付いている。それを見比べて頷く。
「試してみないのか?」
ファスター王が興味深そうに、フィルズの手元を覗き込んでくる。
「多分、これを押すと、他にも反応するのが出てくる。だから、今こうなってんだ」
「ん?」
そう言って、フィルズはイヤフィスから聞こえた報告から、スクリーンの方へと視線を向ける。
「なっ!」
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