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ミッション10 子ども達の成長
402 もう少し踏ん張れ!
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リーリルにキヨラを託して正解だったと微笑ましげに見てから、フィルズはラスタリュートに声をかける。
「こいつらの尋問は任せていいか?」
「もちろんよ。けど、いいの? 確認したいこととかあるんじゃない? というか、そんなに大した相手でもなかったわね」
それなりの力量はありそうだが、王宮に忍び込んでまで仕事をしようとする者としては、力不足だったように感じたようだ。
「持ってた魔導具が厄介そうだったからな。それを見込んでの力量だったんだろう」
「そういうこと……」
恐らく、忍ばせていた魔導具が使えれば、かなり厄介な相手になっていた。しかし、それを使えなくしたために、レベルが落ちたのだろう。
「こいつらがどれだけ有益な情報を持っているかは知らんが、特殊な魔導具がありそうだし、どこからどう受け取ったかくらいは吐くだろう。それで今は充分だ。それより……ジュエル。どうした?」
《クキュゥ!》
部屋の外の壁に引っ付いていたはずのジュエルは、トカゲのように動いて部屋の中の壁に移動していた。声をかけたのは、何か言いたそうだったから。どうやら、会議場の方で何かあるようだ。
《キュッ! クキュ!》
「リュブラン達の方だな? 分かった。ジュエルは、とりあえずこのままここで待機してくれ」
《キュウ!》
「ラスタ! 会議場の方に行く。怪しいのが居るらしい。何人か後で寄越してくれ!」
「分かったわ!」
フィルズは、会議室の方へと駆ける。服装は貴族の令息らしいものに見える。知らない騎士達も見咎めないだろう。
そうして、たどり着いた会議室の手前の通路。そこで、リュブランやカリュエル、リサーナが戦っていた。
「リュブラン!」
「フィル君! こいつら突然現れて!」
人数が多い。トラのレッカやウサギの侍従、侍女のトマとユマも戦っているので、それほど苦戦はしていないように見えるが、様子がおかしい。
「なんなの!? 痛みを感じていないのかしら!?」
「そんな感じだねっ!」
「フィル君! これどうなってるか分かる!?」
リサーナやカリュエルも、戦えている。しかし、明らかにもう動けないはずの痛みのありそうな状態にしても、変わらず立ち向かってくるので、気味が悪い。
「これ以上はっ……」
さすがに命を奪いたくはないと、リサーナが苦々しげに顔をしかめる。
そこで、フィルズは物陰に隠れて居る者に気付いた。
「っ、もう少し踏ん張れ!」
それだけ言って、フィルズは、反対側に行くために、リュブラン達を避けるように壁を蹴って飛んだ。そして、物陰に隠れていた男と目が合った。
「っ!?」
「お前か!」
その手には、黒い玉があり、それを叩き落とすようにしてから、男を殴った。
「おら!」
「ぐふっ!」
倒れた男を、どこからともなく現れた黒子が取り押さえにかかる。気絶している内にと、口の中や懐など、全てチェックを終えると、手を後ろで縛る。足もという所で、フィルズは気付いた。
「こいつ、トクラ侯爵家の侍従だな」
「はい。マークしていた侍従で間違いありません」
「なら、ちょい侯爵にも聞いてみるか」
目を細めて黒子によって縛られていく侍従を見下ろす。
「薬は弱めでいい」
「はい」
さすがに、舌を噛まれるのは良くない。しかし、意識がはっきりしなくなるのは困る。そこを見極めて投薬する。もちろん、体調や体質によっても効きは違うが、多少は調整が効くので任せている。
リサーナ達が歩み寄ってくる。
「どうなっているの? あの人たち、突然同時に倒れたわよ?」
「唐突に意識を失ったようだった……」
リサーナとカリュエルは、倒れた者達のいる後ろを気にしながら問いかけてきた。
「こいつが魔導具で操っていたようだ」
「……そんなことができるのか……」
カリュエルは目を丸くして縛られている男を見る。そして、その正体に気付いた。
「ん? こいつ……あの女の……」
忌々しそうに見るカリュエル。それに気付いて、リサーナも目を向ける。そこに、倒れた者達の様子を確認していたリュブランが近付いてくる。
「間違いありませんわ! トクラ侯爵家の侍従! あの女と会っているのを何度か見たことがありますわ。『お父様からの遣いよ』って」
「トクラって、メルナ妃の実家の? なんでそんな人がこんなことを……」
リュブランは話を聞いていたようだ。不思議そうに拘束された侍従を見ている。
「それを確認するんだよ。こんな魔導具は、そうそうないしな。出所をはっきりさせるのに、その侯爵とやらに話を聞けそうだ。そいつ連れて行くぞ」
「こちらはどうされますか?」
黒子の問いかけに、フィルズが答える。
「騎士達が後から来る。一応、軽く拘束して、牢に入れてもらおう。俺は、会議室に行く」
「承知しました」
そうして、侯爵に直接話を聞くため、会議室へと拘束した侍従を引きずって乗り込んだのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「こいつらの尋問は任せていいか?」
「もちろんよ。けど、いいの? 確認したいこととかあるんじゃない? というか、そんなに大した相手でもなかったわね」
それなりの力量はありそうだが、王宮に忍び込んでまで仕事をしようとする者としては、力不足だったように感じたようだ。
「持ってた魔導具が厄介そうだったからな。それを見込んでの力量だったんだろう」
「そういうこと……」
恐らく、忍ばせていた魔導具が使えれば、かなり厄介な相手になっていた。しかし、それを使えなくしたために、レベルが落ちたのだろう。
「こいつらがどれだけ有益な情報を持っているかは知らんが、特殊な魔導具がありそうだし、どこからどう受け取ったかくらいは吐くだろう。それで今は充分だ。それより……ジュエル。どうした?」
《クキュゥ!》
部屋の外の壁に引っ付いていたはずのジュエルは、トカゲのように動いて部屋の中の壁に移動していた。声をかけたのは、何か言いたそうだったから。どうやら、会議場の方で何かあるようだ。
《キュッ! クキュ!》
「リュブラン達の方だな? 分かった。ジュエルは、とりあえずこのままここで待機してくれ」
《キュウ!》
「ラスタ! 会議場の方に行く。怪しいのが居るらしい。何人か後で寄越してくれ!」
「分かったわ!」
フィルズは、会議室の方へと駆ける。服装は貴族の令息らしいものに見える。知らない騎士達も見咎めないだろう。
そうして、たどり着いた会議室の手前の通路。そこで、リュブランやカリュエル、リサーナが戦っていた。
「リュブラン!」
「フィル君! こいつら突然現れて!」
人数が多い。トラのレッカやウサギの侍従、侍女のトマとユマも戦っているので、それほど苦戦はしていないように見えるが、様子がおかしい。
「なんなの!? 痛みを感じていないのかしら!?」
「そんな感じだねっ!」
「フィル君! これどうなってるか分かる!?」
リサーナやカリュエルも、戦えている。しかし、明らかにもう動けないはずの痛みのありそうな状態にしても、変わらず立ち向かってくるので、気味が悪い。
「これ以上はっ……」
さすがに命を奪いたくはないと、リサーナが苦々しげに顔をしかめる。
そこで、フィルズは物陰に隠れて居る者に気付いた。
「っ、もう少し踏ん張れ!」
それだけ言って、フィルズは、反対側に行くために、リュブラン達を避けるように壁を蹴って飛んだ。そして、物陰に隠れていた男と目が合った。
「っ!?」
「お前か!」
その手には、黒い玉があり、それを叩き落とすようにしてから、男を殴った。
「おら!」
「ぐふっ!」
倒れた男を、どこからともなく現れた黒子が取り押さえにかかる。気絶している内にと、口の中や懐など、全てチェックを終えると、手を後ろで縛る。足もという所で、フィルズは気付いた。
「こいつ、トクラ侯爵家の侍従だな」
「はい。マークしていた侍従で間違いありません」
「なら、ちょい侯爵にも聞いてみるか」
目を細めて黒子によって縛られていく侍従を見下ろす。
「薬は弱めでいい」
「はい」
さすがに、舌を噛まれるのは良くない。しかし、意識がはっきりしなくなるのは困る。そこを見極めて投薬する。もちろん、体調や体質によっても効きは違うが、多少は調整が効くので任せている。
リサーナ達が歩み寄ってくる。
「どうなっているの? あの人たち、突然同時に倒れたわよ?」
「唐突に意識を失ったようだった……」
リサーナとカリュエルは、倒れた者達のいる後ろを気にしながら問いかけてきた。
「こいつが魔導具で操っていたようだ」
「……そんなことができるのか……」
カリュエルは目を丸くして縛られている男を見る。そして、その正体に気付いた。
「ん? こいつ……あの女の……」
忌々しそうに見るカリュエル。それに気付いて、リサーナも目を向ける。そこに、倒れた者達の様子を確認していたリュブランが近付いてくる。
「間違いありませんわ! トクラ侯爵家の侍従! あの女と会っているのを何度か見たことがありますわ。『お父様からの遣いよ』って」
「トクラって、メルナ妃の実家の? なんでそんな人がこんなことを……」
リュブランは話を聞いていたようだ。不思議そうに拘束された侍従を見ている。
「それを確認するんだよ。こんな魔導具は、そうそうないしな。出所をはっきりさせるのに、その侯爵とやらに話を聞けそうだ。そいつ連れて行くぞ」
「こちらはどうされますか?」
黒子の問いかけに、フィルズが答える。
「騎士達が後から来る。一応、軽く拘束して、牢に入れてもらおう。俺は、会議室に行く」
「承知しました」
そうして、侯爵に直接話を聞くため、会議室へと拘束した侍従を引きずって乗り込んだのだ。
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