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ミッション10 子ども達の成長
400 待ってたのか?
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セルジュやユゼリア達と食事を済ませたフィルズは、そろそろだと思っていた。だから、ビズに乗って、王城に向かった。しかし、出発してから程なくして問題が起きた。
「ジュエル。お前、透明化なんて、いつそんな技を覚えたんだ……」
《クキュフゥっ》
得意げに胸を張るジュエルは、透明化してフィルズのマジックバッグにくっ付いていたのだ。何か違和感があると思って手をやってびっくりした。
「はあ……一人でどっか行くんじゃないぞ」
《キュウっ》
どうしても外に出たかったらしい。仕方のない奴だとため息を吐いて、お説教はなしにした。
そうして、王城に到着すると、そこに、リーリルが、護衛のトラと共に待っていた。服装は、舞台に立っていた時のもので、門番や騎士が、ソワソワしている。どんな姿でも、リーリルの持つ独特の雰囲気は隠せないのだろう。
「じいちゃん? どうしたんだ?」
「うん。嫌な予感がしてね……フィルが来るならって待ってたんだ」
そう言って、王城を見上げた。リーリルのその様子で、フィルズは決める。
「じいちゃんの勘はバカにできねえからな……一緒に行こう。キヨラが居れば大丈夫だけど、ジュエルも居るから」
《クキュゥ~》
「お前、じいちゃんが居るって知っててついてきたのか?」
《クキュ》
「なんとなく? まあいい。お前の勘も当てにしてるからな」
ジュエルは成体のサイズになっているトラ、リーリル専用護衛のキヨラの背中に乗り、目的とする場所へ向かうことにした。
「じゃあ、すまないが、メルナ妃の居る所に案内を頼む。警護については、ラスタ、ラスタリュート団長の指示通りにしてくれているか?」
フィルズは、案内のために出て来ていた騎士に尋ねる。
「はい! ご指示通り、近衛の方もトール様に説得されて配置についております」
つい先日まで、セイスフィア商会に預けられていた近衛騎士のトールは、カティルラ達と城に戻って来ていた。お陰で、スムーズに今回の対応ができたようだ。
「よし。そういえば……あんたに会ったことあるな」
「覚えていてくれましたかっ」
フィルズは、今回は城に入るということで、商会長としての制服に着替えていた。何かあっても、装備変更の魔導具ですぐに変更可能なので、フィルズとしては問題ない。
ただ、この騎士と会った時は、冒険者としての姿をしていたので、相手も覚えているかは確証がなかった。
「ああ。辺境の森で、どこだかのバカ息子の護衛してた騎士の一人だよな?」
「そうです! あの時はお世話になりました!」
「いや。騎士ってのも大変だよなあ」
「はあ……騎士になる者も年々、少なくなっていまして……」
「そうなのか?」
「ええ。父親に反発して、辺境の方で兵になる者。貴族自体が嫌になって、冒険者になる者など、少し前までの、当たり前の流れから外れだしているというのが、最近の現状です」
貴族家の出ならば、国に仕える騎士になるのが当たり前というものではなくなってきたようだ。
「そういえば、確かに辺境には多いかもな。家出てきたやつら」
「憧れもありますからね。貴族らしい両親を見ていると、辺境伯家の方々が羨ましくて」
「いいよな~。あの夫婦」
「いいですよね~。夫婦喧嘩も微笑ましくて」
「ずっと見てられるよな」
「そうなんですよ!」
そんな話をしていると、そこでリュブランとリサーナ、カリュエルに出会った。全員、きちんとパートナーを連れている。
「なんだ。待ってたのか?」
「うん。フィル君が来るなら何かあると思って。レッカもピリピリしてたし」
《グルル……》
レッカは、リュブランにつけた相棒のトラだ。そして、リサーナとカリュエルには、二足歩行する侍従、侍女としてのウサギをつけている。
「リュブラン達には、会議室の方を守ってほしいんだが」
「何かあるの?」
「分からん。けど、ここまで色々と仕込んでくる相手だからな。何より、今回捕まる奴らは、高位貴族が多い。準備はさせてねえけど、最後のあがきがあるかもしれねえ」
「そうだね……うん。わかった。姉上と兄上もいいよね」
「もちろんよ」
「ああ。こちらは任せてくれ」
「頼んだ」
そして、メルナの部屋までやって来た。そこでは、ラスタリュートが、手元にあるタブレット式の画面で、部屋の中の様子を監視しているようだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「ジュエル。お前、透明化なんて、いつそんな技を覚えたんだ……」
《クキュフゥっ》
得意げに胸を張るジュエルは、透明化してフィルズのマジックバッグにくっ付いていたのだ。何か違和感があると思って手をやってびっくりした。
「はあ……一人でどっか行くんじゃないぞ」
《キュウっ》
どうしても外に出たかったらしい。仕方のない奴だとため息を吐いて、お説教はなしにした。
そうして、王城に到着すると、そこに、リーリルが、護衛のトラと共に待っていた。服装は、舞台に立っていた時のもので、門番や騎士が、ソワソワしている。どんな姿でも、リーリルの持つ独特の雰囲気は隠せないのだろう。
「じいちゃん? どうしたんだ?」
「うん。嫌な予感がしてね……フィルが来るならって待ってたんだ」
そう言って、王城を見上げた。リーリルのその様子で、フィルズは決める。
「じいちゃんの勘はバカにできねえからな……一緒に行こう。キヨラが居れば大丈夫だけど、ジュエルも居るから」
《クキュゥ~》
「お前、じいちゃんが居るって知っててついてきたのか?」
《クキュ》
「なんとなく? まあいい。お前の勘も当てにしてるからな」
ジュエルは成体のサイズになっているトラ、リーリル専用護衛のキヨラの背中に乗り、目的とする場所へ向かうことにした。
「じゃあ、すまないが、メルナ妃の居る所に案内を頼む。警護については、ラスタ、ラスタリュート団長の指示通りにしてくれているか?」
フィルズは、案内のために出て来ていた騎士に尋ねる。
「はい! ご指示通り、近衛の方もトール様に説得されて配置についております」
つい先日まで、セイスフィア商会に預けられていた近衛騎士のトールは、カティルラ達と城に戻って来ていた。お陰で、スムーズに今回の対応ができたようだ。
「よし。そういえば……あんたに会ったことあるな」
「覚えていてくれましたかっ」
フィルズは、今回は城に入るということで、商会長としての制服に着替えていた。何かあっても、装備変更の魔導具ですぐに変更可能なので、フィルズとしては問題ない。
ただ、この騎士と会った時は、冒険者としての姿をしていたので、相手も覚えているかは確証がなかった。
「ああ。辺境の森で、どこだかのバカ息子の護衛してた騎士の一人だよな?」
「そうです! あの時はお世話になりました!」
「いや。騎士ってのも大変だよなあ」
「はあ……騎士になる者も年々、少なくなっていまして……」
「そうなのか?」
「ええ。父親に反発して、辺境の方で兵になる者。貴族自体が嫌になって、冒険者になる者など、少し前までの、当たり前の流れから外れだしているというのが、最近の現状です」
貴族家の出ならば、国に仕える騎士になるのが当たり前というものではなくなってきたようだ。
「そういえば、確かに辺境には多いかもな。家出てきたやつら」
「憧れもありますからね。貴族らしい両親を見ていると、辺境伯家の方々が羨ましくて」
「いいよな~。あの夫婦」
「いいですよね~。夫婦喧嘩も微笑ましくて」
「ずっと見てられるよな」
「そうなんですよ!」
そんな話をしていると、そこでリュブランとリサーナ、カリュエルに出会った。全員、きちんとパートナーを連れている。
「なんだ。待ってたのか?」
「うん。フィル君が来るなら何かあると思って。レッカもピリピリしてたし」
《グルル……》
レッカは、リュブランにつけた相棒のトラだ。そして、リサーナとカリュエルには、二足歩行する侍従、侍女としてのウサギをつけている。
「リュブラン達には、会議室の方を守ってほしいんだが」
「何かあるの?」
「分からん。けど、ここまで色々と仕込んでくる相手だからな。何より、今回捕まる奴らは、高位貴族が多い。準備はさせてねえけど、最後のあがきがあるかもしれねえ」
「そうだね……うん。わかった。姉上と兄上もいいよね」
「もちろんよ」
「ああ。こちらは任せてくれ」
「頼んだ」
そして、メルナの部屋までやって来た。そこでは、ラスタリュートが、手元にあるタブレット式の画面で、部屋の中の様子を監視しているようだ。
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