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ミッション10 子ども達の成長

391 クロコのいっしーくんです!

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フィルズとセルジュ、ユゼリア、ワンザ、エンリアントは、適当にお茶を楽しみながら、観賞を続けていた。

途中、フィルズは仕事を持ち込んだりしているが、時折ユゼリアとワンザは息を詰めながら真剣に見入っている。

「ついにだな」
「お祖父様……っ」

会議室で、黒子達に押さえつけられる祖父を見て、ユゼリアは声を震わせた。覚悟はしていたはずだ。母親であるメルナが謹慎を言い付けられた後、メルナは部屋でめちゃくちゃに暴れていた。本気で怒り、暴れる姿など、想像したこともなかっただろう。

そして、今また、会議室の映像を見たメルナが、扉を開けろと暴れている。

『ッ! お父様になんてことをするの!! あんなことすぐにやめさせなさいっ!! ふざけんな!!』
「うわ~……口も悪くなってんじゃん……」
「は……っ、母上……っ?」

ユゼリアは最初に暴れっぷりを見た時よりも、分かりやすく引いていた。もう、これは誰だというレベルだ。初めて遭遇する人種を見た時のような、そんな恐れもある目をしていた。

一方、セルジュは楽しそうだ。

「ふざけんなだって。言われた事あるのかな? あ~、懐かしい。うちの母上も一時期あんな感じだったもん」
「「え!?」」

ユゼリアとワンザが、映像よりもセルジュの発言に衝撃を受けて振り向いた。これに、セルジュは笑う。

「うちの母上は、見た目ちょっとキツいから、そこまで意外性はないけど、暴れる時はあれくらい暴れてたよ」
「俺に会った後とかか?」
「うん。多分、母上も気付いてたんだろうね。フィルが優秀なこと。だから、教師達をフィルのところにやらないようにしてたんだよ」
「ふ~ん」

フィルズも、ヒステリックに喚く時があるのは知っていた。だが、ミリアリアはフィルズには暴れるような様子は見せないようにしていたのだろう。負けた気持ちになるから。

「一度、神殿長にも相談したんだけど、あれくらいのガス抜きは必要なことだって、微笑ましげに笑われて終わったよ。それからは、カナル達もあまり気にしなくなったかな。発散させるって思ってさ」
「へえ」
「もし、あの時の姿を映像に納めてたら、母上は悶絶しただろうね。だから、メルナ妃は強いよね~。あの映像、貴族全員に見られてるのに、部屋から出ようなんて」
「「確かに」」
「「……っ」」

フィルズとエンリアントは納得。ユゼリアとワンザは、そうだったと青くなった。

「あ、いよいよ、侯爵邸の中に入るかな? これ良いよね。行ったことのない場所って多いから、町の様子が見えるのは楽しい」
「だろ? やっぱ、犯罪の証拠を探すってだけだと、気が滅入るし」

潜入捜査の映像はハラハラ、ドキドキするが、それだけだと、初めての経験に付いて行けない人がいるかもしれない。

「だから、それぞれの町や風景を見せるようにしたんだ。同時進行で、観光案内映像も編集できるようにしてる」

黒子達を各地にばら撒いたのは、そのためでもある。もちろん、測量も随時行っていくつもりだ。

この世界では、旅行なんて一般庶民には縁遠いものだ。別の土地に行くなんて考えたことさえないだろう。大半の人々は、その地で一生を終える。町から町への間には、魔獣が出るため、旅は命懸けだ。だから、生まれた町から出ようという気にそもそもならない者が多い。

「えっ。それ観られるの!? 色んな領地の観光地見てみたい!」
「ははっ。やっぱ、楽しいよな。巡回の魔導車を走らせてから、町のおばちゃん達に聞いて思ったんだよ。いつもとは違う場所に気軽に行けるってのは、誰だって楽しいんだって」
「うん。領都内でも、行った事ない場所ってあるもん。セイルブロードで流してる観光案内映像、一日中観てる人たちもいるしね」

ここ王都や、領都と呼ばれる広い自分たちの住んでいる町でさえ、住んでいる一帯のことしか知らなかったりする。移動手段がほぼ徒歩だけなのだから、仕方がないといえばそうだろう。

「王都の観光案内映像も、明日には解禁だ」
「やった! 各領地の映像もセイルブロードで流すの?」
「まあな。ご当地ショップを計画中なんだよ」
「ごとうちしょっぷ?」
「その土地での名産品とか、当たり前になってる食べ物とかを、土地ごとで区切った店で売るんだ。そこで流そうかと」
「えっ、なにそれ……っ、楽しそう!!」
「「「っ……」」」

ユゼリアとワンザ、エンリアントも目を丸くしてフィルズを見ていた。その目には、好奇心も覗いている。

「それの売り上げは、領地の活性化とかに使えるように各領地の商業ギルドと提携してと思ってるから、今回の騒動が落ち着いたら、話し合いすることになってるんだよ」
「うわ~っ。すごい! すごいよフィル!」
「まだ構想の段階だ。領主とも話し合わないといけないからな。まあ、先行でお試しができそうなところはいくつかあるし、明日くらいには、あの銀の腕輪をしてる奴らが押しかけてくるだろう。その時に、ちょいちょいと引っ張ってきてもいいかな~」
「ありそう! 明日は忙しくなりそうだね」
「まあ、覚悟の上だな」
「計画通りとも言う?」
「まあな」

フィルズとセルジュは笑い合う。そんな関係が羨ましくも感じているユゼリアは、寂しそうな顔をして、ゆっくりと映像に再び目を向けた。

映像内の黒子は、悪事の証拠となる書類の数々が出て来たと興奮気味に伝え、調査を止めようと襲いかかって来た使用人達を組み伏していた。

そして、そんな使用人達から聞き出した倉庫に映像が移動。出て来たのが、国で禁止されている色々だった。

確認して話しているのは黒子ではなく、商業ギルドの鑑定士だ。

『間違いありません……禁止薬物です。それと……この辺りは奴隷用の隷属の魔導具です。これがあるということは……』

奴隷がどこかに囚われているかもしれない。そう口にしようとした所で、映像が切り替わる。

『はいはい! クロコのいっしーくんです! こちら、隠し扉を発見しました!』

ここでの黒子はナンバーで言えば十四のいっしーくんだ。

そして、地下にあった牢。そこに、奴隷と思われる者達が閉じ込められているのを発見した。

そこで、別の中継が割り込む。

『こちらスーニア伯爵家に潜入中の、いっちゃんです! こちらも奴隷と思わしき牢を発見したのでご報告します!」

その映像を見ていたフィルズは、はっとして目を凝らす。

「っ、あの女っ。間違いない。かなり衰弱しているが……っ、すぐに保護だ!」

中に居たのは、行方不明とされていたメルナの異母妹。ユゼリアの本当の母親だった。










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読んでくださりありがとうございます◎
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