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ミッション10 子ども達の成長
387 こわっ
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見間違いかと、黒子が両端を交互に見る。しかし、どう見てもどちらも同じ背表紙だ。
「そうよ。本に見えるけれど開くことは出来ないの。それに、複雑な文字に隠れて、魔石が埋め込まれているのが分かるかしら」
《あ~……ありますね》
寄りでアップにされたことで、きちんとそれが判別できた。
「それが魔導具である証拠よ。先ず、その二つが本に触れた者の魔力を吸うの。ほら、それだけの分厚さとある程度の重さがあると、どうしても、こう……持つでしょう?」
レナが本を両手で持つように見せる。黒子が、別の本を取り出して、こうですねと持って見せて確認した。
《こう?》
「そうそう。そう持つわよね。そうすると、手のひらにその魔石が触れるの。それによって、先ず、それをきちんとした本だと錯覚させる。精神に作用する魔法が発動するのね。それで、しばらくすると、表紙を撫でたくなって、そこから、それに込められた思想? みたいなのが植え付けられる……と聞いたわ」
「洗脳魔法みたいなものです。それの実験で昔、反乱が頻発し、幾つもの国に大混乱を招きました」
《こわっ》
黒子の方も手を上げて触りたくないと態度で示した。
「とりあえず、それは回収してもらえますか? 上と下の部分を持つには問題ないと思いますけど」
《遮断布があるのでそれで安全に運びます》
「お願いします」
黒子がうんうんと頷き、マジックバッグから取り出した黒い風呂敷に手早く包んでバッグに入れた。
《この間に、かなり精査が進んでいるようです》
見てみましょうと黒子が手で執務机の方を示して向かった。
かなりのスピードで書類を仕分けしていく商業ギルド職員と、部屋の片端から書類を見つけ出しては集めて持ってくる騎士達。そこで、部屋の外から声が響いた。そして、騎士が一人駆け込んでくる。
『隠し部屋を見つけました! 応援を』
《あ、お手伝いしますよ。そちらの方が面白そうです》
『では、あとは騎士を一人連れて行きます』
そうして、黒子と騎士一人を引き連れて屋敷の奥に駆け出して行く。映像は、床近くの壁しか映さず、屋敷の構造はわかりにくくしていた。
薄暗く狭い地下へ続く階段が、壁にある。それを映し出した後、黒子がその入り口の横に立った。
《今から潜入します!》
行きますよと指を差して、入っていく。
その先には幾つかに分岐する細い通路が続いており、先は暗くて見えなかった。
《これは……うん。一旦、会場にお戻ししま~す》
どうぞと手を広げて黒子も頷きながら返すことを同意した。これをクラルスが受け取る。
『は~い。では、調査結果がわかり次第、またお願いしますね』
《了解です!》
敬礼する黒子。その通信が切れた。
『さあ、この調子で、他の領地も見てみましょう!』
そうして、また別の領主邸が映され、関係する証拠書類などが着々と発見、回収されていった。
当然だが、これを王宮で見ていた貴族は、頭を抱えていた。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
「そうよ。本に見えるけれど開くことは出来ないの。それに、複雑な文字に隠れて、魔石が埋め込まれているのが分かるかしら」
《あ~……ありますね》
寄りでアップにされたことで、きちんとそれが判別できた。
「それが魔導具である証拠よ。先ず、その二つが本に触れた者の魔力を吸うの。ほら、それだけの分厚さとある程度の重さがあると、どうしても、こう……持つでしょう?」
レナが本を両手で持つように見せる。黒子が、別の本を取り出して、こうですねと持って見せて確認した。
《こう?》
「そうそう。そう持つわよね。そうすると、手のひらにその魔石が触れるの。それによって、先ず、それをきちんとした本だと錯覚させる。精神に作用する魔法が発動するのね。それで、しばらくすると、表紙を撫でたくなって、そこから、それに込められた思想? みたいなのが植え付けられる……と聞いたわ」
「洗脳魔法みたいなものです。それの実験で昔、反乱が頻発し、幾つもの国に大混乱を招きました」
《こわっ》
黒子の方も手を上げて触りたくないと態度で示した。
「とりあえず、それは回収してもらえますか? 上と下の部分を持つには問題ないと思いますけど」
《遮断布があるのでそれで安全に運びます》
「お願いします」
黒子がうんうんと頷き、マジックバッグから取り出した黒い風呂敷に手早く包んでバッグに入れた。
《この間に、かなり精査が進んでいるようです》
見てみましょうと黒子が手で執務机の方を示して向かった。
かなりのスピードで書類を仕分けしていく商業ギルド職員と、部屋の片端から書類を見つけ出しては集めて持ってくる騎士達。そこで、部屋の外から声が響いた。そして、騎士が一人駆け込んでくる。
『隠し部屋を見つけました! 応援を』
《あ、お手伝いしますよ。そちらの方が面白そうです》
『では、あとは騎士を一人連れて行きます』
そうして、黒子と騎士一人を引き連れて屋敷の奥に駆け出して行く。映像は、床近くの壁しか映さず、屋敷の構造はわかりにくくしていた。
薄暗く狭い地下へ続く階段が、壁にある。それを映し出した後、黒子がその入り口の横に立った。
《今から潜入します!》
行きますよと指を差して、入っていく。
その先には幾つかに分岐する細い通路が続いており、先は暗くて見えなかった。
《これは……うん。一旦、会場にお戻ししま~す》
どうぞと手を広げて黒子も頷きながら返すことを同意した。これをクラルスが受け取る。
『は~い。では、調査結果がわかり次第、またお願いしますね』
《了解です!》
敬礼する黒子。その通信が切れた。
『さあ、この調子で、他の領地も見てみましょう!』
そうして、また別の領主邸が映され、関係する証拠書類などが着々と発見、回収されていった。
当然だが、これを王宮で見ていた貴族は、頭を抱えていた。
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