上 下
180 / 194
ミッション10 子ども達の成長

387 こわっ

しおりを挟む
見間違いかと、黒子が両端を交互に見る。しかし、どう見てもどちらも同じ背表紙だ。

「そうよ。本に見えるけれど開くことは出来ないの。それに、複雑な文字に隠れて、魔石が埋め込まれているのが分かるかしら」
《あ~……ありますね》

寄りでアップにされたことで、きちんとそれが判別できた。

「それが魔導具である証拠よ。先ず、その二つが本に触れた者の魔力を吸うの。ほら、それだけの分厚さとある程度の重さがあると、どうしても、こう……持つでしょう?」

レナが本を両手で持つように見せる。黒子が、別の本を取り出して、こうですねと持って見せて確認した。

《こう?》
「そうそう。そう持つわよね。そうすると、手のひらにその魔石が触れるの。それによって、先ず、それをきちんとした本だと錯覚させる。精神に作用する魔法が発動するのね。それで、しばらくすると、表紙を撫でたくなって、そこから、それに込められた思想? みたいなのが植え付けられる……と聞いたわ」
「洗脳魔法みたいなものです。それの実験で昔、反乱が頻発し、幾つもの国に大混乱を招きました」
《こわっ》

黒子の方も手を上げて触りたくないと態度で示した。

「とりあえず、それは回収してもらえますか? 上と下の部分を持つには問題ないと思いますけど」
《遮断布があるのでそれで安全に運びます》
「お願いします」

黒子がうんうんと頷き、マジックバッグから取り出した黒い風呂敷に手早く包んでバッグに入れた。

《この間に、かなり精査が進んでいるようです》

見てみましょうと黒子が手で執務机の方を示して向かった。

かなりのスピードで書類を仕分けしていく商業ギルド職員と、部屋の片端から書類を見つけ出しては集めて持ってくる騎士達。そこで、部屋の外から声が響いた。そして、騎士が一人駆け込んでくる。

『隠し部屋を見つけました! 応援を』
《あ、お手伝いしますよ。そちらの方が面白そうです》
『では、あとは騎士を一人連れて行きます』

そうして、黒子と騎士一人を引き連れて屋敷の奥に駆け出して行く。映像は、床近くの壁しか映さず、屋敷の構造はわかりにくくしていた。

薄暗く狭い地下へ続く階段が、壁にある。それを映し出した後、黒子がその入り口の横に立った。

《今から潜入します!》

行きますよと指を差して、入っていく。

その先には幾つかに分岐する細い通路が続いており、先は暗くて見えなかった。

《これは……うん。一旦、会場にお戻ししま~す》

どうぞと手を広げて黒子も頷きながら返すことを同意した。これをクラルスが受け取る。

『は~い。では、調査結果がわかり次第、またお願いしますね』
《了解です!》

敬礼する黒子。その通信が切れた。

『さあ、この調子で、他の領地も見てみましょう!』

そうして、また別の領主邸が映され、関係する証拠書類などが着々と発見、回収されていった。

当然だが、これを王宮で見ていた貴族は、頭を抱えていた。









***********
読んでくださりありがとうございます◎


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

「追放」も「ざまぁ」も「もう遅い」も不要? 俺は、自分の趣味に生きていきたい。辺境領主のスローライフ

読み方は自由
ファンタジー
 辺境の地に住む少年、ザウル・エルダは、その両親を早くから亡くしていたため、若干十七歳ながら領主として自分の封土を治めていました。封土の治安はほぼ良好、その経済状況も決して悪くありませんでしたが、それでも諸問題がなかったわけではありません。彼は封土の統治者として、それらの問題ともきちんと向かいましたが、やはり疲れる事には変わりませんでした。そんな彼の精神を、そして孤独を慰めていたのは、彼自身が選んだ趣味。それも、多種多様な趣味でした。彼は領主の仕事を終わらせると、それを救いとして、自分なりのスローライフを送っていました。この物語は、そんな彼の生活を紡いだ連作集。最近主流と思われる「ざまぁ」や「復讐」、「追放」などの要素を廃した、やや文学調(と思われる)少年ファンタジーです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。